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一般社団法人建築よろず相談支援機構

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よろずWEB相談HEADLINE

No. 0931 「杉板落し込み」仕様の強度や耐震性について

 相談概要 [氏名]  MT
[居住住所] 京都府城陽市
[相談建物予定地] 京都府宇治市
[職業] 会社員
[年齢] 43
[男性] on
[構造] 木造(在来工法)
[引渡し年月日] 西暦2005年 1月  日
[公庫は使わない] on
[性能保証を使用] on
[何階建て] 2
[延べ面積m2] 90
[延べ面積坪]
[工事請負金額] 1800
[設計監理料] 0
[様態] 注文建築
[施工者] 大工(工務店)
 相談内容 [家づくりの相談内容]
 最近ようやく土地を入手することができ、これから家を建てる段階に入る者です。
 建てる家の構造は木造軸組み工法で、最近話題に挙がっている「杉板落し込み」仕様にしようと思っています。
 依頼する工務店も「貫工法」や「小舞+土壁」といった在来工法の家を何軒も手掛けている、しっかりした技術を持っている業者で、「杉板落し込み」仕様も前向きに取り組んでくれるようで、ありがたく思っています。

 そこで相談したいことですが、当該「杉板落し込み工法」仕様で住宅性能表示をクリアすることができるか?ということです。(杉板は厚さ3cmの世間でよく使用されているものを使用します) 巷のHP等を見ていると、「杉板落し込み」仕様の強度や耐震性について、充分なものがあると証明されているようですが、都道府県によっては承認しないところもあるようです。京都でも実績が少ないので京都の審査機関のうち、どこがそれを承認しているか?ということになると思っています。
 yorozuの感想 時々拝見させていただいております。ホンネのするどい意見や助言など、参考になるものも多く、助かります。
アドバイザー 
木津田 秀雄 解説員の木津田です。

 おっしゃる通り「厚板落とし込み工法」というものはあります。
 まず建築確認申請について書きます。
 建築基準法が平成12年に大きく改正されて、仕様規定から性能規定に変わりました。簡単に言うと、これまでは役所で決められた工法でないと許可(確認)されなかったのですが、性能規定では一定の性能があることを設計者が確認すれば役所は許可(確認)をしなければならなくなりました。

 このような仕様にない工法については、それまでは日本建築センターという東京にある役所での審査が必要でしたが、それがなくなり、設計者が判断して、 各地方の役所の建築主事が、それぞれ個別に判断することになっています。
 私も八尾で壁倍率9倍の「貫筋かい工法」で設計をしたことがありますが、その時には実験結果などを持ち込んで、許可(確認)を取得しました。ですので、法律的には、「厚板落とし込み工法」でも許可(確認)は取れると思います。しかしそれなりに実験のデータを持ち込む必要があります。

 性能表示制度は、建築基準法以上の性能を評価するものですから、性格上、確認申請より性能規定そのものに近い考え方になります。(ある意味性能規定そのものです)木造の構造計算システムはだいぶ進歩していますし、破壊検査のデータなどから性能を導きだすことは可能かと思います。

 構造的な面以外に、隣地からの延焼についての規定もクリアする必要がありますので、場合によってはこちらの方が難しいかもしれません。
善養寺 幸子 解説員の善養寺です。

 私の師匠も、厚板の落とし込み工法で住宅を実施しており、確認もセンター持ち込みにしなくとも可能のようです。その工法を採用したいというならそれに問題は無いと思います。
 ただ、どうして住宅性能表示を取得することに拘られるのか解りません。
建売ならともかく、注文住宅に必要なのかどうか私は疑問に思います。決して取ってはいけないと言っているのではありません。そのお金を掛ける価値がどこにあるのか理解できないのです。売買するときに本当に有利なのかも疑問があります。 第三者の評価と言いますが、所詮、建築基準法(最低の基準)に多少プラスオンした程度のように思います。先駆的な物、ある面では優れた伝統的な物、を実際は評価できない。ですから、時代が過ぎれば、評価そのものが妖しくなるのではと思っています。

たとえば、防蟻処理を薬剤で行う。耐久性の評価はあがる。今の法律上、シックハウスの対象でもない。しかし、来年、その薬剤が基準法で規制され使用禁止となれば、この建物は基準不適格の建物となってしまうのではないでしょうか? 断熱材もそうです。
断熱性能は高くなるが、火災では燃えやすくなってしまう物も多々あり、今の所、基準法は黙認していますが、いつ、規制になるかわからない。 今の所、難燃、不燃の法律自体が後手後手なので、基準法通りに作って、基準法の最低基準以下になる建物も多々です。建築基準法自体にまだまだ問題があるので、住人にとって性能の評価と関係なしに危険な建物となっているわけです。

 だから、私は自分のお客様に言うのですが、住宅性能評価の最高評価を取っても真実の最高ではない。現実として欲しい性能が、耐震性能3割り増し、次世代省エネルギー基準、耐火同等準耐火、万全なるシックハウス対策、などオーダーによって作られたのだから、施主の最高基準の性能を有している。
わざわざ、高いお金を払って、低い基準で評価して貰う必要も無いのではないか?その分、拘りの性能に金をかけれるではないかと説明しています。別に評価されたらまずいから言っているわけではありません。

 先駆的な物には役所もついてきていない。今の段階で、正しい評価は出来ない。
 評価は未来がする。

 性能評価を重視して構造合板張るくらいなら、性能評価は何であれ、厚板落とし込み工法を私なら選択するでしょう。それが文化的で、環境のためにも、住人の健康のためにも良いと私は判断します。未来はそれを評価するように思います。 信頼できる建築家を捜して設計して貰うことの方が、遙かに性能表示より価値があるように私は思っているのですが。
 尚、建築基準法は守り、検査済みは取るのは絶対です。
 コメンテーター 
樽 一弥 ご質問の住宅性能評価は住宅のものさしとして評価基準と評価の方法を定めたものですが、容易に且つ客観的に分かるということが前提になっています。

従って、その内容は評価の理解し易い項目に限ってということになっています。
杉板落し込みが誰にも分かる工法かどうかを考えて頂くと、評価機関が評価できるかどうかは疑問に残るところです。例えば評価の中には「構造の安定」という項目がありますが、同工法の壁の耐力については明示されていないように思います。木津田氏の解説にあるように許認可は問題なくても、その評価の方法が確立しているかというと難しいかと思います。
スタンダードな評価は事例が多くなることで生まれてきます。
新しい試みはいい面も悪い面も施主自身が評価の主体者だと思います。そしてそれは善養寺解説員のいうように良くも悪くも「評価は未来がする。」ように思います。

性能評価には紛争処理というオマケもついてきますが、それ以前に施工者、設計者と信頼関係を築きながら工法について、評価について十分理解されたらいかがでしょうか。少なく共、環境に良いというだけでなく利点、欠点やそれに伴う他の構成要素も含めて考えないと本末転倒ということにもなりかねません。晴らしい住宅が誕生することをお祈りいたします。
 事務局から 
  荻原 幸雄 落とし込み板工法は平成15年12月9日 国土交通省告示第1543号による改正によって壁倍率0.6倍として定められました。
よって、何ら問題なく土塗壁、面格子板壁と同様に伝統工法でも壁の評価が可能になったので、基準法上もなんら問題はなくなりました。
よって住宅性能表示も通常の住宅と同様に対応できるものです。

都道府県によって違いがあることは法律なのでありませんが、対応が遅れている場合はあります。その場合は該当告示を示して説明すれば対応していただけるものと思います。
相談者お礼状 
 相談者お礼状 丁寧な助言をいただきありがとうございました。確かに「注文住宅」である以上、建売住宅のように「お墨付き」をもらう必要はないと思いました。工務店の話しでは、「筋交いも入れる」とのことなので、強度的には充分ありますし、何よりも工務店の力量を信頼しているので。「家を建てる」ことは、根本のところでは施主と工務店の間に良好な人間関係を作ることが重要と思います。私の建てる家は、最近の家に比べると地味ではありますが、「住み心地の良い」家になると工務店の社長も太鼓判を押してくれているので、完成を楽しみにしています。
 その後  
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