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一般社団法人建築よろず相談支援機構

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No. 0984 隣地との境界から建物外壁まで20センチ程度

 相談概要 [氏名] F.S
[相談内容] 建売住宅の瑕疵
[居住住所] 東京都品川区
[相談建物所在地] 神奈川県横浜市港北区
[職業] 会社員
[年齢] 33
[男性] on
[構造] 木造(在来工法)
[引渡し年月日] 西暦 2005年3月31日
[公庫は使わない] on
[性能保証は使っていない] on
[何階建て] 3
[延べ面積m2] 113.44
[延べ面積坪]
[工事請負金額] 4700
[設計監理料] 0
[様態] 建売り住宅
[施工者] 建設会社
[設計者を選んだのは] 自分では選んでいない。
[監理者を選んだのは] 自分で選んでいない。
[確認申請書は本来建築主が出すと説明を?] 受けていない。
[18確認申請の為の委任しましたか?] してない。
[確認申請書お持ちですか?] 有る。
[検査済証は有りますか?] 有る。
[設計図面は何枚もらいましたか?] 15,6
[工事着工まで設計の打ち合わせは何回しましたか?] 0
[施工者名] K
[販売会社名] 売主SN、仲介S
[設計者名] T建築設計事務所 
[監理者名] M.T
 相談内容 [現象]
建売住宅を契約しましたが、隣地との境界から建物外壁まで20センチ程度しか離れていません(契約後に自分で調べて民法上の基準を満たしていないことを知りました)。
当該地域は準防火地域で、建物の外壁は準耐火構造(45分)です。建築基準法第65条と民法第234条に照らしてこれは瑕疵ある建物と言えないでしょうか。
お送りした画像は、当該住宅の3階窓から真下を撮影したものです。1階の出っ張りはシャッターの枠です。

[業者の見解]
仲介業者の見解は、瑕疵ではないとのこと。

[相談内容]  
売買契約後に、自らの調査により、民法上は隣地境界から壁面を50センチメートル以上離す必要があることを知り、@建替えの際には同じ大きさでは建たないことA防火上不安があることB後に隣人とトラブルの原因となる可能性があることを理由に契約を解除しました。

 契約時の重要事項説明でも民法上の距離を満たしていないことの説明がなかったため、私はこれを「隠れたる瑕疵」の発見による契約解除として手付金の返還を要求しました。

しかし仲介業者は「これは瑕疵ではない」「手付解除以外の理由では解除に応じない」「解除しなければ別の客に販売できないため売主からの損害賠償もある」との主張でした。結局、長期化することで私自身のリスクが大きく なると思い、ひとまず手付解除に応じてしまいました(契約の履行に着手する前の解除です)。この場合、「隠れたる瑕疵」の発見による解除とは言えないのでしょうか。

 なお、当該物件は、同一の売主が専属の仲介業者を通じて、4戸同時に分譲販売したものです。契約後に売主の建築担当に尋ねたところ、「1人の持ち主(売主)が、1つの土地の上に4つの住宅を建築することでこのような建て方が可能になる。」とおっしゃっていました。

 また、このようなケースでは、契約時の重要事項説明で、民法上の距離基準を満たしていない旨記載して説明するべきだと思うのですがいかがでしょうか。現在、私は仲介業者に対し、重要な事実を隠していたとして、仲介手数料請求の無効を主張しています。

 たくさんの質問になってしまい、大変恐縮ですが、何卒見解をお聞かせいただければと思います。よろしくお願いします。

 yorozuの感想 非常に細部に記入上の気配りがされていて、信頼もおけ、相談しやすいと感じました。
アドバイザー 
清水 煬二 解説員の清水です。

売主が宅建業者であれば、仲介料はもちろん、既にあきらめた手付金も全額返してもらえる可能性があります。弁護士さんを通して交渉してください。
結論は早いと思いますが、万一先方業者が抵抗して、裁判でなければ決着が無理であれば、費用対効果を考えてどうするかを判断してください。

その場合、他の近隣は50センチを守っているかどうかも考慮されると思います。写真では、同時に建てた隣家は50センチを守っているようですね。
昔から建っている近隣についてはどうでしょうか?

建売は、出来てみないと分かりませんし、素人がだまされることが昔から多々ありましたので、それを保護する前提で宅建業法はできています。
一般素人にとって味方の法律ですが、業者の言いなりで泣き寝入りしている人も少なくないようです。但し、売主が素人であったり、宅建業者でなければこの業法は適用されませんので注意してください。

今回の隣地との間隔は、民法上の問題で建築基準法には関係ありませんから、隣地から訴えられた場合のみ問題になりますが、隣地が守っているので、ご指摘のように、将来のトラブルの原因になる可能性はあります。
もちろん、建て替えのときでも隣地の間隔を気にすることなく、トラブルもなく、そのまま建て替えしているケースもたくさんあります。

未完成物件の建売であれば契約時に素人は判断できないので告知されるべきですし、告知されていても気付かなかったり、錯覚していても、錯誤が成立して契約を白紙にできることがあります。すなわち、契約がなかったことになるので、手付も仲介料も全額返してもらえます。

業者が手付を返さないと主張しているようですから、弁護士さんに相談すべき内容だと思います。

準防に関して瑕疵があるかどうかは、この文面では判断できません。
 コメンテーター 
古賀 保彦  外壁が耐火構造ではないという事でしたら、建築基準法65条の「その外壁を隣地境界線に接して設けることができる」には該当しないでしょうから、民法234条の「50cm以上の距離」をあけるというのが法の主旨に適うところだと思います。

 相隣関係でトラブルにならなければ顕在化しない問題であるようにも見えますが、将来的には@・Bの懸念が有ることも否めませんね。

 そのような法に関わる将来の不安要素が重要事項説明に無かった、初めから分かっていたら購入に至らなかった、との事だと思いますが、宅建業法に関わる問題ですので官庁の管轄窓口にもご確認いただいた方が良いと思います。

 重要事項説明義務違反や契約錯誤等については、相談建物所在地・売主(仲介)会社所在地の県土整備部等、宅地建物取引業の管轄部署で相談にのっていただけると思いますので、一度窓口へ出向かれてみてはいかがでしょうか。その際、契約書・確認申請書他、資料をまとめてお持ちになって行かれると良いでしょう。

 解説にありますように弁護士へのご相談も視野に入れながら、ご自分でも動ける範囲内で頑張ってみて下さい。
 事務局から 
  荻原 幸雄 民法では50cm以上離す(民法234条1項)と異なる風習がある場合は慣習を優先する(民法236条)があります。
重要事項の記載がない場合は宅建業者としては236条を優先したとの考え方でしょう。
これは現実の地域の実態によるので、調べてみてください。

50cmを守らない場合は慣習によるのですが、実はこの慣習が曖昧ではあります。
曖昧ということは将来の隣地からの損害賠償の可能性はない。とは言い切れないことになります。その結論は法廷で判決が出ない限り「慣習の是非」は決することができない。ということも事実ではあります。

質問の1)については建たない可能性があるということで建てられることもあります。
2)に関しては20cmで駄目で50cmなら防火上問題はない。ということはないと思われます。
3)の可能性は否めません。
残念ながら上記は「隠れたる瑕疵」に該当しないように思います。

今回の一番の論点は慣習に従う地域か?否か?です。
弁護士と相談し、その点を絞り込んでみてください。
相談者お礼状 
 相談者お礼状 解説委員の皆様
いろいろ詳しく教えていただきどうもありがとうございました。

さてその後の経過ですが、弁護士にも相談したところ「完成物件であるので、物件の『隠れたる』瑕疵を問うことは出来ないが、仲介業者の説明不足を指摘することはできる」とのことでした。
その際の論点はやはり、「慣習があるかどうか」であるとのこと。

その点では、地域としての慣習はないといえます。
なぜならば、当該物件を含む新築の4戸と、既存の隣地との間は50cm以上離れているからです。
また仲介業者の(最近の)説明でも「隣の住人の同意書を取るのは時間がかかるので、十分な距離を離して建ててある。」とのことでしたので、売主としても「慣習のない地域」であることは認識していたと言えます。

しかし、売主・仲介業者は同時に、「4戸間に近接して建てる『慣習』が発生しており、それは将来的に有効である。すなわち建て替え時にも同じ位置に建てられる。」とも主張しています。
私は、その主張には無理があると思いました。

その後、仲介業者と何度か交渉を重ね、「手付金は返さないが、仲介手数料は請求しない。」というところまで譲歩していただいています。
先方は、隣地との距離については譲らないのですが、以下の点を指摘したところ、不誠実な態度があったことを認め、仲介手数料は請求しないという結論になったものです。

(1)重要事項説明者に「現地の様子に当てはめて具体的に教えてくれ」と尋ねたとこ
ろ「私は現地を見ていないので後で売主に尋ねてくれ」と言われた。
(2)媒介契約が売買契約の後になされた上に、媒介契約内容の説明がなく「決まりだ
からお付き合いください」と言って、印を押させた。
(仲介手数料の発生時期や支払期限についての交渉を意図的に避けた節がある。)

いまだ完全決着は見ていない状態ですが、私の検討の甘さがあったことも自覚していますので、先方の譲歩を受け入れようと思っています。
重ね重ね、有難うございました。
 その後  
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