相談概要 | [氏名] K.I. [居住住所] 広島県広島市南区 [相談建物予定地] 広島県広島市南区 [職業] 医師 [年齢] 35 [男性] on [構造] 木造(2X4工法) [設計者はどなたに依頼しますか?] 専業の建築設計事務所 [何階建て] 3 [延べ面積m2] [延べ面積坪] 80 [工事請負金額] 5000 [様態] 注文建築 [施工業者はどちらに依頼しますか?] 建設会社 |
相談内容 | [家づくりの相談内容] 高気密高断熱住宅を建築中です。ある外断熱構法を採用する予定としております。換気システムについての質問ですがよろしくお願いします。強制排気型の換気システム+エアコンを現在のところ薦められています。強制排気型の場合、壁に吸気口が数箇所必要なことから、逆に気密が保てないため冷暖房費が逆にかかりすぎるのではないかという心配と、吸気口の部分で結露が起こるのではないかと気になります。 個人的には強制吸排気熱交換タイプの冷暖房兼用システムが高気密高断熱住宅の場合適しているような気がするのですがいかがでしょうか。過去ログを参照しましたが、上記2種類の回答があり、どちらが優れているかまでは言及されていませんでしたので相談させていただいた次第です。中気密中断熱という選択もあるとは思いますが、建設中の土地は泥棒などの被害が多いため、窓を開けての換気は頻繁には出来そうもありません。よろしくご回答のほどよろしくお願いいたします。 |
yorozuの感想 | 複数の回答があるため、一元的な捉え方にならず良いと思いますが、逆に迷いの原因にもなると思います。 |
アドバイザー | |
星 裕之 | かなり寒い地域の解説員・星です。 「よろずの感想」部分に複数解答についての感想が記されていますね。複数の解答があり、見解がわかれてしまうのはそれだけ建築には未知の部分が多いからです。これは違うというのはありますが、唯一の最適解は見つけにくい、もしくは見つからないのではないかと思います。その上での解説です。 自然吸気強制排気タイプの換気方法は、気候的に比較的温暖な広島市ですので結露に関してはそう大きな問題ではないのではないかとおもいます。快適に生活するために必要な換気量の指針がありますから、それに必要な空気は外部から得なければなりません。壁・開口部などの部分がしっかり気密されていれば、机上の計算に近い最適な換気量で換気設計が可能になり、自然吸気強制排気タイプでも効率的な空調設計ができるとおもいます。 また、強制吸排気熱交換タイプの換気システムは、機能が多少複雑ですし、長年使う間に臭いがしみついてしまうのではないかという懸念があり採用していない大手高気密高断熱住宅系FCもあります。現在のところ非常に判断が難しい部分のようです。専業の設計事務所といっしょに建築進行中のようですので、その方と良くご相談のうえ機種を選定してください。 |
小松原 敬 | 解説員の小松原です。 高断熱に関してはいろいろな意見が氾濫しており、断片的な知識も多いのでわかりにくい部分です。またこれが正解というものでもないので私の意見とお考えください。 まず、「すまい」を機械装置がないと住めないビルのような場所にしてしまって良いとお考えでしょうか。 機械は寿命もあれば故障もします。空気というもっとも基本的な部分をすべてそこでまかなってしまうのは疑問です。 新しい機種や設備もどんどん出てきます。更新が難しいような設備を造るのもどうでしょうか。 また、メンテナンスはどうされますか?ダクトを引っ張りまわして空調・換気をする場合、ダクト内や空調機付近にほこりやカビが発生したらそれを家中にふりまくことになります (実際にアメリカであった話です)。 強制排気、自然吸気の第3種換気で、エアコンを別につけるのはもっともその意味では安全でフレキシブルです。 また、どんな家でも換気は必要です。換気にともなって熱損失があるのはしかたがないです。 熱交換器を入れてもいいのですが、広島あたりではさほど体感できる違いはないと思います。 高断熱の家では冷暖房は低速で連続運転しているだけでそれでも充分まかなえます (もし、冬に5mも雪が積もって零下10度まで下がるような環境でなければ)。 最近の吸気口では結露対策をしたものもありますし、そうでなくともそれほど気になるようなものではないです。(もし、・・・同上)設計で風道をつくって気候の良い時は開いて、気候が悪い時は閉じるという「閉じる技術と開く設計」が大事です。 どんなに窓を閉めても、泥棒は入ろうと思えば必ず入れます。 防犯には別の考えが大事です。 また、通風と防犯に良い窓の位置や形はいくらでもあります。 季節に関わらず常に一定の温度、湿度でなければならないという家がほんとうに健康的な家でしょうか。 気候の悪い時にその差をある程度、少ないエネルギーで埋めてあげる程度のほうが体と環境には良くはないでしょうか。 また、ヒートアイランドや緑の減少といった都市環境問題にもちょっとは目を向ける契機があったほうが良いのではないでしょうか。 完全空調にエアフィルター、などと小さな家の中で完結するような快適がほんとうの快適でしょうか。 家を精密機械のように解説するのは住宅産業のCMでしかありません。 「すまい」はもっとおおらかなものであるべきだと私は思います。 |
木津田 秀雄 | 解説員の木津田です。 この外断熱構法についての具体的な知識はありませんが、高気密高断熱住宅には取り組んでいますので、その中での経験と知識でアドバイスができたらと思います。 さて、換気手法について迷われているとのことですが、きちんと換気回数を確保するにはおっしゃるとおり強制吸排気方式の方が適しています。もちろん熱交換タイプの方がその性能面では優れていることには違いありません。ただ熱交換の効率については、あまり期待しない方が良いでしょう。熱交換機によるエネルギーロスと熱交換機自体の作動エネルギーの差が議論されているレベルだと考えてください。 自然給気の場合には、排気側の換気扇によっては、風などの影響を受けるかもしれません。 換気計画を行う場合に気をつけるのは、給気口の位置です。冷蔵庫の裏や納戸の中など直接部屋の中の人に当たらないような位置に給気口を設けてください。特に強制給気の場合、結構遠くまで届くので冬に直接外気が入ってくるのが判ります。 熱交換タイプの場合も、位置には十分気をつけてください。 換気や建物の中の空気の動きは、まだまだ定型化されていない技術です。設計者とよく議論されて納得のゆく手法を探ってください。従来の設備機器のように「取り付けるだけ」では思ったように動かないこともあります。 あと御存知とは思いますが、夏の日射対策だけはしっかり行ってください。高気密高断熱住宅で日射を入れると、夏のオーバーヒートを起こします。特に西面、東面の対策は難しいので、よく相談してみてください。 |
野呂田 洋 | 設備担当解説員の野呂田です。 強制給排気熱交換型の方が高気密高断熱住宅に適しているのでは?とのことですが、適しているというよりも、より省エネ性を高めることは出来る、と云った方が正確でしょう。 しかし、高気密高断熱住宅は既に換気量をギリギリまで制限していますので、強制給排気熱交換型は「通常の住宅」で採用した方が、よりエネルギー削減効果が高いと云えます。 最低限に抑えられている換気に対しても熱交換をして、さらに省エネを計ろうというのは理屈の上では分かりますが、それはその他の対策も同レベルにした上でないとあまり意味がありません。最近、高気密高断熱住宅がもてはやされていますが、このことを理解して計画されている物件はほとんど無いのが実状です。 例えば、台所レンジフードというのは一日に数分〜数10分しか使わないとしても換気量はとても大きく、24時間換気システムの風量とは比べ物になりません。 本来、高気密高断熱住宅では「強制給排気型レンジフード(給気用と排気用の2つのファンを持つもの)」が必須なのですが、給気はファンレスになっている「簡易タイプの給排気型レンジフード」が設置されている例も多く、実測してみると隙間や一般吸気口からの外気流入量が多く、不具合を生じています。 もちろん、排気のみのレンジフードを採用するなど「論外」です。 強制給排気熱交換型を採用するれば、例えば10の熱損失を7に減らすことは出来ますが、100の熱損失をほったらかしておいて、採用してもあまり意味がないということです。ただし、熱交換タイプは冬場には給気温度を上げますので、冷気による不快感を減らすという効果はあります。 24時間換気システムは、メーカーのパンフレットなどには、良いことが数多く書かれていますが、設備の専門家がトータルに検討しないと、まず望みどおりの性能は発揮できません。 ただ、失敗しても気が付きにくいので、ほとんど問題になっていないだけなのです。。。我々から見ると、笑い話のようなものが世の中にはあふれています。気の毒なことですが。。。 とにかく高気密高断熱住宅では、「必要な換気量が確保できているか?」に全精力を傾けるべきです。そして、住み始めてからもきちんと換気風量が出ているかを常にチェックしなければなりません(面倒ですが)。 機械はいつか必ず壊れます。 換気システムは壊れてもなかなか気づきにくく、換気が確保出来ていない高気密高断熱住宅ほど、環境上、健康上、危険なものはないということを肝に銘じておく必要があります。 余談ですが、24時間換気システムはメーカーの耐用年数(稼働時間)を確認しておいてください。 あまりに少ない数字に愕然とします。 金がいくらあっても足りません。。。。(笑) |
善養寺 幸子 | 東京の解説員の善養寺です。 気密住宅というものを先ず正しく理解下さい。気密は、建物内の空調負荷を軽減するために密閉性を作ることを目的としていません。 空調の負荷軽減を目的とするのは、断熱です。断熱化された住宅の問題は、断熱材の入っている壁内の温度差が激しくなり、室内から発生した湿気(人間が生活する以上、湿気は発生する)により壁内結露が生じます。それを防ぐため、壁内に室内の湿気を流入させないと言う目的のために気密をシビアに作るのです。ですから次世代省エネルギー基準を見てもらえば解るように、高断熱高気密と言いましても室内と屋外の関係は中気密の以上の穴の開いた環境をつくります。 <自然換気設備> 1.単純自然換気であれば、床面積1平方メートル当たり16平方センチの給排気口を設ける必要があります。 気密性能を1平方メートル当たり5平方センチ以下でつくって、壁内結露を生じさせないように計画的に穴を開けるというのが気密住宅の在り方です。 2.自然換気においても、圧力差換気(開口の両側の圧力差が9.8パスカルの場合の開口を通過する風量(単位1時間当たり立方メートル)に0.7を乗じたものを指す)を計画されていれば1平方メートル4平方センチとする事ができます。 換気量の計画としては上1も2同様の考え方です。 機械換気に委ねるのは、2を確実な形で作るのは難しく、1のような開口を設け、風の強さによって必要以上に換気量が大きくなるムラを抑えるためです。 換気によっての熱ロスを懸念されるのであれば、熱交換型がよろしいでしょう。ただ、温暖な地域ではそれほど神経質になっても過剰設備にしかならず、365日熱交換型換気扇に用いるエネルギーの方が熱ロスより大きくなってしまうことがあります。省エネ基準としては、給排気口は暖房機の上に設置することを奨めています。 もう一つの問題として換気一体型空調機です。年々、家電の空調機は省エネルギー化され、3年前の物ですから買い換えてしまった方が3年後にはもとが取れると言う時代です。トータルエネルギーの削減という意味では、換気は換気で最省エネルギー型、空調は空調で最省エネルギー型と分けた方が効率が良いように思います。一体型の開発は家電よりは遅れているように思います。 選定された機器のCOPや消費電力量を比較してみてはいかがでしょうか。 高断熱高気密住宅の調査をしてみて、空調負荷を軽減する目的の建物が24時間換気を365日使用することによって、夏のエアコン使用電力量とほぼ同じような年間電力使用量となっているのを観る(換気の目的は色々ですが)と本末転倒の様な気分にもなります。 本来省エネルギーを目的として高断熱高気密を選択されたのであれば、セキュリティーの良い自然換気方法などを検討し、パッシブクーリングやパッシブヒーティングを前提とした計画を行い、季節に応じた使い方の変化を持たせ、単純に多機能な機械の選定を前提とせず、なるべ機械に頼らない外部環境と共生する暮らし方を検討されてはいかがでしょうか。 単純な換気扇、単純なエアコンの方がトータルイニシャルコストもトータルエネルギーコストも安く済むように思います。 高断熱高気密は、単純に省エネルギーになる魔法の建物ではありません。 住まう人が住まい方を心がければ、より効果が出るという要素を持っているに過ぎません。建物を過信しすぎて機械に頼る生活になれば、逆効果にもなります。 幹線道路に面して騒音が酷くて窓も開けられない状況でもないのなら、外部の環境をどう取り込むかが省エネルギー建築の大前提です。 運用する心をもって、設計者の方と良く相談してはいかがでしょうか。 |
根本 一郎 | 解説員の根本です。 高気密高断熱住宅について誤解されているようです。また、中気密中断熱と言う定義があるわけではありません。業者の宣伝文句に惑わされることなく、KIさんにとって望ましい住宅を思い描くことが先決かと思います。高気密高断熱住宅にはいろいろな工法がありますが、実際の性能(住み心地)は間取りや施工業者によりに差が出ます。必要な性能が決まれば、実現できる業者を選べば良いのであって、工法(換気システムも含めて)の選択は、信頼のおける(疑問点をきちんと解決できる)業者に任せればよいことではないでしょうか。満足な回答が得られない業者は、今後トラブルの元でもあり、依頼するべきではありません。 極論すれば、高断熱高気密住宅の最大のメリットは、冷暖房時の快適さです。但し、連続運転が条件となり、全室、24時間冷暖房すれば、普通の住宅との差(温度や電気代など)がはっきりしますが、一部の部屋だけ、在室時だけの運転では、ペアガラスを入れただけの中断熱住宅?と大差ないばかりか、不適切な設計や住まい方は、デメリットにもなります。 また、窓を開けるなど、外気を取り込めば冷暖房を必要としない季節には、メリットが少なくなります。 ご質問の、換気システムの性能も、理論と実際は異なります。現時点では、住宅用で、一年中、換気量・温度・湿度を完璧にコントロールできる空調(換気+冷暖房)システムはありません。快適な温熱環境は個人差が大きく、過度な期待は禁物です。建物の間取りや住まい方・冷暖房システム・予算により最適な機種を選択することになります。 PUF外断熱構法の推奨システムは、ローコストで無難な構成ですが、汎用品のため、KI邸に最適な選定とは限りません。エアコンの機種も含め、選定理由を詳しく聞いて、KIさんの要望を満足できるシステムか確認してください。 給気口の結露については、換気システムを停止したり、フィルターのメンテナンスを怠らない限り、心配は無用です。 |
コメンテーター | |
津村 泰夫 | 大阪近郊で外断熱の家の場合は、窓の開閉と床下換気口の開閉による換気量が大きいようです。特に天窓による排気が抜群です。 換気装置はメンテナンスを考え国産品を使ったりしております。 PUF外断熱構法はよく知りませんが外壁にパーマストンを張る方法ですね、好みがあり、またこの「よろず相談」でも張り方のきわめて悪い調査をおこなったことがあります。 特定の工法にかたよることのない設計を望みたいですね。 |
事務局から | |
荻原 幸雄 | 数字がいろいろ出ていますが、はっきり言える事があります。 実は建築家であろうといくつも設計していても、自邸以外は実際は設計した家に四季を通じてくらしたことがありません。これは現実です。数字のマジックにとらわれないで下さい。 家はマシーンではありません。単品生産です。 頭脳で分かっていても、建築はあまりに器が大きく、理論通りにいくものではない。というのが現実なのです。窓の大きさ、位置、換気口や吸気口の位置などほとんどの建物は違います。 当然、風土もあります。広い日本のある敷地のある環境に家はおかれます。それは一つも同じ環境はないということです。 高気密高断熱の換気や断熱性能等、その敷地のその環境のその建物の有り様がある筈です。 考えられるだけ図面上で考えて、後は結果を祈る。というスタンスしかないのが現状だと理解しています。 ですから、本相談では依頼している建築士がいるのですから、その環境なりの要素を把握している設計者とよく相談してください。 家はマシーンではないと書きましたが、例えば、近隣のない広大な敷地に実験住宅を作成して、データーを取って確認し、窓、換気、断熱、吸気などはいろいろ変えて実験して、最大値の効果のでる家はできます。それと同じものを購入するなら、同じ効果が出そうな気がしますね。 でも、現実はお隣の建物があり、樹木があり、で日当りの影響はだいぶ違います。 また、現実、日本では職人さんの職人教育制度が確立されていません。 現実は造り手の職人さんは高気密高断熱の有り様はよくわかっていないのも事実なのです。 日本車のようにあれだけ高性能の技術の塊でも、リコールは起こります。 また、マイナーチェンジするたびに、細かい問題点は処理されて成長します。 しかし、家は一発勝負です。 建築の性能は出始めてから10年〜20年建って始めて、「これはこの地域にあっている工法」と断言できるようになるもので、それまでは、実験されているようなものです。 メリット・デメリットを理解し、リスクは自己責任で新工法に挑戦してみてください。 設計者と話し合って納得しながら進めて造ってください。 新工法はなんでもそうですが、設計者と一心同体になるくらいまで話しあってください。 |
相談者お礼状 | |
相談者お礼状 | 多くのアドバイス、本当にありがとうございました。 機械は故障するものというアドバイスが特に参考になりました。 おそらく、自然吸気強制排気の換気方法を採ることになると思います。 |
その後 |
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