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一般社団法人建築よろず相談支援機構

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〒181-0001 東京都三鷹市井の頭3丁目12番11号

よろずWEB相談HEADLINE

No.0654 アレルギーなので・・・。

 相談概要 [氏名] H.K
[居住住所] 宮城県仙台市
[相談建物予定地] 宮城県仙台市
[職業] 大学教員(建築とは無関係)
[年齢] 36
[男性] on
[構造] 木造(在来工法)
[設計者はどなたに依頼しますか?]
建設会社の建築士
[何階建て] 2
[延べ面積坪] 40
[工事請負金額] 2800
[様態] 注文建築
[施工業者はどちらに依頼しますか?]
大工(工務店)
 相談内容 [相談内容]
よろしくお願いいたします。建物の気密性・断熱性に関する質問なのですが、これまでの経緯を先に述べさせていただきます。
 私は昨年度体調を悪くし、化学物質過敏症とまで言うと大げさかもしれませんが、しかるべき医療機関において検査していただいたところ、キシレン・トルエン及びホルムアルデヒドに対し反応が出ていると言われました。
仕事はおよそ普通にこなしていますが、他人の化粧やカラー刷りの印刷物の匂いで気分がわるくなったりすることはよくあります。

また三歳になる愚息は食べ物にたいするアレルギー(卵・小麦・ごま等多数)がひどく、おそらく幼稚園での給食はとても食べられない状況です。現在は貸家に住んでいるのでいるのですが、周辺環境など含め、あまり健康によいものとは思えなかったため、この度思い切って市内に土地を購入し、家族の健康に適した家を建てようと決心しました。やはり合板に囲まれたハウスメーカーの家よりはムクの家をと思い、近隣の工務店を何軒かあたり、寺社建築も手がけている工務店(大工さんというべきか)に出会うことが出来ました。木材についての造詣が深く、自社で丸太で購入して十分乾燥させてから建材として使用しているということで、その面では大変信頼のおける方だと思っております。しかし、そこで一点問題なのが、冒頭に書きました気密性・断熱性の問題です。

個人的には高気密・高断熱にして計画換気をした方が、隙間が多く、どこからどのように空気が流れているのかわからず、一定した換気量が保たれない家よりはよいとこれまで思っていたのですが、その社長さんは、昔ながらの家造りを尊重される方で、「計画換気といってもホルムアルデヒドは空気より重いし、かならず吹き溜まりが出来る、高気密にはしない」とおっしゃります。また、こちらのHPの「シックハウスと高気密高断熱」という記事も拝読しました。

 そこでお教えいただきたいのですが、私やアトピーをもつ愚息の健康上の問題も考え、室内環境を整えるという点、及び東北という寒冷地であることも踏まえて暖房効率をある程度高める(無論、家計を考えればランニングコストも大事な問題です)という点などを勘案した場合、気密性や断熱性はどの程度が適当だと思われるのでしょうか。

また、その気密性・断熱性を生み出すためには、具体的にはどのような配慮(断熱材の種類・工事方法・窓の問題など)が必要なのでしょうか。
ご多忙のところ誠に申し訳ございませんが、是非よろしくお願い申し上げます。
 yorozuの感想 貴会のようなところがないかとインターネットでいろいろ探し、ようやくたどり着くことが出来ました。ますますの発展を祈念しております。
アドバイザー 
今井 優子 札幌の今井です。

化学物質過敏症とアトピー、そして高気密・高断熱、大変な問題です。
結論から言うと、簡単に答えの出せるものではなく、ましてや現時点に於いて一般解は存在しないものと考えています。

まず、化学物質過敏症ですが、これはいわゆるアレルギーとは違い、アレルギーであれば特定の物質(抗原)に対して起こる抗体反応ですから、特定物質を遠ざけることで症状を押える、または微量の暴露を繰り返すことで抗体反応を起こさなくするという方法で対応できます。
しかし化学物質過敏症の方はたいていの場合、一度発症するとあらゆる化学物質に反応してしまう傾向が強く、極めて微量の物質で症状が出るようになり、次第に重篤な状態になるケースが多いようです。

現時点で、トルエン、キシレン、ホルムアルデヒドの3つに反応しているということですが、化粧や印刷物の匂いで気分が悪くなるというのは、典型的な過敏症の初期段階と考えられます。
このような状況で新築を検討する場合は、一般的にいわれているホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、といった物質だけでなく使用する全ての建材について含まれる化学物質を調べ、検討する必要があります。一概にムク材を使っていれば大丈夫というものではありません。
現在の木造建築では、いくら昔ながらの工法といっても思わぬところで様々な化学物質を使っているものです。
化学物質過敏症について、現時点で可能な限りの知識と情報を持ち合わせた方に相談されることをお勧めします。

高気密・高断熱についてですが、
確かに、近年の高気密化がシックハウス症候群(化学物質過敏症のなかで新築住宅入居を契機とするもの、若しくは新築住宅入居時の一時的な化学物質の低濃度中毒症)を増加させた要因の一つであることは事実ですが、あくまでも原因ではないと考えます。
高気密・高断熱については、別の方向(省エネルギー、地球温暖化防止)からの必要があって出てきたものであり、寒冷地に於いては積極的にその採用を検討するべきだと思います。
しかしながら、これも生半可な知識で取り組むと本来達成すべき性能を発揮できないばかりか、逆に壁内結露やカビを誘発し、健康に悪影響を及ぼしたり、住宅の寿命を縮めることになりかねません。
現場での監理、監督が非常に重要なのです。

確かに、その工務店の社長さんがおっしゃっていることも一理はあります。
実際、高気密・高断熱の先進国である北欧では、最近になって日本の古来の住宅のつくり方(外部環境と交感しながら暮らす家)を見直す機運があり、中気密・高断熱という言葉も出てきています。
しかしこれもまだまだ未知なもので、その土地の気温、湿度、生活習慣などの条件が違えば方法論も違ってくるはずです。少なくとも、昔の作り方そのままで良いというわけではないのではないでしょうか。

化学物質過敏症に対する対応と高気密化するかどうかについては、単純なことではないのでその両方について、ちゃんとした知識を持ち、建主の健康状態や暮らし方までも考慮に入れて、建主にとって何が一番いいのかを一緒に探ってくれる建築士をパートナーに選ぶことが重要だと思います。

非常に手間と時間の掛かることですが、ご自身と家族の健康、これからの生活を考えれば、決して人任せにしない、一つ一つ納得した上で進めていくということが大切です。
小松原 敬 解説員の小松原です。

アレルギーは難しい問題です。
できるかぎりの事をして経過をみるしか今のところ方法はありません。
ただ、それで軽減したという報告もあります。

大気汚染や花粉といった外部環境の要因を除いた室内空気環境の汚染の発生原因としては3種類が考えられます。

  1 化学物質的要因    ホルムアルデヒドに代表される建材、家具から
  2 生物学的要因     ダニ・カビ・ほこり等
  3 物理的要因      電磁波、音、低周波等

3についてははっきりした因果関係がわかっていないのでとりあえず除きます。

1については厚生労働省が最近発表した主な原因物質は以下のものです。
ほかの物質の報告もありますが、空気中に放散されないものは影響がほぼないとしています。

  a ホルムアルデヒド 建材に使われている接着剤等
  b トルエン、キシレン 塗料の溶剤
  c クロルピリホス  特定の防蟻材に使われるもの
  d パラジクロルベンゼン、テトラデカン  衣類の防虫剤等

aはもっとも大きな影響がある物質です。なるべく無垢材を使う、合板を使う時はFc0合板を使う等が大事です。ただ、家具や建具からも放出されます。
特に家具には注意が必要です。
溶剤をつかわないセラックニスを塗るとホルムアルデヒドを封じる効果があるという報告があります。また珪藻土のような左官材料はある程度吸着効果が期待できます。基本的には換気が重要です。

bの対策に関してはオスモやリボスといった溶剤を使わない輸入塗料が有名です。
また、アトリエ・ベルという塗装屋さんがつくっている塗料も有名です。

cに関してはなるべく使わない方向が望ましいです。ベタ基礎にして床下に侵入しない構造にしておき、その後は点検できるようにしておくのが良いと思います。
シロアリは蟻道を造るので点検できれば発見できます。
シロアリに関してはここがおすすめです。シロアリに対する考えが180度変わります。  
岡崎シロアリ技研  http://www.sinfonia.or.jp/~isoptera/
またこのサイトの考えは人間と自然のかかわりに関して大きく考えさせられます。
「生き物の「化学戦争」に参加せよ!」というくだりはぜひおすすめです。

dは防虫剤や殺虫剤、タバコなどもそうですが生活の中で考えていくことです。

2 に関してはセントラルクリーナーが有効です。
24時間換気も気密性が高くなった現代の住宅には必要だと思います。特に高気密をうたった住宅でなくとも気密性は充分高いです。
その場合、ダクトをつかって部屋に給気を行うシステム(空調と組みあわせたり熱交換機を使ったりするビル空調のようなシステム)は避けたほうが良いです。
ダクト内にカビやほこりが発生するとそれをばらまく事になります。
排気主体のアルデ換気システムや三菱の吸気システムなどの単純なシステムが具合が良かったです。トイレの換気扇をつけっぱなしにしても良いです。
どのやり方でも室内のドアの下にはアンダーカットがあると良いです。
(2〜3cmで充分です)

最後に高気密に関してですが、どうも業界でも通ってる考えには誤解があるように思います。
北米での高気密の主な目的は躯体内結露を防ぐ為にあると思われます。
(ただでさえ、気密性が高い現代の家はよほどの寒冷地でもなければ気密が原因の熱損失はそれほど気にする必要はないレベルです。ましてや換気をすれば当然、熱損失はあるのですから。 計画換気も副次的産物で、換気さえできればそれで充分です。仙台とはいえ、多少でも気候がよければ窓を開けると思います。機械に頼りきるのは問題です)

壁の中に断熱材を充填する断熱方法は、ほっておくと必ず躯体内で結露します。
室内と外部に温度差があるかぎりどんな自然工法の家でもそれは同じです。

その為、室内の暖かく湿った空気が躯体内に侵入しないように防湿ビニールを壁の室内側に貼り詰めることが重要です。
このビニールをちゃんと施工するには丁寧な施工が必要です。
そして、「その施工を確認する為」(どこかに穴があいたりしてないか確認する為)気密測定を始めたのだと思われます。

つまり、外部環境と室内環境の間に気密を保つ為ではなく、躯体内に室内から空気が侵入しないように気密にするのが本来の目的なのです。
したがって、躯体内結露の問題さえかたづけば気密性にこだわる必要はまったくないと思います。

その意味では外断熱工法は躯体内結露が理論的にはおこらない施工方法ですし、コンクリートなら内断熱でも躯体に密着していれば結露はおきません。躯体内結露がおきないような方法さえとれば気密性にこだわる必要はないと思います。

あとは断熱材を厚くしたり、ペアガラスにすれば良いです。
また床下や屋根にも断熱材を充分入れることを忘れないようにしてください。
善養寺 幸子   高断熱、省エネルギー建築の先進国の一つ、デンマークに行って来ました。
 温暖ではありませんが、北海道ほど厳しい冬でもなく湿度の低いデンマークでも断熱材内の結露+カビの問題があり、最近は高気密外断熱の建築が傾向だそうです。
 断熱材を入れる以上、気密のある構造と計画された(機械換気とは限らず)換気が重要だと私は思います。

 無計画に出来た中気密ほど危険なものはないと思います。
 化学物質過敏症なら尚のこと、その事に本当にしっかりと取り組んでいる設計事務所(国内でも数少ないでしょう。)に依頼しないと危険でしょう。
 伝統工法で作っていると言ってもどこまでナチュラルに作っているかは判りません。
 工法と化学物質対策は全然別のものです。自然素材も同様です。天然素材に対するアレルギーの方も多いでしょう。ヒバなどは良く聞かれます。
 杉花粉症だって、自然素材での影響とも言えるのでは?

化学物質の吸着能力があるという珪藻土を使ったとしても、その素材のバインダー(珪藻土は珪藻土だけでは固まりません。固まるための接着剤のようなもの)は天然か、化学樹脂か。その下地の処理のパテは?吸水防止処理(シーラー)は?
 壁紙だったとしても低ホルム糊?目地処理のパテに有機溶剤が混じっていませんか?
 防蟻剤塗布をしなかったとして、防蟻対処はしているのですか?
 室内コーキングの溶剤は?床は脱衣室、トイレも無垢板ですか?
 天然素材のコルク床ならその接着剤は?
 システムキッチンは化粧板はないのですか?
 ユニット家具は入れていませんか?
 ユニットバスの柱脚をコンクリートボンドでとめてはいませんか?
 給排水が塩ビなら、接続に有機溶剤の入った接着剤を使いますよ。
 FC0の合板や低ホルム建材を使えば大丈夫という安直なものではありません。
 FC0や低ホルム建材を使っても換気が悪ければ、24時間も経てばFC3の合板の放出ホルム濃度と同じような結果となってしまいます。

恐怖をあおるつもりはありませんが、化学物質対応もアレルギー対応も本当の伝統工法も高性能な高気密高断熱も簡単な仕事ではありません。伝統工法だから中気密でよいなどと簡単に言ってしまうその工務店に対応できるとは到底思えません。
断熱材を入れる以上、健康被害を気にするならきちんと計画するべきと私は思います。 
 コメンテーター 
笠原 歩 アレルギーをどのように考えるか。これからの住宅において避けて通れない重要な問題だと思います。今のところ全ての症状に対応するような解決策は、残念ながら見い出されておりません。高気密高断熱についても様々な考え方があり、これも一概にどれがいいとは言えない状況です。
いずれにしても相談者の考え方、症状等を良く理解してくれる建築士、施工者を見つける事が大切だと思います。
 事務局から 
  荻原 幸雄 健康には十分配慮する必要がありますね。
医者から「キシレン・トルエン及びホルムアルデヒドに対し反応が出ている」と言われたならなおさらです。

住んで反応が出たとしたら生活していられるものではありません。
建築でできることは徹底的にこれらの材料を排除することだと考えます。
高気密住宅は機械換気は必須です。これらのダクトに長年に付着されたものが問題になる場合もあります。しかし、高気密でも極端な話が窓換気もできますので、こまめに手動で換気する習慣も大切です。

人にはその方の自流の生き方があります。生活習慣のついていない人や寒さに敏感な人などは「こまめに」といっても実生活で実際にそれを長年自然にできるか否かが高気密住宅に住むための鍵です。
住居は自然体で住むわけですから、自然体で「こまめに」自然換気もできる人に向いています。
ご自分や奥様、ご家族がその自然体で換気できるか?よく話し合って無理のない家を選択ください。
相談者お礼状 
 相談者お礼状 皆様ご多忙の中、懇切丁寧なお言葉誠にありがとうございました。
参考にさせていただきます。 
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