相談概要 | [氏名] WT [相談内容] 注文住宅の瑕疵 [居住住所] 福岡県春日市 [職業] 会社員 [年齢] 40 [構造] 鉄骨鉄筋コンクリート造 [引渡し年月日] 西暦 2014 年3 月 日 [何階建て] 2 [延べ面積m2] 165 [延べ面積坪] [工事請負金額] 3300 [設計監理料] 10 [様態] 建築条件付建売住宅(売建住宅) [施工者] 地場大手ハウスメーカー;地域的な大手産業 [設計図面は何枚もらいましたか?] 20 [工事着工まで設計の打ち合わせは何回しましたか?] 12 [施工者名] SH [販売会社名] SH [設計者名] I |
相談内容 | 現 象: 建築条件付きの土地を正式に契約しました。 ところが、地鎮祭の際土地に建物の線が引かれているのを見てはじめて接近しすぎて隣の賃貸マンションの日照を/侵害していることに気付きました。 わが家は、賃貸マンションからみて南西で、マンションのベランダの目の前にお互い境界から50センチの位置に建つので、マンションの1階2階計4部屋は真っ暗になると思います。 しかし、逆方向の隣とも接近しているためずらすことはできません。 ハウスメーカーからは、隣のマンションの日照に配慮した設計のアドバイスは ありませんでした。 日照の件に気付いた時にはもう建物は工場発注済みで、土地もうちの名義に変わっており、キャンセルにかかる費用として、土地代全額と建物代3分の1を請求されました。 ハウスメーカーとしては、法律上何の問題もなく、密集して建っている土地柄だし、長く駐車場だった場所でいずれ建物が建つと容易に予測できただろうから、 クレームは付かないし、日照に配慮した設計をする必要すらないという考えです。 相手の意見: SHにはいっさい非はない。 相談内容: @消費者は素人なので、近隣からクレームがこないような家づくりにするためのアドバイスを消費者にする義務があると思いますが、いかがでしょうか? Aこの場合、法律上は問題がないので、その義務ははたしていることになりますか? B隣の日照権について触れるとこの土地が売れなくなるので黙っていたと思います。 この場合、消費者は請求された金額を言われるがまま支払って泣き寝入りするしか方法はないのでしょうか。 Cなにか打開策があればアドバイスをいただけないでしょうか。 一個人では百戦錬磨のハウスメーカーには太刀打ちできません。 ご回答、心よりお待ちしております。 何とぞよろしく御願いいたします。 |
yorozuの感想 | 賠償金やローンでお金がなく知識も経験もなく、一個人が大手ハウスメーカーとどう闘ったらいいのか途方にくれている時、このHPをみつけ、どんなにありがたかったかわかりません。 |
アドバイザー | |
山口 雅克 | 解説員の山口です 相談者さんは優しい方ですね。合法的とはいえ、隣地への気配りで心配をされていますし、隣人とのおつきあいを上手くして行きたいとの気持ち、よく分かります。 法的には日照を侵害していることはないのですが、その辺りの説明をさしあげます。 建物は先に建てたもの勝ちと言うことはないので、隣のマンションを建てた方も、自分の隣にも自分と同じような建物が建つことを承知の上で建設しているのです。建築する時の通風日照等の確保は自分の敷地内で確保することが大前提になっています。陽当たりが欲しい人は、隣の敷地から離れて建てれば済むことなのです。ですからあまり心配をしないようにしましょう。 1:近隣からクレームがくるかもしれないことを想定するとなると全ての家づくりでクレームの助言を行なうことになりますが、今回の場合は一般的な近隣の慣習の範囲内ということで、そこまでは考えていなかったのだと思います。 2:隣のマンションは日照権に触れることはないと思われます。地域にもよりますが、日照がある程度必要と思われるところには法的に日影規制がありますので、それをクリアしていれば日照で騒ぐ事自体に無理があるからです。 あなたが隣人から日照権のことで請求などされることはないと思われます。通常でない人が、騒いで無理な請求を行なうようなことになれば、それは設計上の責任と言うよりも、隣人の人間的な責任のような気がします。 3:ハウスメーカーとの打開策と言うよりも、近隣と仲良くお付合いできる方法をみつけましょう。 都市部のこのようなところでの日照や通風はお互い様ですから、気を楽にされた方がいいと思いますよ。 |
志賀 隆行 | 解説員の志賀です。 日照権についてはマンション建設などでよく問題になる案件ですね。通常は日当たりが悪くなったことに対して相談するケースが多いですが、今回の相談者さんのように建てる側のパターンはめずらしいです。近隣への配慮に行き届いた思いやりのある方だと推察します。 さて、今回のケースは建築基準法上では以下の点で問題ありません。隣地部分の高さ制限について、日照を考えた北側部分の高さ制限について(敷地の用途地域が1種低層住居、2種低層住居、1種中高層住居、2種中高層住居の場合に限る)、影になる時間が基準以下となるよう規制する日影規制について(2階建住宅であれば敷地 の用途地域が1種低層住居2種低層住居の場合に限る)。これらをクリアしないと確認済証を受けることが出来ません。確認済証はすでに下りている状態だと思います。また民法上でも隣地から50cm離れていれば問題ありません。 ただ法的に問題ないといっても、相談者さんは心情的に「我が家のせいで影を落とすのは申し訳ない」と感じてらっしゃるのだと思います。現実的アドバイスとして、近隣クレームを避けるため、着工前にハウスメーカー(できれば営業担当、設計者、工事担当)とタオルなど粗品を持って、近隣あいさつを行われたら如何でしょう か。何か言われることがあっても、プロとしてハウスメーカーが対応するはずです。 日照権は大事なことですが、場合によっては直射日光は紫外線など、意外と避けるものだったりします。また、誠意を持って近隣あいさつすれば、そのままスムーズにご近所付き合いに発展するかもしれません。 |
コメンテーター | |
栗原 健一 | 日照権については、昔、社会問題化した時期があり、その解決策として法律(建築基準法)が改正され、いわゆる「日影規制」も新設されました。 その以前から、建築基準法では北側の隣接地に対する各種の高さの制限が、その地域地域に応じて設定されていました。 「日影規制」は複雑な仕組みで、この規制をクリアするための建物の形は、一つだけではなく、場合により建物を搭状にすれば高さは高くできる等の現象も起き、形状を確定するために何回も試してみることもあります。今ではコンピュータがありますので、比較的楽にできるようになりましたが、建築士泣かせの仕組みです。 また、影の落ちる敷地の近隣の方々への説明も条例で義務付けられていることもあり、人によってはこの説明に納得してくれず、無理難題を言われたこともあります。 相談者の方の「福岡県春日市○○町」一帯は、大部分が準工業地域、第1種高度地区に指定されているようで、日影規制は設定が無いようです。 第1種高度地区は、高度地区の中でもっとも厳しい指定です。 業者は、建築基準法に適合した設計をしているとのことですから、概ね、北側隣家への配慮はなされていると考えてよいと思います。 業者が適法に進めているとなると、この段階で設計・工事変更は、相談者の負担になることになると思われます。 ただし、前述のように、法に従い合理的設計しても、クレームをつける方がいないとは限りません。 近隣の方々への挨拶の際にどのような反応があるかを観察してみることもよいのではないでしょうか? また、春日市役所の建築課(無ければ都市計画課)に相談に行かれてはいかがでしょうか?市の担当者なら近隣の状況をある程度把握していて、アドバイスをくれるかもしれません。 @消費者は素人なので、近隣からクレームがこないような家づくりにするためのアドバイスを消費者にする義務があると思いますが、いかがでしょうか? → 最善を尽くしてもクレームつける人がいますので、この点の法的解釈は難しいところです。ただ、私たち建築士事務所では、当然、相談者がこのような心配をされないよう、コミュニケーションを撮る様に心がけていますので、結果としてこの業者は不十分だったかもしれません。 Aこの場合、法律上は問題がないので、その義務ははたしていることになりますか? → 法律上の問題がないから、建築士の義務を果たしているとは限りませんが、それを法的に追及することは大変かもしれません。多分、法律用語で「善良なる管理者の注意義務違反」を問うことになると思いますが、なかなか大変でしょう。 B隣の日照権について触れるとこの土地が売れなくなるので黙っていたと思います。 この場合、消費者は請求された金額を言われるがまま支払って泣き寝入りするしか方法はないのでしょうか。 → まず、「隣の日照権について触れるとこの土地が売れなくなる」ということですが、本当に売れなくなるのか、また業者がそのような意識を持っていたかということ証明できなければ、それを理由に争っても不利でしょう。 後者の証明は何かそのような発言をし、その記録などの証拠がないとかなり難しいと思います。 Cなにか打開策があればアドバイスをいただけないでしょうか。 → とりあえず、この地域でこのようなトラブルがあったかどうかを市役所にお聞きにいかれてはいかがでしょうか。また、建築より法律の度合いが強いので、法律専門家の無料相談などを受けてみてはいかがでしょうか。 |
事務局から | |
荻原 幸雄 | 近隣を配慮した相談に感心します。 ご苦労様です。 法的な話は各解説委員の通りですが、必ずしもこれが全てではないところはあります。景観や既得権など紛争と考える方には法的な問題に発展することは多くあります。ただ、一般的にはそこまでなることはほとんどないとは思います。 志賀委員のように近隣挨拶は事前に行い簡単な説明をすることで近隣の反応を感じ取ることもできます。法律を守っても人により「もっと離せ」とか「目隠しを付けろ」「窓の位置を変えろ」などあることはあります。 そんな時に意外な内容の場合もあり、対処を設計者と話し合う必要があります。 対処すべきか?対処の範囲は?対処の方法は?費用負担は?などです。 日陰でも足場ができるともっと日陰になって苦情があったり、騒音が出て苦情があったり、臭いとかいろいろなことが起きる場合もあります。 そんな時にこそ設計者や工事監理者、現場監督がいるので、よく話し合ってください。 先ずは近隣挨拶で感触をつかみ取ってください。 |
相談者お礼状 | |
相談者お礼状 | |
その後 |
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