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一般社団法人建築よろず相談支援機構

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〒181-0001 東京都三鷹市井の頭3丁目12番11号

よろずWEB相談HEADLINE

No. 1073 家の天井の梁からぽたぽたとしずくが垂れる。

 相談概要 [氏名] N.N
[相談内容] 注文住宅の瑕疵
[相談建物所在地] 東京都小金井市
[職業] 主婦
[年齢] 34
[女性] on
[構造] 木造(在来工法)
[引渡し年月日] 西暦    年  月  日
[公庫は使わない] on
[性能保証は使っていない] on
[何階建て] 2
[延べ面積m2]
[延べ面積坪] 30
[工事請負金額] 1900
[設計監理料] 160
[様態] 注文建築
[施工者] 大工(工務店)
[設計者を選んだのは] 自分で選んだ。
[監理者を選んだのは] 自分で選んだ。
[確認申請書は本来建築主が出すと説明を?] 受けていない。
[18確認申請の為の委任しましたか?] した。
[確認申請書お持ちですか?] 有る。
[検査済証は有りますか?] 無い。
[設計図面は何枚もらいましたか?] 30
[工事着工まで設計の打ち合わせは何回しましたか?] 20
[施工者名] T建築計画
[販売会社名]
[設計者名] F
[監理者名] F
 相談内容 [現象]・[業者の見解]

建築会社の説明では、生活上の水蒸気(2階は14畳のキッチン・リビングです)が天井裏に上がり、換気口もないために結露が起こるという説明でした。
でも設計図面どおりに建てたということで、補修(天井のボードを交換し、天井裏にセルロースを充填するとするとのことです。)は有償になるといわれました。
そこで、設計士に通常の生活の湿気が天井に上がらないような構造になっていないのかと聞いたところ、「断熱材(ロックウール)がビニール袋に入っていて防湿になっている」との回答でした。

ところが我が家はダウンライトの上には断熱材は入っておらず、そこから水蒸気が入ってしまうようで、それについては設計士が監理不足だったことを認め、修繕費の半分を持つという方向で話が進みそうです。
この設計士に、「天井に換気口がない構造で、一体天井に上がった水蒸気はどうやって外に抜ける設計だったのか」と聞いたところ、「高断熱・高気密住宅ではないので、どこかに隙間があるからそこから抜けます。」という回答で、私と夫は大変驚きました。本当にそんなもので大丈夫なんでしょうか?

我が家の状況を伝えても、「他の家では結露はしていませんから」繰り返し、特殊な事例のようないわれようです。でもどう考えても設計ミスではないかと思えてなりません。
他にも外壁のヒビや壁紙のヒビなどもあり、木の収縮という説明でしたが、年を追うごとにひどくなってきて、また対応も悪く、この設計士が信頼できなくなってきました。

ちなみに、この設計士が独立してから建てた家では私たちの家が初めてだそうです。
私共の家は2002年の夏に引渡しを受け、築3年が過ぎましたが、この冬、家の天井の梁からぽたぽたとしずくが垂れてくるようになりました。(実は去年もしずくが落ちてきたようにも思ったこともあったのですが、ひどくなくてわかりませんでした。)

ちなみに天井は片流れの屋根に沿った勾配天井で、天井裏は30cm程度しかありません。
断熱材を入れると空気層はほとんどといっていいほどありません。天井高は高いところで4mくらいあります。ダウンライトが7箇所ついています。

建築会社に問い合わせをし、天井のダウンライトを外しみてもらったところ、天井裏はバケツをひっくり返したほうな状態でした。

[相談内容]
1.袋入り断熱材で天井裏に湿気がいかないような防湿になるのでしょうか?素人考えですが、天井裏に防湿シートを貼った方が、防湿になりそうです。
2.防湿シートはダウンライトのところは入れられませんが、そこは袋入り断熱材を乗っけておけば(断熱材を上に乗せても大丈夫な構造のダウンライトだそうです)防湿になりますか?
3.きちんと防湿してもらっても、セルロースを充填しないと駄目なのでしょうか?
4.天井に換気口を作らなくても法的に問題はないのでしょうか?
5.結露でビショビショになっているにもかかわらず、「高断熱・高気密住宅ではないので、どこかに隙間があるからそこから抜けます。」という回答をする設計士ってどうなんでしょうか?






 yorozuの感想 予算が少ないながらも設計士を入れて家を建てたいと思ったのはこのHPを拝見したからです。
よろしくお願いいたします。
アドバイザー 
山口 雅克 解説員の山口です。

 相談の番号にそって解説します。

1:天井裏に防湿シートを貼った方が防湿になりますが、「高断熱・高気密住宅」でないのであれば、完全な防湿にはならない事を御理解下さい。それは、照明器具や壁との納まりなどで小さな隙間が生じるからです。

2:「高断熱・高気密住宅」でない場合は袋入り断熱材の防湿シートを突き付けたり重ねたりはしますが、張り合わせるような事はしませんので、どうしても隙間が生じます。ですから、完全な防湿とはなりません。

3:完全な防湿は難しいと考えます。現在使っている断熱材は内部が濡れていると思いますので再使用は止めましょう。セルロースが良いのかどうかは設計図の詳細を検討して決めた方が良いですよ。

4:天井裏の換気口未設置は法的な問題はありませんが設計上の問題は生じてきます。

5:設計者のとっさの言い逃れ的な発言ですが、小屋裏の換気は隙間があるから良いとかの話でなく、妻壁に設ける場合は天井面積の1/300以上、軒裏なら1/250以上などや他の方法でも天井面積の1/900〜1/1600以上を確保するのが一般的です。
*設計図にどのような工事仕様書を使うのか記載されていませんか。住宅金融公庫監修のものであれば、8造作工事に小屋裏換気のことが記載されています。

 また、その建築士は保険には加入していないのでしょうか。建築家賠償保険などがあり設計ミスに関しては保険を使う事が出来ますので確認してみて下さい。状況からすると、屋根の野地板からやり変えねばならないかもしれません。
 施工者も図面通りにしたとしても天井裏に換気口がない事くらいは監理者(設計者)に確認すればよかったのではないでしょうか。
 外壁や壁紙のヒビなどは木の収縮で出ることも多いのですが、まだ進行しているようであれば調査してみる必要があります。
久米 能子 兵庫県の久米と申します。

 断熱材のビニールは断熱材の中に湿気が入らないことに対しては多少は役に立つかもしれませんが、小屋裏に水蒸気が進入することを防ぐことはできないはずです。水蒸気はわずかな隙間から昇ってくるからです。ダウンライトの上に断熱材を載せてもまた、水蒸気を防ぐことができるほどの隙間を防ぐことはできません。

 N.Nさんがおっしゃるように防湿シートを天井にはるのは水蒸気を防ぐのに効果的ではありますが、防湿シートを採用するのならば、天井だけではなく、壁も(場合によっては床も)すべて防湿シートを連続させて家を囲むように施工しなければ、どこからか水蒸気は小屋裏に昇ってきてしまうので、意味がありません。そうなると、工事は大ごとになってしまいます。

 建築会社がセルロースを断熱材に採用しようというのは、セルロースはロックウールに比べて、水蒸気を吸放出する性質があるからだろうと思いますので、それ自体は良い提案かと思います。小屋裏内の湿度調整に多少の期待が持てるからです。

 ただし、それがN.Nさんの家に適しているものかどうかは、山口解説委員の言われるようによく検討する必要があると思います。
 今からでも小屋裏の通気を取ることはできないのでしょうか。どのみち天井をはがすのならば、天井の高さを少しでもさげて、小屋裏の通気をとることを検討されてはと思います。

 それ以外に、室内の換気を(弱くでも良いので)常時行うことです。片流れのできるだけ高い部分に換気扇を取り付け、いつも弱く回しておくと良いと思います。
 また、水蒸気をできるだけ発生させないような暖房器具を使用されるとさらに良いです。灯油やガスストーブのように燃焼して暖めるものは、大量の水蒸気を発生させますので、そのようなもの以外を使われることも結露対策には良いはずです。
 さらに、最近は湿度調整のために珪藻土などを室内の仕上げ材に採用される家が増えています。クロスの上から簡単に素人でも塗れるものがありますので、日曜大工にチャレンジされてみるのも結露対策の一助になるはずです。

 残念ながら、N.Nさんの家の設計の検討不足は否めないかもしれません。
 しかしながら、建築会社は「小屋裏換気口が無いから結露した」とはっきりと原因を理解しています。原因を理解しているのならば、当然、施工中には換気口を取らないとこのような結果になるのではと予測できたはずです。

 そのように簡単にわかることであるのですから、その建築会社は、良心的な施工業者として、工事中に設計事務所に対し、小屋裏換気口の設置について助言する義務があったと思います。ですから、「図面通りに施工したのだから補修費用は有償」というのはおかしな話です。設計図書に施工上の問題がある場合は、施工業者はその問題点を設計事務所に伝えなければなりません。(建築会社との契約書にそのような内容はないでしょうか。)

 ですから、その建築会社が問題を指摘したにもかかわらず、設計事務所が建築会社の意見を無視して図面通りの施工を指示したのでない限り、建築会社も費用負担をするのが当然ではないかと思います。
 補修費用の半分を設計事務所が負担すると申し出ているのならば、残りの半分は建築会社に負担を求められるべきかと思います。

 私たちのよろずのサイトを見てくださって、設計事務所に設計監理を依頼しようと考えていただいたのは嬉しいことです。けれども、設計事務所の経験や技術はさまざまです。また、誰でも、私自身も、一生懸命やっていても失敗してしまうことはあります。こうやって解説していても、明日、自分の現場で不本意ながら間違いをしてしまうかもしれません。

 依頼された設計事務所をかばうつもりはありませんが、補修費用の負担をすると言っているということはさほど不誠実ともいえないかと思います。
 どうぞ、気を取り直されて、良い解決方法を3者で検討してください。

 尚、断熱材をダウンライトの上に載せるようにするのならば、ダウンライトは専用の照明器具(断熱材を上に載せても熱がこもって危険にならないタイプのもの)を選択しなおす必要があります。ご注意ください。
 コメンテーター 
善養寺 幸子 コメンテーターの善養寺です。

 勾配天井を採用した物件での代表格の失敗例ですね。知識不足、技術不足は否めません。今回の極端な結露の原因を説明しますと、断熱材は断熱材と言っても徐々に熱伝達し(現在の施工はとくに熱伝達しやすい納まりと考えられます。)室内に屋根の放射冷却によって極端に冷たくなった屋根材の熱を伝達してきます。その熱が狭い天井裏の気積(空気の入っている空間の容積)では、その空間を極端に冷やしてしまうのです。

いくら建築の施工性能が悪くてもその隙までは、熱の逃げる量には限界があるので、冷えた空気が籠もり、そこへ室内の蒸気が入ってきて露天に達し結露するのです。その上に露の逃げ場もないですから雨漏りのような極端な結露になります。例えるなら、同じサイズの冷暖房機なら狭い部屋でかける方が、広い部屋よりも良く効くと考えてください。冷暖房機は屋根面全体というところです。この狭い天井裏に屋外の換気口を設けても意味はありません。多少、蒸気が抜けやすくなるだけで冷えた空間で結露を起こすと言う構図は変わりません。

 一つの策としは、セルロース断熱の施工もありかも知れませんが、それもちゃんとやらなければダメです。セルロースが調湿性能も高いですし、何よりもロックウールやグラスウールに比べ、空気の流入の悪い素材ですので、そう言う点で結露を起こしにくい状況を作ります。しかしながら、それをただ単に小屋裏に吹き込むのではかえって問題を複雑にしてしまうかも知れません。

一度、天井を剥がし、屋根の断熱材を撤去し、きっちり充てんできる下地を作り、密閉した状態でブローイングする。そして、少し天井を下げ、ダウンライトが断熱材を欠損しない納まり(少なくとも断熱材と天井は15センチ以上空ける)とし、低温発火による火災も心配ですから、ブローイングしなくてもダウンライトはSB(ブローイング用)の器具にして、天井裏と室内側にスリットなどで換気口を設け室内側と天井裏の空気の循環が出来るようにし、天井裏と室内の温度差が起こらないようにします。
ちょっと、手が掛かりますがそれくらいこの機に直しておいた方が良いでしょう。

天井裏に防湿シートを貼っても、壁などの空間を通じて室内の蒸気は小屋裏にはいるでしょう。屋根断熱の施工をちゃんとし、断熱材の側に気密のしっかりした防湿シートを設け、狭い天井空間を室内に解放する。それが基本です。
なお、断熱材のビニールは作業者がウールでチクチクしないよう、表面のウールを作業中に大量に吸い込まないよう労働環境を改善するために措置されているものであって、それが気密を作るものではありません。ウール材のビニールパックは建築の性能を作るものではないと言う認識でいた方が良いです。

設計者も技量不足を反省しているようですから、悪気があった訳ではないと思います。
当事者にとっては災難ですが、失敗は成功の母ですので、若手を育ててあげたのでしょう。ベテランでも、予期せぬ失敗はあるものです。建築は一品製作ですので、生活スタイルや周りの環境、施工者の技量によっても毎回変わります。そう言う点では、暮らしてみて改善していかなければならない物です。そのため、設計者とは長い付き合いとなるものです。

使ってみて試行錯誤しながら、完成に近づいていくのかも知れません。一緒に考えていきましょう。多分、空間としては大変良いものが出来ているのではないでしょうか?プラスマイナスで、マイナスを改善していく。手作りで完璧という物はないように思います。プラスの部分も忘れずに、改善の余地があるのですから、大らかに構えてください。

費用については、セルロースを採用するとなるとロックウールより高額な製品ですので、費用の差の支払いは必要かも知れません。しかしながら、その改善工事全般を対象とするのはどうかと思います。設計者も負担し、施工者もそれなりに負担しなければならないでしょう。その辺は冷静に話し合って、割合を決めたら良いと思います。解決できると思います。
 事務局から 
  荻原 幸雄 本当に結露と決め付けるのは早計ではないでしょうか。
漏水の可能性もあると思います。

気密でない家は昔の家は全てです。だからといって結露するものでもありません。
ダウンライトを断熱材で覆う場合はそれに適したものを使用しないとダウンライトの熱が逃げずにダウンライトが壊れることになります。
先ず、このような場合は雨の時の状況を観察してみてください。
もし、漏水でないことが確認できてから結露を疑うことです。

どちらにしても、天井をはがして断熱材からやり直すことになると思いますので、しばらく、雨の日の状況を観察してください。
相談者お礼状 
 相談者お礼状 相談者のN・Nです。

山口様、久米様、善養寺様、そして荻原様
ご多忙のところ、ご回答ありがとうございました。

私共の家を設計した設計士は相談してもまるで人ごとのような対応で、今回の修繕に対しても工務店と直接相談し、私達と話をするのを避けているような感じです。
私達への連絡も工務店からしか来ません。何度メールを出しても返事がきません。
このような事態にこそ、家を設計した建築家が親身になってアドバイスをしてくれるものだと思っていただけにかなり残念に思っています。

今回相談のご回答をいただいて、少し前向きな気持ちになることができました。
家の外壁のヒビ、壁紙のヒビについても、改善するためには梁や柱を追加した方がよい気がしています。

私たちの大切な家を長生きさせるために、設計士・工務店にはその場しのぎでない修繕をお願いしたいと思いっています。
工務店からは「断熱材の見積りが出たら連絡する」と留守電が入っていました。来週には何らかの動きがあるかと思いますので、またご報告いたします。
本当にご尽力感謝しております。
 その後  
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