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一般社団法人建築よろず相談支援機構

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〒181-0001 東京都三鷹市井の頭3丁目12番11号

よろずWEB相談HEADLINE

No.0653 実施設計図と施工図の関係

 相談概要 [氏名] S.N
[相談内容:] その他
[居住住所] 宮城県仙台市
[相談建物所在地] 宮城県仙台市
[職業] 主婦
[年齢] 43
[女性] on
[構造] 鉄骨造(ラーメン構造)
[築何年ですか?] 工事中
[何階建て] 3
[延べ面積m2] 250
[工事請負金額] 4800
[様態] 注文建築
[施工者] 大工(工務店)
[設計者を選んだのは] 自分で選んだ。
[監理者を選んだのは] 自分で選んだ。
[確認申請書は本来建築主が出すと説明を?]受けていない。
[確認申請の為の委任しましたか?] した。
[確認申請書お持ちですか?] 有る。
[お手持ちの図面は何枚?] 50枚以下
[打ち合わせ何回] 15回以下
[床面積] 250m2以下
[施工者名] B
[設計者名] H計画
[監理者名] H計画
 相談内容 [相談内容]
インターネットで探した一級建築士に設計を頼み、11月に着工しました。
あと3週間ほどで完成予定で、現在は週1回の割合で、建築士・工務店・施主が集まり、打ち合わせ・確認などを行っています。
当初、実施設計図に基づいた施工図を工務店側が作成すると聞いており、当然それをもとに工事が行われているものとばかり思っていました。建築士に監理もお願いしてありますし、設計事務所の若い建築士が毎日1回現場に足を運び、工務店との連絡にあたってくれているので、その点でも安心しておりました。

が、前回の定例打ち合わせ会で、エアコンの場所の移動が必要になったという工務店側の話を聞いた建築士が「きちんと施工図も書かずに施工するからこういうことになる。実施設計図をもとに工事するのはいいかげんだ。」と、工務店側の担当者を激しく叱責しました。このため、わたしたちも施工図が作成されていないことがわかり、そのため、空調や電気の設備がうまくおさまらず、もう一度天井をはがしたりというような本来なら無用の工事が必要になっていることもわかりました。

[業者の見解]

[相談内容]
施工図というのはなくてもいいものなのでしょうか。
もうあと数週間で完成するというところまできて、こんなことをいってもしかたがありませんが、施工図がないままに施工して、無用な工事や適当な工事をされているのではないかと不安です。このような工務店に対する不信感はもちろんですが、監理をお願いしてある建築事務所にしてみても、施工図がないことをわかっていながらここまでほおっておいて、そのあげくに怒るというのも、何だか違うような気がします。

最終的な見た目が、設計図どおりになっていればいいというものではなく、途中きちんとした施工がなされているか、そういうチェックをしてくださるのも監理という仕事ではないのでしょうか。
 yorozuの感想 家を建てるということは、本当にわからないことだらけです。
山のように決断しなければならないことがあり、またその決断の根拠をどこに求めればよいのか、迷うことも多いのです。そういう意味でとても参考になっています。ありがとうございます。
アドバイザー 
山口 雅克 解説員の山口です。

 施工図が全くない訳ではないでしょうが、業者によってはあまり作成しないものもいます。図面の特記仕様書などで施工図の作成義務を指示していますが、業者の中にはその意味さえ解らずに仕事を受けてしまう人もいます。今回は大工さんが受けたようですのでそのたぐいではないでしょうか。図面枚数が多い場合に施工図はいらないという業者もいますが、その時は設計図を利用して、その中に細かい寸法や納まりを記入するように指導をしていきます。

 施工図を作成しないから工事を止めてしまうと言うのも必要ですが、モノによってはきちんと施工できるようであれば作成を省略して工事をすすめることもあります。
 「きちんと施工図も書かずに施工するからこういうことになる?実施設計図をもとに工事するのはいいかげんだ。」はその場逃れの発言で、実際には設計の主旨を十分に説明していなかった処にも原因があるでしょう。

 鉄骨造であれば少なくとも基礎と鉄骨の施工図は作成されているでしょうが、零細業者ではその他は省略されることも多いのが現状です。工期内に工事を間に合わせる事が難しくなるので。ただ、その時には意匠や設備関係の納まりはかなり検討して作成しますので、まあまあうまくいくはずですが。又、施工図を描けない業者も沢山います。設計内容の密度にもよるところもありますが。

 今の段階での多少のやり替えは建物の性能上特に問題がないと思いますので、手戻りがあったにせよ、心配されるようなことはないと思います。
 コメンテーター 
笠原 歩 本来は施工図を監理者が承認してから発注、施工という手順を踏みます。ただし工期その他の事情により施工図無しで、現場が進んでしまうことはあることです。施工図は作成したほうがもちろん良いのですが、施工図が無いイコール監理が不十分。ではないことをご理解下さい。

ここで問題なのは監理者の態度です。相談者のお見込みの通り、施工のチェックをするのが監理の重要な部分ですから、全ての責任を工務店側に押し付けるような姿勢はいただけません。工事のやり直し、無用の工事については当然費用の負担の心配はありません。その部分については両者(監理者、工務店)から充分な説明を受けて下さい。
 事務局から 
  荻原 幸雄 施工図は施工者が設計図を元に作成するのですが、これは施工業者の能力といえるものです。
大手ゼネコンはこれらは確り提出してきますが、零細企業の建設会社や工務店は書けない人もいますし、黙っていると出してこない場合が多いので、出すように促します。
我々もその能力を見極めながら提出されない場合は、能力がないといっても現場は進みますので、ボランティアで施工図に近い図面を起こしてあげます。個人的な見解ですが、施工者が施工図をどの程度提出してくれるのかは我々も大変な関心事です。ボランティア作業が増えるからです。
しかし、わたしはこのような場合もお施主さんには関係のない話なので、施工図が出てこない業者にはいい工事になる筈もないのでこちらで描くことも含めて、その負担も総合して監理と捕らえて自分の心を慰めています。

監理者は施工図が出なければそれを促し、施工者に何故出せないのかを聞き、出せる能力が無ければ仕方ないので監理者が書いてあげるしかありません。(でも、つらいのですよ。施工者さん、ちゃんと施工図は描きましょうね。)

まあ、今回の相談は施工者も施工図が出せないのなら監理者に施工前に確認すべきですし、監理者も施工図の提出が無い場合は提出を促し、それでも出ない場合は工程に合わせて自分で書くしかありません。

どちらもどちらという感想ですね。手戻りは嫌でしょうが、監理している中での手戻りは多少はあるものなので、前向きに捕らえて下さい。
相談者お礼状 
 相談者お礼状 お返事ありがとうございました。
ご親切な回答、本当にありがとうございます。

うちの場合、毎日現場に行って下さっているのが、事務所の新米の二級建築士さんで、今ひとつ現場との意志の疎通がうまくないというか、やはり経験豊富な一級建築士さんのようなわけにはいかず、このあたりに少々不満があったところに、今回ご相談の出来事が起こりました。

が、解説委員の皆様のご意見を伺い、心が落ち着きました。確かにうちの場合、工程的にも大変厳しいものがありましたし、実施設計図からの変更も多々ありましたので、工務店さんも設計事務所もさぞかし大変だっただろうと思います。その後も数々の間違いは相変わらずあるものの、こちらが苦情をいえば、誠実に対応してくださっていることも事実です。皆様のおっしゃるとおり、前向きに考えたいと思います。

心からお礼を申し上げます。ありがとうございました。
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