相談概要 | [氏名] N.A [居住住所] 栃木県足利市 [相談建物予定地] 栃木県足利市 [職業] 執筆業 [年齢] 37 [女性] on [構造] わからない [設計者はどなたに依頼しますか?] 特に決めていない。 [何階建て] 2 [延べ面積m2] [延べ面積坪] 60〜65 [工事請負金額] 3500 [設計監理料] 0 [お手持ちの図面は何枚?] − [打ち合わせ何回] − [様態] 注文建築 [施工者] − |
相談内容 | [家づくりの相談内容] 建て替えの予定があり、勉強中です。いろいろな本を読み、展示場へ足を運ぶたびに、いったいどうすればいいのかわからなくなってしまいます。他社のマイナスイメージをアピールされることが多いので、これだ! とういう決め手がなく、不信感がつのっています。先日、高気密・高断熱の外断熱の体験ハウスに宿泊しました。 24時間換気・24時間蓄熱暖房でその暖かさに感激したのですが、あまりにも人工的にコントロールされた環境に、もっと自然な方法で、冬の暖かさを確保し、かつ、夏の暑さや湿気の問題をクリアできるといいのに・・・。と思いました。そこで・・・ @なるべく自然に住まうということと、快適に(暖かく、涼しくなど)住まうということの両方を求めることは矛盾しているのでしょうか? 今回建て替えで体の不自由な親と同居することになるので、冷房の使用は極力避けたい反面、冬はどこにいても暖かくしたいこともあって、よい方法があればアドバイスお願いいたします。 また、過去の相談の中から・・・ A「パッシブ換気は温帯ではうまく機能しない」とありましたが、その理由と、ここ北関東では機能するのかどうか B「温帯の高断熱住宅には、閉じるための技術・開くための技術が必要」とありましたが、何を閉開し、どんな技術がいるのか C「自然の通風を考えたときに、外断熱より自然な風・素材」とありましたが、その場合に適した断熱の仕方、冬の寒さをどうクリアするか、以上を教えてください。 勉強不足ですみませんが、よろしくお願いいたします。 |
yorozuの感想 | 相談者のみなさんが知識が豊富なのに驚きました。ついていけないこともしばしばで・・・。もっとよく検討せねばと決意をあらたにしました。 『我が家を手に入れるま前に〜』と出会わなかったら、大手メーカーで簡単に契約していたかもしれません。(もちろんいろいろ比較検討したうえで決めるのならいいのですが。結構ハイペースで契約にもっていこうとしますよね。)よろず相談員のみなさまの高い志に感謝します。 |
アドバイザー | |
山口 雅克 | 解説員の山口です。 情報が多すぎると何がなんだか分からなくなってしまいますよね。家づくりに限らず言える事ですが、その中から自分が本当に探している情報に出会えた時は嬉しいものです。 あまりにも人工的にコントロールされた環境は私自信???と考えています。なるべく自然に住まうということと、快適に(暖かく、涼しくなど)住まうということの両方を求めることは決して矛盾していることではありません。ただ、その快適さには程度があります。 夏の冷房や冬の暖かさに関しては風通しや日射しことを考慮してプランを考えると大方の部分は解決できます。それで不足する部分を人工的なコントロールに頼ることと割り切ってみたらいかがでしょうか。 断熱の仕方:外部の寒さや暑さに対する断熱方法と、内部の温度コントロールに対する断熱方法があります。夏の暑さ対策としては、風通しは勿論ですが、直射日光が室内に照りつけない工夫や、天井だけでなく屋根にも断熱材を入れる、屋根裏を大きくする、屋根裏換気を十分にすることなどがあります。 冬の寒さ:日射しが部屋の奥まで届くような工夫をしましょう。天気の良い日は輻射熱でかなり暖かいですよ。人工的なものとしては床暖房がお薦めです。床暖房は色々な方法がありますので、生活様式や光熱費の負担の仕方で考えてみて下さい。 |
星 裕之 | 解説員の星です。 高気密・高断熱、床暖房・循環システム等の言葉におどらされているような気がします。自然を全く期待できない都市の密集地では、人工的ない家造りにならざるを得ないことは仕方がないことかもしれません。しかし、大部分の住宅地はそうではないと思います。 心地よさはシステム名や数値では表せません。建築設計の基本になりますが、夏の陽射しをさえぎり、冬は部屋の奥まで光が差し込むようなひさしとすること。 南北・東西通風を確保し、空気の循環を行うこと。 床下・屋根に少し多めの断熱材をいれ断熱・蓄熱効果を期待すること。 無垢材を多用し、人に優しい肌ざわりを提供し、材のもつ調湿機能を期待すること。 このようなことを行うだけで充分快適に、心地よく住めると私は考えます。 「心地よさ」を考える設計者の住宅を一度体験してみてください。きっと考え方が変わると思います。 |
善養寺 幸子 | 解説員の善養寺です。 全ての工法には一長一短はあると思います。それぞれがそれぞれベターと考えて、開発したわけですし。ただ、他の解説員も言うように、数値の性能が必ずしも、人間の体感の快適さを決定付けるものではありません。メーカーの住宅は、ある面、平準化されたレベルの性能は商品の性格上、作ってると思います。しかしながら、量産という経営上の観点から、一軒一軒の家庭の事情に合わせた物を用意することは不可能と言えます。それは、多少の間取りの変化で調整するのでしょうが、それだけでは、個人の要求する性能や機能、設備や間取り、感覚には細部までは対応できないと思います。ですから、一般的なことを要求だけに留めるのであれば、ハウスメーカーのそれぞれの一長一短を理解した上、どれかを選ぶのが無難でしょう。 ただ、障害を持った人を抱えていることや、ご自分の希望するものが根本的にそのユニット化された物にはそぐわないと思ったのであれば、後は建築家と自分だけのオートクチュールな家づくりをするしか無いように思います。最近は、吊しの服選びのような家づくりが主流ですが、テーラーで、身に合わせた服作りが本来の家づくりだったはずです。昔なら、職人によるテーラー(大工が図面も描いて作る)だったかも知れませんが、今なら、デザイナーがついて、本人により似合う物(必要な物を必要な技術で対応する)を考えて、職人の技を際だたせるオートクチュールなのではないかと思っています。 リュウマチを持つ方の家を設計した際、接触する素材の熱の奪われ方で体調に影響するので、冷たく感じない素材を用いたり、夏熱すぎるとそれはそれで具合が悪くなるのですが、クーラーも使えないので、夜間換気をし蓄冷する仕様にしました。その際も直接風が身体に当たらないような計画をするのなど、細心の注意を配しました。 建築家にも一度相談してみたらいかがでしょうか?それぞれのノウハウで、貴方の家族へのベターを考えてくれるのではないでしょうか?貴方が漠然で良いですから、もっと自然にと思われるなら、そんな話をしたら良いのではないでしょうか? 建築家もそれぞれ個性があり価値観も違います。共感できる人間に頼まれたら良いと思います。 予算的なこともざっくばらんに相談してみると良いと思います。 このところ、欠陥建築のチェックばかりに建築士も資格を持つ人の役割がマスコミで言われますが、建築士は欠陥を防ぐためだけに存在しているのはありません。前向きに自分達の「いい家」作りに技術者としての力(ノウハウによるアドバイス)を貸して欲しいと言われる方がやりがいを持ちます。 家づくりを楽しみたいと思われるのであれば、百聞は一見にしかず、一度建築家を見に行って見てください。目から鱗が落ちるかも知れませんよ。 |
コメンテーター | |
古賀 保彦 | 住まいづくりに当たって、色々と研究されていらっしゃるようで何よりかと思います。 解説にありますように、性能と心地良さを備えた住まいの実現を難しく考える事も無いと思いますが、自分にとってこれが一番というものに巡り合うまではまだ時間がかかるかもしれませんね。 ハウスメーカー等住宅を大量に供給しなければならない立場では、一つ一つの住まいに対してたくさんの時間を割けませんから、システムが売り物になったりもします。 システムに対するこだわりも必要だと思いますが、その他の住まいの要素も重要な人にとってはシステムだけでは物足りない事もあるでしょう。 一つ一つの住まいを、性能のみならず敷地条件や家族の必要な住まい方等を鑑みながら創りあげていく為には手間や時間や工夫が必要になってきます。それをまとめていくのが建築家の役割だと思います。 知識ではある方法が良いと分かってはいても、快適な空間の創り方や使い勝手、コスト配分等の他の条件から違う方法を採用した方が良いという場合もありますが、このような知識と現実を紡ぐ役割は専門家ならではのものです。 ただ、建築家にも得手・不得手や相性がありますので、疑問に思う事や実現したい事を話してみて、どのように応えてもらえるのかを見ながら検討される事も必要になってくるでしょう。良い建築家に巡り会えますよう頑張って下さいね。 |
事務局から | |
荻原 幸雄 | 家造りの勉強は何よりです。家造りは貴方の人生で感じたこと、悩んだこと、楽しみなどを通じて感じた生き方の集大成でもあります。思い立ったら吉日という人が多い中で、じっくり勉強してから家造りを始めるのはよいことです。しかし、ここでぶつかるのは勉強すればするほど、分けがわからなくなるという矛盾です。そうなんです。家は我々設計者でも日々悩んでいます。この世の家族の数だけ、それぞれの家造りが存在するからです。 さて、建築では20年しないと本当のことはわからないというのが、現実です。数年前にできたものはその経験を経ていないので、「大丈夫だ」とは誰もいえないのです。当然、どこでも「これはいい」と思ってアピールします。メリットはアピールできるのです。しかし、デメリットは20年の時を経て初めて経験してわかることで、実はだれも数年前に考えたシステムを実際に住んだ経験者はいないということになります。高気密高断熱が昨今騒がれ、しかし、その家に20年住んだ実績はまだだれもないのです。設計者とて、住んでいないわけですから、安易な「この家はデメリットはない」なんていえないので、メリットを強調すすために情報の混乱が起きていると思います。 ものごとには必ずメリットデメリットが存在します。本当に家造りは両方知らないと実現できないのです。メリットの情報だけではいい家はできないということを理解してください。そんな中、設計者はどうしているか? カトログを見て鵜呑みにしないという癖がついています。カタログを見て先ず先に考えるのはデメリットなのです。書いていないデメリットを見抜くことこそ、大切だと思っています。 よく、いろいろなカタログの踊らされている一般の方がおりますが、完結したシステムは一度できたら融通が効かないことを理解してください。 24時間換気システム。故障した場合やダクトの将来の更新の場合、天井を全て壊すことが必要になるでしょう。 増築なりリフォームしようとしたときに気密が壊される可能性もあります。(同じ業者に依頼するという方法はあります。しかし、その時にその会社は存続しているのだろうか?システムが変わっているかも?) ある意味完結しているシステムは自由がなくなる可能性があるということも理解して家造りを進めてください。 |
相談者お礼状 | |
相談者お礼状 | 一通一通の丁寧なアドバイス、ありがたく拝見いたしました。 自分と家族がどんな暮らし方をしたいのか、それにはどういう家造りをすべきなのかというところから、もう一度考えなければと思いました。「どういう家造り」といった点に関しては、やはり素人の限界があるので、「暮らしたい家」を実現してくださるプロの知恵・経験がものをいうのだということもよくわかりました。 いろいろジタバタしていますが、解説員の方々の温かい励ましには、わからないなりにやってきたことが全く無駄というわけではなかったのだと、うれしく思っています。新しい気持ちで家造りを考えていきます。どうもありがとうございました。 |
その後 |
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