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一般社団法人建築よろず相談支援機構

TEL. 0422-24-8768

〒181-0001 東京都三鷹市井の頭3丁目12番11号

よろずWEB相談HEADLINE

No. 1069 屋根からの落雪の抜本的対策は?

 相談概要 [氏名] KM
[相談内容:] その他
[居住住所] 石川県金沢市
[年齢] 49
[女性] on
[構造] 木造(その他)
[引渡し年月日] 西暦1996年9月  日
[公庫は使わない] on
[性能保証は使っていない] on
[何階建て] 2
[延べ面積m2] 119.1
[延べ面積坪]
[工事請負金額] 2556
[設計監理料] 119.1
[様態] 注文建築
[施工者] 大工(工務店)
[設計者を選んだのは] 自分で選んだ。
[監理者を選んだのは] 自分で選んだ。
[確認申請書は本来建築主が出すと説明を?] -
[確認申請の為の委任しましたか?] した。
[確認申請書お持ちですか?] 有る。
[検査済証は有りますか?] 有る。
[設計図面は何枚もらいましたか?] 2
[工事着工まで設計の打ち合わせは何回しましたか?] 不明
[床面積] 120m2以下
[施工者名] O工務店
[販売会社名](株) T
[設計者名]設計室 T
[監理者名]設計室 T
 相談内容 [現象]
建築士に依頼した建物は屋根が45度の急勾配であったところ,平成13年1月に屋根雪が落ち隣家のサンルームを壊した。同年に調停を申立,調停委員の建築士から狭い団地内で急勾配の屋根をつけること自体当方の設計士の設計ミスとの指摘を受けたが,結局,当方がサンルーム等弁償する一方,急勾配の屋根に融雪装置「瓦番」を取り付けることで調停が成立した。
昨年,主人が亡くなり,収入が無くなったうえに今年の豪雪で融雪装置の灯油代がかなりの金額になりそうな状況である。

[業者の見解]
建築業者は設計士の図面どおり設計したとの見解で,具体的な対処策はなし。多忙であったため,総て設計士に任せて,言われるとおり,構造計算,地盤調査や改良などしてきた。同時に急勾配の屋根からの落雪について相談したが,良い対策の回答がなかった。

[相談内容]
今後の灯油代,装置の修理代を考えると高額な費用が必要となり,また雷に対する停電や油切れの恐怖など,今のうちに費用は多少掛かっても,装置に代わる抜本的な対策をと思っておりますが,なにか良い方法がないか,どうぞご教示下さい。建物はソーラーサーキットという高気密高断熱の住宅で,床下部分に書庫を作りましたので,2階建てですが,高さは他の家より高く,屋根は南北にそれぞれ一枚屋根となっています。隣家とは北側の屋根と接しております。
 yorozuの感想 主人が亡くなり,たった一人で悩んでおりましたので,このホームページを拝見し,本当に嬉しく思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
アドバイザー 
今井 優子 解説員の今井です。

充分な雪を落とすスペースが無い条件で、45度の勾配屋根を計画することは確かに設計者の配慮不足、判断ミスは否めないと思います。
私の住んでいる札幌でも、雪はしばしば近隣トラブルの原因になります。
隣地境界に雪止めの大きなフェンスを作ったりしているところもありますが、自然は時に、我々人間の予測をはるかに超える力を見せつけるもので、H鋼の柱やエキスパンドメタルのフェンスが無残に曲がってしまっているところもたまに見かけます。
屋根の雪の処理は、@落とすか、A溶かすか、B乗せておくかのいずれかの方法に依るしか無いと思います。

落とせる堆積スペースが地所に無ければ落とせない。ので、@は無理。
溶かすのにはエネルギーを必要とし、毎年その費用と設備のメンテナンスが必要で、また設備自体の寿命も15年〜20年がせいぜいといったところ。
ということでAは考えもの・・・。
となると、住宅密集地ではBの乗せておくという方法を採用することが一般的です。(札幌の場合は、ですが・・・。)

乗せておく=無落雪屋根といいますが、この無落雪屋根は、スノーダクトと呼ばれる見かけ上フラットな屋根(実際は内側に水勾配がついていて雨水や雪解け水を 建物の中心付近の樋に集め内部にドレインを取って落としています)がほとんどです。
最近は勾配屋根でも無落雪になる「スノーストッパールーフ」や「コロナルーフ」、又は「セキスイのかわらS」といった屋根材が使われはじめ、北海道では施工実績も年々増えています。

これでしたら、今の屋根形状を変えることなく、屋根材を葺き替えるだけで済むのではないでしょうか。
ただし、雪を載せておくということは、その荷重を充分考慮した構造になっていなければなりません。でなければ雪の重みで、建物が歪み、様々な不具合が出てきます。
何より積雪時に地震でもあれば命にかかわる事態になってしまいます。ですから、しかるべき構造の補強は必ず必要です。

北海道で前述のようなスノーダクトという屋根形状が普及しているのは、北海道の雪は湿り気が少なく軽いので、積雪1cmあたりの荷重はそう多くないからだと言われています。北陸の雪は水分が多く非常に重たいので、屋根に雪を載せておくことは一般的ではないのかもしれません。(となると、Aの溶かすという方法を選択せざるを得ないのかも知れませんね。)

また、「スノーストッパールーフ」、「コロナルーフ」、「セキスイのかわらS」などについても金沢の雪に対しても有効かどうか、メーカーに確認した方がよいと思います。
いずれにしても、地域の雪の質や降雪量、風向きなどによく精通している建築士に相談する必要があると思います。

前置きでも述べましたが、自然は我々がどんなに周到な準備をしていても、そう簡単にコントロール出来るようなものではありません。
前述のスノーダクトの無落雪屋根でも、今年のような大雪と低温続きでは、風向き次第で大きな雪庇(せっぴ)が出来、それが垂れ下がり、2階の窓ガラスを割らんばかりに塞いでいる家を多く見かけます。
これから気温が上がり雪が緩んできたら、それが一気に落ちて・・・。春になったら、あちらこちらで物置やら、ガレージの屋根やら、塀やら・・・いろんなものが壊れているんだろうなぁ〜と。まぁ、雪国の宿命見たいなものですね。

頼りにしていた御主人に先立たれ、心細さから色々なことが必要以上に不安に感じ、あれこれと思い悩んでしまう・・・という方は少なくないようです。
でも、そんな心理状態に付けこんで不安を煽り、さして必要のないリフォームや改修を勧め、高額な請求をするという、心ない業者も残念ながら存在します。
あまり慌てず、お子さんやご親戚の方などとも、よくお話になって見てください。
 コメンテーター 
大内 彰 申し訳ありませんが、建物の形状や隣地との関係が分からないので「これは!」というアイディアが浮かびません。

金沢でも雪の少ない地域もあると思います。設計者のTさんに相談して雪を載せたままでも梁や柱が重さに耐えられるか、地震が来ても大丈夫かを確認してもらい、大丈夫であれば有効な雪止めを設置する方法を考えてもらうということも可能性としてはあります。計算書や構造図があれば他の設計事務所に依頼してもその可能性を確かめることはできます。

そのような設計事務所が見つからなければ「調査依頼」という形で「よろず」に再度連絡していただければ対応できると思います。
 事務局から 
  荻原 幸雄 設計者の配慮不足というより、積雪地域での設計ミスなのは明らかですが、それにしても、施工者も雪国の業者ならば設計図になくとも設計者に確認するぐらいの配慮は必要です。
ダブルで困ったものでしょう。
雪止めをつけることをお勧めします。
今井解説委員のとおりです。ただ、付けるだけでは駄目です。
雪の重さを設計に反映しているかも確認する必要があります。
それが確認できれば雪止めだけの費用で済むでしょう。しかし、雪の重さに耐えうる補強が必要ならば結構な費用負担が考えられます。
頑張ってください。
相談者お礼状 
 相談者お礼状  ご回答を賜り、有難うございました。心より感謝申し上げます。
 あれから落雪による別な問題が発生しました。同じことが以前にもあり、抜本的な改修か退去を考えておりました。

 私が居住する地域は金沢市でも海に近く山沿いほど積雪はありません。今年は多いときで約60センチくらいの積雪でしたが、雪質は水分を含み重く、夜中に凍りつき、それが日中温度が上がると融雪をしていない南側の屋根から全総雪崩のように一気に落ちます。

 南側の屋根も45度の急勾配、一階部分まで一枚屋根で、途中左側一部をベランダを作るために切り込みしてあります。また、中央に明り取り用出っ張りの小屋根がついていますし、右側一部は屋根部分を二階でカットし、その一階部分は木製デッキと藤棚になっております。土地は東南の角地でそれぞれ道路に接しております。

 別な問題とは次のとおりです。
@ベランダの下はダイニングになっており、凍り付いた雪が何度もベランダに一気に落ち、亀裂が入り、ダイニングの天井と壁から雨漏りがしております。今回で2回目です。ベランダは雪が山のように積まれ、陽射しが入りません。
A中央の明り取りの小屋根の淵が重い落雪のためにめくれております。これも今回で2回目です。
B南側の道路を除雪中、凍りついた重い雪が一気に一部道路まで落雪し、まともに受けていれば怪我をするところでした。(その時はベランダで大部分の雪がとまりました。)
C藤棚は落雪のために一部壊れておりますし、木製デッキも雪が山のように積まれ、藤棚ともども過去に修理しております。また、家中の雨樋が壊れ、数年前に全て取り替えしました。

すべて急勾配な屋根による落雪被害だと思います。夫の生前中は夫とともに(子供はおりません。)朝早くから夜遅くまで仕事に出ていたため、どのように落雪するのか全くわかりませんでした。
夫の死亡とともに私も失職したため在宅しておりますが、初めて落雪する時の凄い音と振動に驚いております。

これまで壊れた隣家のサンルームと融雪装置で300万円強、前述した修理代として約100万円弱の費用がかかっており、灯油代のほかに今後も修理代が嵩むのであれば、ここには住めないと考えております。それ以上に通行人に怪我を負わせることがないかと不安でいっぱいです。また雷による停電で融雪装置が働かなく可能性もあります。(一度停電がありましたが、短時間で回復しました。)

この地区の他の家屋では被害が無いのにと、思い余って設計した建築士に連絡し、現状を述べたところ、先日来られました。
解説員の今井先生のおっしゃるとおり、私も安易な対応による二次被害を心配し、抜本的な改修が出来ない限り、安心して住むことが出来ません。
建築士は、前述したことを踏まえ、検討されるとのことでした。
今後、何かの案を示されると思いますが、ご指摘頂いたことを前提に検討したいと存じております。
本当に有難うございました。
 その後  金沢市の建築指導課など相談した折、北陸ではこのような急勾配の屋根では、雪止めが殆ど効かないということでした。

大変ご無沙汰しております。
屋根雪のその後の経過をご報告いたします。
本日、設計士が10月頃屋根形状の改築をするとのことで来られました。
精一杯のことをさせて頂くとのことで、心より感謝しております。
本当に有難うございました。完了しましたら、報告させて頂きます。
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