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一般社団法人建築よろず相談支援機構

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よろずWEB相談HEADLINE

No. 1118 無垢材で建てるメリット、デメリットは?

 相談概要 [氏名] S.T
[相談建物予定地] 埼玉県北本市
[職業] 会社員
[年齢] 28
[男性] on
[構造] 木造(在来工法)
[引渡し年月日] 西暦2007年7月  日
[公庫は使わない] on
[性能保証は使っていない] on
[何階建て] 2
[延べ面積m2]
[延べ面積坪] 35
[工事請負金額] 未定
[設計監理料] 未定
[様態] 注文建築
 相談内容 [家づくりの相談内容]
土地を購入し、住宅メーカーを探している者です。

「無垢の木を使った住宅」を考えていますが、
1.無垢を使用した住宅のデメリットとはどのようなものがあるのでしょうか?
 ここのメーカーは木材の乾燥を自慢としており、平均含水率5〜10%以内で建てれば歪み等が発生せずとても良い住宅を建てることが可能と言っております。無垢材で建てるメリットにとても魅力を感じているのですが、デメリットについては納得の上建てたいと思いますので、ご教授いただきたいです。

2.候補のメーカーは、本社が新潟にあり、フランチャイズのような展開(HPでは、ボランタリー組織(共同仕入組織)として運営とあります。)をしており、私が住む場所は本社ではなく、加盟している工務店による建築になり、その工務店は実績が少ないので心配です。
 住宅のフランチャイズのような展開というのはどうなのでしょうか?

3.このメーカーで立てたいと思っておりますが、費用の問題で仕様を下げたプランでの検討を進めております。
  土台 120×120 ヒバ 
   → 105×105 ヒバ
  壁  ポリスチレンフォームを使用した軸組みパネル工法 
   → スタイルフォームを使用したハイベストウッド工法(壁工法)
  床下 床下エコロジー処理 防虫効果の高い木酢液を土台に塗布・調湿脱臭効果の高い竹炭を敷き詰めて湿気・シロアリ・防虫対策
   → 防虫効果の高い木酢液を土台に塗布のみ
  断熱工事 1階 床下・外壁(2階とも)EPS75mm 2階 屋根 ネオマ50mm 
   → 1階 床下 ネオマ45mm 1階2階 外壁 スタイロフォーム40mm 2階天井 スタイロフォーム40mm

  のように仕様を下げて建築を依頼してしまいますが、これがどの程度のランク落ちなのか判断ができません。その辺りの説明を聞かせていただけないでしょうか?(これは下げてはいけない等の意見があればぜひお願いします)
  メーカーに直接聞くと、元の仕様は木造として最高級クラスで変更仕様にしても、いわゆるローコスト住宅と比較しても十分な性能があるといわれました。
  私の予算から元々ローコスト住宅でしか建築が難しいと思っておりましたので、ローコストと言われる住宅(例えば25.8万/坪をうたっているメーカー等)の構造と比較してどうなのか知りたいと思っております。

4.これはこちらのHPでお伺いすることでは無いのかもしれませんが、ご存知の範囲でかまいませんのお願いいたします。
  桐のフローリングを検討しております。桐は最近注目されだしている材質だと聞いています。しかし、桐は柔らかく、変質しやすいところがメリットであり、デメリットであると思いますが、どうでしょうか?

5.最後に、第三者機関や住宅性能表示は必須でしょうか?
  3番の質問でも書きましたが、予算上かなりきびしいところで建てようとしております。第三者機関や住宅性能表示の費用は含まれていないので、これを付ける事が難しいです。でも、最近の色々な偽装問題等を見ているとこのような制度は必須なのかとも思います。専門家の方々はどのように判断されますか?

以上、5点もありますが、ご教授お願いいたします。
なお、構造等について、素人なもので言葉の言い回しに間違いが多くあると思いますが、お許しください。
 yorozuの感想 実際の建築家の方からのアドバイスを受けられるため非常にうれしく思います。
住宅という一生に一度の大きな買い物であるにも係らず、押し売りのように進めてくる住宅メーカーもあったり、金額の出し方が各社まったく異なっており、素人が住宅を建てていくことは本当に難しい世の中と実感しております。
このようなHPの存在で助かっている方は私を含め大勢いると思いますので、今後の発展を強く希望します。
アドバイザー 
山口 雅克 解説員の山口です。

 デメリットとメリットの相談はよく受けるのですが、メリットの裏にはデメリットが潜んでいますし、その又逆もあり得るのです。何故なら、人によって価値観が違い良くないと思っている事が他人には良かったりする事があります。

 1:平均含水率5〜10%以内の無垢材であればデメリットはあまりありません。あるとすればコストが高くなるくらいでしょう。

 2:しっかりしたフランチャイズ性であればとくに問題はありません。工法に対するFCや材料仕入供給が主なFCなどがあります。今回の場合は後者のようなので、FCとしての実績よりも工務店の技量について調べてみましょう。

 3:仕様の変更に関しては、構造材の断面を小さくするのは止めましょう。ほんの僅かな金額にしかなりませんよ。床下通気が良ければ土台の木酢液塗りは不要です。
 断熱は仕様を下げてもそこそこの性能はありますので良さそうな気はします。いわゆるローコスト住宅と比較しても十分な性能はありそうです。

 4:桐は柔らかいので傷を嫌うのであれば止めましょう。傷が入ってもその肌触りを重視するのであれば良いかも知れません。張替えが容易にできるような納まりにしておきましょう。

 5:偽装や施工上の不備をできるだけ避けたいのであれば、第三者に監理を依頼するしかありません。第三者機関や住宅性能表示を利用したとしても、工事中の数回の検査では色々な手違いなどを見つけることは難しいのが現実です。

 予算が厳しいのはどの建主さんも同じです。限られた予算の中でできるだけ住み易い家を創るには全体のバランスが必要になります。「あれもこれも」より「これとこれだけは」と考えるとコストダウンできますよ。
善養寺 幸子 解説員の善養寺です。

 25.8万/坪なんて、まともな家とは思えません。そのまま建つと到底思われず、本体価格(設備含まず)とか書いて、あるのではないですか?呼び込み価格と、現実の最終価格と違うケースもあるので気を付けてください。

 書かれたような程度の仕様変更は内容的に大した工事費に影響を与えるような仕様のグレード変更とは思えません。ただ、建築はその程度の内容でグレードが決まるわけではありません。
 若いのに、無理して安かろう悪かろうや、頭金も貯まっていないのに持ち家を購入することは、結果的に色々問題が起こりかねません。

 どうしても今建てなければ、家が崩れるとかではなく、これから土地も購入し注文住宅を建てるのであれば、今、一生の家をローコストで無理して建てることはないと思います。計画的に貯蓄をし、その間に、もっとじっくり住宅、暮らし、建築について、書籍やセミナーなどで学習し、木に関しても、性能に関しても、知識を得てから建築の事業を始めた方が良いです。どうも日本人は住宅を衝動買いする傾向が強く、トラブルが絶えないのは、そこに大きな要因があるように思います。

 お問い合わせの内容は、住宅を建てるに必要な施主の心得の1/100にもならないでしょう。まともなものを欲しいと思うなら、少なくても坪65万円。それなりに高性能で長い目で見て、もっとまともなものを注文したいと考えるなら、坪80万円以上予算確保をした上で事業されることをお奨めします。
 建築は、どのようなシステム化をしたところで、一戸一品製品であることには変わりません。材料に比べ、人件費のウエイトも大きいのです。安い物は安いなり。安くて高性能ハイクオリティな物はあり得ないと考えた方が良いでしょう。誰かだけ特別な事はありませんから、慌てて無理して新築することないと思います。

 木材なんて、含水率だけで性能が決まるものではありませんし、木酢液の効果も疑問です。防蟻、結露、木材変形は、材料だけでどうにかなるものではなく、工法、納め方、それ以前の木の伐り方、乾燥のさせ方、その他もろもろ関係しており、単純ではありません。無垢の木に拘るのであれば、それこそじっくり勉強する必要があると思います。数年勉強して、それからでも遅くないと思われます。
 その時には、自分は何をどうすべきか判るようになっていると思います。
 コメンテーター 
久米 能子  コメンテーターの久米と申します。

 検討中のハウスメーカーの、S.T.さんのおっしゃる内容での工事価格は一体いくらなのでしょうか。最高級とは思えませんが(私の事務所の仕事では断熱はもっと入れています。)、確かに伺った内容についてだけ考えると、良いほうのグレードと言えなくないのではと思います。しかし、それはS.T.さんのご予算に本当に合うのでしょうか。善養寺解説委員の言われるように、よくメーカーに訊ねて、工事に入っているものと入っていないものを明確に理解しておく必要があります。

 ローコスト住宅、というものが昨今ひとつの流れを作っていますが、現実に住んでいる方のどれくらいが満足しておられるかはわかりません。ローコスト住宅に限りませんが、ご承知のように、新築の際の雑誌掲載はその後の住まい手の生活まで追いかけていないのが殆どです。コストは下がっても、日々耐え忍ぶ暮らしとなっていたり、施工の問題がでてきたりしている建物は実は数多くあると聞いています。(勿論、コストを抑えながらも建築技術的観点からは優れていて、私たちの間で話題となる建物も幾つか存在しますが、それが住宅としての機能等が十分で住み手がどう感じておられるかはわかりません。)

 家は財産でもあり、また一方、家族の生活を一変してしまうほど、重要な生活空間でもあります。建物によって、家族関係が変わったり、健康が影響を受けたり、また新しい意識が芽生えたり…。住宅の、ハード面のみならず、そうしたソフトの面も是非考えて、予算を組んでみてください。
 さて、個別のご質問に対するお答えは、山口解説委員が解説されている内容のとおりだと思います。
 ただ、建物は全体でバランスをとって設計されるものなので、個別のポイントが1つや2つ良好であったとしても、それでその建物の設計や施工を評価することはできないことを知っていただきたく思います。

 さらに、鉄骨や鉄筋コンクリートのように工業化されている材料で施工される場合と違い、木造は無垢材であれば、材料そのものも非常にばらつきの多いものなので、ひとつやふたつの指標で判断することはもっと危険となります。無垢材を使った木造はすばらしく味わいのあるものですが、同時に本来は難しいものなのです。

 今、S.T.さんはお若いながらも同年代の方に比べれば、おそらく良く勉強されているほうだと思います。きっと、S.T.さんのような方なら、勉強すればするほど建築の世界がますますわかりにくくなってしまわれることでしょう。私たちでさえ、日々勉強し続けなければならないのですから、素人の方ならば混乱されるのは当然のことです。
 住宅建築について勉強されると共に、よき相談相手として信頼できる設計事務所をも、是非探してみてください。
 事務局から 
  荻原 幸雄  土台というのは木造の中で一番大切な部位であり、また、一番腐食しやすい部位であるともいえます。
そんな大切な土台を120から105に落とすなどとはナンセンスです。
この発想はメーカー仕様にあるから選択したのだと思いますが、そもそも、その時点で、メーカーの選択を考え直したほうがよいのではないか?と疑念を感じます。
メーカーの仕様でなくあなたが、コストの為に落とそうと提案したとしても、それを受け入れるところも問題です。

105が土台ならば120の通し柱ははみ出します。あまりよいことではありません。
ランクが気になるようですが、材料のランクというのはある程度あります。ランクがあるものを列挙すると

1)材料(仕様)のランク
2)設計者の設計能力のランク(意匠、構造、設備能力)
3)工事監理者の監理能力のランク
4)施工者の管理能力のランク
5)施工会社の経営的な健全性のランク

という大きく分けると、この5つの枠になります。

貴方が気にしているのは1)の中のほんの一部に過ぎません。
1)のランクだけで家は構築できないのです。1)〜5)が調和が取れることが全体としてのランクにつながるものです。
これら全てを貴方が掌握するのが困難なので、2)、3)を貴方が選択することがいかに重要なことであるかご理解できると思います。確かにその費用はかかります。でも、本来かかるべき費用なのです。それを販売会社の売るためのコストダウンの論理で2)3)4)は、貴方が選択することが困難なのです。

このようなシステムに載らざる負えないのであれば、ランクを気にしても家全体のランクは上がりようもありません。
仕様のランクよりも設計者、工事監理者の能力をしっかり見極めることのランクのが重要であることを付け加えておきます。
相談者お礼状 
 相談者お礼状
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