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一般社団法人建築よろず相談支援機構

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〒181-0001 東京都三鷹市井の頭3丁目12番11号

よろずWEB相談HEADLINE

No.0574 100年もつ家

 相談概要 [氏名] Y.T
[居住住所] 茨城県龍ヶ崎市
[相談建物予定地] 同上
[職業] 会社員
[年齢] 35
[男性] on
[構造] −
[設計者はどなたに依頼しますか?] -
[何階建て] 2
[延べ面積m2] 165
[延べ面積坪] 180
[工事請負金額] 2500〜3000
[様態] 注文建築
[施工業者はどちらに依頼しますか?] 特に決めていない。
 相談内容 日本で100年以上家がもつためにはどのような条件が必要でしょうか。
私の家族は家を数年以内に建て替えることを考えております。今の母屋は築年不詳で少なくとも150年以上たっているかと思います。そのこともあり、建てるからには100年くらいは十分にもってほしいと考えてます。

戦後の家は、急激な需要のために材木、工事に手抜きや粗雑さがあり、寿命が極端に短くなりました。
住宅の営業マンは日本は湿気が多いからなどと言いますが京都、奈良の建物、戦前の家など日本の家は本来100年は 余裕にもっていました。だから、戦後の家は日本の建築史の中でも特異な時代ではないかと思うことさえあります。

十分に乾燥させた近くで伐採された木材がほとんどつかわれなくなったことも大きな要因でしょうか。
そこで、あらためて、長寿命のためになにが必要かいろんな角度から調べております。

集成材が主流になりつつありますが、まだまもなくて、出荷時の強度が無垢の1.5倍以上といってます。しかし、何十年もたって強い強度を維持してるかは未知であるかと考えてます。

いい無垢材が少ないため、また、乾燥させる期間を短縮させたいための メーカー側の利点が大きいというのが本当のところだろうと考えております。
いろいろな要因が考えられるかと思いますが、工法、材木、材料など様々な観点から、アドバイスをお願いします。

今の時代には、極端な話、敷地にあるケヤキ、または、必要に応じて近くの植えてある木を買って10年近く乾燥させて材木として、使うくらいの努力が必要でしょうか。
地元で建築業、不動産業をしている方のなかにはそうようなことをして建築される方もいるようですが。
ただ、できれば、そこまでは手間をかけたくないところです。(10年またなければなりませんか)

また、ツーバイフォー、T建設のようなコンクリートは日本では、どのくらいもつものなのでしょうか。
 yorozuの感想 今日、はじめてここを見ました。車や電気製品などは、評価が定まって安心して買えるのに、家は数だけは何千万戸も建っているのに、なかなか不確定な要素が多く慎重にならざるをえません。

そんななか、専門家の方の意見を聞けるということで参考にさせていただき、勉強したいと思います。
よろしく、お願いします。
アドバイザー 
山口 雅克 山口と申します。

 家は工業製品と違って一品生産で、特に在来工法は多数の職人さんの手を必要としますので、設計の内容も重要ですが、施工管理や竣工後の建主の手入れにもよって、その寿命は大きく左右されます。永くもたせるには2つの要件があります。建物自体が堅牢であることと外敵から如何に守るかです。以下に、幾つか要点を上げてみますので検討してみてください。

 基礎をしっかりとして、年輪の多い木材を使う。(大工さんの話だと年輪の数だけはもつとか?100年だったら百歳の木を使う?)お考えのように乾燥も大切ですが材齢の永いものを調達してから、材をみながらゆっくりと対応していきましょう。2〜3年もあればほぼ乾燥するのでは。

 外敵とは雨や湿気、地震、台風です。それらにより腐食や虫食いが進み家は病気になります。治療は原因を適格に掴んで早めにしましょう。軒を深くしてできるだけ雨に濡れないようにして、風通しの良い家にしましょう。住む人間も健康ですが、家や材料に関しても同じことが言えます。

 すべての材料にはそれなりの耐久性がありますが、手入れさえ怠らなければ幾らでももつと考えてください。昔は家族には家長がいて、掛け軸の掛替えなど含めて家の管理をやっていました。

 この頃は建てっぱなしで手入れもせずに早く痛んだと言う人が増えてきましたし、建てた当時には予想もしなかった大形車両の通行があって振動が増えたり、ライフスタイルの変化にともなって修繕するより建て替えた方がよいなどの考え方があり寿命が短く感じるのだと思います。

 外観的なデザインも伝統的な形態を重視して、結露などがおこらないような住まい方、定期的な維持管理をしていけば結構大丈夫ではないでしょうか。機械的なことや石油加工物などに頼らず、自然と対話しながら維持していくことです。

 専業の設計監理事務所に依頼してじっくりと考えてみませんか。
三浦 惠翁 千葉の三浦です。

> 日本で100年以上家がもつためにはどのような条件が必要でしょうか。

Y.Tさんはどうして150年も経った昔の家を壊して100年住宅に、建て替え様と考えたのでしょうか、家屋が朽ちて住むのに危険を感じているからでしょうか、大規模な修理(50坪で3千万円は掛かるでしょうけれど)をすれば後50年ぐらいは持つのではと、考えませんでしたか。

現在35歳のY.Tさんも50年後は85歳、お孫さんの代になっています。その先50年で100年です(孫の孫の代になっています)。50年毎の修理を繰り返すことにより焼失さえ免れれば、京都、奈良の建物に匹敵する300年住宅になります。そこに住む人が時代時代の生活様式の変化に囚われず、不便を我慢し、修繕に掛ける費用を惜しまず、古い家を大切にする心がけこそが、第一の条件と考えます。

100年住宅を考えて居るのでしたら、その前に一度母屋を専門家に相談、診断してもらい、お孫さんに200年住宅を残せるよう設計して貰うことをお勧めします。すばらしい200年住宅にお孫さんも喜ぶことでしょう。
 善養寺 幸子 東京の善養寺です。

 150年保った家を壊して100年保つ家を建てたいとお考えなら、その費用をかけて母屋を地震に強く、現在の生活にあったように大規模な修繕を行った方が望み通り、後100年保たせることが出来るのではないでしょうか。きっと大きな材でしょうし、乾燥も充分でしょうから、それ以上のものは今手に入りにくいでしょう。

 そうではなく、母屋と別にお考えなら、何故今の建築は保たないのかの私の考え方を一つ参考に。

 乾燥の悪い材と言うのも一つですし、新建材の問題というのも一つありますが、断熱気密と言う問題が大きくあります。
 高断熱高気密の省エネルギー住宅づくりを主として設計している自分として、変な話ですが、断熱、気密、機械冷暖房が建物の寿命を短くしていると思います。
 ですから、営業トークだけの認識のない高断熱高気密住宅はかえってあぶないと思っています。

 何故、それが問題かと言うと、建物の耐久性が落ちる要因として湿気は思い浮かぶでしょう。それは木の乾燥度の問題より、生活の中で発生した水蒸気の方が大問題です。その水蒸気が結露となってカビを発生させ、木材を腐らせる、シロアリがカビと共に木材を食い荒らすし大きな耐力の欠損となります。震災でも崩れた要因に施工不良もありましたが、構造材の木が朽ちて体を成していなかった物も多くありました。
湿気が発生するのは人間の生活上仕方ありません。生きている限り汗もかきますし、料理、風呂、ストーブ、加湿器など毎日湿気を発生させてしまいます。

 それを現代住宅の新建材による無計画な気密性(雨仕舞いを良くするあまり気密性能ができてしまった。)が湿気を排気し難くし、その上、断熱材によって室内側の外壁材の温度を低くしてしまっているので、断熱材と外壁面の間に結露を生じさせてしまい壁の中は湿潤状態になってしまいます。通気防水シートで蒸気を出すなんて理屈は、手前で露になってしまっては何の役にもたちません。

 このような現象は外気温5度以下になる地域でしたら、近年建築にはほぼ100%起こる現象と言えるでしょう。間違った高気密高断熱住宅で2年目にシロアリ被害が出たと言う例もあります。高気密高断熱化していない中気密中断熱住宅でも北面のグラスウール(繊維系断熱材)には5年ほどで黒カビが発生し、15年もすると断熱材が黒カビの固まりになってしまうことも特異な話ではありません。室内の表面的には解りませんが、カビ臭い家って結構ありますよね。それはもう朽ち進行しつつある住宅と言えるのでは。

 今の住宅と昔の住宅の大きな性能の違いは、『蓄熱性と気密性と調湿性』です。
薄物の新建材で覆われた今の木造住宅は蓄熱性能という物がなくなってしまいました。
昔の日本建築には厚い土壁と言うものがあり、これは大きな蓄熱性能という機能があり、その上に調湿と言う性能もあり、内部温度と外部温度の緩衝材になるうえに、湿気が外壁に触れる前に水分を吸収してしまう効果もありました。外壁材も木の羽目板張りなどですから水も浸みますが、気密能力は低く、湿気の出入りを妨げる防水シートなどありませんから目地などの隙から充分換気してしまいます。外壁材自身も木ですから外気の温度の影響を受けにくく、サイディングや金属の様に冷たくなりませんので結露し難い上、多少の湿気は吸収してしまいます。ですから、雨仕舞いは悪くても乾燥しやすく蒸れにくい構造だった訳です。

 今の作り方ですと外壁材料自体の熱伝導率も良く、風に当たると外気温より冷えてしまう素材すら存在します。コーキング、パッキンなどで気密性も良く、調湿性能は極めて低いです。このところ調湿材としての珪藻土が人気ですが、薄塗に置いては、気持ち程度の効果で壁内結露を防ぐほど大きな性能は発揮出来ません。

 それを考えて行くと、木材の乾燥に時間をかけても耐久性には大きく繋がらないと言うことになります。(補足ですが、建築構造材は殆ど針葉樹なので、広葉樹のように数十年も乾かす必要はなく、自然乾燥でも1年もかければ充分良い物になります。)

 では、どうすれば良いかというとそれは色々な方法があります。本当の昔ながらの建物(温熱環境は悪く省エネルギーじゃないかもしれません。)を作るか、色々な問題を解った上で、計画的な気密断熱調湿の出来た高耐久住宅を作るか、それは建主さんの価値観と設計者の技量で何通りも考えられます。

 いずれにせよ、拘りがあるのであれば、専業の設計事務所に相談し良いパートナーを得ることが重要に思います。建築は複雑ですから、にわか勉強で理解するのは難しいと思います。設計する建築士にもそれぞれの得意分野がありますから、拘りに合った所に依頼することが良いと思います。

 少々解りにくい話だったかもしれませんが、低耐久性問題の一つの面です。

 コンクリート建築の話も追加しますが、コンクリートは高蓄熱材料なので従来の内断熱工法から外断熱工法に変えますと、温熱環境、結露問題は思いっきり改善されます。昔のような塗壁の持つ性能を発揮する部分もあります。しかし、予算の問題や敷地の条件、廻りの環境などによって色々な工法での選択肢があり、コンクリート建築が必ずしも良いとは言えません。

 そして、建物の耐久性を上げるには保守も重要ですし、冬は暑い位、夏は冷蔵庫の様な無謀な室温環境を作って生活しないと言うことも大切です。
 この話になると限りないので長くなりましたので、この辺で。
 高耐久の住宅づくり色々研究して、頑張ってください。 
 コメンテーター 
長谷川 明弘 私もY.Tさんの現在の事情を知っている訳ではありませんので、相談内容からだけの判断になりますが、150年も存在する家を壊して100年もつ家をつくるにのには抵抗があります。使い勝手が悪いとか、気密性が無いから今の生活に合わないと思われますが、それで150年ももってきたとも思って欲しいところです。

もう一度150年住宅を見つめ直してみては如何でしょうか?それでもどうしても新築したいと言うのなら新築の選択肢もあるでしょう。
しかし物が溢れるこの時代に150年住宅を大事にするって言うのもとても意義があることだと思います。
色んな選択肢があることを念頭において最良の決断をしてください。
 事務局から 
  荻原 幸雄 各解説委員からも解説がありましたように、日本の家屋は長年日本の風土特性にあうべく、 長い歴史を重ねて日本家屋というものを完成させました。それは正に人間の自然との戦いといえるのかもしれません。勿論、工業製品のないころですから、なるべく身近の自然素材を使い適材適所で風通しのよい家を基本として考えられてきました。

しかし、この家は風通しがよいもので、冬はとてつもなく寒いものです。
人々はそれを重ね着をして自分の体に着ることにより耐えてきました。
現代では家の中で重ね着をすつことはなくなりました。家に重ね着をすることになったのです。
一人一人の重ね着からみんなで暖を取る炬燵の足だけの囲い。そして現代では家そのものが炬燵化したといっていいでしょう。

小さいころを思い出してください。
わたしも子供のころ炬燵でよく眠りました。時には中に潜り、寝たりしたものですが、長くはいられません。
足のにおいや密閉した空気、これはたまったものではありません。
当然、直ぐに顔を出してまた眠りにつきます。
これは少しオーバーな例えですが、このような状態になりつつあります。

もう一度考えていただきたいのですが、総合的に判断する必要があるということです。
構造(木材、コンクーリート、鉄骨等)だけでなく仕上や、その風土環境、日本人のライフスタイルの方向性やあなたやあなたのご家族の未来でのライフスタイルの変化について考えることが大切です。

昔の良さを理解し、現代人としてその生き方を確認し、総合的にご判断ください。
相談者お礼状 
 相談者お礼状
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