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一般社団法人建築よろず相談支援機構

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〒181-0001 東京都三鷹市井の頭3丁目12番11号

よろずWEB相談HEADLINE

No. 0882 専業の建築設計事務所に依頼したが・・・。

 相談概要 [氏名] K.M
[居住住所] 愛知県春日井市
[相談建物予定地] 愛知県春日井市
[職業] 医師
[年齢] 40
[女性] on
[構造] 木造(在来工法)
[設計者はどなたに依頼しますか?] 専業の建築設計事務所
[何階建て] 2
[延べ面積m2]
[延べ面積坪] 75
[工事請負金額] 5000
[設計監理料] 300
[お手持ちの図面は何枚?] 20枚以下
[打ち合わせ何回] 10回以下
[様態] 注文建築
[施工者] 建設会社
 相談内容 [家づくりの相談内容]
自宅を新築しようと思い昨年の9月に建築設計事務所へ依頼しました。契約前に健康住宅にこだわりたいが予算も限られている旨を話ましたところ、快諾されました。当方としましては、同じ県内なのですが、市が違い車で1から2時間位の距離にある事が不安でしたが、私の家の近隣での仕事の経験もあり、近くの工務店を何軒もご存知だということで、契約しました。

何度か打ち合わせを重ねるうちに、健康住宅に対する考え方の相違(ホルムアルデヒドの少ない4スターさえ使えば多分いいんじゃないかなあというような発言等)といいますか、温度差のようなものを感じて、かなり困惑したのですが、一緒に勉強していこうという思いで、こちらから色々提案したりして頑張ってきました。

12月に入って、まだ、詳細な仕様が決まらないがとりあえず工務店と契約して、その後に細かい打ち合わせを重ねて変更していけば良いと言われ、見積もりをしていただくことにしました。建築家の先生は建設会社A1本でと言われましたが、特命は気が進まなかったものですから、もう1社の別会社B(こちらも先生の紹介)へも見積もりも依頼していただきました。

金額に大きな相違は無かったのですが、建築家の先生の勧める建設会社Aは土台が檜(防蟻処理なし)の筈が、米栂になっていたり、管柱が集成材になっていたり、断熱材の種類が違っていたり等、設計図とかなり異なっいることを建築家の先生でなく、私達が気づいたのですが、建築家の先生は書き間違えただけだから問題ないのでA社に決めて増減の相談をしていこうとと言われました。

B社とも打ち合わせをしていただきたいとお願いしましたが、評判の悪い会社だからと取り合っていただけませんでした。A社の方と建築家の方と私達の3者で打ち合わせを一度したのですが、A社と建築家の方がかなり親しいような発言が随所にみられた反面、土台等の設計の仕様の部分や区分登記の可能な2世帯住宅の界壁等A社に伝わってない事が数々あることもわかり、また、見積もりの仕方の説明にも納得できませんでしたのでA社とは契約しませんでした。

建築家の先生にA社以外の工務店を紹介してくださるよう依頼したのですが、B社とはする気がないし、他は遠方だったり多忙だったりとかで、紹介できないと言われました。そこで、私達が知人の紹介で工務店を探すことができれば初めての工務店とでも設計監理をしていただけるかおたづねしましたら、自信がないので監理をおりるが設計図はここ2ヶ月の変更部分を書き直して送るから、 残金を払って買って欲しい、その後は勝手にどこかの工務店で設計図を使って家を建てても良いと言われました。

私達としては仕様も含め設計もまだ完成しておらず、たとえ設計図があっても、監理無しで、工務店だけでいい家が建つものか、かなり不安に思っています。トラブルが発生した場合等、責任の所在等、対処に困るのではと思いますがいかがでしょうか?

もう一度、別の建築家の方と最初から始めた方がよいのでしょうか?かなり、途方にくれていますので、よろしくご指導お願い致します。
 yorozuの感想 2−3年前から、拝見させていただいて、かなり勉強になりました。当初、ハウスメーカーで家を建てる予定でしたが、このHPをみて、建築家の重要性がわかって、建築家に依頼することにしました。しかし、現実は上記のような結果になっています。建築家の方にも色々考え方があるということでしょうか。
アドバイザー 
藤井 修 名古屋の藤井です。

設計事務所が一つの工務店を強く推薦する事はおかしな事です。
しっかりした設計図と仕様書に基づき、数社で競争見積もりをすれば値打ちな価格で工事ができるはずです。
又、初めて付き合う工務店でもしっかりとした工事監理をする事で良い建物ができると思います。

今後の進め方としては
1・現在の設計図を使い監理だけを他の設計事務所に依頼する。
2・他の設計事務所に依頼し、設計図の見直しを行ったうえで監理をしてもらう。
3・他の設計事務所で一からやり直す。
4・現在の図面で工務店に全て依頼する。

今のプランが気に入ったものであれば費用の面からも2番の方法で進められたらよろしいと思います。
なぜなら、設計者によって建築の考えが違いますから、設計図を見直す事で適切な仕様を選択でき、品質の管理ができます。
又見直すと言うことで責任の所在もはっきりすると思います。
善養寺 幸子 解説員の善養寺です。

 折角、専業の建築家に依頼したというのに、残念な経過のようですね。
 少し設計者選定に問題があったようですね。どうも、一般の方は一級建築士というと、建築全般において精通しているように思われるようですが、中にはペーパードライバーの様な試験勉強で取ってはみたが、全く建築が解っていないと言う建築士が結構沢山いるのも現実です。こんな言い方も変ですが、肩書きが一級建築士だからと言って、それだけで信用されない方が良いでしょう。その人がどの様なポリシーで、どの様な仕事をしていて、どの様な実績があるか、それを調べて知った上で人間性も含めて判断し、自分の依頼先に相応しいかどうか検討する必要があります。

 専業の設計事務所でも、建築に拘りを持ち、文化を創ろうくらい意気込みのある『建築家』設計事務所もあれば、工務店の下請けや建売専門の確認申請業務を主な収入源としている『事務』系設計事務所も存在しています。どちらも表向きは専業の設計事務所なのですが、中身は全く異なるものです。
 間違って『事務』系設計事務所に、行ってしまったために、期待する設計監理業務をしてもらえなかったと言う話は、近所でも聞きます。

 ご自分の希望があったのなら、その希望に即した仕事の実績を持っているかどうかで、設計者選定をされるべきだったでしょう。実績のない物を頼むと言うことは、かなりリスクな話です。

 今回の建築士の方は少しいい加減な仕事のスタイルを取っている感じも受けますね。
 ただ、総工費に対しての設計監理費用を見るとその様なやり方となってしまうような費用ですね。印象として安価です。

 折角よろずを見て、専業の設計事務所に依頼しようと言う気になっていただいたのに、本当に残念です。藤井解説員の言うように、前向きに対処するなら、改めて、監理業務と設計見直しを別の設計事務所に依頼し、進めていったらどうでしょうか。

 仕切直して、良い『建築家』に出会って欲しいものです。今のままでは専業の設計事務所の建築士はろくなもんじゃないと思われたままとなってしまうでしょう。
 残念ながらその方は設計事務所を営んでいましたが、『建築家』では無い方のようです。拘りの健康住宅を建ててくれる建築家を捜してみてください。
 設計ごと仕切直すかはその方に相談されると良いでしょう。気分を取りなおして頑張ってください。
関口 啓介  愛知の関口です。

ご相談の設計者の態度には、情けない思いが致します。
少し気になりますのが、ご記入頂いた延床面積や金額に比べて設計監理料が低くはないかと感じます。
どのような設計者かは存じませんが、この報酬でご要望にきちんとお応えできる業務ができるかどうかは疑問です。

邪推ではありますが、この設計者は工務店からのリベートを見込んでいたのではないでしょうか。
ご相談の内容や、報酬金額からそのような事も考えてしまいます。
または、当初からまともな仕事はする気が無かったか、できなかったかです。
設計者とそのあたりも含めて良く話し合って頂き、よくご検討頂いた方が良いでしょう。

設計監理料で無理を強いていなかったか、本当に責任ある仕事ができるのか、善養寺解説委員が指摘されるように確認申請の代願事務所なのかもしれません。
今までの労力を考えれば進められる事をお勧めしますが、そのままつくるのが本当に良いかはわかりません。 
 新垣 正清 沖縄の解説員 新垣です。

遠方にもかかわらず打ち合わせた、これまでの時間が無駄になるかも知れませんが、結論から申し上げると、別の設計事務所をお探しになったほうが良いとおもいます。

 文面からして、当該設計事務所と建築会社A社は、多分リベートを廻すような黒いつながりがあると推測されます。また、B社はA社の指示で適当に合い見積もりを出しただけのように思われます。多分当該設計事務所とも、顔見知りでもないでしょう。
 まともな設計事務所なら、評判の悪い業者から、見積もりを取る事はないでしょう。危険を察知したら、撤退するのも勇気です。

 設計・監理料についても、設計事務所みずから、信頼関係を損なう行為をしており、基本的に支払う義務はないとおもいますが、十分話あってください。
 あせらずに、ご自分の思いを十分伝えられる、設計事務所を探されることを、お勧めします。 
 コメンテーター 
畔上 廣司 2〜3年前から、当よろず相談をご覧になって勉強していたに拘らず、 K.Mさんにとっては、たいへん残念なことと思います。建築設計監理の重要性に理解ある建築家にめぐり合えなかったようですね。

 このまま工事契約どおり進行した場合、お互いの建築設計仕様の不整合など大トラブルは必死と感じます。建築家の方にも色々考え方があるでしょうが、今般の場合は番外の建築士事務所に遭遇したとお考えください。

 解説委員の皆さんが指摘されるとおり、建築を託されたプロの資質が許せないことは然りでしょう。しかし、設計・工事監理業務費用から見ると、明らかに通常の設計監理料とは考えられませんし、設計業務に無理が生じる範囲であったことも否めません。また、依頼者側に建築士事務所の選定に対しての心構えや甘さも問われるところでしょう。今後の対応は大変ですが、粘り焦らず、くり返し正直な対話をもって頑張っていただきたいと思います。

今回先ずはK.Mさんにとって大切な住まいが必要であることが第一です。原点に立ち戻り再度、どのような我が家にしたいか、住みたいか、予算や要望や仕様を整理することでしょう。信頼を失った建築設計仕様とA社の工事施工では、この先どうにもなりません。現状をしっかり調整でき、次へのステップを判断し得る新たな建築家候補が必要とも思われます。

なお、我々も「他山の石」として「肝に銘じ然るべき」と考え、建築主にとってベストなパートナーを目指して行かねばと感じました。
まだまだ「よろず活動」の必要性が分った次第でもあります。
 事務局から 
  荻原 幸雄 数年前からよろず相談をご覧になり、専業の設計事務所を選択して、このようになったのは事務局として、大変遺憾であり、専業という言葉の意味を今、噛み締めております。

専業という意味は設計工事監理を基本業務としている事務所です。
設計施工はしていない事務所のことです。この点からある意味、この事務所も専業と呼べるかもしれません。しかし、「貴方の事務所は専業設計事務所ですか?」
と問えばほとんどの事務所は「そうです。」と答えるでしょう。これは施工をしていない。
という意味で捉えるからです。しかし、この専業事務所の中の9割程度は独立はできていないということも事実なのです。独立という意味はその事務所の仕事の依頼者が業者からの依頼でない事務所ということになります。つまり、9割の事務所は存続させるために所謂業者(ハウスメーカー、不動産業者、施工会社など)が依頼者であり、この事務所は下請けとしての業務をしています。この場合はほとんどが工事監理はしません。ですから、このような業務をする事務所は監理経験が実は少なく、監理できない事務所なのです。当然、お得意さんですから一般のクライアントと違い、仕事は定期的にもらえるのです。

また、よく設計事務所の紹介というものもあります。この場合紹介者は施工会社、ハウスメーカー、不動産業者、時には医療機器メーカー担当者、薬剤出入担当者などいろいろあると思います。建築そのものや建築ができるために使用される機器も含めて全く関係ない人からの紹介ならば問題はありませんが、ある建築ができることによって利害関係にあるものの紹介の場合はリベートの可能性が高くなります。この場合の紹介の事務所には紹介者に頭が上がらなくなり、適切な設計、工事監理ができるのか疑問が残ります。わたしの事務所でもこのような話を持ちかけてくる者がおります。
当然、これらの行為は本来のクライアントの利益に全くならないばかりではなく、適切な設計工事監理の妨げになるので、お断りし排除しております。

建築業者選定には通常は複数の施工会社から合い見積もりするのが通常です。
特命の場合は特殊な場合です。例えば、本格的数奇屋造りなど、特殊な建築以外は特命のメリットは依頼者からみれば、それほどあるものではありません。

本題に戻ります。この事務所は依頼者の要望より他会社より見積を取るも、その施工会社は辞めたほうがいいといい、選択肢を1社しか選定していない点が大いに問題があります。また、図面と実際の内容が違うにも関わらず、そのまま進めている点など、選定施工会社と特別な関係が存在しているのではないか?と疑ってもおかしくない内容になっております。
このような事務所は工事監理もできないでしょう。

しかし、この事務所と契約解除するならば機敏に対処し、次の設計事務所を選定した後にしたほうがいいでしょう。現場が動いているので、次の事務所に設計図面、2社の見積明細書、現場の進捗状況を把握してもらい、工事の妥当性を判断してもってください。この場合は工事請負契約も解除の可能性も高くなります。
(癒着がある場合ですが・・・)総合的な判断が必要になりますので、冷静に且つ迅速に対処してください。
相談者お礼状 
 相談者お礼状 早速のご回答ありがとうございました。
お忙しい中、解説委員の方々のご親切に感謝いたします。

当初、70坪くらいで予算が4200万円位でしたので、”7%で310万円”と建築家の方の言われるまま、契約しましたが、結果として報酬金額が少なかったのかもしれません。

今回のことで、正直、建築家にかなり失望感を抱いていたのですが、このたび、6名もの方から、詳細にアドバイスをいただき、救われたような思いです。本当にありがとうございました。今後、どのようにしていくかは、まだ、気持ちの整理がついておりませんが、家族とよく相談して、頑張っていこうと思います。
経過につきましては、後日、報告させていただきます。
家族一同、感謝しております。ありがとうございました。
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