相談概要 | [氏名] U.Y. [相談建物予定地] 東京都渋谷区 [職業] 主婦 [年齢] 50代 [女性] on [構造] − [引渡し年月日] 西暦 年 月 日 [何階建て] [延べ面積m2] [延べ面積坪] [工事請負金額] [設計監理料] [様態] − [施工者] − [設計者を選んだのは] − [施工者名] [販売会社名] [設計者名] |
相談内容 | 現 象: 相手の意見: 相談内容: 70年程経っている大谷石擁壁のある古家付き土地を購入検討中です。 擁壁は高さ2m前後・長さ50m弱あり、擁壁上に6軒住宅が建っており、今回売りに出ている物件は公道から私道に折れた2軒目にあたります。 建築前に、持分(長さ6.8m)の擁壁をRC擁壁に作り直そうと、狭小地に向く工法を謳っている2社に見積もりをとりましたが、500万円・350万円と高額でした。工事は更地の時が費用も手間も一番かからず、多少費用がかかってもやっておくべきと言う思う反面、擁壁の一部を解体することで両隣りのお宅の擁壁へ影響が出るのではないかと言う心配もあります。 建築業者に相談すると、建築申請は地盤補強で許可がおりるので、擁壁はそのままでいいではと必ず言われるため、擁壁の造り直しはせず、地盤補強+既存擁壁の補強でも、擁壁下側のお宅への倒壊の心配も減り、両隣りのお宅への影響も少なく、費用面でも安心ではないかと思い始めました。 ただ、大変古い擁壁のため耐久性等先々の心配はどうしても残ってしまうため、擁壁そのものの診断をお願いできればと探していますが、どのようなところに依頼すればいいのか見当がつきません。もし信頼できる専門業者や機関等がありましたら、ご紹介いただけないでしょうか。よろしくお願いいたします。 |
yorozuの感想 | 検索サイトで貴HPの過去質問に辿り着きました。建築前に知っておきたい内容がたくさんあり、今後の参考になりそうです。 |
アドバイザー | |
古賀 保彦 | 解説員の古賀です。 古い擁壁では構造計算がしていなかったり計算書が残っていない事が多いのですが、そのような場合は、擁壁にその保持能力以上の荷重がかかる事によって崩壊しないように注意が必要です。 大方の地域で共通していると思われますが、東京都でも建築安全条例に擁壁に関する規定があります。擁壁を横から断面で見て、擁壁の付け根からその水平方向を規準に30度※の角度で線を引き、その線よりも下に基礎底が位置するようにすれば建物の荷重が擁壁に直接かからないとする規定です。 建物が擁壁から離れる程に、角度の線は上の地面に近づきますが、2m÷tan30°≒3.47m離れると地面と交わります。一般的なベタ基礎の場合は基礎底が地面から深さが25cmありますので、1.75÷tan30°=3.1m離すと良い事になります。 敷地と建物の関係で、その距離が確保できなければ、その分基礎底が深くなっていきます。そうすると基礎工事にお金がかかる事や、擁壁付近は盛土している事が多い事から、基礎を深くしないで斜め線の下の支持地盤に到達する地盤改良や杭を使用する事が多いです。このような方法をとれば建物を擁壁に寄せる事ができます。 <建築業者に相談すると、建築申請は地盤補強で許可がおりるので、擁壁はそのままでいいのではと必ず言われるため、> というのは、そのような事情からだと思います。 以上は擁壁上側に建築する場合ですが、下側ではどうでしょうか。 前述の東京都安全条例では、安全性が確認できない擁壁の下側に建築する場合は、今度は擁壁の上側から30°※の線を引いて、その線から下にかかる建築部分は鉄筋コンクリート等にして擁壁が崩壊してもそれで受け止める構造にする必要があります。上側と同様に擁壁から離れる程その部分は低くなり、十分離す事ができれば必要なくなります。当方、以前に設計した事例ですが、道路より低くなっている敷地で擁壁の構造確認ができず、道路と建物の距離がとれなかったために、木造外壁の外側に鉄筋コンクリート壁を築造した事があります。 擁壁の外観を見て、石同士の目地の亀裂やズレ、膨らみ等がある場合は擁壁自身の崩壊にもご注意ください。 仮に外観上は健全でも、土質や当時の施工状況迄は分かりませんので、直近に建物が建つとどうなるか予測は難しいと思います。擁壁を作り直すか、離隔地盤補強・杭等の方法を取るか、離格距離を確保するか、の方法になるでしょう。 一般的な状況であればコストはその順に安くなると思います。 ※角度は地質等によって異なります。 |
山口 雅克 | 解説員の山口です 「建築申請は地盤補強で確認済証がでるので、擁壁はそのままでいいのでは」と業者が言うとありますが、建物本体は擁壁に影響のないような設計を行なえばいいと言う考えです。ただ、高さが2mを超える擁壁は確認申請を要する構造物となりますので、安全性の確認を求められるのではないでしょうか。 高さが2m未満だったにしても、既存擁壁の安全性を建築確認申請図書の中に記載しなければならないと思います。そのためには、既存擁壁が安全であることを書面で記載する必要がありますので、構造専門の建築士に相談する事をお勧めします。 |
コメンテーター | |
大内 彰 | コメンテーターの大内です。 既存の擁壁の詳細が分からない場合は既存擁壁に新たな力がかからないように新しい建物をつくることが基本です。そのために杭を採用したり、柱状改良を行ったり、基礎を深くするなどの対策が採られます。それから既存擁壁の高さによっては安全に関する調査を行政から要求されます。行政に必要な調査など確認し、必要であれば建築士の紹介(閲覧)を受ける事もできるはずです。 |
事務局から | |
荻原 幸雄 | 考え方はいろいろあります。これらの選択は構造にもデザインにも精通した設計者を選定することが先です。 1)擁壁は撤去し擁壁をRC(鉄筋コンクリート造)で造成する。 この場合は両隣の敷地の建物がどのように構築されているか設計者が判断する能力が必要。 2)擁壁は撤去し、建築的に一体とした建物とする。 この場合も両隣の敷地の建物がどのように構築されているか設計者が判断する能力が必要。 3)撤去しない場合で 擁壁に負担と掛けない杭などの設計で対処する。 4)撤去しない場合で 擁壁に負担を掛けない地下として掘削する。(この場合は現実的でなく、2)の方法を 採用することになります。味があった残したい場合などですね。 簡単に分けるとこんな感じですが、大切なのは施工者ではなく設計者の能力で差が出るということが基本になります。 わたしも以前、擁壁のやり変えで5mほどの擁壁をつくり変えましたが、大切なのは設計と工事監理です。 よい家を目指して下さい。 |
相談者お礼状 | |
相談者お礼状 | |
その後 |
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