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一般社団法人建築よろず相談支援機構

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よろずWEB相談HEADLINE

No.1206 断熱について疑問があるのですが・・・

 相談概要 [氏名] A/R
[相談建物予定地] 千葉県四街道市
[職業] 会社員
[年齢] 34
[男性] on
[構造] 木造(在来工法)
[引渡し年月日] 西暦2008年12月31日
[公庫使用] on
[性能保証を使用] on
[何階建て] 2
[延べ面積m2]
[延べ面積坪] 33
[工事請負金額] 1800
[設計監理料] 0
[様態] 注文建築
[施工者] 大工(工務店)
[設計者を選んだのは] 自分で選んだ。
[監理者を選んだのは] −
[確認申請書は本来建築主が出すと説明を?] -
[18確認申請の為の委任しましたか?] -
[確認申請書お持ちですか?] -
[検査済証は有りますか?] −
[設計図面は何枚もらいましたか?]
[工事着工まで設計の打ち合わせは何回しましたか?]
[施工者名]
[販売会社名]
[設計者名]
[監理者名]
 相談内容 [家づくりの相談内容]
いつもこのページを参考にさせて頂いております。
まだ契約前ですので、建築予定の工務店の断熱について疑問があるので、見解を教えて頂ければと思います。

工務店の工法は、在来工法に構造用合板を合わせています。
断熱方法は充填内断熱と外断熱を合わせたダブル断熱という方法です。
http://www.opus-net.co.jp/for_personal/insulation.html(参照)

具体的には、内側から
@漆喰+珪藻土の塗り壁AプラスターボードBセルロースファイバー(充填内断熱)
Cダイライト(構造用合板)Dドレインラップ(デュポン社製)
Eビーズ法ポリスチレンフォーム保温板3号(外断熱)Fメッシュ
G水を通さないが通気はするというモルタル素材の塗り壁

という構成です。

質問内容
T:@からGはすべて通気性のよい素材を使用しているので、この断熱方法でカビ等の心配はないとの説明を受けましたが、このような方法は一般的にも確立されているものなのでしょうか?

U:CにDの防水透湿シートを直接貼り、胴縁を作らないことでコストダウンを行うとの説明を受けました。基本的に外断熱には通気層を作るべきと考えていましたが、Dが波状なので、通気兼万一の雨漏りを下に逃がすので問題ないとの説明を受けました。
  通気層を設けなくてもDのシートだけで十分なのでしょうか?
  欧米ではこの方法を取り入れているという話をネットで見たこともありますが・・・
十分とは言えないかも知れませんが、調べる限りではダメというわけではないのかなと考えていましたが、如何でしょうか。

工務店の方は、非常にまじめでこちらの質問にもきちんとお答えしてもらっているのですが、上記の点だけが、素人には判断がつかずに、困っています。

宜しくお願い致します。
 yorozuの感想 このような相談所があり、非常に助かると思います。
建築というものに施主が興味を持つためにも、これからも頑張ってほしいです。
アドバイザー 
 今井 優子 解説員の今井です。

お尋ねの工法が一般的かと言えば、まだ決して一般的とはいえないでしょう。
新しい材料(素材)の性能に基づいた、新しい考え方による手法と言うことになります。
ただ、考え方としてはそう間違っていないし、一つ一つの素材の選択はグッドチョイスだと思います。
私の事務所でも、灯油高騰の折、昨年から壁内充填断熱GW(グラスウール)+外張り付加断熱(ビーズ法ポリスチレンフォーム)を採用し、標準仕様としています。(札幌の物件ですが。)
外張り断熱の素材としては、防火性能を考えればグラスウールボードがベストですし、透湿抵抗と環境負荷を考えればネオマフォームが良いのでしょうが、いづれもコストの壁に阻まれ、ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)と言う選択になっています。

この会社のサイトを見る限りの印象ですが、ここまでの断熱性能が本当に千葉と言う地域で必要なのか?
北海道などの寒冷地の断熱基準に相当するとありますが、断熱材は多ければ多いほど良いというものではありません。
「過ぎたるは及ばざるが如し」と言う諺もありますが、何事もバランスは大事です。

外壁通気層は、外壁にサイディングや金属板などの透湿しない素材を使ったときに室内で発生した水蒸気が壁内に入り込んだときに速やかに抜くために必要な物です。
室内仕上の珪藻土から外装の仕上げまで、全て透湿抵抗の低い物や、調湿機能をもった素材が使われていますので、 通気層が必要ないという考え方も一応理論としては間違っていません。
しかし、日本の本州の高温多湿の気候の中で、それで充分かどうかは疑問に思います。
また、室内側の気密施工について何も記載されていませんが、幾ら透湿抵抗が低いとはいえやはり壁内に湿気が進入しないようにしておいたほうがいいのではないでしょうか。
断熱材を多くして、室内からの水蒸気の進入を何も制限しないと言うことは非常にリスキーになると思われます。

珪藻土も、確かに原料となる珪藻頁岩には優れた調湿機能がありますが、壁装材としたときには樹脂のバインダーが多く含まれているものもあり、そうなると透湿性や調湿機能は期待できません。
珪藻土や漆喰も、最近は施工性の向上という目的で様々な物が添加されていますので、確認が必要です。
このEPS+モルタル+透湿性塗料の組み合わせは、ドイツやアメリカの西海岸での実績が多いようです。
日本では北海道の気候はそれらの地域に近いですが関東以南では、地域の気候特性に即した検討・検証が必要なのではないかと思います。

といって、この工法を完全否定するものでもありません。
どんな工法であろうと、全てにおいて100点満点と言う物は存在しません。
大切なのは自分の家がどのような物で出来ていて、それがどんな得意と不得意を持っているかを知っていること。
それを知った上で、ときどきは家の様子に注意を払い、早め早めのメンテナンスを施す。
結局のところ、これが家を長持ちさせる秘訣なんだと思います。

あと一点、これだけの仕様が本当にこの単価で可能なのか。少々疑問です。
胴縁を作らないことは、大したコストダウンにはなりません。
記入されている工事請負代金が何処まで入った物なのか、実際の見積金額なのか希望金額なのかは分かりませんが、かなりのローコストの部類に入ると思います。
このようなコストで、とてもできる仕様ではないように思いますが。
清水 煬二 解説員の清水です。

通気というより、こられの材料はすべて透湿性のあるものです。それらを組み合わせていますから、大丈夫という判断になっているのでしょう。ですが、すべて合わせて計算上どの程度の透湿性があり、どの程度の湿度の条件に耐えられるか、正確な測定は出来ないと思います。

まだ一般的とはいえませんし、経験値も不充分だと思いますから将来カビが生えたりしないかどうかは、わかりません。

この例のD〜Gの組み合わせで、一時、透湿性があるので木造で外断熱が可能とのうたい文句で、全国に宣伝していた材料業者がありました。現在は、結露問題で木造では無理とのことで、鉄筋コンクリート造のみの適用としています。@〜Gは、それよりも考えていますが、やってみないとわからない、自然条件が変わったら大丈夫かどうかはわからないというのが、私の意見です。

仮に、例年通りの梅雨と湿気であれば問題なくても、温暖化でもっと梅雨が長くなったり、多湿になったりした場合に、珪藻土やセルロースファイバーが飽和状態になることで、逆効果になることも理論上考えられます。

デュポンのドレインラップは、透湿には良いでしょうが、通気とは異なります。
そのため、通気胴縁ほどは水蒸気を逃がすことはできません。

今井委員が述べているように、かなりのコストを掛けた仕様だと思います。
蛇足として私の個人的な考えですが、セルロースファイバーは、いくつかの理由でお勧めしていません。もし、工事不良で外壁廻りで雨漏れしても、長く気づかないでしょうし、これらの工法があだになることもあります。
私なら余分な費用があっても、これらの工法はリスクがあるので住宅には採用しません。

工務店はウソを言っているわけではなく、誠意のある業者なのでしょう。
理屈はわかりますので、最後の判断は、ご自身でなさるしかありません。
 コメンテーター 
氏原 毅士 コメンテーターの氏原です

 今井解説員は北海道で実務を行っていますので、私のように奈良の温暖地とは違って断熱に関しては相当な技術力があります。
 解説をよく読まれたら理解いただけると思います。

また、今井解説員も触れている通り坪単価50万程度で本当にこの仕様が可能か疑問に思います。
 事務局から 
  荻原 幸雄 仕様そのものは合理的であると思います。
この仕様の問題は特に現段階では見当たりません。

「現段階」意味を説明します。

現在、いろいろな工法が出回っていますが、慎重に判断しなければなりません。
家は100年もたせますか?20年ですか?10年ですか?
100年を持たせる仕様というものは、実績で100年を超えた建物の仕様をいいます。
ですから、最近の工法の判断は我々建築設計に従事しているものでも、20年も住んだこともなければ実績もないのです。
その事実の上で「この家はこれで完璧です」なんていう人はいないはずで、いたならば、明らかに嘘になります。

最新の工法は誰も20年の実績のないものばかりです。ですので、選択には自己責任がどうしても発生してしまう領域であることは理解しないといけません。将来の不足の事態に対して責任を持つということです。

医療でいう、臨床試験と同じです。
ただ、建築と違うことは

医療の場合:他に生命を維持する医療行為がなく、新薬でも、その可能性を信じて生命を託す。
建築の場合:生命を託すほどの選択ではなく、在来の実績の選択肢がある。故に、選択は任意であり、自己責任が生じる。

ということです。難しい選択ですが、何を信じるか?です。これがまた、難しいですね。(^^;)ゞ
相談者お礼状 
 相談者お礼状  
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