相談概要 | [氏名] T.K [相談内容] 売建住宅(建築条件付建売住宅)の瑕疵 [居住住所] 東京都府中市 [相談建物所在地] 東京都杉並区 [職業] 自由業 [年齢] 36 [男性] on [構造] 木造(在来工法) [引渡し年月日] 西暦2004年10月16日 [公庫は使わない] on [性能保証を使用] on [何階建て] 地下1階の2 [延べ面積m2] 85.98 [延べ面積坪] [工事請負金額] 4680 [設計監理料] 0 [様態] 建築条件付建売住宅(売建住宅) [施工者] 大工(工務店) [設計者を選んだのは] 自分では選んでいない。 [監理者を選んだのは] − [確認申請書は本来建築主が出すと説明を?] 受けていない。 [18確認申請の為の委任しましたか?] してない。 [確認申請書お持ちですか?] 解らない。 [検査済証は有りますか?] どういうものか知らない。 [設計図面は何枚もらいましたか?] 4 [工事着工まで設計の打ち合わせは何回しましたか?] 4〜6 [施工者名] D社 [販売会社名] K社 [設計者名] I氏 [監理者名] 不明 |
相談内容 | [現象] 建築条件付の家を購入。 間取り変OKのため、通常1階(中二階)玄関を地下(半地下)が玄関に変更。先日、ドアが取り付けられ、実際に開けてみると、約95度の開度の時点で玄関の扉が塀に当たってしまいます。しかし施行前に貰った実施図で図ってみると、110度近く開くようになっています。 実際に図面と現物を図ったところ以下の点に実施図との違いを発見しました。 @扉の大きさ・実施図80cm/実際86cm A扉を90度開いたときの扉と塀の距離・実施図30cm/実際17cm B玄関の扉から階段までの距離・実施図110cm/実際100cm 上記のような実施図との違いがあるため、現状では扉を開けるとき少し勢いがつくと塀に当たってしまう状態になっています。 [業者の見解] @ABに関してはこちらが図っている場所が違うという返答。 しかしBのみ実際に図ったところ、7cmの誤差があることを認めていていて、「直せといわれれば直す」という対応。 @Aは、まったく問題なく、ドアの厚さとかの誤差範囲という返答。 [相談内容] この問題が、こちらの過剰な不満で、実際は誤差範囲のものなのか? それとも、明らかに実施図と違い、業者の問題なのか? 写真をご覧いただき、図っている場所の違いなどがあれば指摘していただきたいと思います。 (玄関の枠と扉の重なる部分は約2cmです。扉の蝶番を支点と考えると、扉の前面を図るのでいいと自分は理解し、扉の大きさを86cmとしています) ただし間取りを設計士と相談しながら決めている最中には、今回問題となっている点については設計士側から「実際には誤差があるから、ドアが塀に当たる」というような説明は一切受けていませんでした。 逆に、こちらが先に様々な問題点に気がつき、それを問うことが多く、その時点で設計士は問題点には、まったく気づいておらず、慌てて直すことがしょっちゅうあったので、不信感は今現在までかなりありました。 よろしくお願いします。 |
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アドバイザー | |
橋本 頼幸 | 解説員の橋本です。 まず、確認しておきたいのですが、図面というのはあくまでも実際の建物を縮小して表現する性質のものであり、縮小された図面から寸法を読みとることはまずありません。工事を行う際には常に記入されている寸法が優先されます。 従って、図面で寸法を読みとって2mあると現場でもつねに2mあるとは限りません。最近はCADを利用するようになってそのあたりの問題も解消されてきましたが、図面と現況が一致しないことはしばしば起こりうるものです。 その前提で、問題点の解説をいたします。 まず、図面ではこのように開くから、や図面上の巾がこれだけだから、という前に、どのような契約になっていたかを見直して下さい。ご相談の内容で請負契約なのか売買契約なのか詳細はわかりませんが、扉についてはどこのメーカーのどの品番の商品を使う、ここはこのような用途に使いたいので最低でもこの程度の巾が必要である、と言った内容で打ち合わせができ契約しているかを確認下さい。 その通りになっているのであれば図面と(見た目が)多少異なっていても契約通りであると言えますし、契約で使うと約束していた商品でなければ当然取り替えが要求できます。 まずそこを見直して下さい。ご相談の内容では過剰な要求なのか当然の要求なのかはわかりません。ただし、打ち合わせや契約と異なることについては当然の要求であると考えます。 また、現場では常に図面通り工事ができるとは限りません。何らかの事情があって塀の位置や扉の取り付け位置などが変更になることもあります。そのあたりも疑問に思うなら設計者・施工者に問い合わせてみられたらどうでしょう。 ちゃんとした理由があり変更された場合は、納得のいく回答が得られると思います。 |
善養寺 幸子 | 解説員の善養寺です。 建築は手作りのものですので必ず誤差があります。 構造の設計をする際など、杭など10センチ程度も施工誤差が起こることを見込んで安全側で構造計算をし、実施設計します。特に気を付けなければならない部分は安全性なので、実際設計図を描いた時には見込めなかった施工誤差が生じ、梁や柱を欠損するよりは開口寸法を縮めると言うような現場対応が起こったりします。 今回の件の場合、開口寸法が予定していたより広く取れる状況だったので、広く取ったという臨機対応だったのではないでしょうか。一般的には、玄関などの開口部は広く取る方が通行の便も良く喜ばれますので、それによってまさか責められるとは思いも寄らなかったのではないでしょうか。開口が大きくなり塀まで距離が短くなれば当然、開閉角度は変わります。その結果として、110度あったものが95度になったとしても、通行上の有効開口幅は少なくなったわけでは無いと思われます。 塀にドアが当たるのは角度の問題ではないでしょう。30センチであろうと17センチであろうと、扉の寸法からするとその程度の誤差ではどちらも当たるのではないでしょうか。戸が当たって問題ならば当たらないようにする処置をすれば良いことで、実施図と原寸の違いを責める内容のものではないと思います。 機能性能が満たしているかを前提に考えるべきではないでしょうか。 時々、天井高が図面と1センチ違っていてクレームを付ける人がいます。これによって、予定していた家具(打ち合わせ済み)が入らなかったりした場合は別ですが、測って見なきゃ判らない様な、それによって体勢に影響がないものなら、あまり目くじら立てる必要もないように思います。 橋本解説員も言うように、契約書で型番がうたっていた物が入っていなくて、別の安物が入っていたというのなら、これは取り替えを要求する内容だと思いますが、そうではなく、使用上、支障がないのであればそれを取り正して言うことではないように思います。 もし、それがオーダーの建具であるなら、幅が6センチも大きくなった時点で建具の費用は値が上がります。立派な玄関ドアになったとも言えるのではないでしょうか。 良しとも取れるし、悪しとも取れる、それは受け止めた人によるような一件ですね。 業者の立場で見ると、玄関開口幅が広がって喜んで貰えるものと思ったのに、それを悪く言われるとは“嫌な感じの人”と思われたのではないでしょうか。 建築は機能性能を買う物です。だから工事中にも性能を損ねるようなミスなどが発生しないか監理し、発生した場合、その是正を行います。車などの工業製品では考えられませんが、建築の場合、機能性能を満たすため、新しい物でも切ったり張ったりが行われることがあります。だから、寸分違わず図面通りと行かない場合があります。 ですから、先ず、機能性能に支障があるか、(時に見た目の問題もありますが)是正する方法がないか検討し、それでも不可能であった場合は、作り直すという選択です。 最終的にはご自分の満足度の問題だと思いますが、私個人的には大したこともないのに関係を悪くしてアフターのレスポンスが悪くなるのに・・・と思います。 相手も人です。私も同じです。良かれと思ってやったことを悪く取られたり、些細なことで「そこまで言うか?!」と言うようなクレームを言われたりすると、正直、その後、その人のために何かしてあげようなどと言う気持ちにはなれません。すべてビジネス。権利主張ばかりされる人には、こちらは義務だけで対応する事になるわけです。信頼してくれた人には後々まで、気にしてフォローしてしまいますが。 |
コメンテーター | |
樽 一弥 | 大昔の設計の丁稚の頃の話しですが、TKさんと同じように図面をスケールで当たっていくら幾らと測って、その寸法を元に他の部分の設計をしていたんですね。で、やっとできたと思ったら先輩が図面を見るなり小言を言うわけです。 「お前、図面を分一(ブイチ:何分の一という意味で縮尺を合わせて測ること)で測ったやろ!」 「分一で測ったらアカン。計算してだせ!」 昔は図面を鉛筆で書いていましたので正しいのは記載した寸法であって、表示は信じるなというお話しです。 これはCADで描くようになった現在でも同じだと思います。TKさんが実施図と言っているのは詳細図でもなく大体のレイアウトを示している程度の図面だと感じます。扉の大きさにしてもこの図面での縮尺で6cmの違いは分からないでしょう。これは橋本さんが解説したとおりです。それに、縮尺によって表現方法も違うことを覚えて下さい。 尚、私の場合の扉寸法については有効な開口幅(戸当り間の内寸)で記載しています。ですからこの縮尺の場合はTKさんの業者さんと同じ表現になり、ご指摘のように実際の扉の製作寸法幅より小さく表現しています。 さて、実際に寸法が違うことでどういう問題がありますか? これから施工者とは建物がある限り何かとメンテナンス等で助けてもらう事もあるかと思います。 どうしても必要な寸法でない限り、手直しすることも必要ですが、他の方法を考える、或いは考えてもらうことも大切なことだと思います。 |
事務局から | |
荻原 幸雄 | 間取り図的なものを計って建物が建てるのではなく実際は通り芯を基準に建築していきます。 芯、そこから基礎幅、仕上げなどを含めて実際の建物はできるのです。 ですから間取り程度の図面では計測しても意味をもちません。 私どもは厳しい寸法の場合は詳細図を作成し、実際の現実的なミリ単位の寸法を出すこともあります。その場合は現場でも細心の注意を払い確認します。 しかし、これらは設計業務を主にしている私たちの事務所でないとここまではしないことと思います。 建築条件付の設計者はここまでの対価は支払われていませんし、その分、数をこなすことに専念するために、相談者の希望に沿うことはできないとみるべきです。 建築条件付の設計はその程度と理解すべきだと思います。 扉があたる場所はストッパーをつければよいと思います。 擁壁を移動させることもできるでしょうが、車のスペースが狭くなりようですね。 扉の緩衝はストッパーをつけることで対応してみてください。 余談ですが、写真から隣地との堺が擁壁のブロックになっていますが、 隣地の基礎から荷重は検討しておいたほうがいいでしょう。 また、基礎とブロックの処理はどのようにするのか? ここから水が浸入することも考えられます。半地下のようになっているのですが、ポーチの排水処理はどのようになっているのか確認してください。 擁壁と基礎のコーナーに排水溝らしい開口が見えますが、建物の結露の心配もあり、よく確認したほうがいいでしょう。 |
相談者お礼状 | |
相談者お礼状 | 大変丁寧な解説ありがとうございました。 なかなか素人目には分からない部分がたくさんあり、疑問に思うことがありましたが、丁寧な解説により、納得いくことができました。 |
その後 |
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