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一般社団法人建築よろず相談支援機構

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〒181-0001 東京都三鷹市井の頭3丁目12番11号

よろずWEB相談HEADLINE

No.0629 営業マンの説明は正しい?

 相談概要 [氏名] A.Y
[居住住所] 広島県安芸郡
[相談建物予定地] 広島県安芸郡
[職業] 会社員
[年齢] 39
[男性] on
[構造] 木造(在来工法)
[設計者はどなたに依頼しますか?] ハウスメーカーの建築士
[何階建て] 2
[延べ面積m2]
[延べ面積坪] 36
[工事請負金額] 2200
[様態] 注文建築
[施工業者はどちらに依頼しますか?] ハウスメーカー
 相談内容 現在、木造軸組(+パネル)工法を前提として、大手住宅メーカー2社を含めた数社から見積りを取って絞込みをしている段階なのですが、ここに来て欠陥住宅問題も含めて色々なことが気になり出し、迷いが生じてきたところでした。ここでこのサイトを発見できたのも天の導きかもしれません。色々と気になる点はあるのですが、先ずは以下についてお尋ねしたいと思います。

@ 「集成材は、日本では比較的歴史が浅く実績がまだないから、耐久性に不安がある(剥離したりする恐れがある)。少なくとも、湿気が来やすい家の土台部分には使用してはいけない。」と力説される営業マンがいらっしゃるのですが、そうなのでしょうか。

A 基礎部分の通気に関して、各社揃って基礎パッキン工法を採用されており、昔ながらの通気口は見られなくなっています。説明では「360度通気で死角がない」とのことなのですが、これで問題ないのでしょうか。素人考えでは、基礎パッキンだけで換気できるのは基礎内の上層部分のみで、下層には空気が淀む(湿った空気が淀めば結露する)ような気もするのですが。

B 「外断熱工法は技術的に未熟である(特に外壁支持構造の耐久性に問題がある)」とのことで、内断熱工法で考えています。断熱材としてグラスウールを採用されている会社は「ロックウールでは燃焼時に毒性のあるガスが出る恐れがある」と説明されているのですが、そうなのでしょうか。

C 内断熱工法では必然的に壁内結露対策が必要になると聞いていますが、概ね外壁材のすぐ内側に通気層を設けて自然換気により湿気を排出する方法が取られているようです(大手メーカーは二層通気とされたりでバリエーションはあるようですが)。
ただ、通気層といっても狭いものですし、風の入り口には雨水防止のカバーが付いていたりで、それほどの換気効果はないのではないかと思われます。逆に、通気が多くなると暖かく湿った空気も入ってきて、却って結露の原因になるのではないかとも思われます。これで壁内結露対策としては大丈夫なのでしょうか。

D 壁内結露対策が特に必要なのは高気密高断熱住宅のようですが、広島のような冬に数日も氷点下には気温が下がらない地域で、そこまでの性能は必要でしょうか。寒冷地でなくても、それだけの投資をして高気密高断熱にした温熱効果を体感できるのでしょうか。

E 大きな(といっても3×4m程度ですが)吹き抜けのある家にしたいと考えているのですが、木造軸組工法で必要な強度は得られるのでしょうか(構造材は梁として露出する予定)。「どうしても無理が出る」ということなら、工法を変えるか吹き抜けを止めるしかないのでしょうか。

以上、宜しくお願い致します。
 yorozuの感想 非常に有意義な取組みと思います。「欠陥住宅」をキーワードに検索とリンク探索を繰り返して、偶然たどり着きました。もっと世の中に知られるべきもののように思います。
アドバイザー 
山口 雅克 解説員の山口です。

 集成材:構造用集成材で土台に使っても良い樹種であれば問題はないはずですが、接着剤の耐用年数に疑問をはさみ出すと100%とは私は言い切れません。ただ、湿気のきやすい設計になっているのでしょうか。

 基礎パッキン:従来の通気口よりは良いと考えて採用しています。死角がないとの言い方は言い過ぎですが、基礎外周部以外の部分の設計の仕方でかなり死角がないようになります。

 ロックウール:ガスがでないわけではありませんが、断熱材に火が廻る前に避難できる方法を選択するのがよいと思います。

 壁内結露:どのような設計であれ、通気量の確保と丁寧な施工がポイントです。断熱材の丁寧な施工は結構現場サイドでは難しいもののようです。雑な施工が多いのです。

 高気密高断熱:温熱効果を体感できることは間違いありません。しかし、リスクもあります。適正な換気設計と極丁寧な施工が要求されます。私の場合は氷点下になるようなことが少ないところでしか仕事をしていませんのでこの方法は採用していません。

 大きな吹き抜け:水平剛性(2階床部分の固め方)と吹抜部分外壁側の風に対する配慮をして設計すれば問題ありません。
 コメンテーター 
清水 煬二 コメンテーターの清水 です。

 よく研究されていると思いますし、疑問も的を突いているので感心しました。

・ 接着剤は良くなったとずっと昔から言われ続けているような気がします。
 それは、事実でしょうが、湿気が多い部分では個人的な見解としては、まだ信じきれていません。最大手のハウスメーカーの25年前の集成材の柱が、雨漏れのせいもあり、完全に膨れて接着剤が剥がれてしまっているのを見たことがあるからかも知れません。
 10年やそこらは全く問題ないのでしょうが、これからの30年、40年でも湿気があっても本当に大丈夫と誰も言い切れないからです。

・ 床下換気口よりは、空気の流れも良いですし、死角も少ないのは事実です。床下に頭を突っ込めばこれは実感できます。基礎の強度を考えても有利です。
 但し、パッキンの耐久性が本当にメーカーの実験通りもってくれるのか、その他の不安もありますが、総合的に見れば私もお勧めしています。

・外断熱工法は技術的に未熟である点の指摘内容は、正しいと思います。
 (それでも、私は正しいチェックを前提に、可能なら外張断熱工法をどちらかと言えばお勧めしますが)

・グラスウールと比べて燃焼時のガスの点でロックウールを辞めるというのなら、他の建材すべてを見直す方が先だとは思います。

・通気層の厚みは、空気が移動するには18ミリ以上必要と学者に言われていますが、正しく工事を行えば、水切りや防虫カバーが付いていても役に立ちます。ご心配の夏の逆転結露ですが、これによる被害は今まで発生しておらず、問題にもなっていません。理由はいくつかありますが、指摘されていない大きな理由のひとつは夏の外壁内は、温度がかなり上がるためでしょう。
 心配なのは、解説員のコメントにもあるように、内部充愼断熱の場合、防湿工事が非常に難しく、冬の外壁内部結露を防ぐことができないということです。

・温熱効果は冬でもストーブが要らない地域は別ですが、そうでなければ、効果はあります。
 (外張り断熱にすれば、家中が驚くほど少ない暖房で暖かさを維持できます。)
 また、温暖な地域は夏の冷房効果を考えると、しっかり断熱工事を行うべきです。
 高気密の場合は、解説員のコメントに注意して下さい。

いずれにしても、どんなに良さそうな仕様に決めても、正しい工事が実際に行われるのかどうかということが大切です。断熱方法や床下通気方法はどちらでも正しく行われれば、本来問題はないということを忘れないで下さい。
 事務局から 
  荻原 幸雄 大変、勉強なさっていると思います。
集成材は接着材が強力なので木材の本来もっているそりや曲がりをその力で矯正していますので、木材に内部応力が存在することになります。通常では問題がないのですが、湿気や雨水でその応力が増大され、接着剤と木材の表面が剥離を起こす場合もあります。この点、施工が確りされていれば問題はありませんが、家をつくる職人さんが、その性質をしらないとこの方が問題のような気がします。

パッキン工法も在来の基礎換気口の工法も適切に施工されていれば問題はありません。
在来の基礎換気口の工法は基礎の補強を確りすればいいですし、パッキン工法は土台が浮きますので、アンカーボルトの締め付けが在来より重要になります。パッキンの全方位というのは事実です。通気もよく取れています。逆に言えば在来より1階床の断熱を考慮しないと冬は寒いくらいです。

どのような工法でもメリット、デメリットが存在します。大切なのはその理論を実際に造る職人さんに伝える努力をしているか否かだと思います。
相談者お礼状 
 相談者お礼状 懇切丁寧なご回答を頂きまして有難うございました。結局は、大手メーカーであろうが工務店であろうが、現場での丁寧な施工こそが鍵であることがよく分かりました。そろそろどの会社に発注するか決めなければならないのですが、現場の施工管理体制がしっかりしている(と信じることができる)ところを選びたいと思います。お忙しい中、皆さん本当に有難うございました。
 その後  
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