相談概要 | [氏名] K.T [相談建物予定地] 神奈川県横浜市磯子区 [職業] 会社員 [年齢] 47 [男性] on [構造] 木造(在来工法) [引渡し年月日] 西暦2008年 3月 20日 [公庫は使わない] on [性能保証は使っていない] on [何階建て] 2 [延べ面積m2] 103 [延べ面積坪] [工事請負金額] 1700 [設計監理料] 0 [様態] 注文建築 [施工者] 地場大手ハウスメーカー;地域的な大手産業 [設計者を選んだのは] 自分では選んでいない。 [監理者を選んだのは] 自分で選んでいない。 [確認申請書は本来建築主が出すと説明を?] 受けた。 [18確認申請の為の委任しましたか?] した。 [確認申請書お持ちですか?] 無い。 [検査済証は有りますか?] 無い。 [設計図面は何枚もらいましたか?] 3 [工事着工まで設計の打ち合わせは何回しましたか?] 5 |
相談内容 | [家づくりの相談内容] 約33坪の土地に床面積約32坪の2階建て木造住宅を建設予定です。 建ぺい率、容積率はクリアーしましたが、ハウスメーカーにて地盤調査した結果 地盤改良が必要となりました。補強杭を埋め込みます。土地は急斜面の造成地で鉄筋コンクリートの擁壁があります。 土地改良の補強杭ですが、ハウスメーカー(下請け:土地調査会社)曰く 「計算したところこの擁壁は堅牢であり、この擁壁へ補強杭を乗せる(ちょうどあたるよう杭を打ち込む)」との事。 (土地表面から擁壁の柱の頭までは凡そ1m程度です。1mの杭を擁壁に乗せる状態) 小生素人につきプロが言われる事なので大丈夫と思いますが、このような工事は実際行われても問題ないのでしょうか、特に気をつける事もないのでしょうか。ご教示よろしくお願い致します。 擁壁:鉄筋コンクリートL型擁壁 表面高さ約7m、頭部分厚約30cm 以上 |
yorozuの感想 | 家作りに関して技術的な質問、回答は大変役立ちました。 |
アドバイザー | |
古賀 保彦 | 古賀解説員の回答です。 私のところでは建物と一体となった構造である建築擁壁の経験はありますが、もともと独立した擁壁に建物の荷重を直接持たせるというのは経験がありません。 L型擁壁の頭の部分が地盤下に1m潜っている状態でなのでしょうか? 擁壁の頭上の土がどのような状態になっているのか文面からでは想像しづらいのですが、上の1mの土はどのようになっているのでしょう? 擁壁下は低い方の隣地か道路、敷地は高い方にありその擁壁の上(境界近く)に家が建つと仮定して考えてみると、 まず都市計画法や宅地造成規制法の許認可を得た擁壁であるかどうか、また、擁壁の構造計算書で建築と一体となる事を想定しているものかどうか、そうでなければ建物から生じる力を構造計算で検証できるかどうか、さらに建築確認申請を管轄している行政が今回のような取り扱いを可能と判断するかどうか等を事前に検証しなければいけないと思います。 尚、それ以前の事として、土地調査会社の判断だけではなく建物の設計者の判断をお聞きになった方が良いでしょう。 もし、計算上・手続き上で可能としても、杭の先端が地震等で擁壁の頭からずれてしまっては危ないです。その対策等、詳細な計画を立てた上で望む必要があると思います。 |
大内 彰 | 大内解説員の回答です。 構造的なことについて。 業者の説明は本当に補強杭を擁壁の壁頂部に載せるということなのでしょうか?たまに見かけますが、安全性をしっかりチェックできているのか疑問に感じています。 疑問に思うことは以下のような点についてです。 ・建物荷重が擁壁に載ることによる擁壁の安定が悪くなることを検討しているのか ・安定が悪くなったときに地盤の耐力が足りているか ・擁壁から離れている部分の重量が最終的にどのレベルに伝達されているのかによって擁壁の安定の度合いが変わることを考慮しているか? ・擁壁壁頂部に載る杭の転倒防止が確実になされているか(建物基礎に杭径の2倍以上埋め込まれているか)。 ・擁壁壁と杭がずれないか(建物に加わる地震力の全てがこの杭に入ってくる)。または、他の杭で水平力を負担して変形が許容範囲内かどうか確認しているか。 ・地中梁に入る応力を考慮しているか ・不同沈下が生じるような地盤補強になっていないか などさまざまなことを確認して設計されていれば問題ないでしょうけれど、基礎周りは特に見えないところですが肝心な部分なのでしっかり検討してもらうべきだと思います。 |
氏原 毅士 | 氏原解説員の回答です。 状況がよく判りませんが、7メートルの擁壁をもってして33坪の敷地。 私なら絶対に買いません。急斜面造成地の危険性を承知の上で購入されるのでしょうか。 間に合うなら解約すべきでしょうね。杭の問題以前だと思います。 |
コメンテーター | |
笠原 歩 | コメンテーター笠原のコメントです。 まず、既存の擁壁等の構造物に力をかけるのは、あまり一般的ではありません。ご相談にある「擁壁は堅牢」の根拠を、提示してもらいましょう。その上でそれが最良の方法かどうかを検討して見てください。 また、文面だけでは現地の状況が正確にはつかめませんので、設計者あるいは第三者の建築士に、一度現場を確認してもらう事をお薦めします。 |
事務局から | |
荻原 幸雄 | 原則として擁壁に建築物の荷重を負担させるものではないというのが建築の鉄則です。 しかし、構造設計者が擁壁、地盤の性状を把握し、擁壁が建物の荷重を負担できるか? 擁壁の基礎の地盤がトータル荷重を負担できるか?地震時の水平力に対して擁壁がすべることはないか?沈下量が擁壁部とその他の杭との差はないことが確認できるか? これらが一つでも確認することが抜け落ちてはいけません。 通常、これらの地盤、擁壁を確認することは可能ですが、簡単ではないということも事実です。 不安定要素が大きいと思われます。 もし、これらが調査されて施工を依頼する場合は必ず、不同沈下に対する保証を契約書に条文かすべきです。 それも具体的に記載してもらいましょう。例えば擁壁側の床と反対側の床レベル差が5mmを超えた場合は無条件で不同沈下の補修をする。などです。 しかし、これとて、確実なものではありません。外壁の亀裂なの不同沈下が原因なのか?などを証明することは大変な労力を要します。 以上の観点から、擁壁には建物荷重は負担させない。これが鉄則であることが理解していただけると思います。 これらは擁壁のどこの部位でも同様のことなのですが、本件のように擁壁上端に杭を載せるのは、大いに疑念があります。 設計者として住人の安全を配慮するならば、そんな提案はするべきではないと考えます。 このような土地の場合は特に構造に精通した信頼できる建築士に設計を依頼するべきだと存じます。 |
相談者お礼状 | |
相談者お礼状 | ご連絡ありがとうございます。 本当に丁寧な解説頂き参考になりました。 |
その後 |
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