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一般社団法人建築よろず相談支援機構

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よろずWEB相談HEADLINE

No.0587 木造(在来工法)の免震構造について

 相談概要 [氏名] K.K.
[居住住所] 愛知県日進市岩崎台
[相談建物予定地] 愛知県名古屋市名東区(未定)
[職業] 会社役員
[年齢] 36
[男性] on
[構造] 木造(在来工法)
[設計者はどなたに依頼しますか?] 専業の建築設計事務所
[何階建て] 2
[延べ面積m2]
[延べ面積坪] 60
[工事請負金額] 4000
[様態] 注文建築
[施工業者はどちらに依頼しますか?] 特に決めていない。
 相談内容 長女が小学校に入学する二年半後までの入居を前提に新居建築を考えている者です。免震構造についてお尋ねしたいので宜しくお願いいたしま
す。

9年程前に大手ハウスメーカーで実家を立て替えた際に「この部分は規格ですから」等の理由で融通がきかない点に疑問を抱き、自分の家を建てる際には経験と提案力に優れた設計士さんにお願いしようと考えているのですが、免震構造に興味があります。

大手住宅メーカーの何社かも大きく広告宣伝していますが、自由設計の注文住宅でも免震構造の採用は可能なのでしょうか? 可能であればどの程度のコストアップとなるのか? 免震構造にも関わらず実際に被災してしまって全半壊と判定されたダメージを受けてしまった場合には何らかの保証制度もしくは救済制度のようなものはあるのでしょうか?

ご教授のほどお願いいたします。
 yorozuの感想 今日、はじめてこのHPを発見しいきなり質問させていただきました。まだ全てのコンテンツは拝見していませんが、とても頼りになりそうだと直感いたしました。これからも活用させていただきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
アドバイザー 
善養寺 幸子 東京の善養寺です。

 免震構造をどうしてもと言うご要望であれば、設計事務所はオールマイティでありますから設計することはできるでしょう。しかし、一概に免震をすれば地震に強いというのは間違いです。免震構造と言うのはどちらかと言えば高層の建物(細長い高い建物)には有効です。建物揺れは地盤の種類、建物の形状、建物の構造によって違います。ですから、その様な諸条件を無視してただ取り付けても何の意味もない事もありえますし、逆に悪影響を及ぼすこともあります。

 軽い建物の場合は免震ゴムの様な構造の免震を行っても建物が浮き上がって何の意味もありません。軟弱地盤には重構造、固い地盤には軟構造などと言われます。
我が家も建てる際に構造設計者と相談しました。免震工法の話もしましたが、3層ではあまり費用対効果が期待できないと採用しませんでした。
 木造用の免震材や、低層用の免震材など様々なものが出回ってはいます。善し悪しの評価は実験値ですので、それなりのリスクもあります。保障が効くかどうかはその様な災害時に、そのメーカーが倒産したりしていなければ良いですが。
 ですから、そこにあまり捕らわれず、地震に強いトータルで安心できる設計を信頼きる建築士と共同でやっていったらいかがでしょうか?
 頑張ってください。
山口 雅克 解説員の山口です。

 実際に経験がありませんので、金額などはわかりませんが敷地のそばに軌道敷がある等の場合に免震構造を採用することがあるのを聞いています。建物のべた基礎の下に厚く樹脂材を敷き詰めて、その上に建築する方法です。地震にも効果がありますが、コストが結構かかるので採用しないことにしました。手許に資料が残っていませんので、紹介できないのが残念です。

 建物を設計する時に地震に対して考慮するのは、どの程度の地震に対して壊れないかですが、関東大震災よりやや大きめの地震が50年に一度の確率でするのか、100に一度くらいの確率でするのかなどで地震の力を想定します。
 大きな地震が明日あるのか、100年と1日後にあるのかわかりませんが、確率的なもので設定がしてあります。

 話が一寸ややこしくなりましたが、普通の住宅でしたら、建築基準法の規定より1.3〜1.5倍程度でバランスよく設計したら十分だと思います。他所の家が全て倒壊して自分の家だけが残っても辛いところがあると思います。(極論です、御容赦を)
法より1.3〜1.5倍程度強くした家はけっこうありますので、それでよろしいのではないでしょうか。
 関口 啓介   Kさん、こんにちは。愛知の関口と申します。

地元、I工務店などが、免震工法で全半壊保証をされておりますね。
旧建築基準法での大臣認定ですから、見直すべき部分もあるかもしれませんね。

私どもは、住まい造りとは、住まい手の文化の再構築だとも考えております。
Kさんもおっしゃられているように、規格にとらわれた、おしきせの住まいで、Kさんご家族が、本来人間として、営みを育む空間になりうるかは疑問です。

保証では、設計時の想定耐力が、基準になると思われます。通常計算での規定は、200ガルの2.5倍から3.5倍、およそ500ガルから700ガルと聞きます。
阪神大震災は800ガルを超える大規模な地震でありました。
それらを設計時に、住まい手の要望に基づいて設計するのも、設計事務所の役割であります。
免震工法を取り入れるのも、一つの方策でしょう。
ただし、ハウスメーカーのような保証(商品パッケージ)は難しいと思われます。
また、このような商品パッケージは、販売者に委ねられるところから、善養寺解説委員も言うように、被災時に、本当に保証が受けれるかどうかは、メーカーの体力と存続に委ねられます。
東南海地震、南海地震の予測が出ている以上、私たちも、充分に、それらを考慮しながら、住まい手の、生活及び、財産を守る、責任はあると考えます。 
 堀住 勝雄 免震住宅は装置をオープンで販売施工している会社がありますから注文住宅でも可能です。
コストに付いては装置により違いがあると思いますが設計施工共でおよそ300万円程度は増額するものと思われます。
補償制度は装置を作っている所にお訊ね下さい。

 問題を挙げるとすると、免震装置の高さがありますので、床を高くするか又は装置部分を掘り下げて半地下部分に納めるようにしなければなりません。将来の点検整備にも対応しておかなくてはいけません。また、横にスライドする余裕が敷地に必要です。
(仮に7mx9mの建物で周囲に40cmの空きを確保すると、12.8平米、(3.8坪)になります。) 
 久米 能子 倉敷化工という会社が、住宅などの比較的軽量で小規模の建物の免震システムを、来年にも認定を取れて発売の予定だそうです。
現在は大規模建築用のみ。 
 コメンテーター 
津村 泰夫 各解説員の説明にありましたように、住宅のような小規模建物ではあまりメリットがないように思います。今一度検討されてはいかがでしょうか。
 事務局から 
  荻原 幸雄 免震構造の採用の意味ですが、地震でも無傷でいたいということだと思いますが、健全な建築士が設計した健全な建物なら在来工法でも決して全壊などしませんし、当然、生命に関わる倒壊などはありえません。
基準法では生命の危険回避ができる建物の最低基準になっていますので、倒壊はしなくてもその後使用できるところまでは規定していません。

そのような意味では免震の意味はあるでしょう。しかし、そのコストや信頼性は未知数です。
それよりも地震保険に入っていることの方が意味があるかもしれません。

個人的には住宅で地震対策のために免震を採用する意味は少なく、寧ろ、日常で、車や電車の振動対策としては意味があります。日常のことなので特に。

いろいろご検討してください。
相談者お礼状 
 相談者お礼状 解説員の皆様、懇切丁寧なアドバイスを頂きまして大変感謝しております。
適切な設計と施工であれば必要十分な耐震性は確保できるであろう事は十分理解できました。ありがとうございました。
質問では舌足らずな部分もあったのですが、大きな揺れの際には、建物自体の損傷は大したことはなくても、大型家具の転倒や、割れた窓や食器による大怪我も考えられると思います。室内の全ての物が固定されていればいいのでしょうが、箪笥や食器棚はともかく、テーブルやテレビ等全ての家具や大型電化製品を完全固定するのは、現実的に無理だと思います。
そう意味において、特に小さな子供が居る我が家では免震構造が有効であると思えたわけです。

ただ、解説員諸氏のご意見のように、費用対効果の問題もありますし周りの家が軒並み倒壊しているような状況では、ライフラインにも支障をきたしているでしょうから生活自体無理でしょうね。建物に損壊がなくても住み続けるには大掛かりな点検を要するとあれば尚更です。
万が一の際の家族の身の安全を一番に考えての免震構造だったのですが今一度、多角的に検討したいと思います。
大変参考になりました。ありがとうございました。
 その後  
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