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一般社団法人建築よろず相談支援機構

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よろずWEB相談HEADLINE

No.0617 住宅性能表示について

 相談概要 [氏名] I.T
[居住住所] 大阪府枚方市
[相談建物予定地] 兵庫県西宮市
[職業] 会社員
[年齢] 32
[男性] on
[構造] 木造(在来工法)
[設計者はどなたに依頼しますか?] 専業の建築設計事務所
[何階建て] 2
[延べ面積m2] 108.895
[延べ面積坪]
[工事請負金額] 4000
[様態] 建築条件付建売住宅(売建住宅)
[施工業者はどちらに依頼しますか?] 建設会社
[お名前] I産業建設(株)
 相談内容 質問:住宅性能表示書の交付について

 兵庫県西宮市に建築条件付き土地を購入し、新築一戸建てを購入しようとしています。
 先日、施工予定業者の物件を参考に見させて頂きましたが、とても良い施工をしているとは思えませんでした。

1.ホールダウン金物の施工について
・通し柱の背われ部分に取りつけられている。
・土台に穴を空けているのだが、穴がずれている。
 こんな感じです。
|  |
| C
|  |
・ホールダウン金物が垂直につけられていない。

 明らかに欠陥と思われる箇所があり、とても不安を覚えました。参考に見させていただいた物件も(財)住宅保障機構の10年保障を受けているとの事でした。これから購入しようとしている物件も10年保障なのですが、この10年保障の現場審査だけではダメだと感じました。

 そこで、雑誌等で、住宅性能表示制度の交付というものを知り、これはさらに細かい現場審査になるので、安心できると思い、売主に対して住宅性能表示の交付(設計・施工共)をお願いした所、追加で600万程度かかると言われました。

 消費者の立場からすれば、この金額はとても払えるものではなく、この制度は現実的に利用できない様に思えます。
 欠陥住宅のない、品質の良い家を購入したいというのが目的です。
ですから、この住宅能表示制度を利用したいのですが、何か良い方法(アドバイス)があれば教えて頂けないでしょうか?

 また、建築条件付き土地で、第三者足り得る専業建築設計事務所に現場監理を依頼し、図面どおり建設する事を確認監視してもらう事は可能でしょうか?住宅性能表示を依頼するのではなく、こちらを業者に依頼する方がベストなのでしょうか?
 予算の都合もあり、どちらがリーズナブルで良い方法(無論、両方がベストなのでしょうが・・)なのでしょうか?

また、欠陥住宅にしないための良い知恵があれば、教えて下さい。
 yorozuの感想 とても良いHPだと思います。戸建購入を検討し始めて、つくづくモラルのない業界だとシロウトながら感じてしまいます。
もっと、より良い住宅を供給できるよう、このようなHPが増えることを切望します。
アドバイザー 
山口 雅克 解説員の山口です。

 性能表示とはいえ現場の審査は厳密なものではありません。数回の現場検査があるだけです。10年保証は2回の審査のみ。
 私は現在、建主から依頼を受けて、建築条件付き土地の物件で設計監理をしています。業者に相談をしたらいかがですか。可能だと思います。

 監理だけ依頼するのも可能かもしれませんが、受けてくれる専業の設計事務所があるのかどうかはわかりませんよ。設計内容がしっかりしていないと監理もやりづらい部分があります。
久米 能子  久米と申します。

 山口解説委員の言われるように、しっかりした施工とするために、性能表示制度を利用されるのはメリットは少ないと思います。

 どうしてもその土地での建築をご希望ならば、まず、販売をしている不動産業者に建築条件を外せないかと掛け合ってみましょう。そのとき、率直にご覧になった工事の内容に対する感想を述べられるといいと思います。
 建築条件付の施工業者をはずすことは確かに難しいことですが、出来ないことではありません。販売業者と施工業者の力関係にもよります。現実に、先日、神戸の土地で、建築条件を外すなら購入すると交渉した土地がありました。翌日すぐに、外してもいいという返事がきました。(笑)足元を見るわけではありませんが、不動産が売りにくい時代にあって、買ってくれそうな人と交渉を全くしないということも無いのではないかと思います。

 建築条件をはずすことをまずお考え下さいと申し上げたのは、そのような荒い施工を行っている施工業者では、如何に監理を綿密にしたとしても、結果に限界があるからです。どんなに厳しい監理をしても、実際に腕が下手すぎたり、意識が低すぎたりしていると、その業者を教育するだけで、監理が終わってしまうようなものなのです。また、監理者は一日中、毎日現場にくっついて職人の仕事を見守るわけには行かないので、結局、不良個所を見つけては、手直しさせるという部分も多くでてきます。初めからきちんと施工されたものと、間違って手直しをあちこちしたものと、どちらが安心できるかはご説明するまでも無いでしょう。しかも、そのようなことが繰り返されると、工期がどんどん延びていってしまいます。

 ですから、まず、安心して契約できると思う、いい業者を選ぶことが一番です。工事現場をご覧にいかれたのは賢明でしたね。その工事業者はそのような現場をI.Tさんに見せても、素人だからわからないとでも思ったのでしょうか。そういう姿勢自体も問題だと思います。

 そのつぎに、監理者をきちんと選ばれることが肝要でしょう。
 ただ、設計は依頼せず監理だけというのは、設計そのものに問題などがあっても対処しにくかったりする場合もあるかとおもいます。

 施工業者の悪口(?)を書いてしまったかもしれませんが、建築は人の手によって造られるものなので、施工不良などの問題が起こるのは、モラルの問題だけではありません。中には、一生懸命いい仕事をしようとやっていても、知らなかったり、また、つい間違えたり、ということはでてきます。このごろのように、安くて工期も短くて、という建築現場が多くなると、職人さんたちの気持ちにも余裕がなくなるというところもあります。

 また、現場では、絵に描いたように完璧で綺麗な作業を全て行うということはできません。工場生産品ではないことを考えると、許容範囲もあることを覚えておいていただければと思います。

 一生住む家ですから、後悔の無いように頑張ってください。
木津田秀雄  相談員の木津田です。

 「住宅性能表示制度」についてですが、「住宅性能表示制度」の最低のレベル1は建築基準法と同じなので、基本的には今建てようとしている家と同じです。すなわち評価をオールレベル1とするのであれば、建築費は増えることはありません。

 また申請費用や準備するための費用も600万円もかかりません。ただ木造2階建てだと、「住宅性能表示制度」を受けるために簡易な構造計算が必要になるので手間は増えます。また温熱環境などについても手間がかかります。それは設計段階で必要な事ですので、設計費が高くなるのなら理解できます。より上位のレベルにするなら60万円程度は設計費用をプラスする必要があると思います。全ての項目でレベル1でよければ、20万円くらいのプラスになるのではないでしょうか。そもそもこのような形態の販売の場合、設計費用も明確になっていないでしょうから難しい議論ですが。(ちなみに上記の価格は、設計監理費用としてきちんと13%程度の費用をいただいている場合です)

 「住宅性能表示制度」はあくまで住宅の性能を客観的に評価して表示するためのシステムですから、それを施工者がきちんとしていることを前提とした検査になりますし、手直しの確認まではできていないのが現状ではないかと思います。実際私の事務所で「住宅性能表示制度」を利用したハウスメーカーの家の「工事チェック」を行ないましたが、準耐力壁の検査での不具合は指摘されていませんでしたし、検査日にできていないところは、原則的には再度現場確認することはありません。

 欠陥住宅にならないための方法として「住宅性能表示制度」を利用するにはちょっと無理があるかと思います。また他の第三者に監理させるには、まず図面がきちんと揃っている必要があります。それがないと「何を契約したのか、どう施工するのか」が不明なまま検査はできません。また施工者と監理を依頼する事務所とで、「監理者の指示に速やかにしたがう」との内容の覚え書きでもしておく必要があります。そうしないと、横から口出しするだけで施工者は言うことを聞かない場合もあります。このような体制がとれたとして、第三者に「工事チェック」を頼めば30万円から50万円程度はかかると思います。(これは私が業務でやった場合の費用です)

 また本来行政に提出する「建築確認申請」の監理者の欄に、依頼する監理者の名前を書いてもらうことが必要です。そうすると、法律的にもきちんとした監理者になることが可能です。行政に出す書類では、工務店などの身内の監理者を書いて、別に施主が監理者を選んでくるっておかしいですよね。

 それからホールダウン金物がまっすぐでないとのことですが、基礎と柱を緊結できればよいという金物ですから、少し歪んでいるくらいなら問題ありません。 
古賀 保彦  埼玉の古賀と申します。

性能表示は目標とする等級によって設計・工事・コストが変わります。「良い品質」には主観に関わる部分がありますので(ex.構造の安全度、音、バリアフリーに対する考え方・・・)、どのような性能を求めるのかという所を押さえてから取り組まれた方が良いでしょう。ご検討の建物標準仕様と目標等級の差が大きいほどコストアップ額も大きくなります。また、その他申請書類作成・手数料にも必要になってきます。内容・金額の根拠などについてユーザーと設計者・施工者間でキチンと打合せできる事が採用の前提になるかと思います。

第三者による工事監理の件ですが、監理の根拠となる設計図書の整備状況によっては監理自体が不可能な事もありえます。また、施工者が第三者監理を受け入れるか否かはその会社の運営方針にもよります。施工者へ設計図書の整備状況や受け入れ可否を事前確認された上で可能であれば、監理のできる事務所を探されてみてはいかがでしょうか。ただし、無理にこれを行うと「できる」「できない」や「契約に入ってない」とか新たなトラブルに発展する可能もありますので、関係者が事前に誠実に話し合える環境ができるかどうかにかかってくるかと思います。

いずれにしてもご購入前の様子なので相手方とじっくり話し合われてみてはいかがでしょうか。次の展開が見込めそうもなければご再考の選択肢もあると思いますので、頑張ってみてください。 
 小松原 敬 解説委員の小松原です。

600万ですか ^^; 翻訳すると「面倒だからやりたくない」という意味でしょうか?ほんとに600万かかるとしたら、現況がよっぽど手抜だとしか考えられませんね。性能表示には以下のような項目があります。

構造の安定:    地震や風等の力が加わった時の建物全体の強さ
火災時の安全:    火災が発生した場合の避難のしやすさや建物の燃えにくさ
劣化の軽減:    建物の劣化(木材の腐食等)を防止、軽減するための対策
維持管理への配慮: 給排水管とガス管の日常における維持管理のしやすさ
温熱環境:     暖冷房時の省エネルギーの程度
空気環境:     内装材のホルムアルデヒド放散量の少なさや換気の方法
光・視環境:    開口部の面積の大きさや位置
音環境:      居室の外壁開口部に使用されるサッシの遮音性能
高齢者等への配慮: 加齢等に伴う身体機能が低下した時の移動のしやすさ
          や介助のしやすさ

これらは全部必要なものではありません。必要な項目だけ考えれば良いのです。
全部に高い等級を求めれば(相反する項目もありますし)建築費は高くなります。(600万というのもありえるでしょう)おっしゃるような用途から考えると「構造の安定性」のみで良いのではないでしょうか。構造の安定性の中にはまださらに項目があります。その項目の等級は主なものは1〜3に分類されます。等級1は基準法レベルで等級2はその1.25倍、等級3は1.5倍になります。等級2〜3にするにはそれなりの工夫が必要ですが、等級1ならごく普通に(真面目に)設計していればとれるレベルです。そこだけを重点にして申請すれば、申請にかかわる諸費用ですむのではないでしょうか。少々面倒な書類や図面を必要とするのと、検査の立会い、申請手数料などが必要ですが100万もかからないでしょう。明確な規定はないのですが、感覚的には50〜70万程度だと思います。

第3者の設計事務所に監理を頼むのも良いのですが、売主がそれを認めてなおかつ良い引き受け手がある場合はなかなかないものです。
また、設計がちゃんと出来てないものを監理しても充分に良いものにはならないと私は思います。 
 コメンテーター 
中川 雅実 コメンテーターの中川です。

 現在の欠陥住宅は、工事監理にあると考えます。
 設計施工は、設計者・工事監理者・工事施工者が同じ立場にいますので、チェックするどころかかばい合いが仲間の絆となっております。

 「住宅性能表示制度」は、工事監理がしっかり出来る第三者機関が出来れば必要なかった制度で、品確法は、瑕疵担保期間10年に制定された事だけ前進と考えます。(10年でも不十分な所はありますが。。。)
 「住宅性能表示制度」の検査は、工事中に3回と完成時にありますが、設計性能評価時(申請時)のレベルが、建設性能評価時(完成時)でそのレベルに到達していないときは、補修又はレベルを下げて完成させることになります。
 ここで問題に成るのは、性能評価検査委員の質です。検査対象の構造関係を良く知り、施工を良く知っている建築士又は役人であれば良いのですが、その部分はブラックボックスです。

 第三者の監理は、住宅メーカーであれば設計図書の枚数に係わらず、簡単に入っていけると考えます。(設計・施工で問題があれば、貴方の会社が設計したのでしょうと言えます。)
 厄介なのは、建築の申請だけを受注する設計事務所です。(通常代願事務所と言います)確認済書だけ受領すれば良く、施工会社にこびをうって経営を成り立たせていますので、欠陥の指摘など出来ませんしやれません。

 僕達は、建て主から直接仕事を依頼され、建て主の身方になって工事監理が出来る設計事務所が多くなるよう願っております。

 最後に、ホールダウン金物の施工にだけ目を向けては駄目です。
 ホールダウン金物が芯にあれば、基礎の鉄筋は芯にはこずどちらかに寄りますし、長いホールダウン金物は、引張力が働くまでのタイムロスがありますので高価が薄れます。

 5人の解説者+コメンテーターのアドバイスを参考にしていただき良い家を建てられることを祈っております。
 事務局から 
  荻原 幸雄 建築は現場単品生産の一発勝負です。これには【信頼関係】がなにより大切になります。
建築主-設計者
建築主-工事監理者
建築主-施工者(施工管理者)
工事監理者-施工管理者
行政検査員-工事監理及び施工管理者
購入者-販売者
このように信頼関係が正常に成り立つにはこれほどの信頼関係が構築していなければなりません。

しかし、現実はこの【信頼関係】を維持するには大変なことです。

「住宅性能表示制度」なる制度を作らなければならないほど建売住宅や条件付建売住宅の品質が悪かったことを意味しています。この反面「住宅性能表示制度」が建築的に質の高い建物には不要なものです。

「600万もかかる」という業者にはその性能を達成させるという気持ちも能力もないのでしょう、そのような業者に第三者の監理者をつけても、工事監理者-施工管理者との信頼関係が築けるか怪しいところです。

この場合は建築条件を外して、土地だけを購入し、住宅の得意な尚且つ工事監理能力のある建築家に依頼して設計監理を依頼して複数の施工業者から見積もりを取ってもらいましょう。

以上、ご参考にしてください。
相談者お礼状 
 相談者お礼状
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