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一般社団法人建築よろず相談支援機構

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No.0140 引き渡しを前に、数々のトラブルがあり

 相談概要 [氏名] K.Mさん
[住所] 滋賀県大津市
[年齢] 42才
[構造] 木造(2x4)
[築年数] 新築引き渡し前
[階数] 2階建
[様態] 注文建築
[施工者] ハウスメーカー
[設計者] 知らない
[監理者] 知らない
[確認申請書存在の有無] なし
[設計図面枚数] 6
[着工までの打合せ回数] 12回
 相談内容 前略、
私は、S不動産(株)と、住宅建築の請け負い契約を締結しましたが、現在引き渡しを前に、数々のトラブルがあり、交渉が途切れております。以下に、その主だった点を列記致します。

1.未だに、工事が残っており、住める状態ではないのにもかかわらず、一方的に完成していることを主張され、なおかつ、支払残額の話し合いを放棄し、交渉を放棄された。

2.その数日後、急に弁護士名の、内容証明文書が届き、支払いをし、引き渡しに応じる様、強制された。

3.請求されている、金額には、今まで一度も、見積もりさえされなかった、Sの過失による、隣地地盤修復費用が含まれ、Sは工事における自分の過失を認めながら、その費用を施主に求め、話し合いに応じようとはしない。

これ以外にも、施主への事前の了承のない図面の改ざんや、意図的な工事の遅延など、施工業者として、許される物ではありません。さらに、本社管理部や、担当専務へ陳情しても、全く無視すると言う、会社ぐるみの不誠実さに、怒りを隠すことができません。このような業者に対して、どのように対処すれば良いか、ご指導賜れば幸いです。

本契約が、1998年10月30日に締結されてからの、経緯は、次のとうりである(契約時における、着工は、1998年11月30日、竣工は、1999年3月20日と設定された。)。

1.10月30日の契約時には、確認申請は準備ができているので、すぐに提出すると言われたため、11月16日に電話で、状況をY氏にたずねたところ、すでに市役所に提出されており、審査が進行中と回答された。しかしながら、後で分かった実際の提出日は、11月17日であった。市の審査期間は、予定より少ない日数で完了し、12月4日に審査がおりた。この時点で、着工予定日を既に過ぎていたが、これは、申請の提出が遅かったためである。

2.確認申請がおりた後、着工の準備はできているので、できるだけ早く始めるとY氏に説明されていたが、工事は始まらなかった。市が、セットバックの要請をしてきているということだった。契約後の変更は、できる限り避けたかったので、契約図面どうり施工できるかと、何度もY氏にたずねたところ、問題はないとの回答であったため、契約図面どうりの施工を、指示した。

3.市とのセットバックに関して、何ら進展がないまま、12月の末が近づき、3月中の竣工に危惧を持ち、着工を強くY氏に要請した。このために、12月20日に打ち合わせを行い、12月24日の着工が、N氏によって、決められた。すでに、3月中の竣工は不可能になっており、工期の延長を、N氏によって要請された。再三の工期の延長は生活に支障をきたすため、確実に約束できる竣工予定日をN氏に尋ねたところ、4月25日なら間違いなくできると言われたので、これを最悪のケースにおける竣工予定日とした。ただし、可能性のある努力目標として、4月12日を申し合わせた。この時、確認申請図面を見聞している際、契約図面と異なる個所が3個所、施主により指摘された。これらは、契約後、一切の施主への説明や了解なしに、行われた設計変更であり、さらに建築物の重要な機能を損なう物であったので、2個所に関しては、契約図面に戻すようY氏に依頼し、1個所は、不本意ながら、了承した。

4.1999年1月に入り、工事はほとんど進捗を見ず、最低限の報告もなかった。この間、市からのセットバック要請に対し、Y氏は、有効な方策を打つことができずに、進展がなかった。この時点でも、まだ確認申請がおりた以上、確認申請図面どうりの施工が可能だと、Y氏は説明していた。

5.1月9日の打ち合せにおいて、地中から出た解体残留物の処理に13日費やしたので、その費用の負担を要請された。しかしながら、家族による毎日の通行ごとの現場の状況変化から、3日半しか工事に入っていないと思われたため、再度業者への作業日数の確認を依頼したところ、Y氏から実際の作業は6日であり、13日は業者の間違いであったとの報告があった。これに基づき、費用の再計算を依頼したが、結果の報告はない。1月9日の打ち合せにおいて、初めて現場主任のI氏に紹介された。

6.Y氏は、施主による市への説明を依頼し、施主は、4時間に及ぶ電話での説明に加え、1月16日、T市役所に出向き、建築審査課、道路管理課及び生活道路課の各担当者に対して、説明を行った。行政に対しての対応は、Y氏が行うべきものであったが、工事を進めるために、止むを得ず行った。その場において、過去のいきさつを説明するとともに、確認申請図面どうりの施工をしたい旨伝えた。しかしながら、そのような施工は、建築基準法違反になると指摘された。

道路の境界協定図が存在しており、設計者はそれに基づき、図面を作成しなければならず、確認申請図面には、瑕疵があるとされた。確認審査は、申請書類が正しいとの前提に立って行なう行為であるため、市は申請書類内容の調査はしないし、申請図面の内容が間違った責任は、設計者にあるとされた。この経過は、N氏とY氏との打ち合わせ時に伝えたが、市の言い分に異議が唱えられたので、市と決着を付けるべく建築審査課に、再度、話に行くとのことであったが、その後の報告は現在までない。境界協定図の入手後直ちに、図面の修正をしていれば、早期の解決が可能であったと、建築審査課担当者に示唆された。セットバッ クの為の図面の変更に、さらに工期の延長が、N氏によって要請されたが、早期解決を怠ったのが原因の為、認めなかった。

7.この後も、工事の進捗は、ほとんどなく。N氏の工程管理能力に疑問を感じ始めた。これ以上の工期の遅れは、生活に対する影響が多大になるため、貴社インターネットホームぺージに、救済を求めた。

8.その日の夕方、早速Y氏から電話があり、翌日打ち合わせを行うこととなった。それまでの進捗や対応の不十分さに対し、N氏から陳謝があった。現状の把握が話し合われ、再度の工期の延長を要請された。全力を尽くしても、5月15日以前は絶対に不可能だと説明されたので、生活の犠牲を覚悟で、これを承認せざるを得なかった。その代わり、5月15日以降竣工が伸びた時は、1日10万円の賠償を、N氏が約束した。ただし、今後の状況によっては、施主の判断により、賠償の対象を4月12日からに溯ることができるとした。同時に、週間報告をN氏によって、毎週金曜日夜10時までに、施主にFAXすることとし、これがなされなかった時は、1回3万円の賠償とし、N氏は、これを約束した。

9.着工時に、工程表を提出すると言われていたが、2ヶ月以上待っても提出されなかった。再三の要求の末、2月15日にやっと提出されたが、工程表とはほど遠いもので、再提出をお願いするしかなかった。

10.工事の再々着工が2月15日にされたが、2月17日に、南側よう壁掘削工事中に、作業ミスによる土砂の流出が起こり、工事がストップした。この個所は、危険性を最初から指摘しており、掘削前には、隣地よう壁の水準出しまで行っていた。しかしながら、工事は十分な養生がなされないまま、Sによる監督も無しに、下請け業者のみによって進められ、土砂の流出に至った。N氏から、隣地所有者に対して、文書で詫び状をだすことを2月20日に依頼されたので、内容を検討し2月22日朝、速達で郵送した。さらに、施主が、お詫びの挨拶に行こうと、隣地所有者宅に電話でアポイントメントを取ろうとしたが、来て欲しくないと断られた。

N氏による隣地所有者に対する対応の不手際から、3月4日から3月15日まで、すべての工事を止めなければならなかった。この土砂の流出により、更なる工期の延長をN氏によって要請されたが、認められなかった。修復には、約1ヶ月を要した。N氏は、この工事ミスに対する施主への補償は、引き渡し時に考慮するが、今は工事を進めることを優先したいとした。このような危険な工事をしたということで、近隣の間では、施工者と施主に対して、不満を表していた事が後で分かった。

11.工事のやり方や、工程表の提出を通じ、S不動産に対する技術面での不安があったため、知人の建築士に、今後の技術的交渉を委任した。これは、施主側の立場で、技術面でアドバイスを行うためで、監理監修は契約どうり、S不動産(株)が行うことを、N氏と施主で、確認した。

12.上棟時(5月1日)、いくつかの手違いによる施工ミスが見受けられたが、I氏によると、修復可能とのことだった。しかしながら、この時既に、給湯機が図面とは違った位置に取り付けられ、報告は2週間後になって初めて施主に伝えられた。また、外構が契約時に依頼していた材質、形状デザインにできないことがわかり、その善後策の作成に苦慮している。

請け負い契約書についてお伺い致します。

建設業法第19条には、請け負い契約書は、当事者が、お互いに交付する、すなわち2通の契約書を取り交わすことになっていますが、私の場合、一通しか作らず、Sはコピーを取り、原本は私が持っています。収入印紙もSは貼付していません。これは、正式な請け負い契約書と言えるのでしょうか。

それから、領収書も、銀行の振り込み金受取書をもって、領収書にすると約款に書かれており、新たに発行しないようですが、これは、許されるのでしょうか。

以上2点について、御教え頂ければ幸いです。
 yorozuの感想
アドバイザー 
木津田 秀雄 相手方が理不尽な要求をしてきているとお考えのようですが、相談内容だけで見る限り「売ったらおしまい」というハウスメーカーの体質があらわれているようです。

さて、相手方が弁護士名で内容証明を送りつけてくるような事態ですから、穏便に事をすすめる必要を感じませんがいかがでしょう。できれば残金を裁判所に供託されて、訴訟を起こされた方が良かったのではとさえ思えます。 しかし既に「それ相応分は」支払ったとのことですから、擁壁の補修代金などについての交渉が残っていると思います。このような不測の事態の場合の費用負担がだれになるのかは、契約約款に記載されていると思いますが、どうでしょうか。理不尽な契約内容でもご本人がそれを承諾したのであれば、契約には変わりありませんから、約款に依頼者が費用負担するとあればそれに従わなければなりません。工事中に「この補修費用は、S不動産で見ます」などの話があれば、また別ですけど。

 内容を整理した上で、他に建築工事等に不備な点がないかなど調べ、早急に弁護士などに相談して行動を起こす必要があると思います。この調子では残金支払いの訴訟を相手から起こされて、裁判上でも受け身になってしまいます。受け身の裁判は、どんな施工の悪い建物でも、引き渡しを受けた以上、施主が無茶を言ってゴネているとの色眼鏡で見られますから大変です。  

相談内容が漠然としていましたので、漠然としたアドバイスになりました。
 建設業法には「相互に交付しなければならない」となっています。しかし民法では契約は口頭でも両者が合意していれば有効ですから、契約が無効になるわけではありません。しいていえば、建築業法に違反している契約と言えるでしょう。 
領収書も同様です。お互いが合意していれば、現金でやり取りをして領収書を発行しなくても特にそれ自体が問題になることはないと思います。

 建設業法では契約時に「一、工事内容」を記載するようになっています。
さて工事内容とはなんでしょう?図面や仕上げ表、仕様書ではありませんか?またそれぞれについての金額はどうでしょう?それらの書類が添付されていたでしょうか? 相手が弁護士を立てて来ている現象からすると、前回にも書きましたが、建築紛争に詳しい建築士や弁護士の協力を得なければ、納得の行く解決は困難だと思います。相手はいかにも自分たちが正当であると主張します。それはある一面のみを突いてくるだけで、全体を広く見て穏便に解決しようという(口では言っているかもしれませんが)事は考えてもいないと思います。

どのような法令を適用するのか、また法的な内容以外で争うのか、その当たりを見極める必要があると思います。
 コメンテーター 
 事務局から 
  荻原 幸雄 事態がかなり深刻な様子ですが、今後の対応としてはこの辺で自分たちだけの対応は大変な事とお見うけ出来ます。以降は状況を的確に判断する為にも、客観的な建築士と弁護士の協力を仰ぐことが必要だと思います。精神的にも早急な対処を考えた方が良いかと考えます。

又、相談では何を求めているのか?何に解説が欲しいか?がよく解りませんので質問内容を箇条書きにしていただけるとこちらも助かります。
建設業違反ですが、契約は成立してます。
業者のコピーに関しては印紙を貼らなかったので 脱税になりますね。この業者こんな方法を他でもしているとなるとかなりの脱税をしている様に思えますね。
銀行の件は問題ありません。
相談者お礼状 
 相談者お礼状 早速の御回答ありがとうございました。なるほど、私の場合は、もう既に弁護士の手を借りなければならないようですね。ただ、木津田様のお言葉の、”それはある一面のみを突いてくるだけで、全体を広く見て穏便に解決しようという(口では言っているかもしれませんが)いう事は考えてもいないと思います。”、と言うお言葉に、何か勇気づけられるような気がしました。まだまだ時間がかかりそうですが、気長に戦って行こうと思います。

荻原様、木津田様におかれましても、健康とますますのご発展をお祈り致しております。どうも、ありがとうございました。
 その後 前略、
ご無沙汰いたしております。昨年5月に、建築よろず相談 No.140にてお世話になりました、Kと申します。この、3月14日に、大津地方裁判所で判決を頂き、100%の敗訴になってしまいました。明日、控訴期間が過ぎますが、判決をもとにした一部和解と言うことで、S不動産と明日、残金の支払いと、鍵の引き渡しを受ける予定です。

ご指摘にあった通り、S不動産から、訴訟を起こされ、受け身になってしまったのかもしれませんが、本人訴訟で、証拠や準備書面、尋問に関しては、互角以上に戦ったと思っております。しかしながら、ここからは建築の問題ではなく、日本の司法の問題ですが、その腐敗ぶりを、体験するに及んで、この国にルールはないのだと言うことを実感いたしました。

建設部門の技術士さんや、一級建築士の意見書などを証拠として提出いたしましたが、裁判官には、馬の耳に念仏でした。日本の裁判が、裁判官の密室での、独断で行われている以上、その質を維持することができるはずもありません。

建物の鍵が引き渡されていない以上、これ以上家族の生活を犠牲にできないので、控訴せずに判決に従うより他ありませんが、裁判がいかに形骸化したものであるかを知ることができたのは、社会勉強としては良かったのかもしれません。

建築よろず相談の、ますますのご発展と、皆様方のご健康を、お祈りいたします。
どうも、ありがとうございました。 
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