本文へスキップ

一般社団法人建築よろず相談支援機構

TEL. 0422-24-8768

〒181-0001 東京都三鷹市井の頭3丁目12番11号

よろずWEB相談HEADLINE

No..0706 10年目の瑕疵か?(傾き)

 相談概要 [氏名] T.M
[相談内容] 注文住宅の瑕疵
[居住住所] 岩手県紫波郡
[相談建物所在地] 岩手県紫波郡
[職業] 地方公務員
[年齢] 32
[男性] on
[構造] 木造(在来工法)
[引渡し年月日] 西暦1994年2月  日
[公庫は使わない] on
[何階建て] 2
[延べ面積m2]
[延べ面積坪] 32
[工事請負金額] 1200
[様態] 注文建築
[施工者] 大工(工務店)
[設計者を選んだのは] 自分では選んでいない。
[監理者を選んだのは] 自分で選んでいない。
[確認申請書は本来建築主が出すと説明を?] 受けた。
[18確認申請の為の委任しましたか?] 覚えていない。
[確認申請書お持ちですか?] 解らない。
[検査済証は有りますか?] 有る。
[お手持ちの図面は何枚?] 3枚
[打ち合わせ何回] 10回以下
[施工者名] Y建築
[販売会社名]
[設計者名] Y
[監理者名]
 相談内容 [現象]
2階南北にある2部屋の床と壁のつなぎめ部分にすきまがあります。
2部屋とも北側から南側に徐々にすきまがひろがっており、床にビー玉をおくと北側から南側に転がります。
北側の部屋のドアは閉まりにくいです。南側の部屋の南側の壁クロスにひびが入っています。このほか2階廊下にビー玉をおくと同じように転がりますし、この廊下にある押し入れの引き戸を閉めるとすきまができます。

[業者の見解]
まだ問い合わせていません。

[相談内容]
完成後10年近くなるための劣化であるのか、欠陥住宅であるのか知りたいです。
前述の場合、家というのはこんなにもろいものなのでしょうか?
後述の場合、建築業者の責任はどうなのでしょうか?建築業者(大工)とは契約書等は交わしていませんが、補修の責任等はないのでしょうか?
(壁クロスのヒビは妻は入居後1〜2年目で気づいたとのことです。)







 yorozuの感想 家を建てる前にはよく勉強しておくことが必要だと感じました。家の建築予定のある友人にもこのHPをすすめます。
アドバイザー 
山口 雅克 解説員の山口です。

 不同沈下(家が傾いて下がること)をおこしていると考えられます。構造の劣化でこうなるとは考えにくいですね。8年前の設計ですから、地盤調査をせずに経験と感で判断し基礎の設計をしたものと推測します。1〜2年目には傾きが現われていたことになりますが、その時点で施工者には補修を要求していますか?

 契約書はなくても口頭で契約したことになりますが、その細かい内容は今となっては明確ではありませんので責任をとって貰えるのかどうかはわからないでしょう。又、大工さんであれば責任をとるにしてもそれだけの力(資金力など)が残っているのかも疑問です。設計者に相談しても多分図面描いて申請をしただけだから・・・で終わってしまうような気がします。公庫を使っていれば専用の仕様書がありますのでそれを盾に迫る事もできますが、今回はそれもないのでなかなか難しいことになりそうです。

 やや消極的な方法ですが、傾きの進行が止まっていて(調査しないとわかりませんが)生活に特に不便がなければ(床が傾いているので生活すると目眩がしてくる、平衡感覚がおかしいなどがなければ)通常の使い勝手や見てくれを確保できるように補修をしてもらい良しとしてもいいかと思います。

 そうでなければ今の内に基礎ごと水平にもどして(大掛かりな工事になります50〜100万というレベルでなくて丸が一つ増えそうです)補修をしておきましょう。
 まず、傾きの程度を専門家に測ってもらいましょう。
小松原 敬 小松原です。

不同沈下の疑いがあります。基礎廻りや外壁にひびは入っていませんか (床下換気口や窓の隅など)。
軒先の線が波打ったりはしていませんでしょうか。
今建っている場所は、水田や河川が近くだったり造成地だったりはしませんでしょうか。

クロスのひびは沈下以外にも原因はあるので相談内容だけではどちらとも言えないです。一度業者さんに見てもらってください。良心的な所ならちゃんと見てくれるはずです。信頼おけないようなら設計事務所に相談してください。
ただ、地盤の状態と基礎形式の選択の問題は大きいですが、不同沈下は必ずしも予測できるものではないです。
設計をどうしたかわからないので相談内容だけでは欠陥と決め付けるわけにもいかないでしょう。
地震や周囲の水位の変化、掘削なども影響しますので。

10年経っての事なのでこれ以上(沈下があったとして)進まなければ、現状があまりひどくなければ構造体への影響は少ないと思われるので、建具の調整程度でも大丈夫です。
 コメンテーター 
樽 一弥 前述へのコメントですが、家というものは支える地盤の状況や環境、設計や施工によって脆くもなり100年以上の年月を経ても大丈夫な建物にもなり得ます。
答えになっていないかもしれませんが、それほど千差万別です。
以下は各氏の補足です。

クロスのひび割れですが仕上げ材や下地の乾燥収縮によって早い段階で入隅部(床や天井と壁など凹部分の角)に「ひび」が入り易くなります。これについては材料の収縮によるものですから心配に及びません。
ただ、2階部分の南側に傾いてきているというのが少し心配ですね。
引き戸に隙間ができるのもこの傾きによるものだと思われます。
さて、現地を見ていないので参考程度ですが
@地盤の変動によって傾いたのか否か
A2階部分だけが傾いてきたのか否か

@ですが、造成地で盛り土の場合、地盤が安定するには10余年程度必要とされています。又、脆弱な盛り土の場合は、もっと早い段階で建物の不動沈下が発生しますので、相当期間を経た現在では、可能性は地震とか近所での大掛かりな工事による影響などが考えられます。
この場合は、小松原さんも述べられているように床下換気口などのひびの発生状況とを考え併せればある程度の推測ができるかも知れません。
少なくとも、地盤によるものですと1階にも影響が出ている可能性が高いと思われます。

Aの場合は2階のある部分だけに傾きが発生しているということですので、梁の仕 口や使用材料の劣化、施工について調査する必要があるでしょう。
勿論、この場合でも先の地震や近所の工事が原因で、弱い部分に影響が出たとも考えられますし、経年変化によって出たとも考えられます。

部分的な場合の補修は構造体の補強等を行うことである程度、可能と思われます。しかし、進行する危険性があるならば、仕上げ部分の調整等では根本的な解決にはなりません。
床を支えている梁であるとか、壁の長さであるとか、柱の配置も含めて原因がどこにあるのか調査する必要と、その部分の補強が必要だと思われます。

住いは生活の器ですので、山口さんや小松原さんの解説を参考にしながら専門家に見て頂き、まず現状を把握することが大切だと思います。

次に後述へのコメントですが
まず、契約書は諾成契約の証として考えられますので、無いとしても常識的な範囲での契約が成立したと考ええられます。常識的なというのは私見ですが公庫仕様に順じた仕様であり、減価償却の耐用年限から20年は、支障なく住まう事ができる。というものです。
支障なくと言うのは受任限度か否かで、「2階廊下にビー玉をおくと同じように転がる」というのは限度を超えると考えて良いと思います。
この辺りは弁護士毎に陳述への捉え方が異なりますので、建築に強い弁護士の方とご相談してみて下さい。

次に業者の責任ですが、請負契約の場合「瑕疵」であるかが争点となります。
民法では知った時から1年。宅建業法では引渡しから2年。
重要なことは瑕疵の場合、請求者に対して施工者は賠償責任があるということです。つまり瑕疵、この場合は欠陥に対して手直し或いは金銭を請求する行為が必要ということです。請求しなければ施工者自ら賠償を行うことはありません。

今回の場合、皆さんのコメントにもあるように年月が過ぎていますので瑕疵は「隠れた瑕疵」(通常の注意をしてても分からなかった欠陥)であることを調査し、根拠をもって要望していくということになります。
しかしながら、瑕疵の証明は非常に難しく費用と忍耐が必要です。
 因みに瑕疵の請求に年限があるのは請負者の保護が目的と言われています。
 建物が存続する期間中、賠償責任を問われれば請負者側はたまらないという事なんでしょうか。

現実的には、建物の調査をすることが不安を取り除く意味においても必要でしょう。
その上で、専門家の意見や調査結果を示して、具体的に話しを進めるのが客観的で分かりやすい解決方法です。
けれども、能ある鷹は爪を隠すと言います。まずは調査結果を胸にしまって、相手の倫理観に訴えながら調査や補修の相談をしてみるのも大人の解決方法だと思います。
建物を健全に維持していくには補修や修繕が必要です。
これからも良い付き合いができるように、お互いの信頼関係の中で進められることをお祈りしています。
 事務局から 
  荻原 幸雄 重大な瑕疵がある場合は木造の場合は当時では5年となりますのでこれを過ぎております。不法行為があればこの限りではありませんので責任を問うことも可能です。
問題は契約書がないことと多分図面も少ないと推察します。現実問題として、解決には現在ではかなりの困難が想像されます。

10年お住みになって徐々に進行したものと思いますが、地元であるがゆえの信頼関係を重んじたと思います。信頼関係は大切ですので、信頼できる建築士に調査していただき、その結果のもとやんわりと大工さんにお話してみてはいかがでしょうか?

どこまでの修補になるかは可能な範囲ということになると思いますので、よく協議してください。
相談者お礼状 
 相談者お礼状 ご回答ありがとうございました。
実は家を建てた大工さんは私の亡くなった祖父のもとで修行した大工さんであり、現在も私の両親と付き合いがある方で、どのように話しを切り出すかについても悩んでおりました。
先生方からのご回答を参考にしながら、これから話し合っていきたいと思います。
 その後  
目次に戻る

バナースペース

一般社団法人 建築よろず相談支援機構

〒181-0001
東京都三鷹市井の頭3丁目12番11号

TEL 0422-24-8768
FAX 0422-40-0107