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一般社団法人建築よろず相談支援機構

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〒181-0001 東京都三鷹市井の頭3丁目12番11号

よろずWEB相談HEADLINE

No. 1076 施主に何の説明もなく、屋根の断熱工法替えられた

 相談概要 [氏名] K.I
[相談内容] 注文住宅の瑕疵
[相談建物所在地] 東京都稲城市
[職業] 会社員
[年齢] 38
[男性] on
[構造] 木造(在来工法)
[引渡し年月日] 西暦2004年
[公庫使用] on
[性能保証は使っていない] on
[何階建て] 2
[延べ面積m2] 108
[延べ面積坪] 33
[工事請負金額] 1800
[設計監理料] 0
[様態] 注文建築
[施工者] 地場中小ハウスメーカー
[設計者を選んだのは] 自分では選んでいない。
[監理者を選んだのは] 自分で選んだ。
[確認申請書は本来建築主が出すと説明を?] 受けた。
[18確認申請の為の委任しましたか?] した。
[確認申請書お持ちですか?] 有る。
[検査済証は有りますか?] 有る。
[設計図面は何枚もらいましたか?] 4
[工事着工まで設計の打ち合わせは何回しましたか?] 10
[施工者名] A
[販売会社名]
[設計者名] E
[監理者名]
 相談内容 [現象]
屋根の断熱工法の件
施主に何の説明もなく、屋根の断熱工法が契約時も含め、建築確認申請時と違う工法で施工されている。

契約時、建築確認申請時の屋根の断熱工法は外断熱であり、確認申請図(別添図)、申請書(公庫書類等)も全て同様に示されている。
しかし、実際は充填工法(別添写真)のとおり施工されてしまった。

[業者の見解]
交渉状況:建築時から再三、会社からのコメントを求めてきて、引渡しから2年たってやっと、話し合いの場が一度もたれた状況です。
@説明不足は認めている。
A施工途中で、会社として新工法を採用したとのこと。
B工事途中であれば、変更も可能であったが、完成後のため変更はできない。
とのことであった。

[相談内容]
@契約違反ではないか?罰則はないのか?
A確認申請と違う工法はいかがなものか?
 建築法の違反ではないが、虚偽申請にはあたらないか?
B公庫の省エネで申請しているが、その申請書に書かれている数値等が外断熱工法の
数値だが、 その点問題は無いか?
C外断熱工法から充填断熱工法に変わり、結果、屋根の厚みが薄くなっている。
 北側斜線規制のため(狭小住宅ということもあり)母屋下がり(最低居住空間約1.7m)で施工したが、 屋根の厚みが薄くなったのであれば、1.7mを広げることもできたのに変わっていない。

 建築士なのか、施工会社なのか、どちらかよくわかりませんが、わずかの空間をさらに無駄にしてしまったことへの罰則はないのか?
 yorozuの感想 いろいろな悩みを抱えている人の存在を知って励みになります。
アドバイザー 
久米 能子 久米と申します。

 屋根の断熱の工法の違いに、気づかれたのはいつなのでしょうか。
 工事途中の現場に立ち寄られてご自身がご覧になり、気づかれたのでしょうか。
 それとも、工事監理者の設計事務所から工事監理についての報告があって気づかれたのでしょうか。
 また、竣工後に、なんらかのきっかけではじめてお気づきになられたのでしょうか。

 もし、途中で気づかれていたとしたら、なぜそのまま工事が進行したのか、不思議な気がいたします。 「屋根の断熱工法が契約時も含め、建築確認申請時と違う工法で施工」とのことですから、工事着工前から断熱の方法がご希望とは違うことがわかる状態であったということでしょうか?だとしたら尚更、最後まで竣工したことが理解できません。

 契約と違う工事に納得されないのならば、工事をそのまま進めたり、引渡しを受けるべきではなかったと思います。引渡しを受け、現実にお住まいをされていて、工事請負金額の支払いも済まされているということならば、結果としては、K.Iさんは変更された断熱の工法を受け入れたということになるからです。

 お訊ねの、契約違反では、というお話は、契約時に既に断熱の工法が充填断熱となっていて、その内容の工事請負契約書に印鑑を押されているということでしたら、契約違反とはいえないでしょう。
 また、確認申請では、基本的に断熱が外か充填か、ということまでは審査の対象にならないはずです。しかし、断熱材の種類によっては法規に影響する部分があるかもしれませんし、公庫の申請についても、いずれも検査などは通ってきているのでしょうから、今回変更となった部分はどのような取り扱いとしたのか、設計事務所や工務店に詳しく説明を聞いてみてください。結果によっては、変更の届出等必要となるかもしれません。

 永くすむ、大切なお家は、少しでも良くあってほしいという気持ちは誰も同じです。
ですから、法規上のことだけでなく、K.Iさんが、断熱の工法が変わったのならば少しでも天井が上げられたのに、という残念でたまらないお気持ちも、また理解できます。けれども、先にお話したように、引渡しを受けて既に2年もお住まいになられている以上、具体的に毎日の暮らしで特別な不具合が生じているとか、建物の財産としての価値に大きく影響するとか、明らかに瑕疵といえるものがあるとか、あるいはまた、違反建物となっているというのならば、補償を求めることもできますが、それ以外では、おっしゃるような罰則などは考えにくいように思います。

 ただ、もし、工事途中から手直しをきちんと求め続けているにもかかわらず、施工業者が強引に竣工させてしまった部分があるとしたら、既にかなりの時間は経ってはいますが、一度弁護士の方に相談してみてもよいかもしれません。

 この件は、断熱工法そのものをやり直すことはまず難しくても、天井高さをなおすこと(天井を僅かでもあげること)が可能ならば、多少ご自身で費用をかけてでも、少し手を入れられるというやり方もあるかと思います。そのほうが、今後気持ちよく過ごすことができるようになられるのではと思います。

 施工業者は説明不足を認めているということですから、手直しの費用は、彼らに交渉の余地はあると思います。ご心配の申請の手続きについても、必要ならば納得の行くようにしておきましょう。
 最後に付け加えますが、ご自身の判断にも問題があったかもしれないということもどうぞ一度お考えになってみてください。
古賀 保彦 解説委員の古賀です。

 写真は工事中に撮られたものなのでしょうか?
 写真の内容によっては、解説に訂正が出るかもしれません。
 以下、解説です。

@工事請負契約と異なっている場合は契約違反と思いますが、既に完成してしまっている現在では、屋根を剥がして手直しするのには相当な費用がかかるのも確かでしょうから、現実的な被害状況を踏まえた上で、工務店と交渉するという事になるのかもしれませんね。

 例えば、契約の目標性能を下回っている場合は、充填断熱でしたら断熱材の性能又は 厚みのアップによる手直しの方法も考えられるのですが、気密の程度も関連してきますので、どうしたら不具合を補完できるのか、方法については先方と良くご協議をな さってください。

AB公庫申請・建築確認申請の内容が外張断熱で、施工が充填断熱という事でしたら、 本来は施工前に申請内容の変更手続きが必要だったかと思いますが、既に建ってしまっているので、実体的にどうなのかという観点で解説しますと、
 
◆公庫:
 省エネ基準にも種類がありますが、基準金利適用の省エネ基準の場合は外張断熱と充填断熱の厚みに違いがありません。しかし、気密住宅かそれ以外の場合では最低厚みが異なります。また、次世代型省エネの割り増しを受ける場合は、外張断熱と充填断熱で最低厚みが異なります。
 申請で要求される性能を満たしているかどうかが、判断の分かれ目だと思います。性能を満たしていない=公庫の融資基準を満たしていない事になりますが、現に融資はお受けになっているでしょうから、取り扱いが難しいところです。

◆建築確認申請:
 断熱性能の規定はありませんが、充填工法ではホルムアルデヒド発散建築材料に該当します。これも申請上の性能を満たしているかどうかが問題ですが、@と合わせてのご検討になろうかと思います。

  上記、申請上で実質的な不適合があった場合の取り扱いは、建築士というより、該当 機関の判断に委ねる他無いと思いますが、建て主さんが困る事無きにしもあらずですので慎重に動かれた方が良いと思います。

Cこれも@と合わせてのご検討になろうかと思いますが、手直しによってさらに高さに 影響が出ないようご注意下さい。
 もし工事途中で気づかれて、その時点で話し合いが持たれていれば、手直しの方法にも選択肢があったのではと思いますので、その点残念に思いますが、交渉がうまくいくよう頑張って下さい。
 コメンテーター 
畔上 廣司 コメンテータの畔上です。

入居後2年経っての交渉とは・・・・・。
家づくりはお互いの信頼関係が重要なポイントであることは言うまでもありません。
本件トラブルの経緯・経過や現状についてはっきり確認できませんが、今までその他いろいろな問題点を抱えての2年間であったと感じます。

注文建築でありながら設計監理者は存在せず、建築主と設計施工・管理者の信用信頼性に疑義が生じたことは非常に残念です。施工会社の説明不足は否めませんが、久米委員の解説にありますように「途中で気づかれていたとしたら、なぜそのまま工事が進行したのか」
「契約と違う工事に納得されないのならば、工事をそのまま進めたり、引渡しを受けるべきではなかった」など、本当に不思議な気がします。また、契約書に添付された見積書の内容がどうであったかも肝心な点でしょう。

また、今回のK.Iさんのケースは公庫融資を対象としているわけで、古賀委員解説による設計変更手続き上の問題は否定できませんし、建築確認申請上の不備を追求する場合、申請受理機関より不適合、是正措置などを指摘されたりする可能性もあり、建築主にとって面倒な状況も覚悟しなければなりません。

総じてコメントするならば、建築主、設計施工会社双方の判断に相当な不一致があったと感じられてなりません。なお、違反・虚偽・罰則などの言葉は却って先方を刺激させてしまうかもしれません。今後はメンテナンスも大事になってくる時期です。主張できる部分できない部分を理解融合し合い、譲り合いの精神をもって和議なさったら如何でしょうか。

この機会に、2年間の苦悩や不信感をしっかり払拭できるとよいですね。
 事務局から 
  荻原 幸雄 契約時の設計と違う場合は当然、債務不履行になりますが、この事実は知ったのが竣工後何らかの是正工事なり、自分で屋根裏から調べたのならば、当然、施工会社に過失の責任がありますが、この場合は是正工事か、それに見合う損害賠償になると思います。

施工中に知っていた場合は過失割合が変わると思います。また、写真を撮っておいたけど、後でいろいろ調べて解った場合は前者と同様だと思います。
メンテナンスもありますから、話し合いで解決を期待したいものです。
相談者お礼状 
 相談者お礼状
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