相談概要 | [氏名] M.Y [相談内容] 注文住宅の瑕疵 [居住住所] 石川県加賀市 [相談建物所在地] 石川県加賀市 [職業] 会社員 [年齢] 31 [男性] on [構造] その他の構造 [引渡し年月日] 西暦2003年12月 [公庫使用] on [性能保証を使用] on [何階建て] 2 [延べ面積m2] [延べ面積坪] 70 [工事請負金額] 3600 [設計監理料] 0 [様態] 注文建築 [施工者] 建設会社 [設計者を選んだのは] 自分では選んでいない。 [監理者を選んだのは] 自分で選んでいない。 [確認申請書は本来建築主が出すと説明を?] 受けた。 [18確認申請の為の委任しましたか?] 覚えていない。 [確認申請書お持ちですか?] 無い。 [検査済証は有りますか?] 無い。 [お手持ちの図面は何枚?] − [打ち合わせ何回] 30回以上 [施工者名] T住宅 [販売会社名] [設計者名] M [監理者名] T |
相談内容 | [現象] 現在本工事着工前の擁壁工事が終わったところです。 問題は、擁壁にあります。打説から5日目に型枠を外し、打設から10日目の朝確認したら、幅1mm程の亀裂が入っていました。 当方の敷地は、傾斜地にあたり擁壁は、南側道路面の傾斜部に当たります。一番低いところで30cm、程高いところで2M程です。(擁壁の確認申請は出していません。) ・擁壁の幅は、23cm ・コンクリート強度は、21N、スランプ15、骨材25です。容量は、擁壁で23 立米使用。打設時立ち会っていたので、強度や水を混ぜた等はありません。 ・配筋は、高さ(上から)1M程までは、縦横300mmピッチのシングル配筋(縦 横13mmだったと思います。)高さ(上から)1M程以上は、縦横300mmピッチのダブル配筋・天候は、梅雨時期で、打設初日は曇りでした。その後も、曇りや雨が多く、5日目に型枠を外してからは熱いという日はありませんでした。 ・亀裂部は、ダブル配筋からシングル配筋に変わったところの、シングル配筋部で割れています。亀裂の個所には、フェンスを建てるための直径65mmのスリープ穴があり、亀裂は、スリープのほぼ中央をまたいで、擁壁の表も裏も入っています。 スリープから水を入れると、下の亀裂のから水が染みてきます。スリープには、縦筋の頭が見えています。亀裂はセパにもかかっています。仕上がり面のセパの穴埋めモルタルも割れています。 ・地盤は、超軟弱地盤で解体前の家では、4%傾いていました。家の前後で40cmの差があります。外観で傾いているのが分かります。35年前の造成地ですが、造成前は、田んぼで底なしに近かった様です。造成地の中心近くの10棟以上が中心に向けて傾いています。地盤調査は、ボーリング調査を行い、支持層までは20Mでした。20Mまでは、N値7以下です。 ・亀裂の入っていた場所は、解体前の擁壁でも完全に割れており、補強を行うと、その隣が割れる始末。どんどん割れていくため、途中で、補強は止めました。 ◆私の見会は、信じがたいが自重で地盤が下がったとしか思えない。下がったときに高い擁壁に低い擁壁も引っ張られ、シングル配筋のスリープがあるところで割れてしまった。 [業者の見解] 原因は不明。予想を越えた軟弱地盤かも知れない。 日差しが強いと言ったことも無く、打設から9日目までは割れていなかったので、乾燥によるクラックとも思えない。土の埋め戻しもまだ行っていないので、土圧はかかっていない。擁壁の自重で沈んだにしては早いし、解体前の擁壁よりは軽いし、家の荷重はまったく無い。ベースは割れていないため、地盤が傾いたとも思えない。補強の提案がありました。 亀裂の入った場所の埋め戻しがわに、もう1枚立ち上がりを設けて、亀裂の入った擁壁にアンカー鉄筋を打ち込み、補強壁を作る。補強壁は、ダブル配筋〜亀裂個所〜擁壁の終わりまで作る。8Mほどの長さになる。補強壁の縦筋は、新設ベース(亀裂の入った擁壁が立ち上がっているベース)にアンカー鉄筋にて固定する。補強壁の厚み:10cm〜13cm程配筋:シングル配筋で、ピッチを細かくする。新設擁壁(亀裂の入った擁壁)と新設ベースには、アンカーを何本も打つ。8Mの長さなので、20cmピッチで配筋したとして、アンカー本数は、ベースには40本、新設擁壁には、40本×2段=80本となる。 [相談内容] 補強で大丈夫なのか? 内側に壁を作りアンカーを打ち込んだとしても、既に新設擁壁は割れているため、強度はまったく無いと思われる。アンカーでどれだけの強度が出るのか?ダブル配筋部まで、コンクリをハツリ、シングル部を全てダブル配筋にした方が良いのではないか?色の違いが出るかも知れないが、覚悟の上です。軟弱地盤なので、われても良いように、擁壁の終わりには勝手口を作ってあり、勝手口の土間で割れてくれると思っていました。土間なら補強もしやすく、見た目も、壁で割れるよりましです。今回は、勝手口の土間まで届かず、途中の壁で割れました。工期的に、埋め戻しの日も迫っており、判断に困っています。 宜しくお願いします。 上部の亀裂 別の亀裂 擁壁上部より 配筋状況 配筋状況(底版打設後) 打設後 |
yorozuの感想 | 過去の問題は、大変勉強になります。 いざ、問題にぶつかると、どうしたらよいのか分からず、わらをもつかむ気持ちです。 この様なサイトがある事に感謝しております。 |
アドバイザー | |
堀住 勝雄 | 堀住です 鉄筋コンクリート造はコンクリートが引っ張りに弱いところを鉄筋により補強をしている構造です。(Reinforced Concrete.=RC) スリーブ部は無筋部分ですから僅かな引っ張りの力でもクラックは入ります。この現象が地盤沈下の影響と仮定すれば上部にクラックが出ているところから考えると、クラック部分は支持力があり他の大多数の部分が沈下した事になりますからこれは否定される原因と思います。 一般に広い面積の壁や床にはクラック誘発目地を設けることが行われています。 また、構造断面の切替部分にはエキスパンションジョイントを設け応力の不均衡を吸収する部分を作ることも行われています。土木構造物ではエラスタイト(商品名)のような目地材を使用することが多いと思います。 M.Y様の対策としては一案ですが 1,クラック部分の壁を上から下までカッターで切断して切り離し、構造的につながりが無いようにする。 2,目地は内外ともシーリング材で埋める、3,切断部分の裏側(敷地側)に厚み15cm位の壁をアンカー無しで作る。 幅は30〜50cm程度で良いと思います。 4,埋め戻しは透水層として砂利を20〜30cm壁面の裏に入れる。(裏込めと言います) ※壁面に水抜き穴はありますか。75mm径の穴を3平米に一つ以上必要です。 |
津村 泰夫 | 大阪の津村と申します ご相談内容から察しますと、元々かなりの軟弱地盤のようですね。 高さが2メートル以下のよう壁は確認申請が不要ですが、構造計算をおこない、安全を確かめるべきです。よう壁の安定計算で、支持に対する安定を確認しましょう。地盤の支持に対して十分安全でないとよう壁自体意味をなさなくなります。 再度、安定計算に基づき、よう壁設計をやり直し、作り直すべきです。 内側に増し打ちをして補修を提案されていますが、アンカーを打った部分にキレツが生じた場合には強度が期待出来ませんから、一体になることは困難だと考えます。既存よう壁の半分くらいまではつり取れば可能かもしれませんが、そこまで手間をかけるくらいであれば、既存よう壁を撤去して再施工した方がすっきりすると思います。むしろ安定計算の結果、杭が必要かもしれません。 基礎やよう壁は建物を建てる上でとても重要な部分ですから、工期は十分に伸ばして対応してください。 |
星 裕之 | 解説員の星です。 写真と文面からの判断ですので推測の域をでないことをご了承の上、解説させてください。この亀裂は擁壁の本来の目的を考慮すると、そう大きな問題はないと考えます。亀裂部分はカッター等ではつり、シール押さえとし見栄えを確保する。同時に、裏側からなんらかの土砂流出防止措置を行う程度でよいのではないかと思います。不同沈下の実績がある軟弱地盤とのことですので、住宅部分に関しては杭等の改良工事を行わなければならないと考えます。杭の設計を行う際に表層が流れても良い形で設計を行い、擁壁部分に力がかからないようにすることによって、建築が擁壁に依存することなく安全に建築できるものと思います。 |
大内 彰 | 解説員の大内です。 現状の写真で擁壁の天端の傾きがなさそうに見えるので擁壁の不同沈下はないように思いますが如何でしょうか。 ダブル配筋とシングル配筋の切替のところにクラックが入っているのは乾燥収縮の可能性が高いです。横方向の鉄筋の断面積が半分になり、その上スリーブでコンクリートの断面積も減っているのでその個所で横方向の力に対して不連続になっているのでそこに力が集中したのでしょう。特に大きな問題のようには思いません。ただ、クラックが入って問題が無いかというとそうではありません。そのクラックの部分から進入した水と空気によって鉄筋が錆びてしまうのでそうならないように対処すべきでしょう。また、このクラックがまだ拡がる可能性がある(まだコンクリートが落ち着いていない)ので注意が必要です。 |
若井 俊彦 | 解説員の若井です まずコンクリートは自己収縮すると言うことを知ってくださいそれはコンクリートが固まるというのはセメント1gが水約0.23gと反応して反応生成物を造ることなのです。 その反応生成物の体積は、元の両者の体積の約90%しかないので収縮(水和収縮)が生じる。 水セメント比60%(セメント1に対して水0.6)のコンクリートでは、23%の水がコンクリートが固まるのに無くてはならない水で、それ以外の水37%はコンクリートを構成している表面のごつごつしている骨材と骨材の間に入って、コンクリートを柔らかくするのに役立っています。 ただこの37%の水は最終的には、コンクリートから抜けていきます。 このとき、別な乾燥収縮が発生します。 以上のことから考えますと、今回のクラックは、コンクリートの収縮により、一番弱いところつまりフェンスを建てるための直径65mmのスリープ穴の部分で収縮クラックが発生した物と考えられます。 補修方法については他の解説員の提案が私も良いと思います。 |
コメンテーター | |
山口 雅克 | 超軟弱地盤なのに擁壁の基礎の構造計算をしていなかったのでしょうか。N値が殆どなくても粘土地盤であれば松杭などを使って補強する事ができます。業者の言葉からは地盤調査の結果を反映せずに工事を行ったことがうかがえますね。 写真からは大きな不同沈下を確認できませんので、現地で測定してみてどのくらいの傾きなのか見てみましょう。擁壁の上部補強よりも擁壁の下の問題のような気がします。第三者の専門家に見てもらうのもいいでしょう。 |
事務局から | |
荻原 幸雄 | 写真では配筋の写真がもう少し鮮明であればと思えましたが、上部ピーコンの位置から写真ではその上部は無筋のようですが、ここにも鉄筋を入れて欲しいと思います。 無筋で手摺用のスリーブを入れているだけでは簡単に亀裂は入ってしまいます。 それが配筋の切り替え部分でコンクリート収縮亀裂も合間ってシングル鉄筋までつながったのでしょう。 地盤などの構造的なクラックではなさそうなので、それほど心配はいりませんが、見た目が悪いですが、エポキシ樹脂注入で対応するか、上部もふかして配筋してから打設するか、モルタルで補修、仕上げをタイルを貼る(この場合は亀裂補修してからですが)、弾性塗料を塗る等です。 |
相談者お礼状 | |
相談者お礼状 | ご回答くださいました、皆様方にお礼をお伝えください。 今回の件では、本当に悩み苦しみました。 ですが、皆様の心強いアドバイスで、前向きな考えが出来るようになりました。 本当にありがとう御座いました。 まだ、補修方法は未定ですが、皆様の意見を参考にして、補修したいと思います。 今後も、皆様のご活躍を期待しております。 余談ですが、断絶の個所が3箇所増えました。 今度は、旧擁壁に打ち増し下個所に3箇所です。 4箇所全て、以前の擁壁では、割れていた個所なので、やっぱりか! といった感じです。 |
その後 |
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