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一般社団法人建築よろず相談支援機構

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よろずWEB相談HEADLINE

No. 0747 大壁の所にも土壁(荒壁)はいかがか?

 相談概要 [氏名] I.A
[居住住所] 愛知県海部郡
[相談建物予定地] 愛知県海部郡
[職業] 会社員
[年齢] 38
[男性] on
[構造] 木造(在来工法)
[設計者はどなたに依頼しますか?] -
[何階建て] 2
[延べ面積m2]
[延べ面積坪] 69
[工事請負金額] 4500
[設計監理料] 0
[お手持ちの図面は何枚?] 10枚以下
[打ち合わせ何回] 10回以下
[様態] 注文建築
 相談内容 [家づくりの相談内容]

土壁(荒壁)の必要性について教えてください。

木造在来工法で二世帯住宅を建てる計画をしています。室内の壁については和室を除いて全て大壁で仕上げる予定をしています。大壁の所にも土壁(荒壁)を厚み5〜6cmつける予定です。このことは両親のこだわりです。その理由として、
@湿気や断熱に良い、
A家が強くなる、
B昔から行われている、等を上げています。

私の考えは、大壁で仕上げるところには土壁は必要ないのではと思っています。両親が心配している、
@については、湿気は壁をビニールクロスではなく、ムクの板や漆喰、珪藻土で仕上げるのである程度は問題ないのではと考えています。また、断熱については断熱材を用いることにより解決できるのではと考えています。
Aについては、筋交い等で補えるのではないか。建設予定の土地が軟弱なので土壁を用いることにより家が重くなり地震に対しては弱くなるのではと思っています。
Bについては、昔の家は真壁が多かったので土壁を用いていたのではないか?建設予定の家は大壁なので土壁にこだわる必要はないのではと考えています。大壁の中に厚さ5〜6cm程度の土壁(荒壁)をつけると大きな地震の時(東海地震等)に土壁の土がはがれて落ちるのではないか、という心配もしています。

今回の家の場合、土壁(荒壁)が必要なのか教えてください。いろんな本を読んでみたのですが理解できる本に出合えませんでした。よろしくお願いします。
 yorozuの感想 このHPは「我が家を手に入れる前に読むQ&A80」で知りました。このようはHPがあって大変助かります。

私は家を建てるとき、設計監理と施工を別けて発注したかったのですが、両親は地元の工務店(大工)に頼んでしまいました。二世帯住宅を建てるので、両親と私たち夫婦とでは意見がなかなか合いません。そのとき、このHPを読み両親ともども納得できる家を造って行きたいと思っています。では、よろしくお願いします。
アドバイザー 
藤井 修 土壁(荒壁)の必要性についてのご質問ですが、だいたいは、ご推察の通りです。
土壁は吸湿性があり湿気を吸い込みます、又乾燥時は内に含む湿気を吐き出します。
しかし内装にビニールクロスなど吸湿性の劣るものを使用すればあまり意味はありません。

又重量があり建物が重くなります。これは地震に対しては少し不利です。
こまい下地で薄い土壁は地震時の揺れに対してはがれ落ちる可能性は大です。

土壁でなくとも新建材で建物の性能を確保する事は可能です。
でも、自然の素材ですから人にはやさしい材料です。
昔からの材料は古人の知恵が詰まっている事を考えると捨てがたい事も事実です。
手間や費用も掛かるとは思いますがご両親の要望をかなえられてはいかがですか。
杉山 克秀 富士市の杉山です。

土壁の必要性についてのご相談ですが、私の地域ではほとんど土壁はなくなってしまっております。7年前に手狭になり改築するまでは土壁の家(築37年)でした。土壁は地方風土と密着してしていると思います。

@ご意見の通りですが、自然素材で出来ているので健康志向の現在は見なおされております。また、解体した時に自然に戻すことのリサイクルとしても有効です。

A土壁は重量が増え地震時に不利と考えますが、建物全体の体力壁の配置等を計画すれば土壁でも施工は可能と考えます。しかし、ご相談の中の軟弱地盤についてですが、土壁で施工することだけでなくしっかり地盤を調査し、それに合わせた基礎を施工することが必要と考えます。場合によっては杭等の施工も必要になります。

B風土的なことが、あります。

私的意見ですが以前の土壁の時と現在の建てかたと比べてお話しします。

@仕上りの質感は土壁の方が良かったと思います。37年間一度も塗り替えもなく過ごせました。また、現在の方は断熱材を通常より多めに入れてありますが、外壁や屋根の仕上方の違いが有りますが、土壁の方が温かかったと 感じます。それと外部からの音に対して遮音効果も有ったと思います。

A屋根が葺き土で瓦だったことも有り、地震時は心配だったのですが、強風時はどっしりしていたように思えます。

B土壁は風土的なこと以外に火災から財産を守ることから有効であったと思います。
現在、土壁で家を造れることは魅力あることと思います。全てを土壁にする必要はないと思いますが、構造的なことは設計者にご相談され、地震にも耐えられる家造りをご両親とされると良いと思います。
善養寺 幸子  表面で無く、大壁の芯に土壁を用いるのは、羨ましい限りですね。
日本の住宅の熱環境が悪くなったのは、土壁がなくなり石膏ボート下地になってしまったことが原因で日本建築の大きな誤りだったと考えています。

 断熱は、断熱材でと考えるのは当然ですが、土壁の良さは断熱性能より蓄熱性能の方に重要性があります。土壁が熱を蓄える事で、外気温が時間によって大幅に寒暖したとしても室内をある程度安定した熱環境に保つことができます。

 蓄熱された壁からでる熱は輻射熱ですから、人間の体感に作用しますので、エアコンなどで作られた空気温度とは違い体に優しく語りかける様な熱なので「何か違うんだよ」と言うようなセリフになって聞かれる温度感覚をつくります。

 お寺や古い民家などで、夏場感じる涼感などはその蓄熱効果です。
 夏の夜間には夜の冷気を蓄えたり、夏は日差しを受け日の暖かさを蓄えます。
真壁でも大壁でも構わないのです。木造は構造材に蓄熱性能はありませんから、出来るだけ満遍なく土壁で覆うことで、安定した熱環境をつくります。

 注意点は?外部側から直射日光や風を受け、外部の熱環境を直接受けないような作りにしておくことが重要です。地震の問題は、その土壁に合わせた耐震設計をすれば良いですし、貫工法にするのであれば土壁は耐力壁を補助します。ちゃんとすさを入れたり木舞をかけたり伝統的な方法でしっかり作れば、問題よりは効果の方が大きいのではないでしょうか。進化した伝統工法とするなら、土壁の外部側に断熱材をプラスすると、蓄熱性能は一層活かされるようになります。

 マイナス面ばかりに囚われず、プラス面を活かすことを検討された方が良いように思います。そこいら辺の新建材住宅には敵わない高性能な住宅が出来そうですね。 
 関口 啓介 土壁(荒壁)の有効性についてですが、断熱性においては、科学的に検証すると新建材の断熱材と比べかなり落ちます。
住宅金融公庫では、荒壁の断熱性能については認知しておらず、断熱材の施工を義務付けております。

善養寺解説委員の言われる蓄熱性能の方が、荒壁の長所と言えるでしょう。
また、地震力に対する、壁倍率は基準法上0.5と少ないですが、貫工法などとの併用を行えば、限界耐力計算の見地では見直しつつあり、それ以上の効果があると思われます。粘性と言う見地では、有効性はあるでしょう。重量と言う事では、昔は土壁を塗る事で、柱の長ほぞがしっかりと入り込み、構造木材がなじむなどのメリットがあったようです。中途半端な工法ですと重量があだになる事も考えられます。

荒壁の場合は工期もかかることもあり、乾式工法との併用で乾ききらぬ内にボードを張ってしまうなど、問題を抱えないよう注意も必要と思われます。
荒壁が必要かどうかは、皆さんの解説も踏まえて、設計者や施工者と良くお話し合い頂くと良いでしょう。 
 木津田 秀雄 土壁には断熱性は期待できませんが、吸放湿や蓄熱なら期待できます。最近の木造住宅では吸放湿できる建材や蓄熱できる部材が少ないため、外気の温度変化に対してストレートに反応してしまい、その分断熱材や冷暖房設備に頼ってしまいます。

 主な建材の特性を以下にあげておきます。それぞれの部材の利点、欠点をよく知って設計をすすめてください。(内容は専門的になりますので、設計の方にもよく勉強してもらってください)

    熱伝導率(kcal/mh度) 容積比熱(kcal/m3度)

コンクリート 1.2         462
煉瓦     0.55        332
土壁     0.59        269
畳(わら)  0.13        69
軟質繊維板  0.048        78
グラスウール 0.036        4.8 
 氏原 毅士  木津田さんの意見に同感です。土壁の断熱性には疑問が在ります。

 ただ、耐力壁はバランスよく配置すべき、という観点から見ると和室のみ土壁と言う選択には??という以外在りません。

 筋交いで代用は数値上(壁倍率)建物全体の釣り合いを考えるとお勧めできません。 
 コメンテーター 
清水 煬二 多くの解説員から解説を頂けました。
解説にありますように、成功するかどうかは、土壁の良さを生かす設計と施工ができるかどうかにかかっているのではないでしょうか?
それができれば新建材の家には真似のできない良さを備えた家ということになり満足されるでしょう。そうでなければ、逆の目もあり得るということです。

コメントを頂いた解説員のような広い視野と知識で対応することのできる設計士とよく相談されて、ご両親もご自身も喜べる素晴らしい住宅にされると良いですね。
 事務局から 
  荻原 幸雄 自然素材はやはり捨て難いものがあり、自然に近づける手段です。
石膏ボードになってしまった現在の建物は日本経済の効率化、コストダウンの成り立ちなので、単にそれを批判しても仕方ありません。
日本では人件費が高くなり、材料費よりも人件費の捻出が困難な状況に陥っています。

日本には木がたくさんあるのですが、そのメンテや切り出しの手間を載せるととても輸入材には及びません。(当然、海外の人件費のが圧倒的に安いからできるのです。)ですから身近な木材が使えないで、輸入材に頼ることになっています。
これは建築だけでなく、人件費高騰による影響は電気製品などがアジアで製造されている事実でもわかります。

しかし、ここでこれを放置していい問題ではなく、職人の技術の低下を阻止し、いい職人の技を残すことが大切です。ですからコストコントロールをしながらなるべく自然素材を使い、職人の仕事を残すことも建築家の使命だろうと感じております。

しかし、土壁を利用できる方は残念ながら大変すくなく、大変高価なものです。
今では土壁を使える家はお金持ちの家というイメージさえあります。
しかし、高価だから問題はないか?というとやはりそこは自然素材です。
隙間が出来たり、土がこぼれて掃除が大変だとか、メンテナンスも結構大変です。
エコ住宅や自然素材共生住宅などいろいろメーカーや建築家も売り込みますが、そのデメリットも必ず存在する。大切なのはメリットだけの発言しかないものには注意が必要です。営業的な見解だからです。大切なのはデメリット・メリットを説明するインフォームコンセントなのです。

土壁は蓄熱・遮音・防火の効果が高い材料ですが高価・拭けない・土がこぼれる・傷つきやすいなどのデメリットがあります。
耐震性についても悪いのですが、これは構造体で解決できます。
大壁で土壁にする場合は地震時に崩れないように入念な収まりと施工が大切です。

結論としては、丁重な設計・監理と施工を前提に、ご両親のご希望通りにしてあげてください。
相談者お礼状 
 相談者お礼状 回答、誠にありがとうございました。
回答を参考に両親とよく話し合い決めたいと思います。
家を建てることは一生に一度か二度。悔いの残らない様、しっかり考え、理解した上で家を建てます。
 その後  
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