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一般社団法人建築よろず相談支援機構

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よろずWEB相談HEADLINE

No.0663 設計事務所を選んだが・・・。

 相談概要 [氏名] YK
[相談内容] 注文住宅の瑕疵
[居住住所] 千葉県千葉市緑区
[相談建物所在地] 同上
[職業] 設計
[年齢] 33
[男性] on
[構造] 木造(在来工法)
[築何年ですか?] 築 2年以内
[何階建て] 2
[延べ面積m2] 75
[工事請負金額] 1200
[様態] 注文建築
[施工者] 大工(工務店)
[設計者を選んだのは] 自分で選んだ。
[監理者を選んだのは] 自分で選んでいない。
[確認申請書は本来建築主が出すと説明を?] 受けていない。
[18確認申請の為の委任しましたか?] 覚えていない。
[確認申請書お持ちですか?] 有る。
[検査済証は有りますか?] どういうものか知らない。
[お手持ちの図面は何枚?] 10枚以下
[打ち合わせ何回] 5回
[施工者名] A工務店
[設計者名] YA設計
[監理者名] YA設計
 相談内容 [現象]
シャワールームの壁材がプラステックの組み立て式のものだったため、シャワーの水が建物の基礎部分から外部に漏れていた。また、シャワールーム全体が常時カビ臭く、ベタ基礎の内部にも水が溜まっているのではないかとの心配から元の施工者とは別の業者にお願いしてシャワールームの改修をお願いした。改修工事の過程で、シャワールームの底(タイル張り)を壊したところ、タイル張りの下には砕石が詰めてあり、そこに水が溜まっていた。また、業者の話によると、シャワールームの壁材は、通常は天井に使われるもので、シャワールームの壁など防水性を求められる部位には適していなかったことがわかった。改修後は、カビ臭さや基礎外部への水漏れはない。(写真は別途添付)

[業者の見解]
設計事務所とは、上記の現象が発見された時点で、そのたの欠陥も含めて改修を随時していくといった内容の合意書を作成していたが、再三の電話にも関わらず、現地調査することもなかった。竣工から2年目が経過し、基礎外部への水もれが激しくなり、基礎が腐ってしまう恐れがあったため急遽自前で業者にお願いして、改修工事を行った。(設計事務所も元の施工業者も立ち会わなかった) 

[相談内容]
上記にも書きましたが、設計および施工管理をしたY設計事務所とは、瑕疵と思われる箇所に対する合意書も作成していたのに、結局対応してはくれませんでした。しかたなく、自前で業者を使って改修工事をやったのですが、この工事にかかった費用(約30万円)に関して、設計者もしくは施工者が支払うものと理解していますが、一向に支払いが行われません。工事にかかる費用の見積書も事前に提出してありましたし、設計事務所も支払いを承諾しておりました。
この場合、法的な措置をとる必要があるかと思いますが、どうのようにしたらよいのでしょうか?また、施工者は地元の業者でまともに話ができないことから、設計・施工管理を行った設計事務所に対する法的な措置は有効でしょうか?よろしくお願いいたします。

 yorozuの感想 できれば、写真も相談のページに添付できたらと思います。
アドバイザー 
久米 能子 設計事務所がかんでいることであるにも拘わらずお困りのご様子、胸が痛みます。 ご相談では設計事務所が全面補修の承諾をしたということなので、今後の方針は手続き上は、その延長線上で検討すべきであるのかもしれませんが、敢えて、ちょっとそれをはずして、この問題のスタート地点から考えてみました。

 ご相談の内容だけでは良く分からない部分が多く、推測の域を出ないのですが、ご自身は設計事務所にどのような業務を依頼されたのか、きちんと把握されていらっしゃるでしょうか。設計者はご自身で選ばれたということですが、監理者は選んでいない、ということは設計事務所は工事監理を受けていないということなのでしょうか。
本来、設計事務所が工事監理を受けていれば、建設業者との工事請負契約のときに立ち会って、建築主の方と工事請負業者との請負契約に監理者として署名捺印をします。その工事請負契約書には、設計図書が見積書や契約書、契約約款などとともに一緒に綴られます。これは工事の金額の裏づけとなる設計内容を詳細まで明確にするためですので、このときの設計図書は実施設計図も含み、枚数は小規模な木造住宅でも数十枚にはなり、十枚以下ということは(私達設計事務所の通常の業務では)考えられません。お手持ちの設計図書の枚数が、十枚以下ということなので本来の実施設計はなされておらず、従って工事請負契約の中身も明確にできていない、また、工事監理まで設計事務所と契約書をかわされていないのではないかとも思えます。

 従って、もしも私の考えるような状況であられるならば、業務の本来の流れから考えて、設計事務所に漏水の責任を問うのは筋が違うように思います。数枚の基本設計だけでは防水の納めを表現することは不可能で、また工事監理も契約されていないならば、工事現場にて業者に防水について指示することもできないからです。例えシャワールームの壁の仕上げが簡易なものであっても、その下地や腰壁に十分な防水をしていれば漏水は考えられません。基本設計程度で表現できない防水の納めというのはそういった内容のことです。そうなると、責任の所在はまず、工事業者に問わねばならないということになります。工事業者が通常の常識を持ち合わせた業者ならば、基本設計図にでていないものも当然読み取って仕事をするはずだからです。(しかしこれがなかなか期待できないので、私達はいつもきちんとした実施設計の大切さを叫んでいるのです。)

 そのような簡単な設計で済んでしまって、工事監理も行われていないような状況がYKさんと設計事務所との十分な理解・合意の上のことなのか、設計事務所が単に怠慢であったのかは、私達にはわかりません。当然、それによって責任の行方もかわるでしょう。

 また、確認申請書の工事監理者の欄の記載はどうなっているでしょうか。依頼された設計事務所が工事監理をすることに届け出されているでしょうか。そうなっていれば、たとえ現実の業務がどのような形でなされていたとしても、法的には設計事務所の責任は免れることはできないと思います。ですから、当然この問題の解決に設計事務所は努力を払わなければならないとは思います。

 私の想像があっていれば、おそらくはそのような理由もあって、設計事務所は改修工事をすることに同意したのではないかと考えます。同意したのですから、その言責を問われることも当然でしょう。 が、見方を変えれば、そのような同意をしたということは多少は善意ある事務所ではないのでしょうか? どのようなプロセスでこれまでこられたのか詳しくは分かりませんが、私にはすれ違いとこじれが起きているようにも思えます。

 ご相談では改修工事について何度も電話されたとありますが、直接会って、何故このようなことになったのか、何が問題だったのかなど、じっくりと設計事務所と話されたことがあるのでしょうか。ご自身が選ばれた設計事務所ですから、もしもまだそのようなとがなければ、まず、一度時間をとって、事務所側と相談されるべきであろうと思います。2年の月日が経過しているので、なかなかそのようなお気持ちにはなられにくいとは思いますが、本来設計事務所はあなたの代理人です。つまり、あなたが信頼をおいて、業務を依頼した人です。法的な手続きにはいる前に、ゆっくり相談されてみることをお勧めします。事務所を味方につけて、施工業者に費用を請求できるように手伝ってもらおうというくらいの気持ちをもたれてみては如何かと思います。本当に全く建築主の問題を無視して取り合わないような事務所なら、そもそも改修の合意書に同意したりしないのではないかと思うのです。事務所側も逃げ腰になっているのかもしれませんが、一度試してみてもいいと思います。

 設計事務所の業務のことを本来はきちんと自己責任として建築主の方も勉強していただきたいといつも思っています。また同時に、それを十分に理解して貰うようにつとめることも、通常の設計監理の業務のほかに建築家の責任であると思います。今回は、設計事務所もYKさんに説明不足のように感じます。

 余談ですが、アメリカのある州で、 I'm sorry 法 というのが少し前にできたそうです。 交通事故などで控訴が絶えないお国柄の中で、控訴経験のある人にアンケートしたら、「ごめんなさいとひとこと言ってくれれば、気持ちも和らいで、訴えたりしなかった。」という答えが大変多かったことを受けて、事故の現場で「ごめんなさい」ととっさに謝っても、事故原因の非を認めたことにはならないという内容の法律ができたのだそうです。
法的な責任ばかりを追及することからはじめると物事はおさまりにくくなるときもあります。要は現実をよく理解、把握することです。 話をしてみてやっぱり駄目なら、内容証明を送るなどして、法的な手続きに進むしかないでしょうが、事務所がやはり助けてくれそうになければ、例え言いにくくとも、施工業者にご自身で連絡され、事情を説明されることも同時にされるべきであると思います。お辛いでしょうが、頑張ってください。
根本 一郎 川崎の根本です。

法的措置のとりかたとの事ですが、弁護士へ依頼して解決するのではなくご自分で対処する方法を相談されたかと思います。YKさんがとられたこれまでの行為を整理し、今後の対応を考えましょう。

1) 瑕疵と思われる箇所に対する合意書も作成していた
2) 工事にかかる費用の見積書も事前に提出してありましたし、設計事務所も支払いを承諾しておりました
3) 再三の電話にも関わらず、現地調査することもなかった

以上3つがポイントになります。1)は、瑕疵の存在を発生時に双方で確認したことになり、言い逃れが出来ないことになります。2)は、設計事務所が補修工事について全面的に了解していたように取れますが、承諾書の有無など設計事務所との合意内容が不明です。電話など口頭によるものであれば、双方の思惑が異なっているおそれがあります。最後の3)によりY設計事務所は改善の提案どころか調査すらしていないことになります。2年間放置された挙句のYKさん自らの処置に問題はない様に思われます。

今回の補修費用を設計・施工者側に負担させるためには、先ずY設計事務所に対して内容証明郵便により、支払いの督促を行いましょう。文面には、返答の期限を設け、回答次第では法的措置をとる旨明記します。期限までに返答がなく相変わらず無視するようであれば、公的な第三者機関による調停を依頼し、不調に終われば正式な裁判により解決することになりますが、訴訟になれば今回の補修費用以上に費用がかかります。早期解決を目指しましょう。また、内容証明による通知については、行政書士でも作成や書き方などの相談が出来ます。頑張ってください。
 山口 雅克 私達と同じように、専業の設計事務所で家協会や事務所協会に加入していてこのようなことになるとは心が痛みますが、YKさんのお気持ちも察しますので解説をいたします。 工事費の支払いは誰の財布から支払われるのか確認をされましたか。設計者が払うと言ったのか、払わせるといったのかメールでの内容では微妙と感じました。 施工と設計監理とどちらに責任があるのかを考えて整理してみましょう。そして支払いをすべき人を絞って交渉してみましょう。まず、

1:設計監理契約の業務内容はどのようなものであったのか。又、内容の説明が設計者からあっていたのか。(監理者を自分で選んでいないとの記載がありましたので、どう言う契約だったのかな、と疑問に思いました)打合せ回数も少ないし、設計図も枚数が少ないので(大きさにもよりますが)気になりました。それと、設計者は建築家賠償保険に加入していませんでしたか。(加入していて設計ミスが原因で瑕疵が生じれば保険がおりるからです)
2:設計図通りに仕事がされていて瑕疵が生じましたか?
3:施工者が勝手に変更して仕事をしていましたか?(監理者が見破るのが難しい場合もあります)
4:誰に責任があるのでどのように対応するかの説明がありましたか?

1〜4はこれからとる手段のための貴方の心の準備のためです。
どうだったにしろ、施工も設計監理もお粗末だったような工事と材料に思えます。施工者が地元だから言いにくいとのお気持ちも察しますが、双方に出向いていただき一緒に話をしていただくか、双方で話し合いをして誰が面倒みてくれるのかを明確な文書で(内容証明でも)返事の期限を定めて通知するのが良いでしょう。対応や支払いがなければ「日本建築家協会」や「建築士事務所協会」の相談窓口に話をされたらいかがでしょうか。それでもダメなら法的手段になるのでしょうか。(このことも文書に書き添えるのもいいかもしれません) 
中川 雅実  こんにちはY.Kさん、神奈川解説委員の中川です。

 住まいの建築は、信頼関係を最も大切にして行いたいですが、現在までの行き違いや心痛をお察しいたします。 詳細に解説するには、各契約書・設計図書・確認通知書・見積書・打ち合わせ議事録(変更も含めた)・施工承認図書等を確認する必要があります。 
訴訟に発展すれば、設計・工事監理者と施工者に責任問題が発生し、両者の過失割合(過失割合は両者で決める)で負担するようになると思われますので、内容証明等の手続きは、両者に提出された方が良いでしょう。

通常、瑕疵の補修は、施工者となることが多いのですが、相談文面より察し設計ミスととれそうな工事内容のケースは、設計者にも責任は及びます。 全面的に設計者責任の場合は、施工者(委託者)が設計者に対して、欠陥になることを事前に通知し設計者の了承を得て工事を行ったときです。

本建物は、委託契約書(商法上の設計者との契約)に工事監理が含まれていたのか?確認申請書(建築基準法に基付き、役所に着工前に提出する書類)の工事監理者欄に監理者の記載があれば、工事監理者として基準法の責任は免れません。
但し、設計・工事監理は、木造2階建てで延べ床面積100u以下であれば、建築士で無くとも出来ますので空欄かも知れません。 更に、設計者との契約は、書面でなくても可でありますが、後日のトラブル防止の為に書面として残します。工事請負契約書に監理者(立合者)として押印することは、有効な監理契約とみなされます。 
 コメンテーター 
星 裕之 私としては山口解説委員の述べているようが解決の近道ではないかとおもいます。あらためて、現象を整理すると、タイル下地にコンクリートが打っていなかったことは施工会社による手抜き、そして監理者(設計事務所)の業務怠慢だともいます。天井材というのはバスリブでしょうか?それを壁に流用することそれ自体はローコストを意識した建築では有効な処置ではないかと思います。惜しむらくは、バスリブの下地に防水処理を行われなかったであろうこと、床と壁の見切処理が適切ではなかったことではないかと思います。

補修業者の言い分はすこしおおげさに感じます。建築金額がずいぶん安いようですが、以上の問題が起こらないように職人をきっちり指示手配する現場管理要員(施工会社現場監督)の経費、詳細を検討する為の設計費用、以上の問題点を現場で発見し改善するための指示を行う監理業務に対する充分な報酬はあったのでしょうか?設計事務所に依頼して打ち合わせ回数が5回、図面も10枚未満というのは通常では考えられないことです。きちんとした設計監理契約がおこなわれ、それ相応の報酬が払われたのでしょうか?確認申請を通す程度の図面を作成するだけの契約ならば、この設計事務所への貴方からの要求は道義的にどうかとおもいます。

中川解説委員が述べているように申請書監理者欄に設計者事務所の名前が記されていたのなら法的な責任が設計者に発生してしまいます。今回の問題は、第一に施工者に責任があり、次にそれを見過ごした監理者の責任が問われ、その後設計者責任が問題になることになります。但し、きちんとした設計監理契約が行われていればという前提条件がつきます。お客様と満足に話し合いができないような施工会社では監理業務が円滑に行えませんから、設計事務所が本当に監理契約をしているのかは疑問です。お話もできないような施工者を誰が選定し誰と契約したのでしょうね。ここに貴方の依頼者責任も存在するはずですよ。久米解説委員が述べているような背景も考慮し、貴方がどんな業務委託契約を設計事務所と行ったのかったのかもう一度確認してください。
 事務局から 
  荻原 幸雄 相談の文面から本来施工者に瑕疵請求する内容なのに「おかしいなぁ?」と感じましたが、ネット上で調べてみますと、この設計事務所は本来専業しか加入できないはずのJIAに加入していながら「施工」をしているようですね。この設計事務所は設計監理と施工をする兼業という事務所です。我々各解説委員は「施工」はしない専業の設計事務所です。
この事務所は兼業ですから、先ず、どのような契約形態にしたか?という点に関心があります。

施工も含めた契約形態にしてませんか?ならば、あなたが設計事務所に今回の内容の瑕疵請求している意味は理解できます。
また、図面が少ない。打合せが少ない。これらも施工をしているならば「現場対応で」ということで理解できます。

このような事務所は名前は設計事務所名ですが、設計事務所の名を借りた建設会社です。通常の建設会社からみたらひつじの皮を着た狼のようなもので最悪の事務所ですね。このような事務所は食べる為に興味のない建物は施工で儲けて、興味のある建物だけ「設計事務所です」という顔をします。

このようなところに誠意をもとめるのは難しいかもしれません。
設計事務所に依頼するときは施工のしない専業の事務所で施工と癒着のない事務所を選びましょう。

もう一度契約形態を確認し、設計者・監理者・管理者・施工会社のどの部分での契約かお調べください。
相談者お礼状 
 相談者お礼状 解説委員の皆様及び運営事務局様から大変丁重な解説を頂き、感謝しております。
ご指摘の事項(契約形態等々)に関しまして再度確認した後、今後の対応について考えたいと思います。
 その後  
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