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一般社団法人建築よろず相談支援機構

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No. 1189 分割発注してかえって赤字に

 相談概要 [氏名] K・K
[相談内容:] その他
[相談建物所在地] 北海道河東郡
[職業] 公務員
[年齢] 35
[男性] on
[構造] 木造(在来工法)
[引渡し年月日] 西暦2007年10月25日
[公庫は使わない] on
[性能保証を使用] on
[何階建て] 2
[延べ面積m2] 178.65
[延べ面積坪]
[工事請負金額] 3000
[設計監理料] 0
[様態] 注文建築
[施工者] 大工(工務店)
[設計者を選んだのは] 自分では選んでいない。
[監理者を選んだのは] 自分で選んでいない。
[確認申請書は本来建築主が出すと説明を?] 受けていない。
[確認申請の為の委任しましたか?] 覚えていない。
[確認申請書お持ちですか?] 有る。
[検査済証は有りますか?] −
[設計図面は何枚もらいましたか?] 13
[工事着工まで設計の打ち合わせは何回しましたか?] 5
[施工者名] J・F
[販売会社名]
[設計者名] A設計
[監理者名] J・F
 相談内容 [現象]
見積作成時に金額に納得がゆかず、施主支給及び別途発注について営業担当者に相談したところ、値引き分を差し引けば、抜くのは問題ないとの回答を得たので見積を徴収し抜く項目を検討していたが、営業担当者から契約後に伝票処理で精算すればよいとのことで、調整できないまま全て込みで契約した。

その後工事着工前に営業担当者が突然会社をやめてしまった。
契約後、別途発注項目(設備工事等)を整理し分割発注したが、その設備業者に部金(請負額の10%で45万)の請求がきた。

部金の内容は仮設材使用料や仮設電気、打合せ料だと聞いた。
後からわかったことだが営業担当者は社長に相談していなかったらしく、分割発注の話は聞いていないと言われた。

それはそちらの責任ではというと、部下が勝手にした事はいちいち責任はとれないと言い、45万払わなければ工事を精算して契約を解除すると言われた。
営業担当者は当初打合せ内容は全て書面で残すと言っていたが、数回実行しただけであとは口答のみだった。

「値引き分を差し引けば、抜くのは問題ない」との回答も打合書は作成してもらっていない。(自分で残しておいたメモのみ)
元営業担当者を会社に呼び3者(当方と現場担当者)で打ち合わせし、部金の話は知らなかったとの回答を得た打合書はある。

部金の話が分かっていれば最初から検討できたが(部金は高すぎる気がする)、これでは分割発注してかえって赤字になってしまった。

[業者の見解]
[相談内容] 今回打合せ書を作成させなかった当方にも責任があると言われしぶしぶ納得し、部金を一部支払うことで打合せしたが後日金額を見ると45万のままであった。
問い合わせるとやはり45万払わないと工事を止めると言い出した。
部金の金額内訳を聞いたが経験上これだけ必要だと一点張り。
お互い責任があるとしても、部金の45万円は全額こちらが支払わなくてはいけないのか。

また工事も大工がいないとのことで1週間止まっていたが、実は部金の話で社長が工事を止めていた。
もう工事が1ヶ月遅れているが遅延延滞金は請求することができるか。(契約書には記載されている)
 yorozuの感想 まだ回答をいただいておりませんので、お答えしかねます。
アドバイザー 
清水 煬二 解説委員の清水です。

「部下が勝手にした事はいちいち責任はとれない」というのは、どう考えてもおかしい発言です。部下のしたことに責任を取れなければ、会社を運営してはいけませんし、上司になってもいけません。
社会的にも法的にもこの発言は認められないでしょう。

当初の予定から支給や分離発注に変更することで、仮設工事や経費が10%程度発生するという業者の言っている話の内容は、間違いとはいえません。
見積もりがどのようになっているかは不明ですから、ここで断定はできませんが、担当者との合意を別にすると、話の筋は充分通っています。

そして、今回のケースはK・Kさんが軽率過ぎたことも文面から読み取れます。

話し合いの上、一時はお互いが譲歩して合意したにもかかわらず、業者が10%の45万円を再度全額払って欲しいと言っているのであれば、私は業者の考え方が次の2つのケースのいずれかではないかと思います。

業者がどう考えても、また試算してもその金額が必要と考えている場合。例えば、注文を取るために過剰な値引きをしていた、見積り落とし、やり直しなどの発生で予想以上に工事費に余裕が無く、予算上どうしても欲しい場合などです。

もうひとつは、何らかの理由で業者の資金繰りが大変苦しい場合。
工事がストップしているのであれば、下請けに支払うお金が無く、下請けが仕事をしてくれないケースもあります。そのケースであれば、45万円を支払っても、工事が再開するかどうかは不明で、再開しない確率の方が高いでしょう。

遅延金については、分離や支給をしていますから契約の条件とは変わっていますし、そのことがどの程度工期に影響したのか、どちらにどの程度過失があったのかが不明なので、わかりません。遅延金の全額支払いには該当しないでしょう。

業者の言っていることは、建築に関しては今の時点では無茶苦茶なことを言っているわけではありません。
もう一度話し合って、業者が工事を最後まで当初の契約通り確実に行ってくれる確信が得られれば、ここで争って長引くよりも、45万円を全額支払った方が、K・Kさんにとっては、プラスになると私は思います。

但し、部下のしたことに対する発言も組織の成熟度としては気になります。もし業者の経営が思わしくない場合、支払っても工事が進まないケースも考えられます。この場合、45万円が無駄になりますので、充分注意してください。
 コメンテーター 
今井 優子 コメンテーターの今井です。

大きな買い物にも係わらず、少々軽率でしたね。

分割発注(分離発注)すれば必ず安くなるとは言い切れません。
元請の施工会社と設備工事業者、電気工事業者などは、長い付き合いの中で、持ちつ持たれつ上手くやっていると言う側面もあります。

特に、設備工事はトラブルが付き物なので、アフターフォローも含めてチームで建築に臨んでいるという意識が強いようです。

そんな中、施主と直接契約だからといって、工務店の下に入るより安い見積りになるとは限らないし、初めて組む工務店との仕事と言うことで逆に高くなることもあります。
金額を先にきちんと調整して、全て決めてから契約するべきでした。

ただ分離発注すれば安くなるのであれば、みんなやっています。
労を惜しんでは、思うような結果にならないのも無理はありません。

「ブキン」と言う慣習はありますし、請負金額の10%程度は法外な金額でもないようです。
ただ、先に払わないと工事を進めないというのは乱暴な話ですね。

工事遅延延滞金についても、通常は引渡しが延滞した場合に発生するもので、工事途中での延滞について、延滞金というのは無理です。
しかも遅延の原因が100%業者にあると言うわけではないですし。

分離発注したにもかかわらず、結果的にかえって高くなってしまったことは今回の場合、業者には責任はないように思えます。


ただし、社長をはじめ会社としての対応は不親切ですし、誠意もないように見受けられます。

せっかくの家づくり、出足で水をかけられたようですが、いい機会ですからここでしっかり調整し、全て取り決めて、仕切りなおしして下さい。
 事務局から 
  荻原 幸雄  分離発注ということは予算をなるべく落としてよいものを手に入れようと考えるシステムの検討は誰でも考えることだと思いますが、分離発注というのはデメリットも多く、トラブルが多いのが事実で、多くの場合はそのリスクを検討すると、止めることがほとんどであると思われます。

デメリットは今回のような部金というようなものが計上されるのであれば分離発注の意味がほとんどないといってよいでしょう。今回の問題は基本中の基本の意思確認ができなかったことが大きな問題になりました。

しかし、この部金の意味は現場管理費の意味が大きく、搬入後の取り合い工事、保証、保管、施工管理などの費用とするからです。お気づきだと思いますが、搬入後の取り合い工事を分離発注先でやる場合もあります。
この場合は部金も安くなりますが、保管、保証、施工管理費はかかります。
これらの部金なしということは現実ではありえません。小さなものならば、あなたが、どこかで購入したタオルリングを支給して取り付けてもらう。この場合でもただではできません。下地処理費+取り付け費はかかります。
少なくとも自分で取り付けるならば、下地処理費はかかるのです。その商品の保証はありません。

その段取りや手間、保障を考える場合は工事監理者の立場だと分離発注の意味はあまりないと思っています。
分離発注=トラブル発生確率の高い手法、だと思っています。
相談者お礼状 
 相談者お礼状 建築よろず相談ネットワーク
運営事務局 荻原様
解説委員 清水様
コメンテーター 今井様

早速のお返事ありがとうございました。
分割発注のリスクは建築関係の仕事をしていることもあり、わかっているつもりでした。

分割発注業者も知り合いだっためアフター問題も解決できると思い決断した次第です。
ただ、最初から部金の話がわかっていれば、それも考慮して判断できたわけで、その点が元請業者の説明不足(知らなかった)だったのが問題だと思っています。
結局赤字になってしまったと書きましたが、安く出来た分各グレードを上げてしまったため、部金を入れると少し当初予算をオーバーしてしまったと言う意味です。
グレードをあげなければ十分当初より安くできていますので、意味はあったのかなと思っています。

清水様
調べたところ会社自体は体力があるみたいです。
見積を見ると各単価に利益を乗せており、最後に現場経費も計上しているため赤字はあり得ません、45万という数字は最初からこの現場ではこれだけの利益がほしいので別工事になった不足分を払えと言っているように思います。(45万の内訳もあいまいで後からこじつけたものと見てとれます)
以上のことから、責任があるにもかかわらず誠意が全くみられないと感じました。
実際連絡体制の不手際による謝罪は一言もありません・・・

今井様
確かに住宅はいつも同じ下請会社を使うなど、一般工事に比べてつながりが強いと思います。
ただ公共工事等では初めて合う業者同士が協力しあって工事を進めるのが当たり前です。
住宅業界の古い体質やしきたり(部金も然り)などは何とかしてほしいと思います。

荻原様
分割発注はトラブルが多いということを身をもって知りました。
分割発注の場合、下請経費がかからない分安くできるのが当たり前で、部金をとっていたら一括発注と変わらなくなってしまいますね。
勉強不足でした・・・

今後の展開
とりあえず45万を了承し工事が再開しました。
しかしこの一件で業者への不信感は拭えそうにありません。
住宅性能評価や第三者機関保証をとっている上、自分自身で現場チェックもするのでせめて品質くらいはトラブルなくすすめて、できるだけ良い家を造っていきたいと思います。
この度は皆様方にご相談にのっていただき、大変感謝しております。
相談することで少しストレスが減ったような気がします。

また何かありましたらご相談するかもしれませんが、その時はよろしくお願い致します。
本当にありがとうございました。
 その後  
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