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一般社団法人建築よろず相談支援機構

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〒181-0001 東京都三鷹市井の頭3丁目12番11号

よろずWEB相談HEADLINE

No.0705 塗装に黒かび?

 相談概要 [氏名] T.Y
[居住住所] 長崎県北松浦郡
[相談建物予定地] 長崎県北松浦郡
[職業] 事務職
[年齢] 45
[女性] on
[構造] 木造(在来工法)
[設計者はどなたに依頼しますか?] 専業の建築設計事務所
[何階建て] 1
[延べ面積m2]
[延べ面積坪] 50
[工事請負金額] 3000
[様態] −
[施工業者はどちらに依頼しますか?] 大工(工務店)
 相談内容 [家づくりの相談内容]
長年の友人でもある建築設計士さんにお願いして、昨年11月に完成した木造平屋の自宅についてご相談したいことがあります。

登梁工法で壁はサイディングに漆喰仕上げの新和風の家は大変住み心地よく気に入っていますが、メンテナンスの点で気になることが出てきました。外構塗装で着色をしたくなかったことと、木の香りを損ないたくなかったため、随分探していただいて、S株式会社の「Nクリア」を使って頂きましたが、この夏雨が当たる部分(東側、西側)の柱(杉材)に黒カビが発生。塩素系漂白剤を希釈して拭きましたが完全には取れませんでした。その後も気を付けて乾拭きしています。

また南側の濡れ縁(檜材)全体に輪染みが出来てしまい、雨が当たる部分はほとんど撥水力を失って、つやもなく白っぽくなっています。庇をかなり深くしてありますので、風がなければほとんど濡れないのですが、降り込んだ時には気になってそのたびに拭きあげています。

ほぼ半年でこの状態なので早いうちに何らかの処置が必要ではないかと思い、設計士さんに相談したのですが、彼にもこれといった良案がなさそうです。多少手のかかることは覚悟の上で造った家ではありますが、トラブルに追われてせっかくの家を楽しむ余裕がありません。塗装をしなおした方がよいでしょうか?

塗り直すとしたら、同じ塗料でなければいけませんか?

Nの説明には「高い撥水力、紫外線カット、防腐防カビ・・」と書いてあります。後のメンテがワックスかけ程度でよく、出来れば輪染みをとる方法があればご紹介ください。

アドバイス頂けると助かります。
 yorozuの感想 上記の悩みで塗料やら色々を調べていてこのHPに出会いました。以来時々新しい相談&回答などを覗かせて頂いています。自宅の建築中毎朝仕事にでる前に現場を訪ね、家造りの楽しみを堪能しました。引き渡しの時には、設計士さん、大工さん、左官さん、建具屋さん、塗装工さん、設備屋さん、電気工事店さん・・から大切なバトンを受け取るような気持ちになったものです。悩みや不安があるときだけでなく、上手に暮らしていく上で大変参考になります。ありがとうございます。
アドバイザー 
小松原 敬 小松原です。

せっかく自然な素材で味わいのある家になったのですから、あまり神経質にならないほうが良いとおもいますよ。ウレタン塗装や新建材は施行当初からしばらくはピカピカで綺麗ですが、序々に劣化してくると薄汚くなります。
ご自宅のような建物はだんだん古びて風合いが良くなっていくものではないでしょうか。もちろんメンテナンスをしないでほっておくという意味ではなく、古びた風合いが綺麗にでるような方向でのメンテナンスという事を考えられたらいかがでしょう。全体が均一に色がついてくれば一部の汚れは目立たなくなります。

> 後のメンテがワックスかけ程度でよく、と言うお手軽なものがお好みでしたら最初からメーカーの住宅にすべきでした。

外部塗装ではキシラデコールという防腐剤入りの塗料が一般的には出回っていますが、ご自身の当初の考えと合うかどうか建築士の方と相談してみてください。輪染みはとれないですが、充分に厚みがあるものであれば表面を削って綺麗にすることはできます。

余談ですが、奈良や京都のお寺にある仏像はイメージとしては落ち着いた古びた風合いで心が落ち着くものですが、研究によると造った当初は金箔がはられた全身ピカピカのもので、お堂なんかも朱色の柱でど派手だったそうです。(笑)
どっちのほうがいいんでしょうね。
津村 泰夫 大阪の津村と申します

木の素材を生かしての家づくりは難しいですね。
私どもで建てた物件でも同様のカビが発生しています。
基本的には「塩素系漂白剤を希釈して拭き、水洗いをしてください」とお願いしています。それでもとれなければ、サンドペーパーでこすって取るしかないようです。

それと、ノンロットの品番は205Nクリヤー2(紫外線UVカット)が使われているかご確認ください。
メーカーの説明によりますと、木材の含水率が30%以下で天気の日に施工すれば、カビの発生は考えられないといっています。
この辺はメーカーの施工要領に詳しくかかれています。
また透明タイプ南向き野ざらしでは1〜2年としていますので、「1年に1回は塗りましょう」ということですね。
さらに、1回目の再塗装をできるだけ早めに実施することも書かれています。

他のメーカーでは武田薬品のキシラデコールに最近、透明のものが出ましたが、私はまだ使っておりません。着色の製品ですと3年は大丈夫ですが、透明のものはやはり紫外線の影響が大きいと思います。着色で木の色に一番近いものを塗ることも検討されてはいかがでしょうか。
 善養寺 幸子 解説員の善養寺です。

 天然素材の木は、風雨にさらされれば変色し、焦げ茶になったり灰色になってしまいます。だからといって、木が駄目になってしまうわけではなく、それでも数十年耐えうるのは古い民家の羽目板などからお解りかと思います。
 手を掛けることは良いことですが、神経質に塩素で漂白したり、ウレタン塗装をして木が呼吸できないような膜で覆ってしまうと寧ろ寿命は縮んでしまいます。 キシラデコールの様な強い防腐塗料を塗っても効果は短く、化学物質によるシックハウスでの健康被害が起こる可能性も考えれば、塗装する意味があるのか疑問です。

 雨がかりが少ない様に軒を長くして設計されているのであれば、そのまま木の変化も年齢と可愛いく見てあげるべきではないでしょうか。
 フリーメンテナンスを望むのであれば新建材で作るべきで、それでも10年程何もせずでいられると言うところです。今はミズ染みや点々カビが真新しいところに目立って気になるのでしょうが、変化が生じて自然素材の味のある建物に変化していくのです。それは埃かぶったような新建材の古びさとは全然違うものです。

 生きてきた木にいつまでも見た目変化なくというのは、女房に年をとるなと言っているようで身勝手な言い分のようにも感じます。無理矢理ホワイトニング(漂白)して、見た目だけの若作りをさせて、厚化粧の下でボロボロになった素肌でいさせたいのでしょうか。外装などワックスなども塗らず、木が自然体で呼吸できるようにしておいた方が良いと思います。木の風合いを楽しむなら変化も楽しむ。それが許容できないのならばっちり塗装してあげることですね。
 とはいえ、どうしてもクリア塗装と言うのなら、ウレタンよりは呼吸もさせるドイツ製のシッケンズのクリアが私の知る限りでは耐久性が良いように思いますが。 (防腐剤は入っていません。)

 輪染みを取るのに、お酢で拭いてみてはどうでしょう。思うほど効果なくそれでも意地で取りたければサンダーでも掛けて表面を削ってしまえば良いでしょう。木の変色は表面だけのことがほとんどです。一皮むけば真新しい肌がでてきます。厚い天然素地を使う価値はそんなところにもあります。 
 コメンテーター 
氏原 毅士 解説員の認識は共通である様です

商品の資料を確認しましたが、津村解説員が記しているとおり、初期の段階で再塗装する必要があることが明記されています。
 また、南面屋外の条件では半年から1年で塗り替える必要があります。
天然材は風雨にさらされて変色し次第に馴染んでいく物です。いつまでも新築時の艶や風合いを保つ事を求めるのであれば天然材などは使わないことです。
 合成建材でも紫外線により劣化しかえって汚くなってしまいます。
このことを「トラブル」だと考えずに変化を楽しむ方が気が楽ではありませんか?
 事務局から 
  荻原 幸雄 防腐塗料=シックハウスと考えるのは短絡的な考え方だろうと思います。
キシラデコールのクリアーは耐用年数は短いですが、数年はほとんど問題なく維持されています。また、私は外部以外は使いませんので、シックハウスとは無縁です。自然素材以外は認めない傾向にありますが、実は、自然素材はトラブルメーカーであるということを認識してください。

朽ち安い。汚れやすい。メンテナンスが悪い。これらは自然素材では当たりまえのことですが、そのデメリットも認識しながら使う必要があります。誰しも、自然な食材を欲するように、自然な家が必要です。それにはメンテナンスは仕方ありません。また、朽ち安いのも仕方のないことです。しかし、それをどの程度、化学的材料の力を借りて、なるべく保持するように考えるか?が大切です。

排気ガスがでるから=車は要らない。とは皆さん考えていないと思います。
大切なのはなるべく乗らないようにする。時には歩く、自転車にする。ということです。
社会全体としてはなるべくクリーンなものを開発するという姿勢が大切です。

今回の材は含水率の高い材料だったのかもしれません。
もし、気になるようでしたら、材を削ってみましょう、内部まで入っていなければ問題はありませんので、そこから再塗装したらいかがでしょうか?
違う材を塗る場合は相性もありますので、塗装業者さんの見解を聞いてみてください。

余談ですが、京都などの古いお寺などは全体が古びた味わいがありますが、一部補修した場所は逆に違和感を覚えます。逆に全てが新しいと早く古びる箇所はやはり目に入り違和感を覚えます。多分、5年もしたら全体が古びてきて、ほとんど部分が気にならなくなると思いますが・・・。
相談者お礼状 
 相談者お礼状 早速のご回答ありがとうございました。

善養寺解説員の「お酢で拭いてみたら・・」をヒントに、木酢液の50倍希釈で拭いてみたのですが、輪染みがきれいに取れたうえ、艶も増したように思います。やった!

木がいつまでもぴかぴかのままなどとは考えていませんが、想像していたよりも変化が早かったので、不安になってしまいました。できれば黒カビを避けたくて塗装をしたのでいささかショックだったのです。塗料は紫外線カットもするクリアUでした。木材の含水率が高かったのでしょうか・・。

ハウスキーピングに関してはいろいろと自分なりに工夫したり勉強したりしてきたつもりなのですが、自然素材の家の手入れに関する知識のなさに愕然。これからあらためて色々と試行錯誤しながら「それなりに」おつきあいを楽しむことにします。

皆さんのアドバイスで気持ちが落ち着きました。本当にありがとうございます。
 その後  
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