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一般社団法人建築よろず相談支援機構

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No.0144 書物に記載されてあった事項と工事が食い違う

 相談概要 [氏名] N.Sさん
[住所] 徳島県鳴門市
[年齢] 32才
[構造] 木造(在来工法)
[築年数] 建築中
[階数] 2階建
[様態] 注文建築
[施工者] 大工(工務店)
[設計者] 知らない
[監理者] 知らない
[確認申請書存在の有無] 有る。
[設計図面枚数] ?枚
[着工までの打合せ回数] ? 回
 相談内容 現在、木造在来工法にてマイホームを建築中です。

ある書物に記載されてあった下記の事項が、我が家の工事と食い違っておりました。監督に確認したのですが、大丈夫ですの一点張りで、関係を悪くしてさらに手を抜かれてもいけないと思い、ご相談させていただくことにしました。内容は、

1)通し柱が1本しかない。
2)床束にほぞがなくまた、鎹ではなく釘止めしてある。
3)小屋裏の束にふれ止めが施されていない。
4)間仕切り壁、1階天井、2階床に保温が施されていない。などです。

どれも大したことではないのかもしれませんが、書物に記載されているとなると少々心配です。実際の施工はどのようなものなのでしょうか。お教え下さい。 

なお、参考にした本は、鹿島出版会 中村幸安著『「だれにでもできる」住まいの診断100章』です。よろしくお願い申し上げます。
 yorozuの感想
アドバイザー 
高尾 正範 建物形状がわかりませんが、通し柱が1本というのは納得いかないものがあります。通し柱を使わない工法もありますが、なぜ1本だけ通し柱を使ったのか、逆に質問してみたい所です。通し柱を使用するのであれば通常、四隅の4本以上は欲しいと思います。通し柱の無い部分は金具にて充分緊結されていれば問題無いと思いますが。図面上に他の場所に通し柱の記載がないか、照合が出来れば確認下さい。

(2)の床束については、釘止めだけでは斜め打ちの為 おそらく不十分と思われます。ホゾが無いとの事については、現在、突き付け工法が多用されていると私自身は認識しております。本来は ほぞ付の方がより良いとは思うのですが(上部からの荷重のみの考慮部材であり、引き抜きに対応する部材ではない)、但しボルト等で浮きを防ぐ措置は必要です。現場はどうでしょうか?

(3)小屋束の振れ止めは省略出来ません。床束の振れ止めも同様です。

最後に木造の工法は多種多様、古来からの伝統工法により合理的に確立されている工法です。しかしながら近年、私の感じるところ能率性を追及する余り簡便な新工法が横行しております。人件費の高騰と共に合理化されてきたものであり、よりベターな方法を要求すると工賃が限りなく高くついていきます。見極めの難しい問題ですので、こだわられるのであれば中立的立場の技術者に監理依頼されるのが良いのではないでしょうか。

工務店も欠陥住宅を造る気はなくとも、つい自分の立場で経済性を優先する結果になりがちかと思います。直接談判は素人にとっては無理かと思います。これらを考慮して最大限ベストを尽くした仕事であって欲しいものですね。
星 裕之  まず、通し柱を使わなくてはならない理由です。風や地震によって建物に大きな引き抜き力がかかリます。それによって二階の柱が一階の柱と離れてしまわないように通し柱を設けるのです。一番引き抜き力がかかり、かつ柱の断面欠損が少ないのは建物の四隅の柱ですので、おもに通し柱は四個所程度設けると規定されているのです。しかし、ここ数年は柱の金物の性能がかなり良くなっていますので、通し柱より住宅金融公庫*指定金物を使ったほうが、良い場合もあります。ですから、もし通し柱がなくてもあまり気になさらないでください。

また、一本だけ通し柱があるとのことですが、他の個所にはバルコニーや庇がついていないでしょうか。その部分には通し柱が入りませんので、同等の性能を期待できる金物で補強しているのでしょう。また、余談ですが通し柱が全くないと上下の位置関係が、図面作成時や現場施工時にわかりにくいことがあります。ですから位置決めのために一本だけ通し柱にしているのかも知れません。

二つめの床束の質問ですが、斜めくぎ止めのほうが施工しにくいような気がするのですが・・・。どちちらにしても、工法の許容範囲内であると私は認識しています。

三つ目の質問は、後からでもなんの問題も無く施工できますから、いれてもらってください。ただし、屋根でトラスを組んでいるような新工法は別です。

四つ目は完全に建物のグレードの問題ですが、断熱材を1・2階の間に入れることは多いですが、間仕切壁に断熱材を入れるというのは初耳です。かなりグレードの高い仕様を想定しているのでしょうね。また、住宅金融公庫を使用しているのであれば、確認申請時に矩計(かなばかり)図という図面が必須です。その図面に断熱材が記入されているのであれば、施工するように交渉すべきでしょうが、記入のない場合は別途という形になるでしょう。

設計者が介在していれば、そんなに悩むほどの話ではないので、次回建築の相談があるときは是非一声かけてみてください。


*事務局注:住宅金融公庫は、2007.4.1に独立行政法人 住宅金融支援機構に移行しました。 
 コメンテーター 
 事務局から 
  荻原 幸雄 通し柱の関係条文を掲載しておきます。

建築基準法施行令 第43条5項 「階数が2以上の建築物におけるすみ柱又はこれに準ずる柱は、通し柱としなければならない。ただし、接合部を通し柱と同等以上の耐力を有するように補強した場合においては、この限りでない。」とあります。

通し柱で無い場合、要は金物で同等以上の耐力が出るように補強しなさい。と言ってる訳です。この補強がちゃんとなっているかが問題です。高尾さんの解説の通り何故1本だけ通し柱なのか?大変疑問です。

(4)については仕様書はどのようになっていますか?何も記載なければそれ自体はグレードの問題ですので欠陥とかの問題ではありません。それにしても監督の「大丈夫」は信用できないものが有りそうですね。
相談者お礼状 
 相談者お礼状 通し柱の件ですが、図面上にも1本しか書かれておらず、契約の際に質問をしたところ、通し柱は2箇所からほぞが入るので弱くなり、逆に管柱を梁で支えて金具で補強した方が強くなるとの回答でした。また、通し柱を入れるべき残りの3箇所のうち2箇所はベランダへ突き出た梁があり、また残り1箇所は、1階に管柱もない設計でした。確かに補強金具はきちんとついていますが、通し柱並の耐力が出るかどうかは分かりません。

 床束については「ボルトで浮きを防ぐ」ということがどういうことか分かりませんが、大引がいくらか継ぎ手で継がれ、床束が釘止めされている。そうして根がらみが施されているといった具合です。ふれ止めは、監督自身がご存知ない様で、小屋筋交いが入っているから代用できるとの返事でした。 

私自身、十分勉強をして契約に望んだ気でいましたが、木工事に入った後、先日紹介しました書物と出会い、いろいろとおかしい事が出てきました。もっともっと勉強しておく必要があったなと痛感している次第でございます。 保温についてもかなばかり図には記載されておりませんでした。床束の鎹止めならびに小屋束の振れ止めについては早速工務店さんに相談させていただくことにします。 

再度、ご質問させていただくことがあるかとは思いますが、その節はよろしくお願い申し上げます。
 その後  
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