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一般社団法人建築よろず相談支援機構

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〒181-0001 東京都三鷹市井の頭3丁目12番11号

よろずWEB相談HEADLINE

No.0630 近隣にマンションが・・・。

 相談概要 [氏名] S・M
[相談内容:] 近隣のトラブル
[居住住所] 三重県四日市
[相談建物所在地] 三重県四日市
[職業] 主婦
[年齢] 34
[女性] on
[構造] 鉄筋コンクリート造(壁式構造)
[築何年ですか?] 築 3年以内
[何階建て] 14
[延べ面積m2] うちは84
[工事請負金額] 2700
[様態] 分譲マンション
[施工者] 建設会社
[設計者を選んだのは] 自分で選んだ。
[監理者を選んだのは] 自分で選んだ。
[確認申請書は本来建築主が出すと説明を?] 受けた。
[確認申請の為の委任しましたか?] 覚えていない。
[確認申請書お持ちですか?] 解らない。
[お手持ちの図面は何枚?] 2枚
[床面積] 400m2以上
[施工者名] T・K
[販売会社名] S・H
[設計者名] K・P 
 相談内容 近隣トラブルの相談です。

マンションの北西部に9階建ての高層老人ケア施設が建つので説明会をする、と説明会4日前にかみ切れが一枚、マンション住民に配られました。
施主本人もマンション住民であるのにかかわらず事前にひとことも相談も打診もなくだしぬけな話にマンション住民一同、びっくりして説明会に行くと既に設計図も出来あがり市と県にも申請済みそれも税金で建てるしろものとのこと。
マンション住民であらゆる被害の可能性について考え意見申請書をまとめ市と県に提出しました。
37世帯のうち35世帯が集まりました。

マンションに接近して国道沿いの狭い土地にエル字型に建つ為北西の2階から9階の居住者は、うちも含め3室ある居室の窓全部から施設の壁しか見えない状態となり眺望0,風通し無風、カーテン締めたような暗い部屋になること必至です。
老人施設ということで露天風呂まで作る計画で地下水を深く掘り下げることにより、こちらの建物の亀裂破損、耐久年数低下も予測されます。
資産価値の損害は多大であるのは予想がつくのに4日前のだしぬけな一方的説明会の知らせ。説明会でも誠意もポリシーも感じず住民一同怒り心頭です。
本人の父が去年亡くなっており、相続税対策と金儲け主義であることはみえみえで、補正予算に滑り込ませようと向こうもあせって動いている模様です。
県庁の係の方に電話で聞いてみると「おたくたちの意見申請書も出ていますし、今税金すぐ出すとかの段階でなくこのケースについては協議中です。それにしても福祉施設ですからね。近所の住民とうまくいかないとね」とだけの返事でした。

[業者の見解]
相手の設計士は「もう9階建てで設計した。替えられない」「ラブホテル作るわけじやないんだ。」などと誠意のない、神経さかなでする態度。
施主本人も説明会に、設計図すら用意してないお粗末さ。住民の怒りの質問の嵐にもなにひとつまともに答えられず。
ただただ、みんなの知らぬ間にこっそりと計画し設計図まで作り、こっそりと県と市に申請まであげているという悪質さ。当日は新聞社の人も来て取材していった模様。

[相談内容]
市の方のご意見では
「推測に過ぎないがこのまま反対されていれば、補助金は出ないと思うが万一出たとしてもいきなりは建てることはできず斡旋、調停、続いて民事訴訟へ続く。」とのこと。今日住民集まって集会開くがとりあえず県で協議中の今の段階においては「断固反対」の方針で、歩み寄りの態度はこちらからはとらない。という方針で行くようにもっていくつもりですが、私たちに今、出来ることは他になにかあるのでしょうか。
 yorozuの感想 ネットサーフィンして、とにかくわらにもすがる思いでこちら相談しました。
住民の中にはショックで失望して、不眠症になったものまでいます。なにとぞ良いアドバイス、お願いします。
アドバイザー 
長谷川 明弘 相談員の長谷川と申します。

 まず御相談のメールを読まさせてもらっての疑問ですが、これほどの高層建築物になりますと、行政によっても違いますが、確認申請の前に事前協議等の申請があり、近隣住民が納得した状態で無いと申請が降りない場合が多いと思われます。

 私は地域が違いますのでそちらの行政のルールを知りませんのでなんとも言えませんが、相手が「設計図も出来あがり市と県にも申請済み」と言うのがどこまでの進行状況であるか調べる必要があるのではないでしょうか。
 申請済みと言うのはひっとしたら申請しただけで許可や確認は降りていないともとれます。もしそうであれば相手は申請後、近隣説明をするように指導している行政もありますので、正当な順序で手続きをとっている可能性もあります。そのあたりは出来るだけ冷静に調査、対応された方が賢明だと思います。

 これは私が逆の立場でいた時の経験でもありますが、とにかくみなさんが一致団結して冷静に対応すればこちらの意見も聞き入れてくれる状態になると思います。
 あとは出来るだけ身近な専門家に相談したり弁護士に御相談することをお薦めします。その方がみなさんがわからない部分をしっかりフォローしてくださることにはなりますので。
氏原 毅士 氏原です。

 我々建築士は建物の設計監理を業としていますので建築する側からの報酬で生活していると言っても過言ではありません。
 しかし、計画する段階で近隣の状況を十分把握し、トラブルが起きないような配慮を盛り込み規模の策定や建築主の望む機能をかなえる様努力をします。
 すなわち、明らかに紛争の種になるような無理な計画を強行はしないと言うことです。

かりにそうなれば、提案者としての責任とこれを解決する為の設計変更などの作業を負担しなければならないからです。
 この件に関してアドバイスするとしたら、建築確認は計画が建築基準法に適合しているという証明に過ぎず、建築許可証ではないと言うことです。
 また、手続きは必要ですが、工事途中でも設計変更は可能です。
 具体例をあげると、公民館を設計したとき、遺跡調査時に弥生の建物跡が見つかりこれを保存するため中庭式に設計変更しました。
 公共の(補助金事業)事業であったためかえって変更がやり易かったと考えています。

これが100%民間事業であれば困難かも知れません。
 建築基準法は特別法です。一般法である民法を補完します、また根底には憲法が存在します。大げさな言い方かも知れませんが建築基準法に適合していても、憲法で定める基本的人権を侵す正当理由にはなり得ないということです。
 必要なら法律家や建築家の援助の上、十分な話し合いをされるよう期待します。
 山口 雅克 解説員の山口と申します。

 建物の位置関係が不明ですからお話にくいのですが。
 なかなか難しい問題ですね。今、あなた方が他にできることがあるか、方法をアドバイスすることは私にはできませんが、少し気持ちが落ち着けばと思い、書きます。

 建主や設計者に誠意が見えなかったのは残念です。私が近隣説明をする時に用意する図面は、内部の間取りを描かない平面図(概略が解る程度の平面図)と立面図程度は皆様に提示して、建物の概要を説明しています。そして、近隣に採光や通風で大きな迷惑をかけないようできるだけ配慮した事をお話します。

 近隣説明告知のタイミングは概略図面に丁寧な挨拶分を添えて、一気に配付いたします。なぜなら、1戸ごとに説明会の案内にお伺いしますと、不在の処があったりして時間が掛り、結果として、あそこよりもうちへの案内や説明が遅かった、早かった、などの苦情が出てきて、噂に尾ひれが付いてしまうからです。又、話の聞き取りのスタンスが個々により違い、隣とうちでは話の内容が違うと言う事になりかねないからです。自分が事業をするのに近隣を呼びつける?のもどうかとは思いますが、上記の事情等を考慮して、お集りいただいたと説明するのが筋でしょう。そうでなければ1軒ずつ訪問するしかありません。

 眺望や採光通風などに関して考えると、今のマンションを購入される時に販売者から用途地域の説明があっているはずで、近隣にどのような建物が建つ可能性があったかは想像ができたと思います。貴方のマンションも14階建てではありませんか。建物の環境は先に建てたものが優先ではありません。

 お隣が井戸を掘ったことでマンションの強度や耐用年数が短くなる事はないと思って下さい。

 相続税対策は生前からされていた事でしょうし、国の福祉方針にのり、補助を受けて施設を造る事は恥ずかしい行為ではありません。民間の資金だけや国や自治体の予算だけではできない事業に税金が使われるのはごく一般的なことです。

 余計な事ですが、反対者の中にはあまり反対ではないけど、反対側について、よからぬ算段を考えている人がいる場合もありますので用心をして下さい。その人が途中から反対者でなくなることもあります。だからといって、反対者でなくなった方が先方についたわけではありません。受忍の限度内と考えを変えただけですから。マンション内のコミュニティーが壊れないように努力しましょう。 
 古賀 保彦 埼玉の古賀です。

建築関連の法的手続きがどの様な段階にあるのか分かりませんが、許認可を得ると着工してしまう事業者が多いので、その前に解決を図りたいものです。

まず、他の解説員も触れていますように、建築関連の紛争に詳しい弁護士や建築士の方にご相談されてはいかがでしょうか?現場や計画図面などが確認できなければなりませんので、お近くで見つかれば良いのですが、弁護士会などにお問い合わせされると良いかもしれません。

利害者間だけで話し合って解決策が見出せれば良いのですが、お互いが自己の利益を守ろうとするわけですから話し合いには大変な時間と労力がかかります。
建物の位置関係がよく分かりませんので何ともいえませんが、第三者の客観的な判断を入れて、自分たちの要求がある程度妥当なものなのかどうかを事前に掴んでおく事も大切な事だと思います。
要望については、建築紛争に関わる判例などを参照することも必要でしょう。
個人的な経験では、建物の大きさ・位置関係にもよりますが現在の日照がどの程度さえぎられるのかという所が争点になるように思います。裁判になったとしても眺望や通風の理由で要望が認められる事はとても少ないようです。

また、その日照も地域環境が考慮されます。例えば、低層住宅専用の地域と高層建物が密集している地域とでは日影の受忍限度と言われる判断基準も変わりますので注意が必要です。

それから、状況によっては知らない間に相手方の権利を不当に妨害してしまうケースが無くもありません。ご相談内容にありますように「補正予算に滑り込ませようと向こうもあせって動いている模様」であれば相手方がどのように出てこられるか分かりません。逆に相手方から提訴などされて思わぬ方向にいくことが無い様、事前に近隣紛争に詳しい建築士や弁護士の方からのアドバイスがあった方が安全です。交渉には、冷静・慎重・根気・客観的な判断が必要ですので、上記を含めた体制づくりを早めにおたてになる事をお勧め致します。 
 今井 優子 解説員の今井です。

相談の中にある「県と市へ申請済み」とは、建築確認申請ではなく、福祉課への申請のことなのではないでしょうか。

以前、東京で同じような福祉施設の設計に携ったことが有りますが、建築確認を出す前に福祉課に補助金(税金)の申請のための協議書というのを提出しました。
その協議書の基本設計図を添付します。
協議書を出してから補助金の内示を受けて、それから実施設計に入り、通常の中高層の手続き、確認申請、確認が下りたら補助金の正式決定。というような流れでした。
おそらく全国的に同じような流れだと思います。

その協議書の中に、建物の具体的な内容はともかく、この用途の建物を建てるということについての近隣の承諾書を添付する必要がありました。
私もそのときは、具体的な図面は持たず概略の建物の規模の説明だけで、「具体的な要望については設計がもう少し進んだ段階でお聞きしますから」というようなことで、福祉施設を作ることについての承諾を得る為の説明をした覚えがあります。
この時点で近隣の承諾が得られていない案件に関しては、殆んど補助金の内示は出ないということでした。

この相談の場合、役所の人の発言から見てもまだ補助金申請の段階ではないかと思います。

そうだとすれば、建物の階数や規模は大きく変える事は出来なくても、採光や通風、プライバシーなどに関する具体的な対処は、今後の設計の中で検討の余地があるという段階なのかもしれません。
突然の話で、気が動転しているかもしれませんが、冷静になってもう一度よくお話しになってみてください。
先住者の権利・利益が全てに於いて優先するというわけにも行かないのが、現代都市部の現実です。
老人ケア施設の社会的必要性も考慮して冷静な行動と判断をして欲しいと思います。 
 コメンテーター 
清水 煬二 コメンテーターの清水 です。

突然、3部屋の採光が奪われるという事実を突きつけられての心配やショックは、大変なものだと思います。多くの解説員がアドバイスをしてくれました。

同じマンションに住んでいてさえ、お互いにコミニケーションを取りながら守らなければならないところと認め合うところを全体で話し合っていく必要があります。
隣地同士でも同じことがいえるでしょう。
北西部に建つということですが、相手からみれば日当りのよい南東に14階建てがあるということです。将来はマンションの南東部でさえ建てられる可能性も権利もあるということです。

今回の場合は、解説にもありますように、役所の許可も降りていないかも知れませんし、少なくともまだお互いの主張部分の調整余地がありそうです。

歩み寄りはしなくても、お互いに話し合いの場は持つようにしませんとかえってこじれることになるかも知れません。
失望している方にも、声をかけて励ましながら冷静にみなさんが団結することが必要でしょう。
詳しい専門家にも相談し、役所を巻き込んで話し合いを続けていくのが良いかと思います。
 事務局から 
  荻原 幸雄 マンションを購入なさる方にご注意申し上げます。
購入なさるマンションの近隣地に同程度の空き地若しくは低層の古い建物がある場合は購入しようと思うマンションの規模と同程度の建築物が将来建つものとして購入してください。
通風採光日影など将来の購入するマンションの近隣の環境が永続的に担保できる状況であるか否かは購入には大切な判断です。マンション販売業者はプロなのですからそれはわかって販売しているのでしょうが、ここが商業主義の悪いところでデメリットはパンフレットには記載しませんからその認識のない購入者は将来困ることになります。

さて、今回の相談ですが、同マンションに住まわれている施主は長期的な視点で考えていなかったのだと推察します。何故なら、マンションの資産価値が下がることを自ら望まないでしょうし、今回のように将来トラブルになるマンションに渦中の人物となる施主が住むとは思えないからです。相続対策で仕方なくという側面もあろうかと思いますので、冷静に判断してください。
アドバイスするとするならば、この建物が税金の補助を受ける高層老人ケア施設という点です。
施主がどこに近隣地の計画を持ち込んだかはわかりませんが、もし、計画を設計事務所に持ち込んだ計画なら変更の可能性は十分にあります。
例えば、私がこのような計画を依頼された場合、税金を利用する意味を先ず施主に確り説明します。「税金を使うのですから、それを出していただいているのはあなたやわたし、そして近隣の市民でもある。当然、できうる範囲で最大限の配慮をすべきである。」と説き伏せます。
それが理解できる施主でしたら設計監理を受託しますが、その配慮を受け入れない依頼者でしたら受託しません。

しかし、施主が不動産屋やデベロッパーに話を持ち込んだ場合は先ず、そのような配慮はしないでしょう。また、このような場合の設計事務所は下請けなので施主が不動産屋やデベロッパーの言われるままに図面を引くだけですのでその配慮は無いと考えた方がいいと思います。

信頼できる建築士にその計画で配慮できる範囲を可能性として確認することが大切です。
その可能性を福祉課等に持ち込んで考慮願うことは可能だと思いますので、冷静にご判断されることを望みます。
相談者お礼状 
 相談者お礼状 たくさんのアドバイスどうも有り難うございました。
やはりしっかりした弁護士の先生をつけて
動いていくのが賢明と思いました。
参考にします。感謝いたします。
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