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一般社団法人建築よろず相談支援機構

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〒181-0001 東京都三鷹市井の頭3丁目12番11号

よろずWEB相談HEADLINE

No. 1130 基礎の高さを間違え嵩上げしたが・・・。

 相談概要 [氏名] M.T.
[相談内容] 店舗・事務所等の欠陥建築
[相談建物所在地] 北海道厚岸郡厚岸町
[職業] 漁業
[年齢] 42
[男性] on
[構造] 木造(在来工法)
[引渡し年月日] 西暦2006年02月10日
[公庫は使わない] on
[性能保証は使っていない] on
[何階建て] 2
[延べ面積m2] 99,372
[延べ面積坪]
[工事請負金額] 4,179,000
[設計監理料] 0
[様態] 注文建築
[施工者] 大工(工務店)
[設計者を選んだのは] 自分では選んでいない。
[監理者を選んだのは] −
[確認申請書は本来建築主が出すと説明を?] 受けていない。
[18確認申請の為の委任しましたか?] してない。
[確認申請書お持ちですか?] 有る。
[検査済証は有りますか?] 有る。
[設計図面は何枚もらいましたか?] 2
[工事着工まで設計の打ち合わせは何回しましたか?] 4
[施工者名] T.M.
[販売会社名] M建設工業所
[設計者名] T.M.
[監理者名] T.M.
 相談内容 [現象]
建物の基礎の高さを地面から75cm以上、隣の基礎の高さより高くとお願いしましたが、実際の高さは約半分の40cm程でした。やり直しを求めると初めの基礎の部分に入っていたアンカーボルトに新たなアンカーボルトを溶接し、コンクリートに小さな穴を開けそこに鉄筋を刺しただけで、型枠をしコンクリートを流し込み40cm程基礎を足しました。
コンクリートの養生期間は平均気温3.8度、最低気温はマイナスになる11月だっだにも関わらず、コンクリートを流し込んでから3日目で型枠を外しました。
下の基礎と上の基礎をつなぐ物がアンカーボルトしかなく鉄筋の横幅も最大で35センチの所もあります。
また、角の部分の鉄筋は継ぎ手になってい、開口部の補強をしていない、土台の継ぎ手の所にもアンカーボルトが入っていない。
1階の床が反り上がっています。
実は建てている最中から妻が「やり方がおかしい、違法建築だ!」と言っていたのですが、私は大工さんを信頼していたので妻の言葉に耳を貸さずにいました。

現在基礎を補強又はやり直して欲しいと大工さんに申し入れています。

[業者の見解]
継ぎ足した基礎は大丈夫ですか?と聞くと「基礎は大丈夫。」、土台の継ぎ手の所にアンカーボルトは入っていないし、入れて欲しいというと「筋交があるから大丈夫、不安だったらホチキスの針に似た物があるからそれで横から止めといてあげる。それで大丈夫だから」、鉄筋の横幅は30センチ以下では?と聞くと「30センチ未満のところもあれば35センチのところも有るけどそれがどうしたの?」30センチ以上は違法ではというと「認識の違い」、1階の床の反り上がりを直して欲しいというと「太陽が当たっているから」と言って直してくれません。

そして、「これ以上は話す事も無いし、保証もしない、文句があるなら裁判でも起せ!」といわれました。

[相談内容]
基礎の継ぎ足しは違法でないかもしれませんが、継ぎ足しした上の基礎と下の基礎を繋いでいるのがアンカーボルトを溶接しただけの物で本当に安全で大丈夫なのでしょうかコンクリートの養生期間が平均気温3.8度、最低気温はマイナスになる11月だっだにも関わらず、コンクリートを流し込んでから3日目で型枠を外しましたが、コンクリートの強度には問題はありませんか?

土台の継ぎ手にアンカーボルトが入っていなくても筋交があれば問題ないのでしょうか?
また、基礎の部分の開口部の補強や、角の部分の鉄筋は継ぎ手になっていなくても問題はありませんか?







 yorozuの感想 とても、勉強になります。今回建物を建てる前に出会えていたら良かったのに・・・とつくづく思いました。
私達は業者を信じ、建築をお願いしているのに、素人だから分らないと思い騙されたり、手抜きをされていたりしても分らないところが沢山あります。たとえ、おかしいと思って業者に尋ねてもうまく誤魔化されてしまうのが現状ですよね。何処に相談してよいかも分らないし、困っていました。この「建築よろず相談」に出会えて良かったと本当に思います。これからも頑張ってください。
アドバイザー 
山口 雅克 九州、山口解説員の回答です。

 写真1からは土台の継手位置でのアンカーボルトの位置が下木になっているのが分かります。上木にあるのが正しいので、この場合は継手の上木側に穴をあけて後施工アンカーを設置するとよいでしょう。これで100点とはいえませんが、箇所数が少なかったり、筋交の下端の土台が浮き上がる恐れのないところであればよしとしていいでしょう。

 写真2の鉄筋の継手は型枠の影でわかりませんが、重ねている長さが40cm以上あればいいです。角の鉄筋から両方にL型に重なっている必要はありません。

 写真3のアンカーボルトの溶接は考え方としてはおかしくないのですが、溶接の長さが不足しています。径が12mmの場合は、重ねた部分の片側だけ溶接するのであれば12cm、両側であればそれぞれ6cmの長さが必要です。

 写真4でも同じことが言えます。鉄筋の間隔も広いですね。平均して30cmでなく以下であることが必要です。上端筋も異形鉄筋の13mmにしなければなりません。
 下の基礎にどのような穴を開けて鉄筋を継足したのかは現地を確認しないと分からないところではありますが、請負者はミスを合理的とは思えない自分に都合のよい方法で補おうとしているようです。
 コンクリートの養生は望ましいことではありませんでしたが、今となっては強度を測定してみて判断するしかないでしょう。設計強度が確保できているのを願いつつ。
 一度、第三者の木造になれた専門家にみてもらったらいかがでしょうか。請負者が開き直るのであればそれなりの対応も必要になります。設計図や確認申請書、契約書など関係書類を整えておきましょう。
星 裕之 星解説員の回答です

コンクリートの打ち継ぎ方法に関しては、既存部分に打ち継ぐ際に良く行われる方法です。鉄筋の埋込深さと処理(ケミカル等による接着方法)が適切であれば良しとしたいところです。
ピッチについても、タテ筋とヨコ筋の比率から察すると、平均すれば30cm程度にはなっていそうです。
これでしたらそれほど大きな問題はでないのではないかと思います。
打ち継ぎ部分が30cmを超えているのでアンカーボルトの定着長さは確保されてしまいますから、アンカーボルトは溶接する必要はありません。
これはコンクリート打設時にアンカーボルトを動かないようにしたかっただけなのでしょう。基礎の強度に影響はありません。

また、型枠を外す日程より、気温に対して適切なコンクリートを打設できているのか、寒さに対する養生を行ったのか、適切な養生期間を経てから上部構造体を施工したのかということのほうが気になります。

土台継ぎ手の補強に使用されたホチキスの針に似たものは、カスガイではないかと思いますが、抵抗する力の方向が違いますから不適切な使用方法です。
後施工のケミカルアンカー等で補強された方が良いかと思います。
まだ上棟したばかりのようですから、早急に第三者の建築士・弁護士に相談をし、第三者の監理者を入れることや契約解除も含めてご検討された方が良いかと思います。
 大内 彰 構造担当、大内解説員の回答です。

アンカーボルトの溶接長さが若干短いように見えますが、構造的に余裕があれば問題ない可能性もあります。コンクリートに孔を開けて接着剤も入れずに鉄筋を入れただけのように見えますが、これでは一体のコンクリートにはなりません。

また、応力の集中するコーナー部においても細い鉄筋を入れただけのようですがこれも構造的に不十分です。コンクリートの打設後の型枠の取外しは打設後3日では早すぎます。
表面にクラックが入りやすくなっていると思われます。写真4ではコンクリートに孔を開けるときにコンクリートが割れてしまっているようです。土台の継ぎ手部分に入れるアンカーボルトが逆側になっています。それをホチキスの歯のような金物で留めただけでは土台が浮き上がりに抵抗できません。

ましてや近くに筋交があるとなると余計浮き上がりが生じるのではないかと思います(筋交や柱の位置によっては土台に浮き上がりが生じない場合もあります)。業者とのやり取りを読むと、このままでは適切な補強工事をできる技量も意思もないように感じます。早急に第三者を入れて対応すべきだと思います。建築士に相談し補強や対応(裁判を含めて)を検討されることをお薦めします。 
 久米 能子 久米解説員の回答です。

 アンカーボルトや鉄筋の継ぎ手については、私も山口解説委員の言われるとおりだと思います。土台の継ぎ手は蟻つぎという形の継ぎ手になっているようですが、鎌つぎという継ぎ手よりも土台の継ぎ手としてはやや弱いので、心配なら、継ぎ手の両方にあっても問題ありません。

 写真の基礎の一番上の鉄筋は、13ミリの鉄筋にする必要があります。また、縦の鉄筋の間隔も全て30センチ以下にする必要があると思いますので、間隔が広いところは真ん中に足していくと良いでしょう。組んだ鉄筋をばらしてやり直すのは大変なので、不足部分は足すやり方がよく採用されます。
 尚、今から縦の鉄筋を足すのならば、鉄筋の一番上の頭の部分は、現在のようにぶつぎり状態ではなく、13ミリの横鉄筋を抱くような形で折り曲げてもらってください。直角に折り曲げるならば、8センチ、くるむように折り曲げるならば、4センチ程度です。

 気になるのは、差し込んだ縦の鉄筋がどのくらいの深さに差し込まれているかです。40センチ確保できるように、底のほうまで深く差し込まれているでしょうか。下の基礎としっかりつなぐにはその長さが必要のはずです。鉄筋コンクリートのうち、鉄筋は引っ張る力に抵抗し、コンクリートは圧縮される力に抵抗するので、初めの基礎と後からの基礎のつなぎは、この鉄筋だけに頼っているからです。
 もともとの基礎の高さが40センチそこそこですから、そこまで定着長さを取ることができていなくても、星解説委員の言われているような、ケミカルアンカーと一般に言われている、後から施工する鉄筋の差込処理の方法(専用の定着剤をコンクリートにあけた孔に流し込み、硬化するまで動かさずに養生して鉄筋をつなぐ方法)を取っていれば、問題ありません。

 また、コンクリートを初めの基礎の上から接いで打設する場合、お互いのコンクリート面のなじみが良くなるように、打ち接ぎ面を手で軽くはつって表面をでこぼこに荒らしておくようにするほうがよいでしょう。さらに、その打ち接ぎの面からは水が進入しやすいので、打ち接ぎ面には止水材を入れてから、コンクリートを打つようにしましょう。止水材は色々なメーカーから出ているはずですが、ロープ状になっていて、コンクリートの水分や後に進入してきた水分で徐々に溶け、コンクリートの打ち接ぎ面にひろがって水を止めるというものです。ただ、既設の基礎立ち上がりの外部側は荒らさないようにして、立ち上がり面より下げて目地をとり、最後にコーキング処理をすると良いでしょう。

 けれども、そのほかにも色々と不安でおられるようですので、他の解説委員が言われるように、今からでも第三者の建築士に現場の相談にのってもらわれるほうが良いと思います。 
 コメンテーター 
津村 泰夫 コメンテーターの津村です

 少し解説員の皆さんでニュアンスの違う部分がありますが、それも私たちの回答が一律とならないのも特徴としてお許しください。ただ皆さんがおっしゃるようにあまり施工精度の良い状態ではありません。厳しく監理する必要があると感じます。

 久米解説員が述べておりましたが、縦の鉄筋の上端部は折り曲げる必要があります。私はこのような状態を見つけた場合は溶接させています。
 それと、ホチキスの歯というのはステープルなど釘の一種ではないでしょうか、これでは役に立ちませんね。

 皆さんの回答を参考にすてきな家造りに励んでください。
 事務局から 
  荻原 幸雄  竣工したけど、この問題が尾を引いているということでしょうか?
この段階で相談して欲しかったところです。
さて、設計も工事監理も現場管理もすべてが杜撰なだったことが全ての原因です。
大工の発言は素人騙しそのもののようです。
今回の一番の確認事項はケミカルアンカー(あと施工アンカー、樹脂アンカーなどと呼ぶ)がちゃんと施工されているか?
が写真からは断定できいないところです。ただ穴を開けて鉄筋を挿入しても意味がありません。
穴を大きく開けて鉄筋挿入+クラウトモルタルを注入とする方法もありますが、現代ではケミカルアンカーが主流です。
この場合は樹脂が注入されたかを確認する必要があります。
ケミカルアンカーはあとで仕方なく部分的にこのように使うもので、全面に使う場合は鉄筋間隔を縮めるなりの安全側配慮が必要となります。

違法性にかんしてはケミカルにしていなければ違法になる可能性が高いといえますが、今回の写真だけでは判断はできません。

土台継ぎ手のアンカーボルト位置は間違いで土台が浮き上がりますから耐力がなく違法です。
アンカーボルトは上部配筋が適切にされていれば、溶接する必要もないのですが、今回の配筋では溶接が妥当だと判断します。溶接の長さも山口解説委員の説明とおりですが、配筋が適切にされていれば安全側の措置と判断できます。
縦筋の上部にはフックという曲がりが必要ですが、これはアンカーボルトの引き抜きに横筋が抵抗し、それを脱落するのを防ぐ意味があります。
鉄筋はただ、配筋されていればよいものではなく、鉄筋径、間隔、曲げ方、等、全て力学的な意味があるのです。

このような状態だと下の基礎の配筋状態も不安が残りますね。
家造りには貴方が選定した設計監理者を選定して欲しいものです。
何よりの安心材料になった筈です。
相談者お礼状 
 相談者お礼状 先日はご意見ありがとうございました。
とても参考になり、もっと早くに出会えていたらとつくづく思いました。
施工業者に対しては、建物は建ってしまっているし、でもどうしても基礎の部分が不安なので、コンクリートの強度、コンクリート内部の鉄筋などの調査を行い、違法性を明らかにし、その結果を伝え、相手の対応を待ってみます。相手が誠意を持って対応してくれると良いのですが、無視をするのならば裁判を起そうかと考えています。
その結果はまた報告いたします。
追伸、今度は窓から雨漏りがしている(2ヶ所)
 その後  
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