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一般社団法人建築よろず相談支援機構

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よろずWEB相談HEADLINE

No.1282 グラスウールの充填断熱で、通気層は?

 相談概要 [氏名] A,M
[相談建物予定地] 長野県松本市
[職業] 教諭
[年齢] 49
[男性] on
[構造] 木造(在来工法)
[引渡し年月日] 西暦 2010年10月  日
[公庫は使わない] on
[性能保証を使用] on
[何階建て] 2
[延べ面積坪] 60
[工事請負金額] 5100
[設計監理料] 500
[様態] 注文建築
[施工者] 建設会社
[設計者を選んだのは] 自分で選んだ。
[監理者を選んだのは] 自分で選んだ。
[工事着工まで設計の打ち合わせは何回しましたか?] 20
[施工者名] 未定
[設計者名] B設計研究所
 相談内容 現  象:

相手の意見:

相談内容 :
グラスウールの充填断熱で、通気層は設けたほうが良いのか。ということで相談をお願いします。

これまでの経験・実績とデザイン性をみこんで、地元の設計士に設計を依頼しました。
設計士の先生はグラスウールの充填断熱でやってこられており、それを勧めております。こちらとしては、はじめはグラスウールは避けたいと思っていましたが、そこは妥協するとして、内部結露を防ぐためにも通気層を設けてほしいお願いしましたら、次のような理由をあげてその必要はないと主張されます。

 1.内部結露は、空気が入ることによって起こるものであり、それは床下から入ることが一番多く、そこをきちんと密閉すればほとんど問題ない。
 2.通気層を設けても窓の部分などで空気を上に流れるようにするのは難しい。
 3.通気層を設けるような設計は、工務店やハウスメーカーが違いを出すためや、メーカーの売りひとつとしてやっていることである。
 4.サイディングなどの外壁のゆがみを解消するためのものである。
 5.サイディングなどの軽いものならばよいが、長期間にわたっては外壁材を支えられない。
 6.外壁の下の板の横の継ぎ目は、打ちつけることができないので、そのつなぎ目の部分で外壁にゆがみとかひびが生ずる可能性がある。
 7.積雪量の多い地域では、通気の入り口が雪でふさがれてしまい、意味のないものになってしまう。

 などの理由を挙げて、通気層の必要性はないと主張されています。
 また、その設計士の先生は、柱と柱の間に筋交いに加えて内壁の外側にすべて板をはり、構造上強度を増すようにしているので、それができなくなる。とも言っています。(強度の問題は、回避できるとも言っていましたが)

 外壁材までは、はっきり決めていませんが、塗り壁か吹き付けの予定です。
 建設予定地は冬はマイナス10℃になり、夏場は30℃をゆうに超える寒暖の差が大きい地域です。

 硝子繊維協会という所のホームページでも、通気層を設けることを推奨していましたが、これについても、グラスウールが湿気に対して弱いということを言われているので、それに対応しているだけのことで、そこまでやる必要性は感じていないと言われます。

 確かに、通気層は無くてもよいのかもしれませんが、家の耐久性などからあったほうが良いものならば、設計士の先生に強くお願いをしたいと考えています。
(心配はこれまで、そのような設計を手がけたことがないので、通気層を設けた設計がきちんとできるか心配なところですが)

 ご意見をよろしくお願いいたします。
 yorozuの感想 家の設計等に関する、質問に答えるホームページは色々ありますが、ここは回答が詳しくて、丁寧だと思いました。
ただ、似たような質問があるか検索をしたときに、ちょっと分かりにくいのが難点です。
アドバイザー 
 米村 和夫 通気層を設けるべきかどうかについての相談ですが.ちなみに私はほぼ通気層を採用していますしグラスウールは採用しません.

温熱環境を考えていくと現在の所そのような方針に至っています.が...

建築は技術であり,思想でもあります.
建築家一人一人意見も違います.A.Mさんが依頼している建築家の見解を一つ一つを理解して,又は検証していくには,本サイトでの相談の域を超えてしまいますが,通気層があった方がよい事は間違いないのではと思いますが,建築家の技術と思想も尊重すべき所もあるのではと思います.

話は,それるように思うのですが,相談内容を読んでいて思った事を述べさせてください.

建築主であるA.Mさんと建築家の信頼関係が築けれていないように思いました.私は,建築主と設計者と施工者の3者の友好関係こそがいい家作りの基本と思っています.この関係が崩れますと些細な事も不満となります.その第一弾がグラスウールの仕様であり通気層の問題ではないかと思います.家作りには,重要な事が山のようにあります.たまたま目についた項目だからの不満と思います.

一つは,A.Mさんが,依頼している建築家を代理人として,夢 のマイホームを,本当に託す人なのかどうかを再度考えてはいかがですか?せっかくの縁ですから,まず信頼関係を構築する事を考えるべきです.その建築家が建てられた家を見学しに行き住んでいる人(建築主)から意見を聞いてもいいでしょう.納得のいくまで直接話すべきです.しかし,人間的に,技術的に,納得がいかないのであれば,契約解除する事も選択肢の一つです.

家は一生のものです.
10月に竣工とのこと.まだ時間があります.
 今井 優子 設計者のサイトを拝見しました。地域に根ざした上質な建物を設計される方ですね。誠実に建築に向かい合っている印象を受けました。

建築は工学的に捉えれているのか、何事もに明確な正解が存在するかのように思われていますが、実は何事にも明確な正解は存在しません。特に結露などの室内環境や快適性に関わることは、むしろ自然科学に近いのかも知れません。

また、建築は使われる材料の物質特性だけでは語れないところも多く、現実には人の手で施工される物ですから、その性能は施工精度に大きく依存しています。

そのようなことを前提にすると、設計者が通気層を設けない理由としてあげているものは、もっともであるとも言えるし、技術的に解決できることであるとも言えます。

壁内結露を防ぐには、内壁側から外壁側へ、建材の透湿抵抗を徐々に低くしていく必要があります。室内から壁内に入り込んだ水蒸気を、スムーズに外へ逃がす為です。ところが最近良く使われるスレート系サイディングは、透湿抵抗が非常に高く、壁内に水蒸気を留めてしまうので、通気層を設けることが必要となります。

また、気密施工の精度に多少の不安を残しても、通気層さえ取っておけば結露は避けられるという意味合いも否定できません。

外壁を塗り壁か吹き付けにする予定とのことですので、その下地はモルタルなのでしょうか。モルタルはサイディングと比較すると透湿抵抗も低いですし、室内側の気密施工の精度が確保されるのであれば、流入する水蒸気もさほど多くは無いですから、柱・間柱などの木材の吸放出性能も考慮すれば、通気層は無くても大丈夫といえる、と私も考えます。モルタル壁は構造体と一体となって頑強な面を構成するほうが望ましいとも思います。

ただし、その判断は気密設計レベル及び施工の精度、間取りや建物のデザイン、住まい方、地域の細かな気象特性など、高度なバランス感覚と経験が必要です。

サイトを拝見する限り、この設計者は塗り壁を多く使っているようですし、経験はあるのだと思われます。A・Mさんも一面的に語られた広告フレーズによって作り出された先入観を、一旦頭から取り払い、現象・原理を理解して、家作りを依頼した設計者の話をよくよく聞いてみて下さい。

そして何を重視するかの判断は、結局のところ自分自身によるのだと思います。
せっかくの家作り、パートナーを専業設計事務所に選んだのですから、納得いくまでとことん話して、楽しんでください。

設計者にとってもそのほうが楽しいですし、改めて色々なことを調べたりして勉強にもなるものです。
 コメンテーター 
山口 雅克 設計者があげられた7つの理由にはその方なりの仕様思想が感じられますが、私とはいくつか思いが違うところがありますので参考にしてください。

1、内部結露は室内外の温度差と空気の流れの関係で発生するもので、床下からが多いとするには疑問があると感じます。(一般的に結露は温度差で発生するように言われていますが、表面の空気の流れも重要なポイントです。外部側に通気層があることで結露の発生が抑えられることは、結露発生の算定式でも分かります。)

2、窓廻りの通気を確保するのは難しいことではありません。

3、「通気層を設けるような設計は、工務店やハウスメーカーが違いを出すためや、メーカーの売りひとつとしてやっていること」とありますが、単にそのようなことでなく、通気口法でない過去の仕様の反省から、木造住宅環境を研究された人が発表されたもので、すでに30年以上も前から言われていることです。私もその内容を聞いた時から、通気工法を学習し採用しています。

4、外壁がモルタル塗りでも通気工法は可能ですし、強度や歪みなどを解決する方法はあります。グラスウールの充填断熱も適正な施工があれば何ら問題はありません。

解説のお二方がアドバイスされていますように、(土壁採用の真壁や土蔵であれば少し話は変わってきますが)こだわる必要をどの程度感じるかとなるでしょう。

通気工法としては悪いところがあるわけではありませんので、ご心配なら採用されることをお願いしてみてはいかがでしょうか。縦胴縁の通気工法を採用し、棟換気なども配慮していただくと空気の流れもスムーズに行くと思います。
 事務局から 
  荻原 幸雄 ご質問に関しても、地域特性、施工技術、工事監理能力により幅があります。
この点は個別で判断するしかないので、一般論としてお答えします。

 1.内部結露は、空気が入ることによって起こるものであり、それは床下から入ることが一番多く、そこをきちんと密閉すればほとんど問題ない。

これは床が通常は土台より高い位置にあり、床より下の壁が床下空気と繋がる場合もあるので、そのような話をしたのだと思います。建売住宅はこのレベルも多いのは確かですが。
回答:設計能力により解決できる問題です。

 2.通気層を設けても窓の部分などで空気を上に流れるようにするのは難しい。

難しいというのは通気がその部位は弱くなる。という意味ならばその通りです。
窓の両側から上がってきた通気を窓の両端で通気を横に抜くのですから、本来の機能からは多少通気の能力は減少します。
回答:能力が落ちるということになります。

 3.通気層を設けるような設計は、工務店やハウスメーカーが違いを出すためや、メーカーの売りひとつとしてやっていることである。

これは設計者の先入観だと思います。
回答:通気工法は理論的な方法である。

 4.サイディングなどの外壁のゆがみを解消するためのものである。

一理はありますが、それが目的ではなく、結果ついて、そのようなこともできるということです。
回答:一理ある。

 5.サイディングなどの軽いものならばよいが、長期間にわたっては外壁材を支えられない。

これは設計能力、工事監理能力が高くないと問題がでる可能性が高いのも事実。しかし、通気銅縁をしっかり留めつけるなどの入念な設計仕様と施工をすれば可能です。
回答:支えられないという断言は云い過ぎですが、これを実現するには施工能力が高い施工会社とそれを工事監理できる高い能力が必要。ではれば可能。

 6.外壁の下の板の横の継ぎ目は、打ちつけることができないので、そのつなぎ目の部分で外壁にゆがみとかひびが生ずる可能性がある。

これは少し意味が不明でが、通気は縦に送るのですが、モルタルの通気工法の場合は通気の外部に合板を施す場合は横銅縁も合板の端部にはいれることで保持しますが、横銅縁の隙間から縦に流入させることになります。(但し、既製品目地を入れて横銅縁を省略する方法もある。)サイデングのようなものでしたら、縦銅縁で十分です。
回答:外壁の仕様により通気工法も下地も変わる。

 7.積雪量の多い地域では、通気の入り口が雪でふさがれてしまい、意味のないものになってしまう。

これはその通りで、結露の起こる冬に通気ができなければ意味がない。雪が積もるよりも高い基礎として、その上から通気をすることは可能だが、その場合は基礎壁は外壁にもなるので、そこは別と断熱が必要となる。
回答:この地域特性が一番大きな要素として設計を考える必要がある。

以上、簡単に回答しましたが、正解ではない点に注意が必要です。
通気は当然費用がUPします。全体のコストバランスも大切です。

逆に「いいものだから通気にすべき」という建築家の方が危険です。
デザイン的なこと、コストのこと、瑕疵の可能性の危険性についてなど、総合的な建築家としての話だとは思います。

勿論、建築主の要望に応えるのが建築家ですから、「絶対駄目」と言っているようには見えません。
デメリットに慎重な点は評価できますので、よく話し合ってください。
相談者お礼状 
 相談者お礼状  この度は、先生方にはお忙しい中、早速、詳しい回答を頂きありがとうございました。

結局は、ベストの方法はなく、設計士・施工管理者・施工業者の技術にも左右されるところが大きいことがわかりました。

あとは、自分がどう考えるかだと思いました。

今回の回答では、工法の善し悪しについてだけでなく、設計士の先生との接し方や、今後の設計の打ち合わせの仕方までアドバイスを頂き、大変参考になりました。

ちょっと打ち合わせが遅々として進まず、本当に家ができるのかとまで思い始めていましたので、今後、気持ちを新たにして、取り組みたいと思います。

本当に、ありがとうございました。
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