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一般社団法人建築よろず相談支援機構

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〒181-0001 東京都三鷹市井の頭3丁目12番11号

よろずWEB相談HEADLINE

No. 0813 条件付で心豊かに過ごせる空間ができるか?

 相談概要 [氏名] K.A
[居住住所] 東京都練馬区
[相談建物予
定地] 東京都東村山市
[職業] 講師
[年齢] 29
[女性] on
[構造] わからない
[設計者はどなたに依頼しますか?] -
[何階建て] 2
[延べ面積m2] 84.6
[延べ面積坪] 25.60
[工事請負金額] 3880(土地込み)
[設計監理料] わかりません
[お手持ちの図面は何枚?] 3枚
[打ち合わせ何回] −
[様態] 建売り住宅
[施工者] −
 相談内容 [家づくりの相談内容]

はじめまして。ワールドフォトプレスから出版されています「狭小住宅 PART3」からこの相談HPを知りまして、ご相談させていただきました。
まず、諸費用込みで4500万円以内という条件で物件を探していましたところ、知り合いでもあり、信頼もしています不動産屋さんから、秋津で、土地32.02坪(建蔽率40%、容積率80%、条件付)、建物込みで3880万円という物件を紹介していただきました。
その物件を見に行ってみましたところ、駅からもそれほど遠くなく、周りも静かでいい環境でしたので、また、建物に自分の意見を反映させてもらえるというのが何よりも魅力でしたので、昨日、不動産屋さんにも付き添っていただいて、建物の具体的な話し合いに行ってきました。

あちらでは3枚の設計図を用意してくださっていたのですが、どれも、いかにも「建売り」といった感じの間取りで、魅力を感じませんでしたので、住宅に関する雑誌を参考に自分で考えた間取りを、お恥ずかしながら提案してみました。

 最初は建築士さんがいらっしゃらなかったのですが、その案を見てすぐに呼んでくださり、実際に図面を書いてくださった方との話し合いが始まりました。

私としては、中庭を作る点、それによって外部を内部に取り込める点、中庭に面して開放的なお風呂が作れる点、広いLDKからも小さい和室からも中庭が見通せる点、廊下をなくし、移動のための通路とキッチンを兼ねた点などが、自分の案の中では気に入っていたのですが、どれも、合理性に欠けるとのことでした。(相手側が用意してくださった図面、私が自分で書いてみた図面とも、添付できれば添付しようかと思ったのですが・・・)

素人ですから完成された間取りでないことは当然分かっていますが、一つ一つ、すべてにわたって否定され、その案から何の広がりも見出せないことに、非常に落胆し、信頼する気持ちが起こらなくなってしまいました。
また、そのほかの希望を伝えても否定されることが多かったので、すっかり「型にはまった」というイメージを拭えなくなってしまいました。
結局、私の意見を考慮に入れながら、再び図面を書いてくださるということになりましたが、建築士さんに対して、大胆に変化したり、型から抜け出してくれそうだという希望が持てないでいます。
信頼関係が築けないかもしれない建築士さんがついている今回の物件を買うのはやめた方がいいのでしょうか?

しかし、これ程意見を聞いてくれる建売り住宅はあまりないのじゃないかと思うので、今回の物件に非常に魅力を感じていることも確かです。
私としては、合理性に欠けるところがあったとしても、こだわりのある、心豊かに過ごせる空間ができれば最高だと思っているのですが、そしてその為には多少の差額も覚悟はしていますが、建売り住宅にそんなことを求めてはいけないのでしょうか?

自分が考えた間取りとは違う間取りを考えてみたりもしていますが、雑誌に載っているような個性的な家に少しでも近づけるために、私ができることは何かありますでしょうか?

不動産屋さんの話ですと、2,3日中に新しい図面を書いてくださって、それでOKということであれば、今週中にでも建築確認を取っておきたいということでしたので、非常に急いた気持ちでおります。
ですから、できればお早目にお返事がいただけますと幸いです。

最後になりましたが、乱文を長々とお読みいただいてありがとうございました。
どうぞよろしくお願いします。
 yorozuの感想 相談内容の欄にも書きましたが、何分気が急いているものですから、隅々まで見させていただいたわけではありませんので、感想を書くというのは少しおこがましい気がするのですが・・・
HPの最初に書いてあります「消費者側の立場に立って」という言葉が非常に心強く感じられました。
また、全体を通して堅実なイメージが感じられましたので、ぜひ相談してみようという気持ちになりました。
ただ、相談するに当たって、以前に相談されている内容と同じだと困るので相談検索をしましたが、自分の相談内容のキーワードがよく分からなかったため、検索がうまくいきませんでした。
またNOでの検索は膨大な量であるため、大まかな内容別に検索ができるとありがたいとは感じました。

では、相談のほう、どうぞよろしくお願いいたします。
アドバイザー 
木津田 秀雄 解説員の木津田です。

 建築条件付き土地売買の場合、基本的には「建売り」としたいところだが、間取りの自由性を確保するために、請負契約を別にしている「だけ」という業者が多いのが現状です。ですから、できるだけイレギュラーな間取りはやらないということになるかと思います。
また建築条件付き土地売買といいながら、実際には土地売買と建物の請負契約を同時にすることが多く、そのためには予め決まったパターンの間取りを用意しておき、その間取りで請負契約を行い、その後請負契約の内容変更を行い、改めて変更請負契約を締結することが多いようです。この場合、もともとの決まったパターンの建物の中身や価格がブラックボックスになりますので、それからいくら差額が出たか分からないという問題があります。さらに大幅にちがう間取りだと差額を出せないので、ますます価格は不明瞭になります。

 このような販売形態をとっているのは、土地建物一括で銀行融資を受けたい、それほど間取り等にこだわらない人が多いなど消費者側の希望による部分もあります。業者としては、手間暇かけずに儲けることができるというのが最大のメリットです。

 このような感覚で仕事をしている「おつきの」建築士に、自由な発想で心豊かな住空間を提案させることは、はっきり言って困難です。私の場合、少なくとも間取りを決めるのに3カ月程度は時間を取ってもらうようにしています。今回の建築士はおそらく2回か3回で間取りは決められると思っているでしょう。その位家づくりに関して意識に差がありますから、なかなかその溝を埋めるのは難しいと思います。

 難しいかもしれませんが、一度建築条件を外す交渉もしてみてはどうでしょうか。
いくらか上乗せは必要になりますが、それで設計者や施工業者の選定はフリーになります。また設計監理のみ、こちらで希望の建築士を捜されて、工事の契約はその会社とする(部材もできるだけ合わせる)というような方法も考えられます。(あくまで請負契約が条件で、設計監理契約は条件に入らないと思いますので)

 建築士と言ってもその所属によりいろいろな立場の人がいます。本当に独立して依頼者の意見を聞き判断を示してくれる人が少ないのも事実です。そのような世の中でいかにご自分が納得した家づくりができるか、ある意味、挑戦するくらいの意気込みがないと難しいのが現実です。よい家づくりができるよう、がんばってください。
 善養寺 幸子 解説員の善養寺です。

 当初の予算よりは、今の物件に余裕があるので建築条件を外して貰うか、設計監理を別に入れさせて貰うかした方が後悔のない家づくりが出来るのではないでしょうか。

 一級建築士と聞くとどなたも同じような能力があると思われがちですが、資格と能力には、かなりの格差があります。設計事務所と名していても業務内容の違いで出来ることと出来ないことがあることを認識しておく必要があるでしょう。

雑誌に紹介されているような住宅を設計しているのは、建築家と呼ばれるような建物を設計することに哲学を持っていたり、デザインや機能、性能に拘りを持って、枠にはまらない発想で新たなものを創造することを本業としていますが、一般的に建売の設計や工務店の下請けで設計をしている建築士は建築家とは呼ばない『代行設計屋』と言っても良いと思います。所謂、代願屋と呼ばれる確認申請を代行するのを本業としている設計事務所のことです。

 一級建築士の資格があっても、施工の仕事しかしたことがないなど、設計業務の出来ない建築士も存在します。
 設計事務所も、工務店でも建築士が在籍していれば登録できますから、その事務所の業務内容をしっかり把握して自分の望みに適しているかを先ず見極める事が重要です。

 設計事務所は大きく大別して、

 1.『建築家の設計監理』を主業務としている設計事務所(※建築家住宅を創る)
 2.確認代行を主として、『工務店や不動産会社の下請け』を業務として、監理は
   名だけを入れて実際は行わない設計事務所(※建売、野暮ったい住宅を作る)
 3.建設会社やハウスメーカーの子会社など『ユニット設計』を業務としている
   設計事務所(※施工しやすいオーソドックスな住宅を作る)
 4.工務店、不動産屋など設計事務所登録はしているが実質、『何もできない』
   名義だけの設計事務所(※2へ丸投げ)

 と、分けれるのではないでしょうか。

K.Aさんが希望しているものは、1の建築家住宅と思われます。それをいくら努力しても、2の代行設計者には不可能な希望と思われます。平面プランが、雑誌に出てくる様な図面になったとしても、出来上がったものは理想とはほど遠いものとなることでしょう。設計とは、間取りだけでどうにかなるものではなく、複雑で多岐に渡る技術知識、感性の集大成を具現化するものですから、建築知識の乏しい素人の施主と、能力のない建築士とどうやりあっても感性や知識不足を埋めることは出来ません。

 そしてその業務の違いが、それぞれの報酬の違いです。

 1.なら、工事費の10〜15%が設計監理費。(それ以上の大先生も存在する)
   ※設計図もその建物の為だけに数十枚以上作成され、工事中も頻繁に足を
    運ぶ。
 2.なら、30〜50万円程度。※確認申請に必要な図面のみ図面2〜6枚、
   監理者名に名前を入れてもほとんど現場には足を運ばず、検査も行わない。
 3.なら、工事費の5〜7%程度。※簡易設計で共通仕様書など入れて、図面
   6〜十数枚、メーカーの姿勢による。監理者名に名前を入れてもほとんど
   現場には足を運ばず、検査は現場担当任せ。
 4.謎。

と言うような桁が違うほど、設計監理費の報酬の違いがあります。それが大きな手間の掛け方の違いや能力の違いと言ったら良いでしょう。

 施主が望むことの大半(間取り、性能、機能、仕様、デザイン、施工チェック)は設計監理の受け持つ部分です。もっと、設計者選定にウエイトを持って取り組まれることが希望を現実化する最短距離の様に思います。

 紹介下さった不動産屋さんが親しい方なのなら、ざっくばらんに意志を伝え、条件を外して貰うか、設計監理を別にして貰うか配慮して貰った方が良いと思います。
 折角の大金をはたいての家づくり、簡単に取り返しがつくものではありません。安易に作って永い年数後悔するより良いのではないでしょうか。
 コメンテーター 
久米 能子  信頼関係というのはわずかなことで行き詰まりやすいものですし、はじめから信頼できそうにないと感じる相手と組むのはいかがかと思います。二人の解説委員の言われるように、折角の家なのですから、納得の行くように進められるよう、しばらくの間、頑張りましょう。

 けれども、どんなに素晴らしい建築家でも、その敷地条件に合わないことは達成できませんし、また、そのアイデア自体は素敵でも、家全体のイメージや動線の整理、施工の問題、予算などから、ご希望のいくつかは、ご覧になった雑誌のようにはいかないこともあるとお考えになって、そのうちの幾つかが達成できればいい、くらいに構えておいていただきたいと思います。本当にうまい建築家ならば、ご希望そのまま、というわけにはいかなくても、そのエッセンスや雰囲気を取り入れるように考えてくれるでしょうが、何分限られた土地、限られた予算なので我慢も必ずあるということです。
 大変でしょうけれども、応援しています。 
 事務局から 
  荻原 幸雄 いい空間を造れる能力は絵がうまい人が絵描の道に進むように、建築は空間のデザイン力を持つ能力の人が建築士になるものではありません。実は絵描きで食べていける人の数ほどしかいい空間を創造できる人は現実は大変少ないものです。おおまかには、いい空間を創造できる人は一級建築士の1%程度でしょう。100人に1人くらいでしょう。

 不動屋さんが連れてくる、若しくは従属している一級建築士は当然この100人に1人の中に入っていません。なぜならデザイン力のある建築士は不動屋さんの都合でデザインが壊されるからです。不動屋さんはそこそこのデザインすなわち売れるデザインでいいのです。

また、客観的な監理能力のある人は一級建築士の1%程度だと思われます。これも100人に1人程度でしょう。
即ち、デザイン力+監理能力の保持者は0.1%程度と一級建築士の1000人に1人程度となります。

それをどのように探すか?実はあなたの選定能力も貴方の建てる家は求めているのです。がんばってください。
相談者お礼状 
 相談者お礼状  今回のアドバイスをいただきまして、設計監理を別に入れさせていただくという方法があることを初めて知りましたので、今後はそのような方向、もしくは、できれば建築条件をはずしていただくという方向で考えていこうと思っております。

ですが、相手の不動産屋さんに、「なるべく早目に建築確認を取って、9月20日には着工したい」という風に言われているため、今更そのようなことを申し出て受諾していただけるかというのは非常に心配です。

また、建築士の方と何度も連絡を取り合い、調整してきましたが、なかなかうまくいかず、土地も小さいため、これ以上、他の間取りが考えられないのではないかという気もしています。

きっと「建売り思考」に、自分も捕らわれてきてしまったせいだとは思うのですが、別の建築家の方にご相談申し上げても同じような結果になってしまうのではないかという不安もあり、別の建築士さんにお願いする踏ん切りもつかずにいるというのが現状です。

建築士さんだけを別にして、建売りの部材を使って、それほど違う家をつくることができるのでしょうか?

建築士さんの質の違いというのを細かく解説していただきましたが、実感としてはやはりよくわかっていないということなのでしょう。

みなさんがくださったアドバイスや温かいお言葉には、本当に心が救われました。
あきらめず、なるべく希望にあった家をつくるために、努力していこうと思います。
本当にありがとうございました。
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