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一般社団法人建築よろず相談支援機構

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〒181-0001 東京都三鷹市井の頭3丁目12番11号

よろずWEB相談HEADLINE

No. 1144 いくら数字的な裏づけがそろってきても図面を見た感じの不安感はぬぐいきれません。

 相談概要 [氏名] TY
[相談内容:] -
[相談建物所在地] 埼玉県
[職業] 主婦
[年齢] 38
[女性] on
[構造] 木造(在来工法)
[引渡し年月日] 西暦 2007年3月
[公庫は使わない] on
[性能保証は使っていない] on
[何階建て] 3
[延べ面積m2] 142
[延べ面積坪]
[工事請負金額] 2600
[設計監理料] 0
[様態] 建築条件付建売住宅(売建住宅)
[施工者] 地場中小ハウスメーカー;地域的な中小産業
[設計者を選んだのは] 自分では選んでいない。
[監理者を選んだのは] 自分で選んでいない。
[確認申請書は本来建築主が出すと説明を?] 受けていない。
[確認申請の為の委任しましたか?] してない。
[確認申請書お持ちですか?] 無い。
[検査済証は有りますか?] 無い。
[設計図面は何枚もらいましたか?] 6
[工事着工まで設計の打ち合わせは何回しましたか?] 10
[施工者名] 不動産業者の提携の工務店
[販売会社名] 不動産業者
[設計者名] 2級建築士
[監理者名]
 相談内容 [現象]
1か月ほど前に売建住宅の契約をしました。図面をもとに土地建物の契約と工事請負契約を一対として契約しています。(そのあとこのホームページを見て建築確認の申請のおりていない状態で契約したことに気づきました。ショックではありましたが業者も悪質なものとは思えず、このような販売が横行している状態で私の勉強不足もありやむを得なかったと感じてあきらめています。)

いよいよ確認申請がおりてきますが、その建物に不安を感じております。木造の在来工法の3階建てでビルトイン車庫・同じ側にオーバーハング(一応柱で支えられます)・同じ側に四隅の柱で1階の上に2階以上が載ってこないところがあります。これらの点について設計者に危なくないか?と何度も確かめましたが一貫して「大丈夫です。梁せいを厚くして支えます」「構造計算できちんと強度が出るように設計されます」と言っておられました。なるほどそういうものか・・・と話を進めてきましたが、いろいろと調べるうちにそれらすべてが建物にとってはよくないという記述を多く見つけました。するとこの期に及んで地震時のことなどが気がかりになりました。
さらにビルトインガレージ上にユニットバス・2階リビングに6.4mのロングスパン(リビングについては希望の広さをかなえてもらった結果こうなってしまいました。)特に危険性も説明されずに設計していただきましたが、この2つも今となっては不安事項です。

建築基準法によれば構造の強度は計算上の公式やバランスのよい壁配置・部材の強度・施工上の注意などが書かれていますが、「震度○に耐えられるように」などという記述は一切ありませんね。オーバーハングはいけないなどの記述もなく、法を読み込むうちにあいまいな表現とゆとりのある解釈ができるようになっていることがわかってきました。設計者に尋ねても「大きな地震が来たときどうなるかは誰にもわかりません」といわれました。(それはそのとおりだと私も思います。)

そこでお伺いしたいのは現行の建築基準法に即した構造計算がなされている木造3階建てであれば、ある程度一様に新耐震の理念(震度5程度でまだ住み続けられる・震度6〜7でも命は守られる)程度の強度を保有するものなのでしょうか?また、これら3点(5点)をあわせもつこの建物はやはり危険な建物であると言わざるを得ないのでしょうか?大地震時に建物が損傷を受けることはしかたがないにしても、最低限瞬間的な倒壊などは免れ生命を守ることだけは・・・と思います。

子供も小さく将来何かあったらと思うと不安でなりません。自分でもいろいろ調べて壁量計算や壁量バランスの1/4法など試してみていますが、いくら数字的な裏づけがそろってきても図面を見た感じの不安感はぬぐいきれません。建物の片側によくないと言われていることが3つも重なり非常に不安です。構造計算上数値的には問題ないと思います。もちろん施工時に構造計算に見合った施工がなされることが前提であることも理解しております。

地盤もすでに改良済み。この業者の施工については他の既存の物件をいくつか見ていますが部材も良質で丁寧によく仕上げられていると感じます。設計者・施工者それ以外の皆さんを信頼してお任せするしかないと思いますが、よろずの皆様の見解をお聞かせくだされば幸いです。
 yorozuの感想 この2週間ほどでこのHPの関係のありそうなすべての案件に目を通しました。大変有意義なホームページであると感じます。契約前にこのホームページを見ていたら木造のビルトインガレージの3階建ては契約しなかったと思います。勉強不足を恥ずかしく思います。
アドバイザー 
笠原 歩 解説員の笠原歩です。

お察しの通り、ビルトインガレージやオーバーハング等好ましくない条件があっても構造上問題はないでしょう。またそれらをクリアすることが設計者に求められると思います。
ただ、ここで申し上げなければならないのは安全と安心は別物であるということです。

安全は構造計算書などの書類で客観的に確認できますが、安心はTYさんが納得できないのであれば絶対に得られません。
もしどうしても不安を拭い去ることが出来ないのであれば、多少の授業料(違約金)を払ってでも解約するべきだと思います。「不動産」に相場はありますが「我が家」の価値はTYさんご自身が判断するよりありません。
 コメンテーター 
藤井 修 コメンテータの藤井です。

TYさんはどこまでの安全を求められているのですか?
今回の建物は構造計算され、建築基準を満たしています、一般に多くある建築は建築基準法の範囲内で建てられています。
建築にそれ以上の性能を求めるのであれば多少の費用を覚悟して、設計の見直しを申し入れてみてはいかがでしょうか。
 事務局から 
  荻原 幸雄  事後であってからでも、よく勉強なさいました。
両委員のいうとおりです。

建築よろず相談では実際の相談と解説を公開しております。
それは建築の現実的な問題をみなさまに理解してもらうことは貴方のような不安を払拭してもらうために、現実の諸問題が現実である事実を客観性を持たせて、一般の方に「よりよい家造り」の客観的な材料になればと存じております。各メンバーもそんな安心した社会を構築すべく、無料で奉仕相談に対応しているのです。

しかし、残念ながら、インターネットの情報の多くはほとんどが営利目的な情報が多く、家造りの夢の部分だけを伝えております。そして、多くの一般の建築主予備軍もまさか自分が安心を得られないなどとは思いも依らないので、夢のHPだけをみて、現実をみない状況が多く、家造りの夢を含めた全ての相談の中でも、トラブルや不安などの家造りの事後相談が余りに多い事態にこの建築よろず相談のサイトが駆け込み寺になっているのは大変残念に思っています。

あなたの場合はまだ間に合うので事後でもぎりぎり確認できる相談なので、落ち着いて対応してください。

両解説委員の解説をまとめると下記になります。
架構的に無理のように思われる案件でも、能力の高い構造設計者が設計と監理をすれば安全は得られます。ここで能力の高いという意味は「構造設計に理論的な裏づけの理解ができている経験が豊富で住人の命を守るというリアリティーを保持し建築力学に純粋な精神を持つ能力」ということになります。監理では実際の構造監理経験が豊富な人でないと設計の根拠を失います。逆説的にいうと構造監理能力のない構造設計者は設計する能力がない。といえます。

構造設計者の能力は構造監理能力で決まるといって過言ではありません。
判断材料としてお伝えしておきます。

もし、能力のある構造設計者であれば、ご心配は無用ということになるのですが、その能力が問題となります。ここの選定は私どもでもかなり難しいところもあります。

セカンドオピニオンとして構造の専門家に費用はかかりますが、不安であるならば、意見を求めるべき方法もあります。しかし、難しいのは本件の構造設計者よりも能力の高い設計者に意見を求めないと意味がないので、ここでもその選定が難しいという問題もあります。

建築基準法の範囲はお考えの通りで、性能表示では1となります。
基準法の耐震性能が1なので、その1.25倍が性能表示2となり、1.5倍だと性能表示3となります。これは設計に対する耐力なので、監理がちゃんとされていなければ性能表示3でも現実は性能表示1を割ることもありえます。これはご理解ください。

本件は性能表示1の範囲なのですが、これは現場の監理で裏づけられことが条件になるのです。
ですので、設計にミスがなく、監理がちゃんと遂行されていれば、人命を守る建物はできるものです。

結論からすると性能表示が1であろうと3であろうと、能力のある構造設計者がちゃんと構造監理すればどんな構造的な架構でも、人命が守られるということになりますし、設計能力のない(当然監理能力もない) 構造設計者の建物であれば、もっと見た目に安定な架構でも人命が守られるか?疑問が残ることになります。

安全というのは客観的法律や学会基準にのっとることですが、実は、設計者により判断というものがあります。
ここが同じ間取りでも構造設計者の架構判断で、部材が場所により変ることになります。(逆に言えば違うことが多々ある)ここの判断という能力は客観性の批評が難しい部分でもあります。ですので、実は安全という判断も安心という「信頼する心」の判断が大きく作用することになります。「信頼する心」とは設計者の説明に合点がいくか否かなのだと思います。

あなたが、病院に行きます。病気を治すためには、この医者の説明が自分の命を守るのに合点がいかなければなりません。その医者の経歴や手術回数、医者の看護婦からみた能力を聞く、ことは先ずしません。命に関わる直接的なことでも聞かないのは、その医者の話が合点がいくと直感と経験がその瞬間に発揮されるからだと思います。
もし、合点がいかなければ違う病院の医者を訪ねてセカンドオピニオンとしての意見を求めることになります。

問題は貴方の直感と生きてきた経験から不安があって、構造設計者の説明に合点がいっていないということであり、この場合はセカンドオピニオンの登場ということになるのだと思います。

安心材料がほしいということは大切なことです。

12/9日に建築よろず相談会が2,000円と有料ですが、銀座であります。そこで、直接相談することも方法だと思います。
相談者お礼状 
 相談者お礼状 荻原様・笠原様・藤井様

 早速丁寧なご回答をありがとうございました。実は相談のあとすぐに建築確認申請のおりたことが業者より知らされ、基礎部分の着工となりました。お返事を頂戴した日に現場に行ってみると、すでに根切作業は終わり防湿フィルムを張ってその上から薄くコンクリートを流している状態になっていました。その現場を見ながら主人ともよく話し合いましたが、結局このまま続行してもらおうという結論になりました。
この状態で設計変更などして、この建設にかかわるすべての業者に多大な迷惑をかけることになるのも、許されないことであるように思いました。また、経済的なダメージも大きく、このままではマイホームの購入自体をあきらめなければならなくなるかもしれません。

まず、主人は当初より私のような不安は感じておらず、「希望の間取りを入れてもらってそれを安全に設計してもらっているのだから大丈夫」というスタンスでした。もちろん私の不安についても頭ごなしに否定することはなく、「いやならやめてもいいよ」といってくれていました。ただ、情報収集も思うようにいかず、私が優柔不断であったばかりにこのさしせまった段階まで決断を見送ってしまったということなのです。このような相談を持ち込んだこと、今となっては失礼なことであったと思います。すみませんでした。

でもご回答をいただき大変落ち着いたのと同時に、心が安らぎました。非常に客観的なご意見であると感じられたからです。実際に顔を見たり声を聞いていろいろな立場の方の話を伺っておりましたが、微妙な表情の変化、語調の変化にも敏感に反応してしまっていました。こちらは切羽詰った状況で問い合わせておりますので、先方がちょっと苦笑気味であったりすると、それだけでナーバスな神経に障りました。そういったことからも自分を追い込んでしまっていたかもしれません。
現在、床伏図など部材のサイズを詳細に記した図面をいただくことができました。梁せいの寸法も記されており、私が心配していた部分にはそれに十分耐えうるサイズを使用しているとのことです。

この度のことで、住宅においては我々消費者が日常消費している製品(たとえば家電製品や衣類など)に比べて、性能が一様でないのだということを改めて実感いたしました。価格に対して当然有すべき品質が必ずしも保証されていないという点が他の消費財に比べて著しく異なり、またその評価には「信頼」という無形の要素が大きく関わるのだということも感じました。

自分で家を建てることに直面するまで、まさかこのような事態に陥るとは夢にも思っておりませんでした。私のこのような失敗談をご覧になった方が、もしもなにかご心配の生じた場合、一刻も早くセカンドオピニオンを受けられますよう願っています。また、そのようなスタイルが家を建てるときのスタンダードになる日が来ることを、あわせて願います。

現在そして今後の建築の世界において、すべての構造設計者が「構造設計に理論的な裏づけの理解ができている経験が豊富で住人の命を守るというリアリティーを保持し建築力学に純粋な精神を持つ能力」を保持しているか、そうなるために向上しようと努めてくださる方ばかりであることを信じ、また心より祈っております。
このあとはいつまでもこの失敗を引きずらずに、みんなが安らげる「我が家」作りを目指していきたいと思います。本当にありがとうございました。
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