相談概要 | [氏名] A.A [相談内容] 注文住宅の瑕疵 [居住住所] 神奈川県厚木市 [相談建物所在地] 神奈川県厚木市 [職業] 会社員 [年齢] 52 [男性] on [構造] 鉄筋コンクリート造(壁式構造) [引渡し年月日] 西暦 1997年8月2日 [公庫は使わない] on [性能保証は使っていない] on [何階建て] 3 [延べ面積m2] 143.26 [延べ面積坪] [工事請負金額] 3000 [設計監理料] 0 [様態] 注文建築 [施工者] 大手ハウスメーカー [設計者を選んだのは] 自分では選んでいない。 [監理者を選んだのは] 自分で選んでいない。 [確認申請書は本来建築主が出すと説明を?] 受けていない。 [18確認申請の為の委任しましたか?] 覚えていない。 [確認申請書お持ちですか?] 有る。 [検査済証は有りますか?] 有る。 [設計図面は何枚もらいましたか?] 18 [工事着工まで設計の打ち合わせは何回しましたか?] 12 [施工者名] AK [販売会社名] T [設計者名] MS [監理者名] MS |
相談内容 | [現象] 2004/2/6に開催されました、第4回建築よろず相談会でお世話になりました、AIです。 その際は、自宅(コンクリートパネル住宅)基礎に0.5mmを超えるひび割れが数多く見つかったことについて相談しました。 今回は、上記に関連し、基礎の補修方法に関連しての相談です。 御手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。 相談会でアドバイスを頂いた後、原因調査のために、ハウスメーカーの費用負担で基礎のコアを抜き、各種試験を実施しました(基礎立ち上がり部3箇所、他4箇所、計7箇所)。 その結果、基礎立ち上がり部において、コンクリートの圧縮強度が、設計強度(20.6N/mm2=210kg/cm2)を下回る17.1N/mm2、中性化については最大で25mmに達し、配合推定から求めた水セメント比については、75パーセントを超える異常な値となりました。 私は基礎に、大きなひび割れが多くあることと、基礎表面及びコア抜きした断面に、気泡が多い状態から、これらを総合的に判断した結果、我が家の基礎には、不法に加水されたコンクリート(シャブコン)が使用されたと推測しています。 [業者の見解] シャブコンの使用について、ハウスメーカーを繰り返し追求しましたが、「シャブコンの要素は持っているが…」という回答でシャブコンの使用は決して認めず、補修すれば基礎の強度は問題が無いとの回答です。 ハウスメーカーからは、補修方法として、当初は、基礎の外側への打ち増しの提案が有ったのですが、基礎周囲のスペースが少ないことから、最終的には基礎立ち上がり部(基礎高105cm)の内・外に、下記の@〜Cを行うことで提案を受けました。 @エポキシ低圧注入 A浸透性コンクリート用防錆剤を塗布する。 Bアルカリ性付与剤を塗布する。 C塗布型ひびわれ浸透接着用エポキシ樹脂を塗布 私としては、中性化については、回復と保護が可能であるとしても、設計強度を下回っている圧縮強度に関してはどの程度の強度向上が期待できるのかが疑問のため、ハウスメーカーに再度、確認したところ、圧縮強度の向上は期待できないが、提案した内容の補修を行なうことにより、現状の状態が維持できれば基礎の強度としては問題無いとの回答でした。 [相談内容] 私としては、基礎の強度に関しては、本来なら建設当時のJASS(下記資料参照)に則って耐久設計基準強度に当たる30N/mm2を求めたいところですが、それが無理なら、せめて、基礎伏図に明記されている、設計基準強度(20.6N/mm2)を満足するような補修を求めたいと考えています。 基礎の評価としては、強度が全てではないとは思いますが、耐久性を評価する上で、強度は大きなポイントだと考えます。 現状、我が家の基礎は、基礎の表面を見る限りでもスカスカな感じのコンクリートです。 これではこの先、安心して住むことが出来ないと考えています。 k県西部地震の震源域に近いことと、家の近くに切迫性のある活断層があることからも、不安が極めて大きい毎日です。 相談は次の二点です。 1,基礎にシャブコンが使用された可能性は、どの程度有るのでしょうか? 2,ハウスメーカーへの要求として、設計基準強度の確保要求は出来ないのでしょうか? 補修による強度の確保が不可能ならば、基礎の作り直し(再築)を要求したいと考えています。 アドバイスをお願いします。 (資料) 当家の基礎は、基礎伏せ図に明記された設計強度は20.6N/mm2(210kg/cm2)、生コンの呼び強度は21N/mm2で発注されています。 当家の基礎打設は、平成9年4月でした。 JASSの改正が、平成9年1月25日にあり、基準強度の考え方が以下のように見直されました。 計画供用期間 耐久設計基準強度 30年(一般) 18 N/mm2 65年(標準) 24 N/mm2 100年(長期) 30 N/mm2 建設当時のハウスメーカーのパンフレットには、法定耐用年数60年、実質耐久年数100年を実現と明記されています。 パンフレットから、計画供用期間を100年(長期)とするなら、耐久設計基準強度として30 N/mm2となります。 このため、本来は呼び強度を、強度補正で+3N/mm2し、33N/mm2 とすべきだったと思います。 この件についてハウスメーカーに確認したところ、JASS5に則って工業化住宅認定申請を行っているということを確認しましたが、JASS5改正への対応は、改正から6ヵ月後の平成9年7月25日以降の物件についてJASS5に沿った対応を行っているので問題無いとの説明でした。 私としては、JASSに則り申請し、認可を受けているのなら、JASS改定に合わせ、あるいは改定に先行して、新しい基準に合わせるのがハウスメーカーの責務と考えます。 |
yorozuの感想 | 相談に対する解説が、複数の建築・構造・設備・法律のプロの方の協働で行われていることから、解説の公正さと分析レベルの高さが保持されていると思います。 |
アドバイザー | |
清水 煬二 | 解説員の清水です。 写真とホームページを拝見させて頂きました。 水セメント比の推定が75%というのは、17.1N/mm2の強度の部分だと思いますが、もしこれが正しければ、懸念されているように現場で水を足した可能性は考えられます。 ビデオには写っていないのしょうし、当然そうでない可能性もあるので、断定できません。 中性化について7年で25ミリというのは、クラックの部分だけだとは思いますが早く対策を打つべき状態です。 築7年経った今、水セメント比オーバーの原因追求よりコンクリートの強度と耐久性が実際どうなのかが問題だと思います。 メーカーから、大丈夫だという根拠の構造計算書をもらっておくと良いでしょう。 建設工事紛争審査会でもAIさんが望むような結論にならないことも考えられますので、その場合どうするかを考えておくべきです。 基礎の作り直し、すなわち建て替えは要求しても業者には拒否されると思います。もし、どうしても納得できなければ裁判で勝訴して強制的にさせる手がありますが、私の個人的な感想ですが、今回の内容では、例え裁判で勝訴はしても、建て替えの要求を認めてくれる判決となる可能性は、かなり低いと思います。 弁護士さんに相談してみてください。 AIさんががんばっているからだと思いますが、幸いにも業者はここまで対話に応じているようですから、あくまでも業者との話し合いで補強、補修で解決したほうが良いかと思います。 当初は業者側からの提案としてあったようですが、コンクリートの補強の方法としては、炭素繊維を貼って補強する方法もあります。 内部床下からでも外部からでも貼れます。 強度不足の箇所にはこれを行ってもらうことを再度要求されてはいかがでしょうか? |
コメンテーター | |
阿部 重幸 | 貴方の相談内容を読みコンクリートの品質管理と施工管理の難しさを、改めて思い知りました。 小生も現場監督の時分、コンクリートの打設の日は朝早くから現場に出向き、形枠の状態、鉄筋のかぶり打設カ所の清掃、養生の状態を最終点検し、打設時には、ホースから吐き出される、コンクリートの状態を見、分離の有無や、粘度を確認し少しでも良い状態のコンクリートが出来上がるように努めてきましたが、それでも満足できるような出来上がりは稀なことでした。 建築生産の難しさは、常に結果がすべてである事、又、試作品などなく一発勝負できまる事です。 施工者は決して故意に、欠陥品を作る訳ではありません。当然に結果に至る原因があるのですが、その因果関係を求めても、解決がつかない物でもあるのが難しい所です。 貴方の場合のように請負業者から、誠意のある回答を頂いているのであれば、業者に補修方法を一任するほうが得策だと思います。 |
事務局から | |
荻原 幸雄 | ジャブコンが成されたコンクリートであるか否かは現状ではなんともいえません。 しかし、ジャブコンを打たれていないと断言できるデーターでは勿論ありませんね。 ハウスメーカーでもはっきり回答できないと思います。 何故なら、ハウスメーカーもジャブコンなどは望まないからです。 生コン生産者もジャブコンは望んでいません。 しかし、何故、そのようなことが起きるかといいますと、何らかの理由で生コン工場から現場打設までの時間が大幅に時間を要し、(通常1時間以内で打設する)打設前に生コン業者が清掃用の水を加水してジャブコンにする場合があります。この何らかの理由とは運送中の渋滞などでの遅延。時刻通りに到着したが、施工がまだ、配筋作業中の為に、待機していた。などが考えられます。 先程、ハウスメーカーは望んでいない。と説明しましたが、その通りなのですが、これを確認するのは現場監督の管理者がそれなりの知識があれば確認できることです。 渋滞の遅延の場合はミキサー車が到着すると「納品書」という伝票を監督が受領して確認して打設することになりますが、この「納品書」には、このミキサー車が生コン工場を出荷した時間が記されています。この時間をみれば到着までの時間が把握できますし、また、1時間を越えたものはそのまま返すことが正しい行為です。超えた場合で、生コンの状況を見ればジャブコンであるか否かは見ればわかります。 要するに、この場合、監督がそれも確認しないで打設した場合にジャブコンを打たれる可能性はあるわけです。ハウスメーカーは勿論このことは知らないでしょう。 ハウスメーカーであっても現場の監督の裁量一つでこのようになる場合があります。 これを補うのが工事監理者になりますが、ハウスメーカーの場合はこの人物はほとんど形式的な存在になっているので、機能しなかったということになります。 次に設計基準強度の確保ですが、現状では基準を下回っている部分があるのですから、これは契約違反になります。では、構造的には問題はあるか?といいますと現状の資料だけでは判断はできないということになります。 ハウスメーカーに現状の基礎強度で再度、構造計算をしてもらってください。 もし、もともと、安全率を多くみているのであれば、その範囲内として応力的には問題はないという結論がでるならば、補修を受け入れてもいいのではないかと思います。勿論、契約違反としての慰謝料は別問題として・・・。 どうしても設計基準強度を満たすコンクリートを求める場合は方法として、基礎上部のジャッキアップによる、基礎解体、再構築、コンクリート打設という方法はあります。 これをハウスメーカーがすんなり受け入れるとは思いませんが、構造計算の結果、NGとしたら補修での効果が数量的に把握できない場合は応じる可能性はあると思います。 |
相談者お礼状 | |
相談者お礼状 | 神奈川のAです。今回はお手数をお掛け致しました。 以下、簡単ですが、お礼状とさせて頂きます。 建築の専門家の方々の解説で、問題の整理をすることが出来ました。 基準強度へのこだわりは残るのですが、解決のためには、実質的に安全な状態になるかを判断の基準として今後の取組をしたいと思います。 お手数をお掛け致しました。 ありがとうございました。 |
その後 |
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