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一般社団法人建築よろず相談支援機構

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よろずWEB相談HEADLINE

No. 0923 分離発注方式について(オープン的仕組みのシステム)

 相談概要 [氏名] M.M
[居住住所] 愛知県安城市
[相談建物予定地] 愛知県安城市
[職業] 会社員
[年齢] 41
[女性] on
[構造] 木造(在来工法)
[引渡し年月日] 西暦    年  月  日
[公庫は使わない] on
[性能保証は使っていない] on
[何階建て] 2
[延べ面積m2]
[延べ面積坪] 45
[工事請負金額] 2500
[設計監理料] 250
 相談内容 [家づくりの相談内容]
オープン的仕組みの分離発注アシステムの家作りについて教えて下さい。

住宅新築を検討中の者です。

私自信は漠然とハウスメーカーか近場の工務店でお願いしようと思っておりましたが、主人はこちらのようなサイトや雑誌等で勉強して建築士さんの監理の下、納得の行く家作りをしたいと申します。

何人かにお会いしてプラン提示なども頂きましたが、どうにも決め手がないままです。
よく相性と言われますが、一度お会いしただけでは分かりませんし、設計に関わる方は口の重い方が多いように感じました。

主人はその間ますます勉強を重ね、最近はオープン的仕組みの分離発注システムをとっておられる設計士さんに興味を感じているようです。

私が思うに特定の工務店と馴れ合いがない若い方に多いようです。
工務店を通さないので、責任の所在がハッキリせず保険が必要とも聞きました。

価格が見えるというのを掲げておられますが、私達はお金も大事ですが安いことばかりにこだわっているつもりはありません。

主人は工務店任せでない分、建築士さんが監理を熱心にして下さると思っているようです。

私は共働きで忙しい我家に、施主の参加がより必要とされそうな、分離発注の方法が合うとは思えません。

オープン的仕組みの分離発注システムのメリット、デメリットを教えて下さい
 yorozuの感想 大変詳細な解説が多く、とても参考になります。
解説の方々も親身になって対応されており信頼感があります。
アドバイザー 
樽 一弥 樽といいます。

このオープン的仕組みの分離発注システムはよく知りませんが、CM(コンストラクション・ マネージメント)のようなもののようですね。大事なのは管理と監理は違うということです。一般にゼネコンに任せる利点は完成までの責任の所在とリスクヘッジが出来ているということだと思います。言い換えるとこのシステムでは誰が施工しても同じ品質のものができるという確証(設計)と、同時に的確なサブコンへの管理(施工)が伴っている必要があります。

確かにサブコンへ各々へ見積もり依頼し分離発注するのは、ゼネコンの間接費がありませんので安価になるでしょう。けれどそれが一生の建物を建てるという保険料より安いとは思いません。

さらには取りまとめの設計事務所が設計監理・施工管理を行うということは、設計事務所がゼネコンをしていることと同じだと感じます。

しっかりした設計者が責任を持って行う分は良いと思います(当然、通常の設計監理以上に費用は高くなって当然です)が、現実には利益相反ということもあるでしょうし、監理と管理を十分にできる設計者は少ないのではないでしょうか。
必ずしも悪いということではありませんが、サブコンとの各々の請負契約になるなどリスクも大きいと思われます。十分にこのシステムについて問いただした上で採用されたらどうでしようか。
山口 雅克 解説員の山口です。

 建築、電気設備、給排水衛生設備、住宅設備機器程度の分離発注でしたら問題はないのですが、代理店(職人単位や下請け業者)と個々に契約を結んで発注する方式にはメリットはないと思っています。

 設計監理専業の建築士は建主の代理人として中立の立場で仕事を行いますが、工事管理をマトモにできるひとはいないのではないでしょうか。いたとしても、建設会社の監督さんの代わりをするだけですから、工務店に頼んだのとなんら変わりはありま
せん。お金が仕分けされて払われるだけです。

 中には、このシステムと称して口利きを行い、設計者を下請けとして使い、仕事をよく知らないでクレームが重なっているような者がいるとも聞きます。
 安さだけでないと思っていらっしゃるので、御希望にそった家づくりをされたいのであれば、住宅に精通した設計監理専業の人と出合うことが最良と思います。
 久米 能子 久米と申します。

 私は以前からオープン的仕組みの分離発注システムは疑問を持っているので、私の意見は否定的なニュアンスとなるかと思いますので、参考までに読んでください。

 最近は、各地でこのシステムの講習会などが設計事務所対象に行なわれているようです。
ですから、おそらく、今後もこのシステムの現場は増えていくことでしょうが、このシステムのもっとも大きな問題は、第三者監理が崩れているのではないかという点です。
 つまり、他の解説委員の説明の通り、このシステムの分離発注方式での工事関係者たちは、設計施工で工務店に依頼するのとほぼ同じ立場であるということです。設計事務所が工務店の立場を兼任するからです。
 それさえ、御理解されて進められるならば、建築主さんにとって大きな勘違いはおこらないと思います。

 このシステムを選択される方々は何故、それが良いと思われるのでしょうか?
設計事務所のデザインや工事監理と共に、工事価格を押えられるというメリットもつく、と受け止められているのではないでしょうか?
 設計事務所の仕事の仕方は色々なので、極簡単に監理を行なう事務所もあれば、詳細な監理を行なっているところもありますが、何れにしろ、施工者とは立場が違うために、異なった視点から工事監理ができることが一番のメリットと思います。(第三
者監理)

 けれども、本来、工事監理というものは大変な時間と労力を要します。行う業務は多岐にわたります。それを考えれば、どうやってこのシステムの設計事務所が施工管理 (工務店の監督さんのする仕事)まで行なえる余裕があるのか、不思議でなりません。ひとつの現場にこのシステムの設計事務所から、担当者が2人以上専任でつくならば別かもしれませんが。

 このシステムを取っている事務所とそうでない事務所の業務のやり方を詳しく聞いてみましょう。その上で納得されたならば、何も問題はないでしょう。

 よろず建築相談の解説委員の設計事務所は、このシステムに参加している事務所はありません。それは、前述の、「第三者監理」が崩れる可能性が理由です。
 尚、設計事務所と共に住宅の設計を進められる場合は、このシステムであろうとなかろうと、建築主さんの労力はかなりかかります。
よく言えば、深く家造りにかかわるということですが、ハウスメーカーと違って、造ろうと思えば何でも一から造っていかれるのですから、自由である分、大変であることには変わりありません。
 お任せにしたいのならば、ハウスメーカーもひとつの選択肢でしょう。でも、大変だった分、出来上がった家には愛情を感じられるだろうと思いますが、如何でしょうか。 
橋本 頼幸  このシステムは「確認申請」の施工者は「直営工事」となります。
そのこと自体は別に悪いとは思いませんが、このシステムの特徴は「施工者(工務店)がやるべき工程や工事費の調整を設計事務所が肩代わりする」という事だったと理解していますが、結局工程や予算の調整は私たち設計事務所が設計監理としてする程度のことしかしておらず、「この週の間に屋根やさんが来ます。コンクリートは来週です。」程度の内容しか把握しておらず、結局各専門 業者の成り行き任せになっていたことが大きな問題だと思います。

さらに、そのことを依頼者がほとんど認知しておらず、これでトラブルになる方は設計監理と施工管理の違いを理解していない場合が多く、その程度の認知しかしていないと言うことです。

結局、本やネット上の「煽り文句」にのせられて、その気になったのはいいが、住宅を建てるときの原則、このシステムのメリットデメリットなどが十分に理解されずに進めてしまう場合は注意が必要です。
さらに、悪いことにこのシステムではより技術と知識が求められ、施主からの全面的な信頼を受けて進むべき業務が、各専門業者任せになり、設計者も施工した業者に聞かなければ技術的な回答ができないというケースの場合は限りなく不幸です。 
善養寺 幸子  オープン的仕組みの分離発注システムは、施主自身が工務店と言う立場になると考えてください。それを設計事務所がお手伝いするというスタンスです。
ですから、建物の10年保証もご自分が請け負うという立場になることを認識下さい。
だって、本来、個々の職人への発注は元請けの工務店が行うことです。そして、その手配料を請負費として計上しており、その他に現場管理費として納入時期や職人の出入りの行程管理の監督の人件費を計上してあるわけです。

その管理分を、施主が工務店の立場で設計者と同人の建築士に下請として出すだけの話しです。工務店としての請負費は元請け代わりの自分への報酬ですから、その分が安くなったりする事もあるでしょうが、その請負リスクは設計事務所ではなく、施主自らが負うと言うのが分離発注の意味です。このシステムだと工務店の請負の大きな違いはそこです。工務店同様のリスクを設計事務所が受けるとすれば、それは設計事務所と言う看板を掲げた建設業者なのです。

委託契約と請負契約は、大きく違います。分離発注とした場合、施主(発注者)と職人が契約を結ぶ話です。施工に関してのリスクを負う立場として、法的には設計事務所は間には存在していません。

このシステムでは、請負契約は存在しませんので、法的に建築紛争などの調停対象にはならず、何あった際には公の紛争調停では扱ってもらえないと思われます。
基本的には、ご自分の責任下での施工とお考え下さい。
しっかり監理されるかどうかと言う以前の問題だと思います。
自分で手作りでお家を建てたいという方には、あっているかも知れません。
他人に責任を持たせようとお考えなら、むいていないように思われます。 
関口 啓介   関口と申します。

分離発注方式について否定するつもりはありませんが、本当の意味でコストメリット、施工管理を監理者が兼ねるメリットがあるのかは疑問です。
実態としては、仕事が少ない設計者がオープン的仕組みの分離発注システムに飛びついて仕事受注の方策としている場合もあるからです。

私自身、7年程前に、分離発注を手がけた事があります。身内に近い建築主だったので、一緒に苦労を共にする覚悟で行いました。ただ、業種を24ぐらいに細分化して発注予定でしたが、ある程度まとめて発注した方がコストメリットがあり、本当の専門
工事業種ごとの分離発注にはなりませんでした。そこまで細分化した場合の責任が私に取れる自身がなかったのも事実です。全ての業種のからみから段取りを設計者が全てやろうと思えば、全ての仕事をキャンセルして、その現場に張り付いていなければならなかったからです。また、発注者である、建築主の苦労も並ではありません。支払い一つとっても細かく、支払いに値するかの責任は、基本的には発注者である建築主の責任において行われる事になります。直営方式とは、発注者がそのまま工務店の役割を果たすものだと考えれば、理解できると思います。月々の支払いのために、ある程度の現金も、必要でありました。このシステム(分離発注方式)の支払い条件がどのようになるのかは知りません。

その後も見積だけは分離で出してみたりもしましたが、分離だから安いかと思えば、逆に高いケースの方が多かったりもしました。単純に中間マージンの削除とはいかないところが、建築業界の複雑さでもあります。
皆さんも書かれているように、管理と監理はあきらかに違います。
私たち監理者は、監督に品質や技術、工期的な注意点を指摘しながら、監督を指揮し誘導します。こちらの目が行届かないと、管理などはそっちのけで手配だけしかしてない監督も実在します。

また、現場管理が本当にできる設計者がどれだけいるかも疑問です。材料や職人さんの手配だけなら誰でもできます。例えばコンクリート打設一つとっても、生コンプラントの状況から、ポンプ屋さんの癖や上手い下手さ、土工さんの気性。道具や材料、
人員の配置だけでは対処できない事はたくさんあります。高い添加剤を入れたから綺麗に打てるのではなく、意思疎通ができて初めてできるのです。よろずの多くの設計者がやっているように、その場合、建築主、職人、工務店監督、設計監理者が協力しあって初めてできると感じます。私たちも木槌をもったり、竹やりをもったりして施工に参加する事が多いのですが、そんな時、自分が居るから監督員は要らないとか、職人さんを一人外しても良いなどと感じた事はありません。夫々に必要な役割がある
からです。

建築主さんが、住まい造りに参加される事は大いに望む事です。省いて良いものと、省いてはならないものがあると感じます。また、施工業務の形態は同じ愛知県内でも地域で違うものだと実感します。全国統一のシステムで、その地域風土に合わせた、 住まい造りができるかどうかも疑問です。
中には、対処されてみえる方も居るかもしれません。そうなるとシステムだけでなく、その人と一緒に住まい造りについてお話合い頂いて、ごなっとくできる方と進められると良いですね。
システムだけでは造れません、人と人と人が協力協同してはじめてできる作業が住まい造りだと考えます。
その過程の中に、家族を再構築する、大切な作業が含まれていると、最近つくづく感じます。
 コメンテーター 
氏原 毅士  私も久米解説員と同様にこのシステムには疑問を持っています。
先ず
1:設計者が施工者の役割をするのは物理的に無理であると思うこと。
2:分離発注でコスト削減というが、その分設計監理(管理か?)の費用が思いのほかかかること
3:施工後のトラブルに対して責任所在が不明確である事。

 たとえば雨漏りが発生した場合、大工は構造では無いと言うであろうし、防水(屋根屋さん)は下地が悪いと主張。電気屋さんは引き込み位置の指定はなかったと言う。
 要するにトータルで工事管理(監理ではありません)を行う責任者が居ないという事になってしまうと思われます。
 設計事務所の資産なんてわずかなものです、工事に対する瑕疵を設計者が担保するのは困難でしょう。
 設計監理での責任は果たしますが、設計者に管理責任を持たすには無理がありすぎると思います。
 監理と管理の違いにご注意とご理解をお願いします。
 事務局から 
  荻原 幸雄 建築よろず相談では民主的な家づくりを提唱しております。
それは建築主(クライアント)・現場管理(所謂、施工会社の現場監督のこと)・工事監理(クライアントから依頼を受けたもの、通常は設計者)の3つの目が大切であることを訴えております。昔ながらの監理と管理を一緒に請負う工務店などの方式は建築主に対して施工会社(現場監督)+工事監理(施工会社の社員、又は、下請けの外注事務所)という2つの目しかないことになり、民主的な観点から推奨はできないと考えております。

このオープン的仕組みの分離発注システムは建築主に対して工事監理者が現場監督+工事監理という2つの目しかないことになり、民主的な観点からこれも推奨はできないと考えております。

資本主義社会では営利目的の会社は当然認められているところですが、その適切な業務を建築主が把握することは不可能です。そこで工事監理という独立した立場の人間が建築主の側に立つものとして現場を把握し適切な現場になるように判断することは大切なことなのです。そこで、先程の2つの目のことを見てください。両者ともに担当のレベルが低い場合は問題が発生します。この場合は建築主は現場の状況を適切に知らせるものがいないので問題があっても認識しないで竣工する場合もありますが、何かのきっかけで問題を知ることになった場合は2つの目の場合は貴方の味方は現場には不在であることを知ります。
3つの目さえ確保しておけば安心だったのですが、その場合は自力で解決するしかありません。
そうです。リスクは全て建築主が負うという決断なしには成り立たないということです。
それをご理解ください。

オープンといいながら問題が発生したことはオープンにしません。
建築業界はそういうものです。
相談者お礼状 
 相談者お礼状 大変詳細な解説を沢山頂きまして誠に有難うございます。
非常に勉強になりました。
分離発注方式が建築士さんと建築主にとって如何に労力を要するかよく理解できました。この方法の方が建築士さんが施工をよりしっかり見てくれると誤解していましたが、現場管理と施工監理は違うものであり、二つの仕事を一人に任すのは荷が重過ぎて無理があるのが分かりました。建築主にとっても工事責任を負う所がないのが非常に危険で、この方法のメリットは殆どないようです。

 今後は自分達にあった建築士さんを見つけて、工務店を決め、建主として積極的に家作りに参加して行きたいと思います。まだまだこれからですので、今後ともyorozuで勉強させて頂きたいと思います。また新たに相談したい事が出てくるかもしれませんのでその際にはよろしくお願いします。本当にどうも有り難うございました。
 その後  
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