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一般社団法人建築よろず相談支援機構

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よろずWEB相談HEADLINE

No. 1018工 事費内訳明細書の提出を拒否されて

 相談概要 [氏名] S.K
[相談内容:] その他
[居住住所] 静岡県静岡市
[相談建物所在地] 静岡県三島市
[職業] 会社員
[年齢] 33
[男性] on
[構造] 木造(在来工法)
[引渡し年月日] 西暦2005年 12月上旬
[公庫は使わない] on
[性能保証を使用] on
[何階建て] 2
[延べ面積m2]
[延べ面積坪] 38
[工事請負金額] 1700
[設計監理料] 0
[様態] 注文建築
[施工者] 地場中小ハウスメーカー;地域的な中小産業
[設計者を選んだのは] 自分では選んでいない。
[監理者を選んだのは] 自分で選んでいない。
[確認申請書は本来建築主が出すと説明を?] 受けていない。
[確認申請の為の委任しましたか?] してない。
[確認申請書お持ちですか?] 無い。
[検査済証は有りますか?] 無い。
[設計図面は何枚もらいましたか?] 2
[工事着工まで設計の打ち合わせは何回しましたか?]
現時点で6
[床面積] 130m2以下
[施工者名] Wホーム
[販売会社名] Wホーム
[設計者名] S.F
[監理者名] Y.M
 相談内容 [現象]
建築請負契約を結んだ段階なのですが、工事費内訳明細書の提出を拒否されております。契約書には速やかに提出する旨、記載されています。

[業者の見解]
坪単価で販売している商品のため、明細は無い。仕様書(簡単なもの)を渡しているはずだが何が不満なのか分からない。契約書に記載されている事については全く説明がありません。


[相談内容]
できれば工事費も明細があれば良いのですが、材料等だけでも事前にはっきりさせておきたいと思っています。両親の知り合いであり、信用はしているのですが、出さない事に対してはもちろんの事、明細が無くても家が建つものかと不信感が沸いてきております。事を荒立たせたくは無いのですが、大きな買い物ですのできちんと筋道立てて事を運んでいきたいと思っています。契約書に明細の提出について記載があっても業者は提出を拒めるのでしょうか?
 yorozuの感想 家を建てるのは人生で何度とあることではありません。業者任せになりがちで、業者の言いなりになってしまいがちですが、第三者の専門的な判断や意見を頂戴できるのはとてもありがたいと思います。
アドバイザー 
阿部 重幸 解説員の阿部です

完成度の高い家を作るには、必要不可欠な要素がいくつかあります。
まず、1.設計図書 2.設計図書に基づいた仕様書 3. 1.2.を元にした数量・工数の把握そして、一番大事な事はイニシヤチブを施主本人が持つことです。
文面の内容から勘案すれば、貴方の場合はまずイニシヤチブが施工者側にあると思われます。
建物に坪単価はありません。ひとつひとつの部品が集まって価格を構成するものです。
其の為の内訳明細書です。本来ならば契約にさいし請負者は内訳明細書の内容を発注者(施主)に説明する義務があるものです。
このままの状況で工事に入れば有耶無耶の内に終わり、大きな悔い残ると思います。
両親の御知合いと云う事ですが、両親にも貴方の思い十分伝え、相談し内訳明細書が提出され説明が、なされないうちは工事の着工をしてはならない旨を施工者に書面にてできれば内容証明で伝えてください。

そして、業者まかせにせず、貴方が建物のイニシアチブを持ってください。
大変な事ですが、そうすれば貴方の願いがかなった家ができると思います。
又、その事によって貴方もおおきく飛躍できると思います。

健闘をお祈り致します。
本郷 成史 本郷です。

阿部さんのおっしゃるとおりです。
また、施工者がご両親と知り合いという事が引っかかります。
昨年、調停の証人をして和解した1件と、現在裁判と調停で争っている2件の計3件とも、施主(建築主)と施工者が知り合いだったのです。

それぞれに出廷して主張を聞くと、施主は“知り合いだから他よりも良い仕事をしてくれるだろう”と通常より、より良い家が出来ることを期待しています。
しかし、施工者は“知り合いだから多少悪いところがあっても我慢してくれるだろう”という甘い考えで、仕事をする傾向にあるようです。

その結果、期待と現実との落差が、通常の施主と施工者の関係より大きくなるようです。
これを回避するには、設計図書の充実、内訳明細書つきの見積書が必要不可欠なものです。これで施主の要望をしっかりさせ、他の方法ができないように箍をはめることです。

更に、工事中の施工者を管理する、工事監理を第三者にお願いする事が必要です。
竣工後もめるのが、設計変更や追加工事です。これも基となる設計図書や見積書が無ければ対応できません。
着手してしまったら施工者のものです。気まずくなるかもしれませんが、家を建てるための階段を、一段ずつ確実に上って頂きたいと思います。
 コメンテーター 
久米 能子  阿部解説委員や本郷解説委員の解説は、本筋を得ていて、是非建築主の皆さんが知っておいていただきたい基本的なことです。

 しかしながら、S.Kさんの場合、工務店というよりも、ハウスメーカーと記載されているように、坪当たりいくら、という話だけで毎回工事を進め、他のこれまでの建築主のほうもそれで簡単に了解して進めてきているのが通常の業務となっているような会社なのでしょうから、そもそも、はじめから、一般の工務店の注文住宅とは状況が異なっているように思います。

 また、契約書はおそらく、民間(旧四会)連合協定の工事請負契約約款を習慣で使っているだけで、その内容について厳密に考えては居ないのではないでしょうか。
 
 工事請負契約書には「契約後速やかに明細を…」と書かれてあると思いますが、本来は、契約前にそれらを確認するのが普通です。明細のない合計金額だけで、細かい中身も材料さえもわからず、契約書に印鑑を押すことは、不安ではありませんでしたか?材料等明細の確認は、事前にされるべきものでした。設計事務所が第三者として入る工事ならば、当然、そのように進められたはずです。

 この「明細を出さない」、ということが気になるのが、契約書に書かれてあるから、という手続き的理由だけで、基本的に家の仕様については気に入られていて、また、ご両親の知り合いだから信頼し、少々のことは良い、と思われているのならば、このまま進められるのもひとつの方法と私は思います。

 というのは、おそらく、いつも明細など出してはいない会社なのでしょうから、何度明細を出せと言っても出てくることは無く、こじれて揉め事にどんどん発展する可能性は大きいと想像できるからです。そのような会社を選択されたご自身の責任と思い、この件を諦める、ということです。ただ、今からでも遅くないので、よく建物について本などで勉強され、こまめに現場へ通い、書類は諦めても、建物そのものは、ご自身の目で確かめていかれることは大切です。

 ご自身が不安に思っていることを率直に伝え、明細が出せないならば(明細をきちんと書く能力さえも、もしかするとないかもしれません。)、口頭でも聞き、それをご自身でメモして、相手にも確認してもらいながら進めるようにされるのも方法です。仕様書の内容がどんなものかわからなければ、サンプルを見せてほしいと頼みましょう。

 それさえも無理ならば、契約を解除し、本来必要な設計図書と見積もり明細を整えることができるように、新たに他の設計事務所と工務店を探すのも良いでしょう。このまま不安を残して進めて、家の工事がうまく行かなくなってからでは、今よりもずっと難しい状況に置かれてしまいます。契約解除の費用はかかるかもしれませんが、後でさらに問題が続くよりはずっとよいでしょう。
 
 内容証明を送ったりするのは最後です。いきなり送れば、喧嘩を売っているということになります。 
 もし、今の相手と気持ちよく家つくりを進めたいなら、まず、正直な気持ちをぶつけましょう。

 しかし、ことの面倒を考えて安易に妥協するようなことはせず、工務店を見極めることは忘れないでください。不安や疑問を残したまま進めると、また同じことになります。大変なのは今だけです。できた家には何十年も住むのです。
 事務局から 
  荻原 幸雄 できれば『我が家を手に入れる前に読むQ&A80』を読んで欲しかったと思います。
家を持つ基本は全てそこに出ています。
契約は本来明細が出てするものです。
しかし、施工業者の提出する工事請負契約はその後に速やかにという、曖昧なものになっていることが問題ではあります。

通常、建築家が使うものでは民間連合協定(旧四会連合協定)工事請負契約約款を利用します。
これらは建築主と施工者との間の工事請負契約の約款に工事監理者を丙とするというもので、
工事監理の責任者として建築主と施工者だけでなく工事監理者としても記名捺印することで、確たる工事監理の責任を担うことになります。また、これを使う場合

 1.契約書 
 2.契約約款 
 3.内訳明細書
 4.設計図
 5.特記仕様書
が揃っていて初めて契約が成立するものです。

特に3.内訳明細書は設計変更の場合の工事費増減の根拠となるものとして重要です。
これが無い場合、施工中の変更の増加減の見積りの根拠ができないことであり、「高い」というトラブルに発生し、根拠がないのですからそれを証明もできません。
また、工事中「この部分は別途であった」「この範囲は見積りでは考えていない範囲」「図面では描かれているが、見積りはみていない」などと追加請求が出てくることも多く、それに対峙する根拠を建築主が持たない無防備な状況であることを意味します。
出せない場合は黙って仕様を落とすことも業者によってはあるでしょう。変更されても「こっちのが高い」と言われたら、その対峙する根拠を見出さなくてはなりません。

このように重要な内訳明細書でも出さない業者も多くおります。
提出しない其の時点で失格のようなものですが、そこが、業者の提出した工事請負契約は速やかにというような曖昧な表現で契約後に提出していいものになっていることが問題であると思いますし、そのような工事請負契約書が市販されていることももっと問題ではあります。

契約書に記載があり、求めているのですが、拒絶は契約違反になるでしょう。
あくまでも提出を要求してください。
相談者お礼状 
 相談者お礼状 皆様、はじめまして。
さっそく、ご丁寧な解説を頂きありがとうございました。
十分検討のうえ、対処していきたいと思います。
現状では、金額の明細を出さないにしても使用する部材の明細を求めております。
久米さんのおっしゃるように、こじれるのを避けこの件は割り切ってしまおうとも思います。
勉強不足だったと反省しています。
いずれにしても納得のいく結果になるように頑張って、皆様にその後の報告をさせていただければと思います。
この度はありがとうございました。
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