相談概要 | [氏名] O.H [居住住所] 神奈川県厚木市 [相談建物予定地] 東京都町田市 [職業] 会社員 [年齢] 30 [男性] on [構造] 木造(在来工法) [引渡し年月日] 西暦2004年9月30日 [公庫使用] on [性能保証を使用] on [何階建て] 2 [延べ面積m2] 82.6 [延べ面積坪] [工事請負金額] 4280 [設計監理料] 0 [様態] 建築条件付建売住宅(売建住宅) [施工者] 地場中小ハウスメーカー;地域的な中小産業 [設計者を選んだのは] 自分では選んでいない。 [監理者を選んだのは] 自分で選んでいない。 [確認申請書は本来建築主が出すと説明を?] 受けていない。 [18確認申請の為の委任しましたか?] してない。 [確認申請書お持ちですか?] 無い。 [検査済証は有りますか?] 有る。 [お手持ちの図面は何枚?] 10枚以下 [打ち合わせ何回] 10回以下 [施工者名] S企画 [販売会社名] Mリビング(株) [設計者名] A設計事務所 [監理者名] A設計事務所 |
相談内容 | [家づくりの相談内容] [状況] 土地は南側が道路,北に向かってなだらかに下った傾斜地です. 地耐力は3トン/平米(SS方式測定)でした. この北側境界(南側境界から12 m程度,1 m程下がっている)に擁壁を設置し,盛り土によって南側道路の高さ(=設計GL)に平坦化の予定です.盛り土は南側(道路に接している部分)は0 mmですが,ベタ基礎の最北部では約850 mmとなります(造成計画断面図より判断). しかし基礎伏図によれば基礎の深さはGLから250 mm(+捨てコン30 mm)なので,基礎の北側約7割は盛り土の上に乗ることになります. ここで心配しているのが不同沈下です.不同沈下をキーワードに検索すれば,まさに「傾斜」+「盛り土」はよく見られる原因の一つ. 「盛り土」のみの地耐力は無いに等しいとの記述もあり,自分の建物がそうなりはしないか不安になります. [業者の見解] そこでベタ基礎の深さを深くする等,何らかの対策の検討をお願いしたところ,『きちんと設計しているので問題ない』と再設計は避けたい様子. 盛り土の転圧締め固めにより対応可能と考えているようです. 「住宅金融公庫」,「高耐久性能保証」の審査が問題のない証拠であると言われました. [相談内容] どの程度であれば不同沈下の恐れがあるのか,素人なため全くわかりません. 上記のような状況の場合,何としても対策をお願いすべきでしょうか. それともこの程度の傾きや深さであれば,杞憂に終わるようなことなのでしょうか. 第三者的立場からの根拠となり得るお話をうかがえれば一番良いと考えました. ご教授いただければ幸いです.よろしくお願いいたします. |
yorozuの感想 | 消費者の立場に立って,しかしあくまでも第三者的観点からのアドバイスをされている点が素晴らしいと思います.民主主義の原理原則が通用する健全な業界を目指すとの姿勢には大変共感いたしました.今後よりいっそうの発展を心から願います. |
アドバイザー | |
山口 雅克 | 解説員の山口です。 地耐力は3トン/平米(SS方式測定)とありますが、それは盛土部分を含んでいる訳ではありませんので注意が必要です。又、70cmほどの盛り土の転圧締め固めを問題なく行うには無理があると考えた方がいいでしょう。盛土のその厚みのすべてに砕石などを使うのであれば別ですが、一般的ではないでしょう。 単なる地耐力の数値でなく、土質やN値の連続深さ、1階と2階のバランスなども考慮して基礎の設計を行いますので、詳細は現地と調査報告書を第三者の専門家(住宅基礎設計に詳しい人)に見てもらう方がいいでしょう。 ベタ基礎を深くすることはできませんので、地耐力を確保できる深さに布基礎を設置するなどの工夫をお薦めします。場合によっては、杭を打つことにもなります。 |
清水 煬二 | 解説員の清水です。 建築条件付とのことですが、先方は、建売程度に考えているのでしょうね。 地盤に対して、こういう建売や建築条件付きで買主が業者に対抗するのは難しいと思います。 対応策として、 第三者機関の地盤保証が付いているかどうかを確認してください。 構造体と雨漏れの10年保証ではなく、地盤の保証は別になっています。 もし付いていなければ、リクエストして下さい。 これを付けてくれれば、一般的に10年間5000万円までの保証が付くので、買主として、最悪の事態は免れることができるでしょう。 そしていずれにしろ、今の状態で良いか悪いかは本来、誰にも判断できませんから、盛り土をして整地したあとに地盤調査を再度行うよう事前にリクエストして下さい。 上記の機関も、保証するなら本来この状態での調査資料と基礎の構造を要求すると思います。 SS調査なら、数万円ですから、この費用は買主負担として事前に調査の条件としておくと良いですね。 地盤改良が必要になったときの費用負担をどちらがするかも決めておいた方が良いでしょう。 擁壁を造るにあたって、さらにカットして盛り土ということもよくありますので、注意が必要です。 いずれの要求も認めてくれないのなら、この状態での契約継続は、問題なく住み続けることもできるかもしれませんが、不具合が生じるかもしれないということも覚悟しておいた方がよいでしょう。 |
コメンテーター | |
久米 能子 | 現在及び盛土をしたあとの状態で、何も地盤の対策をしなくてもよいかどうかという判断は、仮に盛土後の調査で、ある程度良い結果が出たとしても難しいものです。 必ず間違いなく不同沈下する、とは誰も言い切れないとともに、その可能性をゼロときっぱりと言い切ることもできないでしょう。おそらく大方の意見は、何らかの対策は取った方がベター、というところに落ち着くと思います。 となれば、心配を払拭する対策をとることを考えたほうがよほど現実的のように思います。 設計の立場からすれば、木造2階建ての基礎を、おっしゃるようなご心配を無くすために設計しなおすことなど、(プロからすれば)大した作業ではありません。私なら心配だと思えば、費用が例えかかっても、迷わず基礎を直して建設します。建ててしまってから問題が起きて、いくらそれを補償してもらったとしても、そのトラブルによる被害はお金だけでは拭えません。 話が通らなければ、技術的な問題というより、単なる好みの問題として要求しても良いのではないでしょうか。壁の色を白くするか黒くするかと同じことで、建築主のあなたがそうしたいということは、何か物理的な問題がなければ、拒否する理由もないでしょう。 |
事務局から | |
荻原 幸雄 | 設計者にはそれぞれの判断がありますが、特に地盤に関しては相違がかけ離れている場合が多々あるようです。 相談にある設計者の判断については詳細データーが不足ですので、コメントは避けさせていただきます。 以下はわたしが、この地盤の設計をする場合として、 盛り土は地耐力はゼロと判断し、測定地盤を少なくとも支持地盤と考えて基礎の設計をするでしょう。盛り土の上には基礎は設けません。また、SSデーターを見ませんと解りませんが、3t/uぎりぎりなら、建物の荷重を考慮してトータルに考え安全側に設計します。場合によっては地盤改良、杭工事などが必要になると判断します。 地盤の問題は難しいので簡単には回答できませんが、いずれにしても『きちんと設計しているので問題ない』との感覚的な説明はアカウンタビリティーが不足していると思えます。また、『「住宅金融公庫」,「高耐久性能保証」の審査が問題のない証拠』の発言も審査はそこまではみれません。これもナンセンスな回答です。 第三者の建築士に図面確認してもらったほうがいいと思われます。 |
相談者お礼状 | |
相談者お礼状 | 迅速且つご丁寧なご解説やコメントをいただき,まことにありがとうございました. 盛り土や基礎に対する技術的なご見解,状況についての客観的なご意見,考えられうる対応策,と,ご解説いただければと思っていた事項を全て教えていただけ,大変うれしく,そして心強く思っております. 今後はご意見を参考にじっくりと考え,後悔なきよう対処したいと考えております. 進展につきましてはまた後日,別途報告いたします. 取り急ぎの御礼にて失礼いたします. |
その後 | No.919では適切なアドバイスやコメントをありがとうございました.上記でご相談頂いた 基礎は結局,盛り土側を深基礎に変更できました. 売主側の姿勢は清水様ご指摘の通りで,「基本は(間取りの自由な)建売」とは何度とな く言われました.提案した地盤保証は認められず,第3者の介入は嫌がられ,せめて盛り土後の再調査は取付けたものの,山口様のアドバイスや久米様のコメントを読むに1 m以上の盛り土に対する不安はぬぐえません. よって可能な対策を打診し,久米様にコメントいただいたように「嗜好の問題」としてお願いして,散々「必要無い」と言われながらも,了承を得ることが出来ました.施工業者に深基礎の経験があり,盛り土前の土地はロームで以前建物も立っていたことから支持基盤としては適当であると考え,本件は納得することとしました. 皆様からのアドバイスは大変力強い支えとなりました.重ねて御礼を申し上げます.頂いたご回答は全てが有機的につながった非常に有意義なものであったと思います.売主は自分たちのやり方や物件に自信を持っているようで,実際過去問題が起こったことも無いようなのですが,荻原様の言われるように買主に対する説明責任といった観念が欠如しており,当然その自覚も無いようです.好意的に解釈すれば職人的なのかもしれませんが,通常とは桁違いの買い物なのですから,顧客満足という点からも再考が必要なやり方と思います.物件は気に入っているので,これからも何とか頑張りたいと思っております. |
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