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一般社団法人建築よろず相談支援機構

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〒181-0001 東京都三鷹市井の頭3丁目12番11号

よろずWEB相談HEADLINE

No. 0998 建ぺい率はクリアしても、違法では?

 相談概要 [氏名] O・H
[相談内容:] 近隣のトラブル
[居住住所] 愛知県岡崎市
[相談建物所在地] 愛知県岡崎市
[職業] なし
[年齢] 62
[女性] on
 相談内容 [現象]
私宅の西隣に2階建てのコンクリート製の家が建ちます。
2階建て一般住宅という事で安心していましたが、工事が進むにつれて、なぜ土地全体に鉄筋をしくのか疑問に思い業者にたずねた所、道路側(北)は1m位、他三方は60cmあけて、「全面」高さ7m15cmの直方体状の建物が建つそうです。
(第二種住居地域です)

[業者の見解]
壁の内側(東南角)に一部屋根の無い部分があるので、建ぺい率(60%)は、クリアしている。

[相談内容]
屋根が無くても高い壁があっては、近隣の日照や風通しへの影響は軽減されません。
都会の真中ではなく、近くには田もあるような地域です。
建ぺい率は近隣の環境保護のためにあると思っていました。
例え、建ぺい率の数字はクリアしていても、周囲への配慮の無さは違法ではないでしょうか?
この家が東隣になる方はもっと大変な事になってしまいました。

オロオロしているうちに基礎にコンクリートが張られました。
家が建つのを見ているしかないのでしょうか。

お忙しい先生方に家を建てる者ではないのに、ご相談をして申し訳ありません。
ご指導よろしくお願いいたします。
 yorozuの感想 こに相談して良いかもわからず困っていた所、このHPにたどりつきました。
今までの相談者の方への回答を見て、信頼できる場所と感じることができ、思い切って相談させていただきます。
アドバイザー 
山口 雅克 解説員の山口です。

 お気持ちは良く分かりますが、「周囲への配慮の無さは違法」とは言えません。法を守っていれば違法とは言えないからです。でも、近所付き合いの雰囲気を壊しているかもしれませんね。

 ただこの建物は、周囲への配慮をしてそのような囲い込む計画になっているのかも知れません。この高い壁は塀の役目も持っているようですので計画の内容をもう少し詳しく設計者か建主に聞いてみられたらいかがでしょうか。納得できるような理由があるかもしれません。7.15mと言う高さも一般的な2階建ての家と比べて異常に高いものではないと思われます。(木造2階建ての軒高は6.4m位で切り妻の壁の最高高さは9m位になることもあります。)

 近くには田もあるような地域でも第二種住居地域ですから ある程度住宅や店舗、事務所などが可能な地域(低層のアパートなども可能)となっています。この用途地域であることは近隣の方も御存知であるのなら、自宅を建てる時に自分の敷地内で通風や陽当たりを確保すべきでしたね。

 きつい言い方ですが、法はそのような考え方で作られています。建物は先に建てたものが優先と言うこともありませんので、自分の敷地と隣は同じ法の網の中で建てられていくことを計画当初に頭に入れておくことが大切です。

 誤解が解けるようなプランであることを願いつつアドバイスとします。
関口 啓介 関口と申します。

外壁又はこれに代わる柱の中心線で囲まれた部分の水平投影面積を建築面積といいます。
7.15mの壁は外壁に当たる可能性もあります。塀としては以上な高さです。まるで要塞のような風貌を思い描いてしまいます。
また、屋根がないと言えども屋内的用途に供するのであれば床面積に算入されると同時に建築面積にも算入されます。

また、建築基準法第二条 「この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 一 建築物 土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに附属する門若しくは塀、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事 務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むものとする。」このように付属する塀も建築物として定義されています。

役所にて建築計画概要書が閲覧できますので、その壁(塀?)がどのように申請されているのか、申請されていないのであれば現状を建築審査課等の窓口でお伝え頂き、ご相談されると良いかと思われます。

私自身は建築物とくに住宅は敷地内で完結するものでなく、地域社会との連関により成り立つものと考えます。先住者への配慮は、設計者のモラルとして期待したいところです。
 コメンテーター 
今井 優子 基本的には、周囲への配慮不足=違法 とは言えません。
実際、建築基準法はもとより民法の境界からの外壁距離60cm以上というものも守っているようですし、基本的には先住者といえども、それ以上のことを要求することは難しいと思います。

お互いに、自己の地所を最大限利用できる権利を持っているのですから、後は近隣との協調や後々のお付き合いを考えて、どこまで歩み寄れるか?ということになります。
ただ、関口解説員の言うように、その塀が確認申請で申請されていないのであれば、違法性が強いと考えられますので、確認してみるとよいでしょう。

第二種住居地域というのは、場合によっては3階建て、4階建ても建築可能な地域でもあります。(その代わり、土地の利用価値が高いということで、地価の評価も高いはずです。)
お隣の方も、そのことをよくよく考えての計画かもしれません。

いずれにしても、今後長く近所付き合いをしていく方になるのですから、お互いの権利を認め合いつつ、自分の希望を伝え、円満に話し合いが出来るといいですね。
 事務局から 
  荻原 幸雄 結論から申しますと、違法ということではありません。
人間がつくった法律ですから、確かに不条理を感じる時はあります。
雨が入る屋根、例えばパーゴラ、日よけにはなりますが、雨は通りますので屋根という機能が成立してません。公園でのベンチのある日よけのパーゴラは蔦が絡まって気持ちいい空間です。これは建築ではありません。
トイレ、これは屋根があるので建築物です。蓋のあるゴミバコは建築物という扱いになります。網目の蓋ならば建築物にはなりません。

では、市街地に存在する2階建ての屋根がなく、2階の床がグレーチングの敷地一杯に建つている工作物はどうでしょうか?これは以前は雨が入るものとして建蔽率は0とされた時期もありましたが、あまりの苦情に例えば東京などは条例で先端から2mまでは不算入でその内側は面積算入して建蔽率を算定することになりました。

おそらくこの建物はタウンハウス的な造り方で設計していると思われます。
この場合は塀ではなくて建築物ですので、どの部位であろうと建築物としての建築基準法の対象になります。この場合は適合範囲と推察されます。

不条理は理解できますが、一般的に認識がない場合もありますので、もう少し説明します。

例えば既製のカーポートをよく見かけますが、これは建築物になり、全面ではないものの建蔽率算入の対象になります。既製品の物置がよく庭の片隅に設置されていますが、これも算入対象になります。厳格に言えば犬小屋も対象になります。これらを建築後に設置して違法になっている建物は残念ながら相当数存在します。これらは違法としらないで購入している場合がほとんどです。

不条理をもう少し突っ込めば例えば現在の建物がそのまま存在する。
不条理を解消するためにその建築主はあなたの敷地とは反対の敷地を購入しその塀の内側を面積算入扱いして不条理を解消したとしましょう。

そうしてもその建物は今のままです。貴方にとって何にも解決に至ってはいません。
しかし、不条理は解決されています。
隣地の敷地が同じで貴方の家からみて形状は変えないで、反対側の敷地側の建物を削減して不条理を解決したとしましょう。
これも貴方の敷地から見たら何にも解決には至っていませんが、不条理は解決されています。

このように考えますと、敷地内で環境を考えるというのが原則になるということになります。しかし、これとて現実は大きな敷地を購入しその中心に建築する屋敷ではないと現実は難しく、この点での日本の地価の高さの悲劇であると感じます。
悲劇ではありますが、都市計画を含めて総合的に考えていくべき課題であることも確かですね。
相談者お礼状 
 相談者お礼状 回答を頂き有難うございました。とても嬉しく思っております。

その後、隣地の建築士に会いました。
東南角の壁の中は庭とのことで、屋内的用途には当たらないようです。(図を添付します)
「せっかく買った土地だから目一杯利用したい。他所からの視線が気にならないようにしたい。」
と言う建主の希望で、このような形になったそうです。
しかし、あちらの二階の我が家を見渡せる窓は透明ガラスとのことで、目隠しを付ける様に希望を伝えましたが、まだどの様になるか分かりません。

このような建て方があるとは想像もしていなかったので大変驚いてしまいました。
法律違反ではないとしても、「これはないんじゃないの!」と言う思いは消えませんが。

お忙しい先生方が私どもの為に、時間を割いて下さったということで少し心が静まりました。
有難うございました。
 その後  
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