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一般社団法人建築よろず相談支援機構

TEL. 0422-24-8768

〒181-0001 東京都三鷹市井の頭3丁目12番11号

よろずWEB相談HEADLINE

No.1284 建物が30cm程東に建てられてしまった。

 相談概要 [氏名] W.M
[相談内容] 注文住宅の瑕疵
[相談建物所在地] 愛知県岡崎市
[職業] 無職
[年齢] 35
[女性] on
[構造] 木造(在来工法)
[引渡し年月日] 西暦 2010年 2月 初旬
[公庫は使わない] on
[何階建て] 2
[延べ面積m2] 111
[工事請負金額] 2100
[設計監理料] 0
[様態] 建築条件付建売住宅(売建住宅)
[施工者] 地場中小ハウスメーカー;地域的な中小産業
[設計図面は何枚もらいましたか?] 10
[工事着工まで設計の打ち合わせは何回しましたか?] 15
[施工者名] B・H
[販売会社名] B・H
[設計者名] B・H
 相談内容 現  象:
昨年、南西角地の建築条件付土地を購入(土地決算済)、10月より着工、まもなく完成予定です。

隣家及び道路との境界は、高さ50cmほどのブロックで区切られています。これは、土地販売当初からありました。

東隣が古い家で、境界ギリギリに建っているので、採光とプライバシー保護の為、また営業担当者より『建物の周りは余裕をもって歩くことができるスペースがあった方が便利』『ここに自転車等を置いては?』とのアドバイスも有り、出来るだけ西側に寄せた設計をしてもらいました。

配置図で、東側境界と建物の間は80cmになっており、建築中の家屋もそれに準じて、境界ブロックより80cm位置にあります。

ところが、先週、ハウスメーカーより、『測量をしなおしたところ、北東の境界杭の位置が、本来よりも30センチ程東にずれている』との連絡がありました。

土地販売以前に建てられていた建築物を取り壊す際、誤って境界杭を抜いてしまい、その後、きちんと測量せず適当に杭を打ってしまったらしいのです。
その杭を基準とし、境界ブロックは設置され、家屋も建てられました。
すなわち、本来あるべき位置より、30cm程東に建てられてしまいました。

これにより、採光、プライバシー確保への懸念が発生し、余裕をもって歩くスペースを失いました。

また(これは少し前の話になりますが)、土地南側の道路が狭く、購入前〜設計の打ち合わせ中に何度もセットバックの可否を問うていたのですが、営業担当・設計士とも『道路との境にブロック塀があるので必要ありません』との返答。
しかし、着工直前に現場監督から『やはりセットバックが必要なので、南側のブロックは取り除きます』と言われました。

相手の意見:
東側境界の件に関しては、まず、本来の位置にブロックを設置した後、再度話をさせて欲しいとのこと。

今日現在、特に連絡無し。

南側セットバックの件に関しては、『行政側との見解の相違』とし、『外構工事でサービスする』とのことだったが、具体的な案は、未だ提示されず。

相談内容:
境界杭の件において、
・契約違反にならないのか
・役所等への“建築確認申請”に虚偽があったことにならないのか
・メーカーは境界からの距離は50センチ程だと言うが、厳密に測り、万が一50センチに満たない場合、違法になるのか→その場合、建て替え以外の方法はあるのか
・話し合いの際、こちらが予め準備しておいた方がよい事は何かあるか
・和解案としては、どの程度の事を要求できるのか以上のことをご教授いただけたらと思います。

セットバックの件は、正直、半信半疑でしたし、元々駐車スペースにするつもりだったので、不満はあるものの「仕方ない」と思っていましたが、境界杭の件のような初歩的なミスを、完成直前の今頃言い出された事で、メーカーへの不信感が募っています。

予定では来月上旬に引渡しになっています。
どうぞ、アドバイスを宜しくお願いします。
 yorozuの感想 問題が発生して、初めてこのHPを知りました。
もっと早くに拝見していたら‥と思います。

これから建築にかかわる皆さんにとって、きっと参考になると思います。
相談例がもう少し具体的に分類されていたら、検索が楽だったかも・・・
アドバイザー 
 藤井 修 敷地に面する道路は4m未満の場合は反対側が崖などではない場合、道路中心から2mまでをセットバックする必要が建築基準法で定められています。

又、建物位置が確認申請時と違った場合は変更届を提出すれば事足ります。

隣地境界から建物までが50p未満でも違法にはなりません。

敷地境界の確認を誤って建物を配置した為に当初の目的が果たせなくなったことについての業者の責任のとり方ですが目安というものは無く、W.Mさんの気持ちの問題なのでこれは話し合うしか方法はありません。
関口 啓介  このようなミスが引き渡しを翌月に控えて発覚・報告されるとは、残念でなりません。

まず工事監理者はいるのでしょうか。建築確認申請書等に記載されてあると思われるのでご確認ください。記載のある工事監理者にこの間の経緯の説明を求めてしかるべきでしょう。名前だけが記載されて監理の事実がないとすれば、それも問題です。建築主は一定規模以上(2階建までの木造建築物で延べ面積が100 を超え300以内のもの)の工事を行う場合、建築士を工事監理者として定めなければなりません。そのような意味ではWさんにもまったく責任がないわけではありません。きちんとした工事監理者を定めるべきであったのではないでしょうか。

設計図は机上でつくられ、現場では人の手で施工がされるため、食い違いや変更も起こりえます。
もちろんミスがまったくないわけではありません。それらを報告しながらきちんと対処しよりよい方向へと進めるのが監理者の役割でもあります。今になって敷地境界の位置が間違っていたことや、道路のセットバックが必要になったというのは、工事監理の事実が疑われるような現象で、お粗末極まりないことです。

それと建物の位置が変わったことが契約違反かどうかは、契約時の位置づけにもよると思われます。契約上の性能や機能が明らかに満たせなくなるのであれば、その可能性もあります。

確認申請等の件は藤井解説委員の説明する通りです。工事監理者によって対処できるものと思われます。

隣地からの距離は絶対的な規定ではありません。隣家も離れていなかったり、慣習的に50センチ離れていない地域もあります。50センチない場合には隣家と責任をもって施工業者と監理者がお話合い頂き、万が一隣家が不服とされるならば、施工業者と監理者は責任をもって対処して頂くべきでしょう。それがもし決裂したり、して頂けない場合には、契約不履行と考え、契約を解除した方がよいかもしれません。 

監理者を定めることは、これからでも重要なことです。きちんと報酬を払ってでも定めて、今後の対処を含めて、進められることが必要と考えます。建築主の責務として監理者を定め、その役割が機能し、よりよい方向へ解決されることを願っております。
 コメンテーター 
山口 雅克 敷地と建物の配置のことですから、解説委員のアドバイスを参考にして辛抱できるところを探すことになるでしょうね。(建物を曳くことも出来ない訳ではありませんが、新築物件を30cm動かすのではリスクが大きくて実際的ではありません。)

契約違反に関してはその通りですから、それに対しての違約補償をどういう形で行ないたいと申し出てくるのか。 “建築確認申請”は計画変更申請を行うのと、敷地境界を動かしてもらうのも一つの方法です。

期限を定めて、先方に和解案を提示させ、それであきらめがつくのかどうかがポイントになります。どうしてもそこに住みたいという気持ちと、場合によっては・・・との気持ちを自分たちで整理することが大切でしょう。

言い逃れ的なことと自分たちにとってリスクの少ない方法を幾つも言い出すと思われますので、これから住まう上での住み心地を勘案して妥協点を見い出すことになると思われます。

確認申請書に記載されている監理者から経緯の説明を受けるのも大切になるかもしれません。
 事務局から 
  荻原 幸雄 ・契約違反にならないのか

明確に図面に記載されていれば契約違反です。

・役所等への“建築確認申請”に虚偽があったことにならないのか

虚偽ということではなく、変更申請が必要になります。

・メーカーは境界からの距離は50センチ程だと言うが、厳密に測り、万が一50センチに満たない場合、違法になるのか→その場合、建て替え以外の方法はあるのか

50cmなくても隣地との話し合いですが、隣地と同等以上離れないと同意はしないでしょう。今回のは同意すると思います。

・話し合いの際、こちらが予め準備しておいた方がよい事は何かあるか

第三者の建築士に現状と法的な関係をチェックしてもらうことです。

・和解案としては、どの程度の事を要求できるのか

これは違法性があるか否かによりますので、答えられません。
相談者お礼状 
 相談者お礼状  早速の回答、ありがとうございました。
思っていたよりも、随分迅速且つ丁寧に対応していただいたので、とても助かります。

近日中に業者、及び工事監理者と話し合いの場を持つことになりましたので、いただいたご意見を参考にして、臨みたいと思います。

私としては、思い入れのある物件ですので、なんとか妥協点を見出せたら、と思っています。

皆様のアドバイス、心より感謝いたします。
ありがとうございました。
 その後  
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