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一般社団法人建築よろず相談支援機構

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No.1247 制震技術が対応しないモデルだったが・・・

 相談概要 [氏名] T.M
[相談内容] 注文住宅の瑕疵
[相談建物所在地] 和歌山県和歌山市
[職業] 歯科医師
[年齢] 36
[男性] on
[構造] 鉄骨造(ブレース構造)
[引渡し年月日] 西暦 2009年 6月予定 
[公庫は使わない] on
[性能保証を使用] on
[何階建て] 2
[延べ面積m2]
[延べ面積坪] 45
[工事請負金額] 5150
[設計監理料] 0
[様態] 注文建築
[施工者] 大手ハウスメーカー
[設計者を選んだのは] 自分では選んでいない。
[監理者を選んだのは] 自分で選んでいない。
[確認申請書は本来建築主が出すと説明を?] 受けていない。
[18確認申請の為の委任しましたか?] した。
[確認申請書お持ちですか?] 解らない。
[検査済証は有りますか?] 無い。
[設計図面は何枚もらいましたか?] 6
[工事着工まで設計の打ち合わせは何回しましたか?] 30以上
[施工者名] S建設
[販売会社名] S.H
[設計者名] S.H
[監理者名]    S.H
 相談内容 現  象:
お世話になります、早速ご相談させて頂きます
現在S.Hにて、鉄骨二階建ての家屋を建築中です(本日2/8より一週間は工事
中断で同意しています)
昨年1月に建築条件付土地の申し込みをし、昨年2月に土地契約(土地代金3991万円)、工事図面は完成しておりませんでしたが、後からでも変更可能との説明と覚え書きを頂き同年5月に建築請負契約(約3830万円)を結びました。
長期休暇以外はほぼ毎週のペースで、約30回の打ち合わせを行ってきました。
様々なご提案を頂き、昨年12月4日、こちらとしても納得のいく内容となったと思い建築に至ることとなりました。
当初の契約期間・内容と相違があるため、再度建築契約(約5150万円)を行いました。
打ち合わせ中、当初はこちらがコストダウン、ハウスメーカーらしくない外観を希望していたため木造住宅「SW」から鉄骨二階建「BF」に商品が変更となりました。
その際両者違いを確認しましたが、@天井高の違いA耐震方式が、「木造住宅は柱の強度で変形せずに建物を守る」「鉄骨二階建は建物を変形させることで力を逃がす事で、建物を守る」B「BF」はフラット屋根、吹きつけ塗装が可能と説明を受けました。
間取り打ち合わせの際に、25センチ単位での設計が可能な「BA」の話が出ましたが、「BH」と特に違いがないと説明を受けました。後で調べて分かりましたが、「BA」は「SK」が標準装備でしたその後、契約金額でも分かるように内装・間取りなど様々なコストアップがありこちらの希望を伝えました。
@建築時期は遅くなってもいいので、いい家を建てたいこと
A当方地震の際多い地域に住んでいるため、耐震強度・津波を心配していること
B趣味が食器収集であること
S.HにはCM等で宣伝している「SK」という制震技術があります。(揺れによる建物の変形を1/2にする)営業担当からは、デラックス仕様なのでいい家になりますと説明を受けていたため、当方は図面上の耐力壁というものが「SK」であると考えていました。
実際工事が開始され、基礎工事が終わり2/4,5,6と建物の外観ができ見学して初めて「SK」が無いことに気づきました。
設計担当、営業担当に問い合わせたところ、「BH」は「SK」標準装備ではなく説明が足らなかったと本日謝罪を受けました。
現在の建物の住宅性能表示の耐震性能は「3」最高等級であり、「SK」を対応したものも同じ等級であること。(内装への被害は軽減される)
現在の建物を仕様変更し「SK」を採用することは、大臣認定を受けたシステムであるため基礎から作り直さないといけないと説明を受けました。
また、S.Hでは、その費用負担はできないとのことでした。

当初に比べ1000万円以上のコストアップをしており、(概算)200万円の負担増で家財・人命にかかるリスクを軽減できるならその他のコストを削ってでも採用していたと考えています。
また、今後何十年もそう考えながら住み続けることは大変苦痛であるので、困っております。
当方の希望としては、「SK」を採用して建て直しして頂くのが一番です。金額としては当初から「SK」を採用した際の費用負担(200万円加算と説明)のみの増額を希望します。(この希望は実際難しいと思っていますが。。。)
S.Hに撤去工事、再建築をお願いできない場合は、地震保険による破損補償を追加加入した際の保険料相当の割引を希望しています。
専門家としてのご意見をお伺いできれば幸いです
宜しくお願いします

相手の意見:
現在の建物の住宅性能表示の耐震性能は「3」最高等級であり、「SK」を対応したものも同じ等級であること。(内装への被害は軽減される)
現在の建物を仕様変更し「SK」を採用することは、大臣認定を受けたシステムであるため基礎から作り直さないといけないと説明を受けました。
また、S.Hでは、その費用負担はできないとのことでした。

相談内容 :
当初に比べ1000万円以上のコストアップをしており、(概算)200万円の負担増で家財・人命にかかるリスクを軽減できるならその他のコストを削ってでも採用していたと考えています。
また、今後何十年もそう考えながら住み続けることは大変苦痛であるので、困っております。
当方の希望としては、「SK」を採用して建て直しして頂くのが一番です。金額としては当初から「SK」を採用した際の費用負担(200万円加算と説明)のみの増額を希望します。(この希望は実際難しいと思っていますが。。。)
S.Hに撤去工事、再建築をお願いできない場合は、地震保険による破損補償を追加加入した際の保険料相当の割引を希望しています。
 yorozuの感想 トラブルがないと見る機会がなかったと思います
が、専門家のご意見を聞ける、大変ありがたいHPだと思います。
アドバイザー 
 橋本 頼幸 大阪の解説委員の橋本です。
まず、「SK」という耐力壁のシステムですが、S.Hのホームページによると、柱と柱の間にK状に筋かいフレームを入れ、その筋かいが伸縮することで地震時の水平方向の力を逃がす、というシステムのようです。

ご相談いただいている基本的な問題点は、発注者側と受注者側の認識不足だと思われます。もちろんTMさんは建築の素人だから、ちゃんと説明してくれないとわからないではないか、という気持ちはごもっともです。ただ、メーカー側もその説明をしたつもりであったり、既にTMさんがそのことを了解の上で話が進んでいると思っていたのかも知れません。

これは契約の問題ですが、現段階でそのことを言っても話は進みません。
一方の技術的な問題を考えてみると、この「SK」採用システムと現状のシステムでどの程度の差が生じるのか、ということが問題になります。メーカーのCMなどで、よく「○○の1/2になります」などの宣伝文句がありますが、基本的には「理想的な条件で最大〜」という枕詞がつくことが多いです。

耐震・免震・制震については最新のよろずの本「「いい家づくり」のQ&A100」の172ページに詳しく書いていありますが、制震構造は基本的にはかなり緻密に計算して配置していくことになります。TMさんの平面プランを見ていないので何とも言えませんが、メーカーが設定したような"(メーカーの性能を発揮する)理想的なプラン"から外れると、思ったような性能が得られないことになります。

そのあたりは、TMさんとメーカーで詰めた話をした方がいいと考えます。ハウスメーカーは技術研究所などで実物大の研究をやっております。場合によってはTMさんが納得するまでそういった施設での解説をうけてもいいと思います。

TMさんは「今後何十年もそう考えながら住み続けることは大変苦痛であるので」といわれているとおり、その通りだと思います。だからこそ、契約当初のお互いの認識不足を現段階からでも詰めるように話し合いや技術研究所での説明などを進められては如何でしょうか。そのような提案をメーカーにされてはどうでしょうか。

その上でやはり納得ができないようであれば、再築も含めて話し合えばいいと考えます。
 大内 彰 解説委員の大内です。

TMさんは「SK」を初めから条件としていたのでしょうか?調べてみたらそういう仕様になっていることが分ったというだけで本来の目的は耐震性能のはずなので方法が違ったとしても目的は果たせているのでしょうか。

また、希望として伝えた「津波を心配していること」というですが、津波にあっても被害を受けないことを希望として出したのでしょうか?それは初期段階から伝え、業者が了解していたのでしょうか?津波に耐える住宅というのは現実的ではないように思いますが。

「SK」の使用を条件としてお互いが了解して進めていたのであればTMさんの要求は正当だと思いますが、頂いた内容からは耐震性という目的(このレベルについてもお互いの了解があったのかは不明ですが)を果たしているのであれば「SK」が無い事で補償を求めることはできないと思います。
 コメンテーター 
清水 煬二 コメンテーターの清水です。

大内解説委員のアドバイスの通り、制震装置の約束をお互いにしていないのであれば、これを壊して建て直すことをメーカーだけに責任を負わせることは、フェアーではありません。客観的に指標性のある住宅性能表示の耐震性能等級「3」を満たしているのであれば、話の流れ的にはハウスメーカーに落ち度はなく、確認や指定を行わず契約を行って了解した、T.Mさんの責任の方が大きいと思います。

また、橋本解説委員のアドバイスのように、制震装置の効果として、メーカーは理想の特定の条件での実験で、最大数値を宣伝するのが普通でしょう。

現実の地震には、お考えほどの効果は無い場合も多いと私は思います。実験は、例えていうならハイブリットカーの10モードのデーターがリッター35キロメートル走ることになっていても、現実には15〜16キロメートルしか走らないようなものです。

間取りや立面はもちろん、地盤を含めて実験のような条件の家は存在しませんし、地震の周期や内容も含めると、実験で想定した条件のものがドンピシャ来る確立は低いです。自然相手の地震ですから、まだまだわかっていないことがたくさんあります。実験の宣伝効果を過信して、耐震性能等級「3」の建物や基礎を壊してまでの固執は、しなくても良いのではないかと思います。

今後もハウスメーカーとよく話し合ってみて、合意してください。
 事務局から 
  荻原 幸雄 事務局 おぎわらの一言
設計の希望内容を吟味すると、もともとハウスメーカーではなく、きめ細かい対応のできる建築設計事務所に設計を依頼したほうが選択の幅が多かったのにとは思います。
どうしてもハウスメーカーは認定工法なので、その範囲での設計という限定付なのです。
また、これでもか?方式でいろいろなシスムテムを開発するのですが、個別認定なのでなんでも対応できるものではないのですが、ここを営業はあいまいに導くことによって、契約を誘導することもありそうなので、そのような営業トークには注意が必要です。営業マンは素人と考えて、力学的な質問は「設計者を呼んでくれ」といって設計を受けるべきでした。

ハウスメーカーのことですから、建築主の勘違いであっても書類はハウスメーカー有利に作成されていますので、この契約を覆すのは難しいところです。

耐震的な違いは本社設計部の部署において、その違いを数量的に提示してもらい。どのように違うのか?を確認し、書面でもらってください。

その違いによっても今後の対応が違ってくるものと思います。
がんばってください。
相談者お礼状 
 相談者お礼状  
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