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一般社団法人建築よろず相談支援機構

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よろずWEB相談HEADLINE

No.0716 化学物質過敏症にかかり住む家を失い・・・

 相談概要 [氏名] Y.T
[相談内容:] その他
[居住住所] 静岡県富士市
[相談建物所在地] 静岡県富士市
[職業] 無し
[年齢] 54
[男性] on
[構造] 木造(在来工法)
[引渡し年月日] 西暦1996年 6月 20日
[公庫は使わない] on
[性能保証は使っていない] on
[何階建て] 2
[延べ面積m2] 134.98
[延べ面積坪]
[工事請負金額] 3550
[様態] 注文建築
[施工者] 建設会社
[設計者を選んだのは] 自分で選んだ。
[監理者を選んだのは] 自分で選んだ。
[確認申請書は本来建築主が出すと説明を?] 受けた。
[確認申請の為の委任しましたか?] した。
[確認申請書お持ちですか?] 有る。
[検査済証は有りますか?] 有る。
[お手持ちの図面は何枚?] 30枚以下
[打ち合わせ何回] 10回以下
[床面積] 140m2以下
[施工者名] W建設
[販売会社名]
[設計者名] Y.T
[監理者名] Y,T
 相談内容 [現象]
新建材等から発生するホルムアルデヒドにより家族(母と妹)が重度の化学物質過敏症にかかり住む家を失い逃亡生活を続けています。設計者に相談にのって欲しいと連絡するのですが忙しいを理由に相談にのってもらえません。設計者は私の従兄弟にあたる為奉仕で設計したもので感謝されても怨まれる事はないと、この問題から逃げ様としています。
個人的な関係で設計をお願いしたのですが、設計者としての責任はないのでしょうか。
システムキッチンから1.28ppmのホルムアルデヒドが入居15ヶ月目で検出された為この製造メーカーに対して健康への影響について解答を求めています。

[業者の見解]
施工業者は設計図に基づき施工した。設計図と異なったところがあれば施工業者の責任において直します。今回の件については設計図に違反したと言うものではなく責任追及されても困るとの見解です。

[相談内容]
1.設計事務所を通さずに個人的な関係で設計してもらった家ですが、設計者として取るべき行動があったのではないでしょうか。設計者の役割と責任について教えて下さい。
2.施工業者は設計図通りの家を新築させた、今回のトラブルについて責任は無いと主張していますが、PL法が施行されてからは各住宅メーカーや建設会社では「住まいのしおり」を配布して住まい方について注意を促しています。我が家の場合は住まい方についての説明が有りませんでした。
入居前に住まい方について若干でも注意を促して貰えればこの様な最悪な状態にはならなかったものと判断していますが、施行業者の責任はないのでしょうか。
 施行業者はこの件について説明はしていないと認めています。
 yorozuの感想 一生で一番高い買い物をする訳ですから欠陥住宅を掴まない為の相談が多いのは当然ですが、新築住宅による健康被害の相談が思ったより少なかった。化学物質過敏症患者が住める家の情報が欲しい。ホーロー鉄片、ステンレス、アルミ等の化学物質を発生させない部材を使用した家等
アドバイザー 
善養寺 幸子 解説員の善養寺です。

 これについて真剣に取り組んでいる当方としては、なぜ建てる前に施主自身がそれを意識して発注しなかったかご自分が辛い思いをするのに悲しい限りの結果です。
 現実として多くのこの様な問題は起きています。一度過敏症になると後は些細な量で反応してしまうようになったりと社会生活にも支障をきたす事もあるので、本当は深刻な問題なのですが、設計者にも意識が低く、深刻さがあまり浸透していないのがご承知の通りです。

 ハウスメーカーの建物でも多くのトラブルは発生しており、ネット上に告発して責任追及している件も多くあります。いくら使用説明を受けたとしても、過剰な化学物質の中での生活となれば台所に立たない訳にも行かず、過敏症を避けれたかと言うと疑問になります。ですから、使用説明があったかなかったかでは責任追求はできないでしょう。

 今、法律によって化学物質の発生量や建材の仕様が制限されるようになるようですが、既に建てられたものに関してはこの規制に当てはめて責任追及する事が出来ません。WHOで化学物質のガイドラインが示されていますが、日本はそれは参考数値であって規制値になっていませんので、裁判を行っても罪を犯したかどうかを立証する事が難しいことになるのが現状です。
 責任追及よりも現状の被害者への早期対策が重要でしょう。多少費用が掛かったとしても、改修なり引越なりを行ってこれ以上悪化しない様にした方が良いでしょう。

反応している化学物質も単純にホルムアルデヒドとは限りません。WHOでは30以上の化学物質が規制されています。心して作られていなければ、キッチンキャビネット、フローリング、クッションフロア、壁タイル、壁紙、畳、下地、基礎、給排水管などあらゆるところから化学物質が発生しています。
 全てを観測し、どれに反応しているのか判断してもらい、それを専門に取り組んでいる設計者などに改善策を相談しないと駄目です。
 従兄弟の設計者はその知識がなかったために今のような建物になってしまったのですから、逃げているかもしれませんが、対応するすべも分からないのだと思います。

 病院としては、港区白金の北里研究所病院
 http://www.kitasato.or.jp/hokken-hp/outline/method-f.html
が化学物質過敏症に関して日本では一番取り組んでいる(唯一かも)ところです。
精神的にまで滅入ってしまう前に改善策に取り組んで早期解決をした方がよいと思います。

 建築における化学物質対策は、半端じゃなく大変です。ホルムアルデヒドはゼロに出来ても、30種のトータルVOC(化学物質総量)を基準値以下にするのは至難の業です。検知業者に嘆くと、『お宅の物件の数値は凄く低い方ですよ。取り組んでいると言われている他の建物は殆ど一桁違っていますから。』と言われます。
 設計図で吟味して、うるさいくらいに描き込んで、それでも現場でくどくど説教して、意識を高めさせて施工させ、細かくチェックしてと、監理も大変です。ボランティアで出来る内容ではありません。設計監理費をまともに払ったと思って、改修に金を掛けてみてはいかがでしょうか。
中川 雅実 こんにちは、Y.Tさん。神奈川相談委員の中川です。

 まず、ご相談内容にお答えする前に、私も3年前からシックハウスシンドローム疾患の相談者と接しており、お悩みお怒りはごもっともなことであり心痛をお察しします。

 既に、室内の空気汚染物質測定やご家族の診察はお済みになられておるようですが、どこか新建材の使われていない古い住宅を探され、1日いや1時間でも苦痛より解放させてあげることを希望します。

 シックハウス患者の取り組みで有名な病院は、北里研究所病院の石川哲先生(現在は宮田先生)がおられますが、1日で7人の患者を診るのが精一杯で、先生曰く、診療終了時には精根尽きてしまうと話されており、この問題はひじょうに大変なことであり、設計者も大いに自覚される必要があります。

さて、ご相談の本題ですが内容に準じてお答えします。

1の質問について
 シックハウス問題は、欧米各国に比べ研究の立ち後れがあり、平成10年に産・官・学が共同で研究を始めたのが現状であり、この問題に早くから注目された設計者はごく少数と思われますので、従兄弟であられる建築家も認識を持っておられなかったと推測します。

2の質問について
 引渡を受けた平成8年当時は、先にも述べましたとおり現象が何であるかつかめ無い状態でありました。この様な問題は、施工者よりも設計者の方が情報入手が早く、問題認識がされていなかったと推測され、設計図通りと申すより設計図にはそこまで記載されていないのが現状ではないでしょうか?
 近年、既に法規制されたホルムアルデヒドに加え、クロルピリフォス等の法規制へと進んでおるのが現状です。

 最後に、一度シックハウスに疾患されますと、日常生活で発生しておる化学物質「たばこ・香料・整髪料・化粧品・ワックス・殺虫剤・芳香剤・防虫剤・家具」等にも反応されますので、ご注意されることを申し添えます。
 コメンテーター 
関口 啓介 建築物が、このように加害者となり、暮らしや生命を脅かしている事を考えますと、建築に関わる専門家の責任は大きいと個人的には思います。
ただ、現状では、化学物質過敏症、シックハウス症候群共、病名認定さえされず、裁判や責任追及は、非常に難しいようです。
診察のできる病院が、北里研究所病院など、ごく限られている事や、保険が適用されないなど、社会的に解決していかなければならない問題も大きいように思えます。また、一度発症してしまうと、厚生労働省の指針値(ホルムアルデヒド0.08ppm等)でも、とうてい耐えられないと言われており、発症後の生活や、教育、就職、住替えや立替えによる経済的な打撃まで考えると、問題の深刻さが浮き彫りとなります。

ここまで考えますと、やはり個人的な責任の賠償や、追及で解決できる問題ではなく、被害者を社会的に支援する体制が必要でもあります。
設計者に追求すると言う姿勢ではなく、一緒に解決していくと言う姿勢で臨まれては如何でしょうか。設計者に、工務店を含めての舵取りがして貰えると良いのですが。
その設計者ができなければ、解説にもあるように、この問題に真剣に取り組んでいる建築士にご相談下さい。
そして、北里研究所病院の宮田幹夫医師を訪ねていかれては如何でしょうか。
 事務局から 
  荻原 幸雄 知り合いだから安心という日本的(?)な考えでの知り合いの設計者に依頼したのでしょうが、よろずでも知り合いというものは問題が起きた時は後々の親戚関係や友人関係が壊れます。また、建築士といっても不動産業者もいれば測量士、ハウスメーカーの営業マンなど様々で必ずしも当てにできないものです。一級建築士ならなんでも知っていると考えるのも間違いです。設計に従事している設計者でも経験があるなしはあるものの、心を入れた設計をしなければ決していい建物にはなりません。

今回は知り合いの従兄弟にあたる奉仕設計ということですが、設計監理に見合う設計監理料を払っても心を入れた契約をすべきでした。もともと知り合いの奉仕設計はこんなものだと思います。

妹さんが反応なさったのはお母さんの体質を受け継いだのでしょう。あなたはお父さん側かもしれませんね。
体質によって反応するものが違うからです。また、反応しないからそれでいいというものでもありません。積年の重なりが限界を超えて反応がでることもたくさんあります。

設計者には道義的な責任はあると思いますが、法的な責任追及は難しいと思います。
また、施工者は設計図書どおりに仕事をすることですので、今回の設計者の認識ですと設計図書にはそれが反映されていなかったのだと思われますので、責任追及は難しいところでしょう。

残念なのは設計を依頼した場合は依頼した金額の中で何をしてもらえるかを明確にしてもらうべきでした。
仕様書はどのようなものを使うか?図面は何枚書くか?現場は何回いってもらえるのか?
特に本件の場合は仕様書が重要です。特記仕様書にこれら使用材料に化学物質の規制値を記入してもらうべきでした。そうすれば監理者や施工者の責任追及が明確になったのだろうと思います。

長引かせることは良くありませんので、法廷で決着をつける場合は引っ越すことも考えてください。
また、費用を負担しても改造することもお考え下さい。この場合は医師の診断を受けて何に反応しているのか?
また、改造する場合はこれに精通した建築士に見てもらってください。
相談者お礼状 
 相談者お礼状 相談内容についての解説ありがとうございました。
何とか住める家にするためにシステムキッチン、収納ユニット等を全て撤去し箱だけの状態にし、キッチン後には業務用のステンレス流し台、調理台を設置し、収納ユニット後には和紙の壁紙を貼り対応しましたがダメでした。更に環境が良く古い家を求めて伊豆高原まで足をのばし避難場所の家を求め必要最小限の荷物を運び生活しましたが、反応するものが増え伊豆高原ではジュラク壁にも反応してしまい、邪道かもしれませんが居間と寝室の壁にステンレスを貼り生活出来るか様子をみる事にしています。

また、北里研究所病院の宮田教授の診察を受け典型的な化学物質過敏症であると言われました。治療法には、体力をつけるための点滴療法と体内の各組織の酸素不足を補う為の酸素療法の2種類しかなく、この2種類を進められました。酸素療法を始める為に器具一式を手配し酸素療法を始めましたが、化学物質過敏症の患者用に開発されたケナフマスクや酸素ボンベ、調整器等に反応してしまい断念しました。

また地元で点滴療法が出来る様に宮田教授に紹介状を書いていただきましたが、北里研究所病院で処方された解毒剤を1錠のみ症状が悪化した為、ビタミン、ミネラル、解毒剤の入った点滴はできないと判断しそのままになっています。宮田教授からは、解毒剤が合う人合わない人がいるため合わなければ直に中止する様に言われました。

北里研究所病院のクリーンルームに入っても楽に成ったと言う状況ではなく、検査のために眼科、採血、心電図と一般の患者さんと一緒になり返って大変だった為、現在往診して栄養剤の点滴をしてくれる医院を探しています。
既に、LPガス・車の排気ガス・たばこ・香料・整髪料・化粧品・ワックス・殺虫剤・芳香剤・防虫 剤・家具は勿論のこと、周囲の環境や衣類にまでも反応してしまいオーガニック製品を購入しオーガニック洗剤で毎日洗濯をしていますが着られる様になりません。今身に付けている下着もすり切れてしまい、洗い古しのサラシを当て継ぎして着ています。だんだん寒くなり現在は比較的反応の少ない毛布をかけて過ごしています。

これから冬を迎え、エアコン、コタツ、ストーブ、湯たんぽ、カイロも使えない為に、反応の比較的少ない今使用している薄い綿ふとんに包まって生活しなければなりません。
今後はCS支援センターの理事で建築研究所を経営されている尾竹一男さんが伊豆の下田にモデルハウスを建てられていますので一度患者を連れて行き反応の程度を確かめ良ければ同様の小さな家を建てる事も検討しています。
最初から法的責任は問えないが道義的責任は問えると判断していましたが、結局被害にあった者が泣き寝入りと言う形になってしまうのが非常に残念です。
これからもCS支援センターや過敏症の会と連携をとり患者の症状が一日でも早く軽減できる様に頑張ります。
本当にありがとうございました。
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