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一般社団法人建築よろず相談支援機構

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よろずWEB相談HEADLINE

No. 0968 雨天時の上棟と、雨養生の不備による内部の水ぬれ

 相談概要 [氏名] H・I
[相談内容] 注文住宅の瑕疵
[居住住所] 島根県松江市
[相談建物所在地] 島根県松江市
[職業] 公務員
[年齢] 31
[男性] on
[構造] 木造(その他)
[引渡し年月日] 西暦    年  月  日
[公庫は使わない] on
[性能保証は使っていない] on
[何階建て] 2
[延べ面積m2] 132
[延べ面積坪] 40
[工事請負金額] 2130
[設計監理料] 262000
[様態] 注文建築
[施工者] 大手ハウスメーカー
[設計者を選んだのは] 自分では選んでいない。
[監理者を選んだのは] 自分で選んでいない。
[確認申請書は本来建築主が出すと説明を?] 受けていない。
[18確認申請の為の委任しましたか?] 覚えていない。
[確認申請書お持ちですか?] 無い。
[検査済証は有りますか?] 無い。
[設計図面は何枚もらいましたか?] 3
[工事着工まで設計の打ち合わせは何回しましたか?] 5
[施工者名] M株式会社
[販売会社名] M株式会社
[設計者名] HK
[監理者名] KA
 相談内容 [現象]
雨天時の上棟と、雨養生の不備による内部の水ぬれ経過は以下のとおりです。

 今年9月に着工し、9月上旬に基礎が終了。9月27日から上棟の予定でした。
 ところが、20日に現場管理者から連絡があり、21日から上棟するとのことでした。
天気予報では21日から雨の予報であり、また、契約前に営業マンから「このメーカーの売りはプレハブ住宅なので一日で屋根まで上げられるので、天気のよい日を選んで上棟すれば中が濡れない」との説明を受けていました。その点を話すと、現場責任者からは「今回の建物は1日では建たない。途中で工事が中断しても中が濡れないようにブルーシ-トをしっかりかける」との回答でした。

 結局、21日は雨のため上棟は中止なり、22日朝に現場責任者から今日から上棟する旨、再度連絡がありました。22日も朝から雨模様であったので、再度雨のことを確認すると、しっかりとブルーシートをかけるとのことだったので、上棟してもらうことにしました。
22日は朝から少し雨が降っており、昼からは雨も上がりましたが、やはり屋根まではつけることが出来ませんでした。

 翌23日は祝日のため工事はなし。23日夜から雨はかなり強くなっていました。24日早朝に様子を見に行くとブルーシートはほとんどかけられておらず、中は水浸しの状態でした。1階には全くブルーシートはかけてありませんでした。1階部分は5cm程度水が溜まり、壁にも無数の雨筋がつき2階部分も床が完全に濡れていました。

 すぐに現場責任者に連絡をとり説明を求めましたが「濡れても大丈夫、問題ない」の一言のみで、こちらが現場確認しながらの説明を求めても、「大丈夫」の一言で片付けようとし、こちらの再三の要求によりようやく翌25日に現場を確認しながらの説明を受けることになりました。

 25日に現場を確認しながら現場責任者から説明を受けましたが、そこでも「自然乾燥させれば大丈夫、問題ない」の一言でした。その根拠となるデータの提出求めたところ、「今は手元にない、本社にあるのですぐ取り寄せる」とのことでした。

 26日に床を切り開き床下の状態を確認。パネルをあける際、中のグラスウールに触れると濡れているのが確認できました。床下も水がたまっている状態でしたが、現場責任者の意見は自然乾燥させれば問題ないとのことでした。こちらの床下は通気が悪いが自然乾燥するのかとの問いにも問題ないの一言で、床下に敷いたビニールシートについても敷いたままでよいとのことでした。

 26日夜に取締役、支店長、現場責任者、営業マンと話し合いを行ないました。こちらからは、当初の約束と違うのでやり直しを要求しましたが、M側は雨養生での不備は認めたものの、ここでも「自然乾燥させれば大丈夫」、「具体的なデータはないが本社の研究所にあるので取り寄せ次第提示する」との説明に終始しました。

10/10再度話し合いを行ないました。メーカー側から「今回のような事例に匹敵する実験データはない。今までも上棟時に雨に濡れたことがあったが、特に問題はなかったので今回も大丈夫。その分多少保証を厚くする。」との回答がありました。過去の事例のデータを見ないことには、今回とどの程度近似しているか比較できないと過去の状況の提示を要求しましたが、過去のデータはないが大丈夫との説明に終始。契約者から「そもそも濡れても大丈夫というデータがあり、それを提示するというはなしであったが」との問いにも「そんなことを言った覚えはない、そういうデータがあるかどうか探すと言ったはず」との回答。「それでは、現場確認時には根拠もなく大丈夫と言っていたのか」との問いにも「探せばでてくると思った」との回答でした。

 これ以外にも、上棟時の雨養生についても、発言をごまかそうとする態度が見えました。
 またこちらの建て直しの要求についても「雨養生しなかったことへの瑕疵は認めるが、建て直しするほどの瑕疵とは思わない」との回答でした。

 11/6に再度話し合い。グラスウールについて水濡れしても乾燥させれば断熱性能は変わらないという試験結果を出されました。しかしながら、その試験結果では厚みが変わらないという前提であり、また、乾燥条件もかなり良い条件下ででしたので、実際にパネルの中でグラスウールがどのような状態になるかというのは分からないままでした。その点を追及しても、今の家の状態を正確に測ることは出来ないから分からないとのことでした。

 また、床下の状態を確認したところ、ビニールシートを敷いたままだったので水滴が地面とシートの間にびっしりとついていたのですが、その点について聞いても湿気は周りからも染みてくるからこのくらいは濡れるとの回答でした。では、近くの家の状態を見てみましょうということで床下を見てみると、数日前に大雨が降ったにも関わらず水滴は全く見られませんでした。その点を追求すると今度は土地により状態は異なるからとの言い訳をはじめました。では、もっと近くの両隣の家を見てみましょうといいましたが、返答はありませんでした。結局本社へ問い合わせて見るということになりましたが、やはり乾燥させるためにビニールシートははずした方が良いとの回答で、即日シートを外しました。

11/23に再度話し合い。パネル内のグラスウールについて、仮に濡れていても外側の合板は木なので、湿気を吸ったり吐いたりするので、中が湿っていても木が吸うので木の含水率を計れば中の濡れ具合が分かるとの説明を受けました(合板の含水率が15%程度であれば中はほぼ乾いている)。ただ、これも口頭での説明のみであったので、データの提示はありません。メーカーから地方ディーラだけでは技術面について充分説明できないので、本社から技術者をよんで説明させるよう要請しているとの事でした。

12/4に再度話し合い。本社から人を派遣する方向で話を進めている旨説明を受けました。
また、含水率計を用いて家の内部の気になる部分を私たちの前で実際に測定しました。その結果、測定した個所はすべて含水率は18%以下でした。湿気のこもる1階部分は16〜18%と若干高めでしたが、2階部分は15〜16%程度でした。カタログの値(13〜15%)に比べると若干高めですが、冬季は含水率が高くなる傾向になるので、こんなもんだとの事でした。

[業者の見解]  
メーカーからはパネルが濡れても乾燥させれば品質面で問題はないといわれます。しかしながら、その根拠となるデータは示されていません。そういったデータはないとも言われています。また建て直しについてもそれほどの瑕疵ではない、今までのこのような事例でもそこまでした事例はないとのことでした。こちらとしては少なくとも品質面で問題ないことをこちらにに分かるように説明してもらわなければ、到底納得できる状況ではないですが、メーカーからはこれ以上のデータは出ない、これで納得しろといわれています。

 補償については、濡らしたこと、工事が遅れてたこと、こちらに不快な思いをさせたことに対し、何らかの補償をするとは言われていますが、具体的な内容は全く提示されていません。

[相談内容]  
今回の場合、主に契約面やメーカーの対応の悪さが問題かと思います
ので、相談の対象外かもしれませんが、品質面でのご助言をお願いいたします。

1.水濡れしたパネルの品質について
木質パネル工法の場合、メーカーの言うとおり濡れても乾燥させれば強度や性能は元通りになるのでしょうか。プレハブ住宅は上棟時に濡れることを前提にしていないという説もありますので、それに対する知見やデータがあればご教授願います(使っている合板は構造用合板で、これは濡れても乾燥させれば大丈夫だという説明を受けています)。

2.水濡れしたグラスウールの品質について
上記1.とも関わりますが、特にグラスウールは水濡れ厳禁ともよく言われています。他のサイト等でもグラスウールだけは入れ替えた方が良いのではないかと助言を頂きました。また、外側の合板の含水率がパネル内の湿り具合の指標となるのでしょうか。
この点についても何か知見やデータがあれがご教授願います。

3.契約違反について
上棟時にビニールシートでしっかりと養生して中が濡れないようにするとの約束で、上棟を許可したにも関わらず、それを怠ったメーカーの瑕疵責任はどの程度なのでしょうか。
わざわざ予定を早めて、しかも施主が雨が降っているし、天気予報も良くないといっているにも関わらず強行しておいて、結果として施主の懸念していた状態にしたのは大きな瑕疵かと思うのですが。これは弁護士に相談した方がよいといわれるかもしれませんが、何か意見があればお願いします。





 yorozuの感想 複数の方々の意見を聞けるところが非常によいと思います。

過去の相談事例の検索をもう少しスムーズにできればよいと思います。
例えば、従来のキーワード検索以外に、相談内容を様々なカテゴリ(キーワードや相談の種類など)に分けたりすると良いのではないでしょうか
アドバイザー 
氏原 毅士 氏原です

 文化財の保存改修工事では覆屋を作って工事をするのが今では一般的な工法となっています。でも普通の建築ではこんな事は行われてはいません。
 住宅でも工事期間は4ヶ月から6ヶ月はかかりますが、この間に雨が降らないなんてことはありえないことです。

 濡れるより濡れない方が良いに決まっていますが、建築は湿潤を繰り返し年をとっていき、そしてケースによりますが100年以上の寿命を保ちます。
当然劣化もしますが、これを楽しむ心を持つ事が出来ませんか?

 これが嫌なら建築する事をやめる以外にはありません。こんな事で気に病むなら、完成後の住宅(建築)が見せる経年変化を一つずつ取り上げ争わなければなりません。
 もうすこしおおらかな目で現実を見られることが必要かと思います。
山口 雅克 解説員の山口です。

 水濡れしたパネルは乾燥させれば強度や性能は元通りになると思って下さい。構造用合板が使ってあるのなら安心の具合は増します。データーを求めてもあなたが過失だと思っているメーカーが提出してきたものを信用できますか。自然乾燥を確認してから次の工程に取りかかることが大切です。

 水濡れしたグラスウールも表面だけと思われますので自然乾燥を待ってください。
何故なら、グラスウールは発水機能を持っており内部には吸水しないと思ってよいからです。(内部結露した場合はその水分を外部に出すことは苦手ですが)

 外側の合板の含水率をパネル内の湿り具合の指標と考えるには多少の無理がありますが、今回程度の数値なら問題ありません。

 契約違反については、確かに口頭での説明とことなり御立腹とは思いますが契約違反と騒ぐまではないでしょう。弁護士に相談しても「まあまあ、腹立ちはわかりますが穏やかにまとめる方向に・・・」で終わってしまいそうです。

 あなたへの説明不足や不手際に対しての謝罪をしてもらうことで良しとして、このまま工事を進めていった方がよいと思われます。
 木津田 秀雄 解説委員の木津田です。

 木材の含水率を計測したとの事ですが、合板の真ん中は濡れてもそんなに含水率は高くなりません。枠材の裏側などはしばらく濡れているので、そのような条件の悪い所も調べておいてください。

 また高気密化のために室内側に防湿シート(ビニールシート)をべったりと貼ると思います。外側の合板の外には防水透湿シート(白色のシート)がサイディングの下に貼られます。室内側の防湿シートは湿気を通さないので材木の中の湿気は壁の中から室内へは入りにくいですが、内部の湿気が外へどれだけ抜けるかは難しい所です。理論的には合板や防水透湿シートを抜けて通気層を経由して外気に抜けるはずですが、なかなか素直に湿気は動きません。合板の透湿抵抗値はそこそこ高いので、湿気が外壁側に抜ける前に室内側の防湿シートに結露水として出てくる可能性もあります。(特に夏場)

 現在の進捗状況が不明ですが、断熱材を撤去して十分に壁内を乾燥させてから防湿シートを施工する必要があると思います。構造材自体は他の解説委員が言うように少しの雨で著しい耐力の低下はないでしょうが、壁内の水蒸気の残留については十分な配慮を行うようにしてください。

 実際、何の問題も生じなかった木材であっても、季節によれば木材に含まれる水蒸気で夏場に若干の結露が発生する事は実験でも確認されています。室内側の防湿シートの存在は、あるいみ自然条件から言えば特殊な状況ですので、その辺りにも十分気をつけていただきたいと思います。 
 コメンテーター 
清水 煬二 ハウスメーカーの担当者が、その場しのぎの答えを繰り返しているようで、H・Iさんが、不安になるのも当然です。

たくさんの解説員が充分な解説をしてくれました。
工事途中に半年くらい放置された2×4工法の外壁合板が雨で1枚波打って変形していたのを見たことがありますが、 構造体としては、他の解説員のコメントのように今回の内容程度では問題ないと思います。
含水率も問題ありませんが、冬に高くなるというのは、間違いです。

ハウスメーカーのMは、両面が合板になったパネルの内部に工場でグラスウールを入れてきており、 防湿シートを内側に新たに貼ることはないようです。
この後に、石膏ボードとビニルクロスで塞ぐことになります。

外壁の合板とそのジョイントからの浸水を今後の雨から守るために、既に外壁の透湿防水シートを施工していますので、グラスウールが完全に乾くのを待つか、濡れているグラスウールの入れ替えを行ってもらった方が良いかと思います。

外壁パネルを土台に留めるボルトを締めるための穴が壁の下部に開いています。その部分から手を入れてみれば、グラスウールの乾き具合等はある程度は分かるかと思います。

現状では手で触ってグラスウールが濡れているのがわかるということですから、ハウスメーカーには、グラスウールの渇きをハッキリ確認するか入れ替えるまで壁を塞がないで欲しいと交渉するべきでしょう。
 事務局から 
  荻原 幸雄 多少解説委員も見解が多岐に渡っている為少々まとめてみます。

日本の風土は四季の中で風雨は避けられないものです。
しかし、無理に雨の中の工事をするものではないので、私達も濡れては困る工程では神経を削ります。
しかし、長期に亘り濡れることは好ましくはありませんが、通常注意義務を怠らない範囲での木部の濡れは気にしなくても大丈夫です。
しかし、その後の乾燥は確認することになります。

通常は日本の風土で培われた在来工法はこれらの影響を加味した施工が成されます。
上棟でも2日で終わりますし、その後に屋根施工に取り掛かり、濡れないことに注意を払います。また、グラスウールも外壁下地が終了し、内部に雨が侵入しなくなった段階で施工されますので、濡れるという状況にはあまりありません。

問題は近年のハウスメーカーは工業生産の効率を図るために、在来工法とは違い、なるべくパネル化することで(工場生産できるところは工場で)断熱材も挿入されたパネル搬入となることになります。この場合は相談者が心配していることは最善の注意を払わないといけないことになります。相談者はそのことを認識して雨天の時はシートを被せぬれないように要望したものの、その重要な要望を踏みにじったということになりました。

パネル化のものは濡れると乾きづらいのは在来と比べてわかると思いますが、ハウスメーカーは建築主の意向を真摯に受け止めて対応するべきだったと思います。
何より、その弱点をしっているのはメーカーなのですから。

これによる契約解除は難しいと思いますので、濡れた木部やグラスウールを十分に乾燥したことを確認し、その後の工程に移ることになります。乾燥なくして工事再開はできません。
まとめますと。

1)乾燥確認後、工事再開。
2)工期遅延、慰謝料は話し合いで解決する。(文章化する)。

以上がスムーズに進むことを祈ります。
相談者お礼状 
 相談者お礼状 多くの相談員の皆様からの大変懇切丁寧なご助言ありがとうございました。

 先日はMの本社からも技術者が来られ、説明を受けましたが、内容的には今回の相談員の皆様の回答とほぼ同じで、強度・品質面においては乾燥させれば特に問題ないこと、パネル内部のグラスウールの乾燥状態の確認が重要であるとのことでした。

 第三者から見ても問題ない旨を確認でき安心しました。
今後はパネル内部の状況を把握するとともに、メーカーとの話し合いを進めていきたいと思います。

 今後の展開についても、報告させていただきたいと思いますが、取り急ぎ回答のお礼をさせていただきます。

 本当にありがとうございました。次は良い結果報告ができることを祈っています。
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