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一般社団法人建築よろず相談支援機構

TEL. 0422-24-8768

〒181-0001 東京都三鷹市井の頭3丁目12番11号

よろずWEB相談HEADLINE

No.0624 外、内断熱の違い

 相談概要 [氏名] K.M
[居住住所]  香川県善通寺市
[相談建物予定地]  徳島県徳島市
[職業] 勤務医
[年齢] 33
[男性] on
[構造] 木造(2X4工法)
[設計者はどなたに依頼しますか?]   建設会社の建築士
[何階建て]   2
[延べ面積m2]
[延べ面積坪]   40
[工事請負金額]  2000
[様態]  注文建築
[施工業者はどちらに依頼しますか?]   大工(工務店)
 相談内容 4LDK,2階建の新築につき検討中です。耐震性の点から輸入住宅に興味をもち勉強中です。

質問1.最近、外断熱がよいとする本を多数みかけますが2x4で外断熱にした場合、今まで断熱剤を充填していた空間はどうなるのでしょうか?(むきだしのまま?それとも空間としての残ってしまうのか?)

質問2.内断熱の場合でも通気層を設ければ結露ができてもそこで乾燥され問題ないとする意見と、逆に通気層の部分では冷たい外気が通るためそこで結露ができるためよくないとする意見がありますが実際のところは如何なものでしょうか?

質問3.高気密、高断熱の建物の場合、石油ファンヒターは良くないと効きますが計画換気システムにした場合でもダメなのでしょうか?

以上の点につき、恐れ入りますが御教示宜しくお願いたします。
 yorozuの感想 無料ということで気軽に相談にのってもらえ、勉強になります。
アドバイザー 
木津田秀雄 解説員の木津田です。

 最近私の事務所への相談の中でも、外断熱に関心を持つ人が増えてきましたね。ただ断熱工法の研究自体が北米やヨーロッパなどを経て北海道や東北などの北側で進められた来たことから、厳冬期が少ない温暖地での高断熱住宅についてはまだまだ的確な回答が出てきていない状態です。(それぞれの人がそれぞれの立場で意見は言っていますが)また2×4自体も高湿度の温暖地ではどうなのかということも検討する必要があります。

・外断熱の場合の壁内空間
 外断熱にした場合に壁内は基本的に「空」になります。これは在来でも2×4でも同じです。その空間をどう使うかは設計次第です。実際には電気配線なども入ってますし、仕上げの問題もあります。

・充填断熱の通気層について
 吸放湿性のないグラスウールなどの繊維系の断熱材では、防湿層(ビニールシート)を室内側に設けることが壁内結露を防ぐために必須となります。その防湿層を越えて、断熱層に室内の水蒸気が入った場合の排湿のために通気層を取りなさいというのが、国土交通省の次世代省エネ基準などの考え方です。基本的には排湿のための通気層という考え方になります。

 通気層に冷気が入ることでの結露を心配すると、通気層を確保しないという事になりますから、逆に排湿の処理を考慮する必要が生じます。ただ実際にどの程度の水蒸気が室内から出てゆくのか、温暖地での検証はまだ確立されていません。私の個人的な意見では、温暖地では吸放湿性のある断熱材を使用して、結露域を超えた場合でもある程度の湿気へのバッファを持つことで対処し、通気層はあえて設けないという方向で考え始めています。(構造用合板を使用せずに、外壁側の透湿抵抗を下げる)

 2×4の場合には、外壁側に構造用合板が必ず施工されますから、その部分の透湿抵抗などを含めて水蒸気の移動を考える必要がありますので、一概にこの方法が良いとは言えません。

・石油ファンヒータ
 これから新築する住宅では、かならずFF式(給排気を直接ダクトで外気から取るタイプ)にしてください。室内に汚れた排気がでると健康問題が発生します。
善養寺 幸子 解説員の善養寺です。

 うちの事務所では、鉄筋コンクリート造も木造も外断熱に切り換えています。
 外断熱工法はハウスメーカーも採用しているところが出てきていますが、それぞれの考え方で施工されており、まだ、実施されて年数が浅いのでどの様な工法がどの様な結果(結露、カビ、性能の低下など)を出すのが検証されておらず、正直の所、これがベストと言うこと言えません。

 ただ、私の所で外断熱に切り換えた理由として、グラスウールによる充填断熱では温暖な地域に含まれる東京ですら、5年程度で結露によるカビが発生している事を知ったからです。人間が生活する以上蒸気は発生します。どうしても水廻りは蒸気が大量に発生する上に、北側など冷え込む部分に配置されることが多く、壁内結露が生じやすくなってしまいます。その為、高気密と言う断熱層に蒸気が入らないように気密バリアを行う施工も出てきましたが、現場監理をしていて思うことは様々な職種の職人が出入りしそれぞれのパートだけを見て仕事をしていくことが多く、高気密、高断熱の施工の細部まで全員に気を払わせ、施工させる事は難しいと言うのが実感です。

 その為、充填断熱で内壁際に気密バリアを設けることは、スイッチボックス、コンセントボックス、ダウンライト、その他、壁に取り付ける全ての工事に絡みますので、気密欠損の補修を強いなければならないことになります。この不況期に工賃も下げられた上に、手間を増やされては喜んで仕事をしてはくれない=施工精度は上がらないでしょう。ですから、私としては出来るだけ手間を増やさず、高気密高断熱を実現させ、施工ミスや監理ミスのリスクを下げるために外断熱に切り換えました。外断熱なら設備などの絡んでくる数は大幅に減ります。少ない部分に神経を注がせれば良いのですから、まだ楽です。

 風呂の好きな人種ですし、断熱化(高断熱に関わらず)する事で結露の問題は必ずつきまといます。断熱材内の結露を完全に防ぐことは、人間の手による建築である以上、完璧とは行かないのではないでしょうか。ですから、何かあった時でも主要構造体の外側でカビたり朽ちたりするのなら、手の施しようがあるだろうと、10年以上主要構造体を保証しなければならない責任上、保険として外断熱に切り換えたというのが私の考えです。

 ツーバイフォーは外断熱による高気密を作りやすい形体です。空間になった壁内は自由に使われると良いでしょう。ツーバイフォーでも充填断熱をした場合は、内壁側に気密バリアをする必要があります。石膏ボートでは気密バリアになりません。
 ツーバイフォーで充填断熱をして耐力壁の内側の外壁側に空気層を設けても、耐力壁の外側に空気層を設けても結露防止という目的では何の意味もありません。
 内壁内に下手に空間を設けると、逆に結露が多くなったりもします。
 調湿性の大きい断熱材を大量に使い、結露域まで湿気を到達させないと言う方法もありますが、どの程度許容量があるのかは判りません。
 ただ、何にせよしっかりした知識と経験のある建築士に相談された方が良いでしょう。にわか勉強の素人判断で、経験もない施工業者に高気密高断熱、ましてや外断熱工事はトラブルのものとです。

 断熱材が入ってきてからの従来の工法も問題だらけですが、高断熱工法も難しいものです。従来の監理に足し、高気密高断熱の施工監理は特に神経を使います。
 2,3回見に行くような部分監理では到底まともな物は出来ません。
 最近は、担当職人全員集めて着手前に1時間以上の講義集会をしてから着工するようにしています。各職人自身が施工の意味の知識がないと良い施工は出来ません。
 段々建築技術の難易度は上がっており、専門的知識が大量に必要となっています。
 信頼できる良きプロの相談相手を得ることをお薦めします。その上で、良いとこ取りのマイホームを検討されてはいかがでしょうか。

 私のところでは、在来軸組工法+パネル耐力壁+外断熱+遮熱工法としています。
 軸組の自由度とねばりの強さ、パネルの高耐力と気密性を活用し良いとこ取りで『進化する日本建築』を目指しています。設計監理業を専業とする設計事務所はそれぞれ技術を持っています。メーカーや大工さんとは違った知識と自由度を備えています。
 答えが解らなくて、迷ったり悩んだりする様でしたら、選択肢に巾のある設計事務所で始めるのが良いような気がします。
清水 煬二  解説員の清水 です。

外断熱にすると、他の解説員にもあるように、壁の中を剥き出しにすることもできますが、嫌であればする必要はありません。
普通の仕上げにすれば良いのです。通常はそうしますが、剥き出しもできますし、壁厚を利用した収納も可能です。

通気層は、外壁内部に水蒸気が入ったとき、外へ出す意味で必要です。
但し、2×4工法のように外壁を合板で囲うと、合板に使われている接着剤が水蒸気の流れを著しく悪くします。そのため、日本の場合は期待しないほうが良いでしょう。
カナダでは、合板を横使いして、合板同士の間をすこし空けますので、こうすれば通気層の意味が出ます。日本では、構造強度を優先するということで、これは良くないとされていて、完全に外壁内はふさがれるので期待できないのです。

内部充愼でも、完全に防湿工事を行うことができれば良いのですが、他の解説者にもあるように、非常に処理が難しいのです。
また、防湿テープを使っても、何十年も劣化しないかというと、そうではありません。
水蒸気は空気より小さい分子なので、気密測定をしてOKでも、安心できないのです。

カナダでは、断熱材専門の職人が日本で通常使われている防湿紙付きのグラスウールではなく、グラスウールと防湿フィルムを別々に工事します。役所の検査もこのためだけにきます。
合格しないと次に進めません。日本とは意識が違いすぎます。

仮に正しく行っても、完成後エアコンの穴を外壁に開けてしまっては、意味がありません。
その場合は、事前に必ずパイプを入れ、防湿処理をしてもらっています。

私は、日本では、2×4工法で寒冷地以外では、この内部充愼の断熱と防湿工事がほぼ完全に行われているのを、有名メーカーでも見たことがありません。

おそらく、四国でも業者任せでは完全な工事を望めないでしょう。
結露や、結露による構造体の腐朽で耐久性の低下を防ぎ、快適性という面でも気にする人には、ぜひ外断熱をおすすめしていますが、問題があります。

ひとことでいうと業者が、正しい工事方法や注意点を本当に知っているのかということです。
例えば外壁を長い釘で支える為、本当に外壁の自重に長年耐えてくれるかという不安があります。
2×4工法では、特にこの釘を正確に外壁の細い立て枠に打ち込んでくれるのかということです。
通常の2×4工法でも、この釘がずれてそのままにされているのを良く見かけます。
ひどい場合は、縦に1メートル以上も続けて釘がはずれています。
その他、知らないといくつかの問題が起こります。

どの方法をとられてもやはり、安心するには、正しい施工法まで良く知っている監理者に相談するか見てもらうしかありません。

石油ファンヒーターは、大量の水蒸気を発生するので良くないのですが、計画換気をしていれば、問題ありません。欧米は暖炉と煙突で換気を自然に行っています。しかし、この24時間換気も、実はいろいろ問題はあるのですが。 
 コメンテーター 
小松原 敬 コメンテーターの小松原です。

結露は、「室内の暖かく湿った空気」が、「外気で冷やされた場所」(躯体の外気で冷やされる側、ガラス窓等)に接することでできます。躯体内の結露を防ぐには

 1 躯体内に室内の空気が侵入するのを防ぐ  <ビニールで覆う>
 2 侵入した空気(湿気)を排出(処理)する <通気する・吸湿する等>
 3 躯体が外気に冷やされないようにする   <外断熱>

この3つの方法があります。1 は在来工法では完全に施工するのは難しいので1と2を併用することも多いです。

2×4は在来工法と構造が違うので、ちょっと考えがかわります。
パネル状の壁になり、上下左右が密閉されるので比較的 1 がやりやすいです。
通気工法は在来工法の考え方ではできません。
外断熱にはできますが、2×6で外断熱にすると壁厚がかなり厚くなってサッシなどとのとりあいが大変になります。

現在では普通の家でも、アルミサッシと石膏ボードで固めてあるので気密性が高いですね。計画換気でも、室内に燃焼ガスを放出することを前提に計算されてはいないです。(あまり換気を過剰にしては高断熱の意味がないです)燃焼ガスを放出する暖房は避けたほうが賢明です。
(FF式や煙突付きの暖炉なら大丈夫です)

2×4と在来工法では構造が違うので、結露防止の考え方も若干変わります。また、断熱のやり方はそれぞれ特徴があって、私達の中でも意見は分かれます。温暖な場所と寒冷地ではおのずと断熱の必要性能や結露の程度もかわります。お住まいの土地の気候にあわせて考えていく事が大事です。

また、蛇足ながら在来工法でもちゃんと設計すれば耐震性能は2×4には劣りません。2×4は開口部が制限されるので、いろいろな工法も検討されると良いと思います。
 事務局から 
  荻原 幸雄 解説委員の見解でも解かるとおり、いろいろな捕らえ方があります。
それほど、実績が少ないので理論的な話が多くなることは仕方ないことだと思います。
極論すれば理論としては外断熱がいいのは明確です。
しかし、それならば何故、もっと早く、外断熱にならなかったか?という指摘もあります。
そのとおりです。では何故、理論としていいものが施工されなかったのでしょうか?
実は、マンションやビルなどの屋上のある断熱は以前から外断熱が内断熱より優れていることで現在はほとんど外断熱の屋根になっています。最近こそ、外壁も外断熱になるケースもありますが、それはまだ、少ないです。何故だと思いますか?

そのキーワードは重力と振動とメンテナンスにあります。
この場合はビルについて記述します。
屋上の外断熱は躯体のコンクリートに敷き詰めるだけですからなんら問題はありません。
コンクリートなので振動の剛性にも問題はありません。メンテナンスも屋上に上がれれば後々作業は楽です。よって屋上は理論とおり外断熱が実現されています。
ビルの外壁はどうでしょうか?

重力に耐えるには断熱材が落ちないように支える必要があります。また、繰り返される振動(中規模地震や台風、車の振動等)に対しても配慮が必要です。もし、何か問題があった場合はビルのような高い建物は足場を架けるだけで何百何千万もの費用がかかります。リスクが大きいといえます。

そのリスクを回避するための施工精度を上げることは今度はコストに跳ね返ります。
このようにメンテナンスに大きな問題を抱えているからです。

では住宅の場合はどうでしょうか?
メンテナンスの足場の問題はかなり軽減されます。コストを上げずにリスクを回避することは低層の建物には可能性があると言えます。しかし、リスクを回避するには解説委員の記述にもあるように大変な労力がかかるものです。

現場で1時間くらい職人に説明しても到底理解してもらえるものでもありません。この建築界全体で底上げをして外断熱の教育をしていくことこそ大切なことであると考えます。まだ、その途上である。ということを理解して採用してください。

途上とは見えないリスク(業界の成熟度も含めて)を含めてクライアントが自己責任で採用するということになろうかと思います。
相談者お礼状 
 相談者お礼状 前略
この度はご丁寧な回答を頂き誠にありがとうございました。
実際に現場で仕事をされている方々の率直な意見を伺えて大変参考になりました。
理論上の意見と現実的な問題点が良く分かりました。
本当に有り難うございました。
                         草々
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