相談概要 | [住所] 愛知県知多市 [氏名] I.Kさん [職業] 勤務医 [年齢] 43才 [希望構造] 木造(在来工法) [どちらに依頼しますか?] 独立している第三者の建築士(建築士事務所) [何階建てを希望] 2 [予定床面積] 200m2以下 |
相談内容 | 断熱や気密性について最近は盛んに言われていますが、高気密・高断熱の家が理想的なのでしょうか。もしそうであれば、そのような家を設計してもらいたいのですが、断熱や気密性について関心の高い建築士の方が意外に少ないようにも思いますが、実際のところは如何がでしょうか。 |
yorozuの感想 | ー |
アドバイザー | |
関口 啓介 | 初めまして、関口と申します。 欠陥住宅などで争いの相談が多い中、このようなご相談を下さり、事務局共々感謝しております。問題が起こる前にこのように、ご相談頂くのは賢明だと思われます。複数の解説が受けられると思いますので、ご検討下さい。また、住まい造りを人任せにせず、自ら学ぼうとする姿勢には好感を覚えます。がんばって下さい。 高気密・高断熱が21世紀の標準仕様のように宣伝されております。省エネルギー住宅の基本仕様とも考えられています。 高気密・高断熱住宅は北欧より輸入され、北海道を中心に、研究・開発され、普及されてきました。高気密・高断熱住宅は、気密性能・断熱性能・計画換気が重要です。またこれに全室暖房(冷房)などが加わります。 厳寒の地から輸入され、開発されてきましたので、外界とを遮断する閉鎖的な構造は否めません。最近では、寒冷地仕様から、抜け出しつつある感もありますが、充分地域の特性に対応できるまでにはなっていないと思われます。 ここで、大切なのはその土地の自然風土に合わせた建物を造る事です。日本の自然風土は千差万別ですから、よその地域に合ったものでも、その土地には合わない事があります。季節ごとの風向き強さ、気温と湿気、昔の土地の形状・状態、潮風の影響、積雪量、台風の頻度と風向き、日照時間と太陽高度、地盤の強さ、浸水の可能性、等など山ほどありますが、これらを無視した建物では、どんなに立派な数値の性能を持っていても、あまり役に立たないのではないでしょうか。これらを考慮した上で、自然風土に適した建物こそ、省エネルギーであり、環境や、健康に配慮した住宅ではないかと考えます。 必要以上の設備は、生活や、健康へ悪影響を及ぼします。高気密・高断熱の換気システムの住まいでは、停電したら危険です。真冬に災害などで、ライフラインが切断されたら、生活は不可能でしょう。夏でも暑すぎて危険かもしれません。また、通常の掃除機では危険です。ゴミと一緒に吸ったホコリを気密された空間に吐き出すからです。セントラルクリーニング等のシステムも必要になります。 電気の供給が前提でのダクトだらけの設備住宅になりがちですので、気をつけてください。 また、間違った断熱工事、気密工事は逆に壁内結露などを起こし、建物の生命まで奪いますのでお気をつけ下さい。北海道をはじめ、たくさんの前例があります。 ここに書いたものは、一つの考え方だとご理解下さい。選択肢はいくつかあっても良いと思われます。 家族と、あなたにとって、より良い住まい造りが進められる事を望んでおります。 |
小松原 敬 | 家の中で外界の暑さ寒さを冷暖房の機械装置を使ってしのごうとすれば、外界からの熱損失をシャットアウトしなければなりません。魔法瓶なら最初の温度が長く保たれるのに対し、普通のポットであればずっと通電しなければなりませんよね。 また、熱損失が激しい箱では温度の部分的な偏りが大きくなり、つい必要以上に暖房したりしてしまいます。 省エネルギーと快適性から高断熱住宅は生まれてきました。ただ、ここで問題なのは高気密性です。高断熱は意図しなくても高気密とセットになってしまいます。 北海道などの寒地住宅研究会などでは、温度・気圧差を利用したパッシブ換気を開発していますが温帯ではうまく機能しないようです。 一般的には、機械換気でそれを補いますがその基本的な考え方が問題です。一部の住宅メーカーや高断熱のシステム販売をしているメーカーはダクトを家中にひっぱりまわして、ビル空調のようなシステムにしてしまっています。 そして、通風や日照条件などといった基本的な事項をまったく必要ないかのように言っています。(直接そうは言ってないですが、そう言っているも同然のパンフレットが多いですね)これでは、関口さんの解説のような弊害がおきて当然です。 温帯の高断熱住宅には、「閉じるための技術」と「開くための設計」がセットで必要です。 気候の厳しい真冬と真夏は閉じて、最小限の換気装置で補い、それ以外の季節はなるべく開くのです。 具体的には通風のための風道、窓の種類、日射を調整するため窓の位置、庇の大きさ、ブラインドや時には落葉樹の利用などなど、基本的な「家の設計」そのものが非常に大事になります。 それを無視して、ビル空調のようなシステムばかりに頼ると非健康住宅になってしまいます。 うまく設計すれば、例えば夏でも夜は窓を開けて涼しい外気を取り込み、朝に閉めれば午前中くらいはクーラーがいらない・・・といった使い方も可能です。 |
コメンテーター | |
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事務局から | |
荻原 幸雄 | 高気密高断熱は以前にも解説がありますが、決して関心が少ないわけではありません。 高気密は今まで結露等で散々問題になりましたマンションが正に木造の高気密と同じ状況といえます。マンションは高気密な故に湿気が逃げず湿度が高まり結露を起こしました。 これは勿論断熱にも問題がありましたが、生活の中での換気が大切なことも解ってきました。 マンションには逆に高気密ゆえの換気口が重要な存在になっております。高気密の木造住宅もこれと同じ状況とお考え下さい。 また、断熱に関してもその理論を徹底的に隅から隅まで隙間無く施工しなければなりません。その心を理解した設計者が監理してこそ本当の高断熱は生まれます。 しかし、高断熱がどの程度必要かは地域によりますので、その地域の特性を理解することが大切だと思います。 違う論点からお話いたします。シックハウスの観点からも気密性は高気密ではなく木造が許容できる中気密を考えるべきです。高気密を別名ペットボトル症候群と言われております。ボトルの中で人がどのような状況であれば生きて行けるか想像してみてください。 断熱材は外断熱が昔から理想といわれています。しかし、何故なかなか生まれなかったのでしょうか? 屋根はマンションでは外断熱が標準です。容易に実現できるからです。重力や水平加重(地震、風、台風、振動)に対して問題は無いからです。では壁は如何でしょうか。構造体の外に断熱材がありそれを構造体に金物等でとめその上に仕上げが来ます。重力に対しては断熱材の積層効果でもたせますが、問題は水平荷重に弱点があるということです。 これを確り講じることこそ外断熱は初めて生かされます。これはその設計と監理の重要性を示しています。 これらを本当に実現するには設計監理者が自分の家のように愛着を持ち、このクライアントの為にこれを実現しようとする意気込みが大切だと思います。結局メンタルな話をしましたが、そこまであなたのことを理解し、実現してあげたいと思う本当の心を持てるかどうか、それはあなたの心に左右されるものだと思います。 楽しい家づくり目指して頑張ってください。 |
相談者お礼状 | |
相談者お礼状 | 先日は断熱と気密に関して質問致しましたところ、折り返しご回答いただき、誠にありがとうございました。その内容は親切且つ丁寧で、示唆に富むものでした。 このような活動がボランテイアで行われていることに敬意を表します。 |
その後 |
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