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一般社団法人建築よろず相談支援機構

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〒181-0001 東京都三鷹市井の頭3丁目12番11号

よろずWEB相談HEADLINE

No. 1187 屋根の落雪について

 相談概要 [氏名] H・S
[相談内容] 注文住宅の瑕疵
[相談建物所在地] 千葉県千葉市緑区
[職業] 会社員
[年齢] 42
[男性] on
[構造] 木造(在来工法)
[引渡し年月日] 西暦2002年7月20日
[公庫使用] on
[性能保証は使っていない] on
[何階建て] 2
[延べ面積m2] 136.88
[延べ面積坪]
[工事請負金額] 2580
[設計監理料] 262.5
[様態] 注文建築
[施工者] 大工(工務店)
[設計者を選んだのは] 自分で選んだ。
[監理者を選んだのは] 自分で選んだ。
[確認申請書は本来建築主が出すと説明を?] 受けた。
[18確認申請の為の委任しましたか?] した。
[確認申請書お持ちですか?] 有る。
[検査済証は有りますか?] 有る。
[設計図面は何枚もらいましたか?] 22
[工事着工まで設計の打ち合わせは何回しましたか?] 6
[施工者名] M建材 有限会社
[販売会社名] 設計施工は個別契約。土地は別手配。
[設計者名] 有限会社 H建築設計事務所
[監理者名] 有限会社 H建築設計事務所
 相談内容 [現象]
私共が居住地は年に数度の降雪(多くて30〜40cm程度の積雪)があります。
この降雪の際、北側屋根に堆積した雪は積雪量の大小に関わらず溶け落ちずに氷の固まりとなり、そのほとんどが私共の北側居住者:O様宅の敷地へ落下しています。実際にどの様な状況なのか詳細を以下にまとめました。

@ 一回の積雪量が3〜15cm以下が一冬に数回
A たまにではあるが20cm以上積もることが2〜3年に1、2回
B 30cm以上の積雪が2、3回あり、かつ雪が1週間以上溶け残る

このうち@では雪が軽いためか、瓦との接点が溶けるとそのまま滑り落ちてきます。
いっせいに落ちれば良いのに少しずつちぎれて落ちてくるので、大小様々な大きさ(それこそ3cu〜瓦1枚位の大きさなど様々)の氷の塊が勢いよく、加速をつけて落ちます。

Aでは、徐々に軒先にズレてきた雪が樋の上でひっかかり、樋からさらに20〜30cmぐらいせりだして、ドサッと下に(隣家に)おちます。1日で落ち切れなかった雪は2日、3日とたつにつれ氷に変わり、細切れになって勢いよく加速を付けて落ちるようになります。

Bは、雪が軒先から大きくせり出し、それがなんと軒先をくるりと包むように内側に巻き込んできて、巻き込んだ形のまま軒先から生クリームの様に40〜50cmぐらい垂れ下がって、雪のカーテンが下がっているようになり、それが所々ちぎれて落ちていました。2、3日もすると15cmぐらいの氷柱ができて危険だったのですが、それはなんとかウチの敷地内に落ちてくれてホッとしました。これはかなり特殊な状況だと思いますが、参考までにお話しました。

我が家の軒先が境界をはみ出しているわけではないので、まっすぐ下に落ちてくれれば問題ないのですが、物は放物線を描かずにいられないようです。

@やAのように割とよくある積雪があった場合、氷の塊になって滑り台をすべるような落ち方をして、O様宅の庭先(植木等あり)、物置天井、カーポートの屋根へ直接落下しドカンドカンと激しい音を立てています。
いまのところ植木の破損、物置の変形、カーポートの屋根の破損など直接的な損害は発生していないのですが、今後衝撃を与え続ければ破損する可能性が高いのではと考えています。また、もしご家族が庭にいるような状況で、雪の塊が頭上など人体に落下、接触した場合は人身障害を与える可能性も否定できません。

この状況は居住後最初の降雪時に私共で確認し、H氏、M建材社長:N氏に、実際の現場を見せながらお伝えしたのですが、“やるべきことはやってある、これ以上はどうしようもない”という回答をいただいただけでした。その後、毎年の降雪時にはおなじことを繰り返していて、O様には都度謝罪をしております。

なぜこんなことになってしまったのか、その原因について私なりに調べてみたところ、現在の屋根勾配(x=3、y=2)は、雪国でも常用される、積もった雪がすぐに滑り落ちる程の勾配であることが判りました。この場合は、雪止め瓦もその効果を発揮することができないようで、建物の配置の際には、落雪スペースを充分にとる必要があることもわかりましたが、我が家は一晩的な住宅と同じような間隔で建築されており、充分なスペースが取られているとは言いがたいと思います。

本来、屋根に積もった雪は自宅敷地内に落下することが大前提であり、設計時にも屋根勾配について同意を求められたときに、「我々では判断できないので、近隣住民や公道を通行する人や車両などに被害が発生しないような設計となっていれば問題ありません。Hさんにお任せします」とお願いをしました。H氏は、「そんなことは当然です」と回答をされたのですが、結果的に、近隣に対してご迷惑をかけてしまう家が建ってしまいました。

[業者の見解]
私としては、今回の落雪の件は設計上、工事監理上の問題であったと認識し、瑕疵保証の範囲内での対応を求めるため、2005年(H17年)11月23日に文書にて、H氏に現状に対する改善策の提案依頼を送付しました。また、この文書には改善策施工の際には、H建築設計事務所での費用負担をお願いする内容を盛り込みました。

これに対して、2005年(H17年)12月15日、H氏より文書にて落雪障害についての改善策を送付いただきました。改善策は「SYくん」(発売元:株式会社K)の設置を行うという内容で、この提案にあたりH氏はメーカーと協議しSYくんの選定をした書かれていましたが、メーカーは結果について保証していないし、他の方法でも保証を付けるものはないとの見解が記されていました。そして最後に、この改善策に納得し、工事完了後はこの件に関する双方の債権債務はなくなるという条件に私が納得できれば、工事に関わる費用を施工会社(M建材)の協力の下、H氏が負担すると記されていました。

私としては、この製品についての説明や効果、メーカーとの協議内容など一切の説明もなくカタログを送りつけられただけで、工事を行ったら問題が解決するかどうかに関係なく、今後は一切関知しないという態度に出られたため納得できませんでした。

正直にその気持ちをぶつけたところ、H氏から今回のトラブルは設計監理者に責任はない(それよりも、家が北側に配置されたことで、庭や駐車場が広くなった恩恵のほうが大きいとのコメントもあり)と考えているとの考えを示され、これ以上の会話は裁判所の民事調停、もしくは、県の建築紛争審査会などの公な場で話し合いをと要求されました。

このままではラチが明かないと考え、三十通ほどのメールのやり取りをしましたが、まったく相互理解を得られることもなく、しかたなく2006年10月21日にH氏の改善策を受け入れることにいたしました(債権債務もなくなるという条件も飲みました)。

その後、何度か状況確認をしましたが、H氏からはすでに工事をM建材に依頼しており、詳細はM建材からあるはずだと昨年11月1日に返事をいただきました。以降、何度かH氏、M建材に連絡をしていますがいまだに工事は行われておりません。

先週、M建材と話をした時点で、工事するにも金がないので工事が出来ない。H氏とは費用の件について一切説明を受けていない。ということを知らされ、結果、私に一部費用を負担してもらえないかと相談をうけました。

結果として、まったく事態は進展しておらず、またH氏との話し合いを持たなければいけないかと思うと憂鬱になり、泣き寝入りするしかないのかと後ろ向きな考えも生まれています。

[相談内容]
我が家のようなケースの場合、設計監理者に責任を問うことができるのでしょうか?できるとしたら、どの程度の範囲で対応を求められるのでしょう?

また、なんとか早く工事をおわらせてすっきりしたいと考えているのですが、今後、私はどのように進めていくべきでしょうか?私の発想からは内容証明を送付し工事期限などを確約させ、不履行の場合は民事裁判へ?という最悪の道しか浮かばないのですが...なるべく訴訟や裁判など疲弊する行動はとりたくないのですが...どうすべきでしょうか?









 yorozuの感想 我が家としても他に相談をするところがなく、藁をもすがる思いだったところに、こちらのよろず相談を拝見することができました。
建築については多かれ少なかれ問題を抱えている方がいらっしゃるかと思います。そんな方々の良き相談役として活動を継続していただきたいと思います。
アドバイザー 
清水 煬二 解説委員の清水です。

設計監理が工事業者と別に入っても、主観的なものであれば見解や感じ方に個人差があるので、満足できない結果がでることはあるでしょう。
ですが、今回のように近隣に迷惑を掛けるという例で、設計事務所が積極的に解決しようとしていない様子が伺えますので、それが残念でなりません。
雪止め瓦や何かフェンスで防御などの対策は、当然H・Sさんも設計事務所も検討や考慮を充分してのことですから、この時点ではどういう対策をするのがベターかの悩みでは無いでしょう。
結論として、このまま泣き寝入りしてご自身の費用で解決するか、相手が言うように調停に持ち込み、第三者に判断をしてもらうしかないと思います。
民事調停は、裁判と異なり、片方づつお互いの言い分を聞いてもらえ、和解案が出されて双方が合意することを目指します。

和解案が納得できなければ、和解せずに終わらせることも、裁判に進むこともできます。
建築紛争審査会より調停の方が良いような気がします。
民事調停は、建築紛争の場合は、建築専門の調停委員がひとり付きますし、弁護士も不要ですから費用も安く済みます。私見ですがこういう内容の場合は、裁判より住まい手に取って良い和解案で結着が付き易い気がします。
裁判のように片方を罰するわけではありませんし、和解が成立すれば、裁判と同じ効力を持ちますので、強制執行も可能です。

例えば、一度は妥協して同意されたようですが、調停で合意していれば、期日も決められますので今回のようにいつまでも知らん顔は、できません。
今まで苦労して話し合ってせっかく合意しても、現実に相手が動かなければ、解決しません。
また相手もそうするしかないと覚悟しているようです。
解決を望むのであれば、あなたは被害者の立場ですから、面倒でつらいかもしれませんが調停に進むしかないと私は思います。
お考えになっているほど調停を恐れることは無いでしょう。相手が調停でも和解に応じなければ、裁判か泣き寝入りかということになります。
畔上 廣司 解説委員の畔上です。 

建築で屋根が果たす一番大きな役割は、雨風雪などを防ぐ事ですが、断熱や防音などの機能も要求されますし、設計上の屋根形状を含めた外観デザインも重要です。
建築計画を行う場合、敷地内に生じる積雪量は、自分の敷地内で処理することが原則であり、建物廻りでは屋根からの落雪空間を確保する必要があります。
都市部では、敷地内で落雪空間の確保が難しいため無落雪屋根を計画する場合等、屋根雪量を十分考慮した構造的な配慮を行なうことも大切です。
相談写真からの判断では、軒高5m、屋根は6寸勾配と思われます。
見た目にも軒樋を通り越して、普段お隣の駐車場屋根に落雪している感じで、雪止め瓦は軒先から三枚目と四枚目に千鳥一段止めのようです。
 因みに、屋根の雪落下距離を算定式に当てはめて計算してみますと、一定の雪の塊長さが25cmで、屋根勾配が6寸勾配の場合、軒先から隣地境界線まで必要な距離は約4.0mになるようです。

お隣りの敷地高さの現状は、T.Hさんの敷地より1.4m高くなっているため飛距離は減少すると考えられますが、それでも二段雪止めの設置や軒先樋の強度補強など、落下に対する安全対策上何らかの措置が必要でしょう。

屋根勾配は、急で有れば建物本体の水仕舞いについては有効ですが、積雪時は屋根葺材の動摩擦係数が小となり、加速度が増して急落下することになります。
雪の影響の少ない千葉県南部方面では、急に大雪になった場合、積雪時対策は大変です。
 さて、建築物の屋根の落雪障害の防止トラブルについて、どうも設計者と施工者同士が責任のキャッチボールを行っているように見受けられます。
確かに設計者の説明不足と責任は否めず、正面から真剣に対応していない状況と考えられます。

従って、十分真偽をつくし先方が不合理であるとの結果であれば、敢えて法律上の手続きに至るは止むを得ないことと思います。
事態進展を目指し頑張ってください。
住む人にとって生活上、安心安全に納得できる住まいであって欲しいと思います。
 コメンテーター 
今井 優子 コメンテーターの今井です。

ご相談文をよく読むと、この問題は感情的な行き違いが大きいように思えます。
最初の対応は早かったようですし・・・。

屋根の落雪飛距離を計算すると6寸勾配でも、一般的な屋根である3.5寸〜4.5寸勾配でも大して変わらず、4M前後となります。
落雪スペースを充分にとる必要があるというのは、原則としてはそうなのですが、年に数回の雪のためにそれだけの落雪スペースをとることは、敷地の利用方法として現実的ではないと思われます。

雪国、札幌市においても、敷地境界線まで2.5Mあれば雪止めをつける必要は無いと言う条例になっています。
つまり、完全に雪を敷地内で処理と言うのは土台無理なので、行政としてもある程度は許容しているということになります。(お互い様と言うことですね。)

とはいえ、今回の件は、雪止めの設置方法について設計者の検討不足・配慮不足といえるでしょう。

厳しく言えば、「設計ミス」なのかもしれませんが、はじめから検討され、設計図に盛り込まれていたら、その費用は工事金額に加算されていた・・・という考え方もあります。

雪止め金物が不適切であったことで、隣家に何らかの損害を与えてしまって、その修理・賠償費用を設計者に・・・ということであれば、逃れようのない責任ですが、となりの敷地に雪が落ちた=設計ミスだから改善費を負担してくれ、その後の保証もしてくれ・・・、という主張に、設計者の態度も途中から頑なになってしまったのではないかと推測します。

このように拗れてしまったのは残念なことですが、このままでは、法的手続きを取るしか無いのかもしれません。
しかし、H・Sさんが懸念されているように、調停にしろ紛争審査会にしろ、物理的にも精神的にも負担は大きいものです。
問題自体はそう大きなことではないので、お互い頑なにならず話し合いで事態が進展するのが善策だとは思うのですが・・・。
 事務局から 
  荻原 幸雄  図面などの資料を見ました。
屋根と北側隣地境界の距離としては設計として雪への配慮ができていない事実は否めないことでしょう。それを前提として確認します。
建物配置について,敷地が狭ければ北側に配置させることは通常の設計です。
前面道路から一台分の駐車場があり、これをぎりぎり配置させ、道路と敷地の段差を処理する為に1m程度の擁壁があり、そこから必要な部屋を取り6.3m、残った敷地の外壁の距離は1.3m程度になったという設計プロセスがあったと推測します。

もし、結果論になりますが、落雪を最大限に配慮して、外壁の距離を5m(屋根の出1mとして)となり、必要な部屋の幅は2.3mとなり、1.5間では部屋として成立は困難だったと思われます。
もし、落雪距離を優先した場合の提案で、部屋が犠牲になることを了承したでしょうか?
勿論、必要な部屋をとる場合はピロティーにするなど、設計は対応できます。しかし、予算が相当オーバーするので、それを了承するか?ということもあったでしょう。
設計は総合的な判断で応じていると思われます。

設計行為とは建築主の意向を図面に反映していますが、よく設計で問題になるのは、意思の疎通の問題です。
通常はこれらの意思伝達として、図面が作成されますが、図面に反映されていてもプロでないとわからない表現である場合は建築主の意思の疎通の確認ができないことがあります。これらの場合は設計者は丁重に依頼者に説明する必要があると思います。その反面、図面を一般的に善良な第三者が注意義務を持ってみて判断が付く場合は依頼者もそれを許容したと判断されることもあるかと思います。

今回あなたが、「我々では判断できないので、近隣住民や公道を通行する人や車両などに被害が発生しないような設計となっていれば問題ありません。Hさんにお任せします」と返答しておりますが、落雪で隣地に被害が出た場合、この原因は設計者に起因する設計ミスであるとあなたが主張して、責任は存在するのです。なぜなら、屋根の勾配や屋根と北側隣地境界距離は図面でわかるでしょうし、引渡し時でも冷静に注意義務を考慮しれば防げたと近隣は主張するでしょう。

隣地の権利者からみれば、設計者よりも所有者のあなたの責任を問われることになるのです。
要するに建築主として、近隣に対して安全安心な配慮をする建築物にする義務があり、その責任からは逃れられないということになります。

隣地の権利者からすれば近隣に対する配慮(雨水、落雪、日陰等)するのは建築主の務めであり、その判断は慎重な注意義務を持てば、設計時に設計者に伝えることは可能だったと主張することでしょう。

これも結果論ですが、あなたが、設計時に注意義務を持って、落雪の問題に気がつき設計者に指摘するとします。設計者はそれを無視するとは思えないので、設計の段階で、対策を設計に反映します。当然、見積もりが高くなります。それを出さない建築主はいないでしょう。
もし、落雪費用は払えないとなれば、配置を検討することになりますが、多分、落雪対策費よりも高くなるのは間違いありません。
落雪対策もメーカーのマニュアルとおりに施工されれば、通常は問題はおきません。もし、これで、被害がでればPL法の範囲としてメーカーが対処する範疇となるのです。これらを設計者の保証に求めるのは無理があるとは思います。

しつこいようですが、設計者には、落雪に対する配慮を設計に反映することは当然であり、その配慮が足らなかったことの責任はあると思います。
設計者は負担するとしていて、問題は実行されていないことが問題だと思いますが、ボタンの掛け違いのような気がしますが、設計者や施工者は将来のリフォームやメンテナンスなどアドバイスを求める関係で長いお付き合いが大切です。

お考えのように調停でもエネルギーは消耗され、建築主と設計者、施工者のすれ違いを主張し、その間を取ることが調停です。
ならば、そこまでしないで、間を取る手法を考えて、長い付き合いをすることが、家のためにも近隣のためにもなることだと思います。

写真でみても素敵な家のようですし、一方を攻めるのではなく、総括的に対処することをお勧めします。
相談者お礼状 
 相談者お礼状
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