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一般社団法人建築よろず相談支援機構

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No.0080 不同沈下を起こすのでは

 相談概要 [氏名] Yさん
[住所] 東京都町田市
[年齢] 25 才
[構造] 木造(2X4工法)
[階数] 2階
[様態] 条件付き建売り住宅(売り建て住宅)
[施工者] 大工(工務店)
[設計者] 知らない
[監理者] 知らない
 相談内容 町田市に条件付きの土地を購入しました。まだ工事請負契約は交わしておりません。実は、購入した土地の地盤が心配でご相談しようと思い、メールを書いています。

買った土地は、登記簿で見たところ2年ほど前まで地目が「田」でした。田として使わなくなってから、かなり経っているようなのですが、そのまま宅地としては使えなかったようで、都から許可を得るために地盤改良を行ったそうです。その分譲地は、全部で13区画あります。周りをぐるっと高さ4m近い擁壁が囲んでおり、幹線道路から少し下ってまた上がる公道が分譲地の中央を通っています。開発の図面を見せてもらったのですが、たった13区画の分譲地にパイルが870本も打たれています。そのパイルは全て擁壁のフーチング下に打たれているそうです。都の許可を得るためには半分の本数で良かったそうなのですが、売り主(施工会社でもある)が意地になって「絶対崩れない土地を作ってやる」ということで異常なほどパイルが打たれることになったと聞きます。

ただ家を建てるにはパイルの入っているところといないところの両方を跨いで家を建てなければならないのです。建築物の後ろは地盤が固く、家の前側は地盤が緩い場合は不同沈下を起こすのではないかと心配しているのですが、業者は「よく叩いたから大丈夫です。べた基礎にしますから、そのようなことはありません」と言います。また、分譲地全体が幹線道路から下がった所に有ります。購入した土地は一番幹線道路に近い所なのですが、盛土のようです。

家を建てる所は平らに造成してあるのですが、隣地との境界あたりが70cm程の法面になっていて隣の敷地に向かって下がっています。日当たりが最高に良く、分譲地内では一番高い位置にあるので購入を決めたのですが、以上の理由で心配になっている次第です。

また、中高層地域と低層地域を敷地が跨いでいます。前の道路が6m道路で南西向きなので、日照が遮られることはないと思うのですが、なにか気を付けることが有りましたらそれもおしえてください。造成をしたのはA社、売主・施主はI建設(株)というところです。I建設は30〜50棟くらいの開発を主にやる業者で、今回の分譲地は規模としてはかなり小さいと聞きました。

長くなってしまったのですが、状況が伝わったでしょうか。また、もし家を建てると決めた場合も建築士の方に、5〜6回ほど施工中の現場調査を依頼しようと思っています。よろしくお願いします。
 yorozuの感想
アドバイザー 
我伊野 威之 擁壁の上の土地か下の土地か不明ですが・・・

1)上の土地の場合
・擁壁フーチング上部は擁壁施工時に掘削されていますので、埋土になっています。(フーチング端から60°〜70°の範囲は掘削されていると思われます)
・フーチング上部とそうでない部分にまたがって建設し、埋土の締め固めが不十分な場合、初期沈下が擁壁側で発生します。軟弱な粘性土層が厚く存在すると、今度はじわじわと擁壁の無い側が沈下します。擁壁下部に杭を打っているようなので、地盤が緩い可能性がありますね。このような場合の対策として、「べた基礎」にして基礎底面の面圧を小さくし、かつ基礎立上がり部分を不同沈下が起こっても建物が変形しないような強固な基礎梁とする方法が考えられます(「べた基礎」でも基礎梁がしっかりしていないと不同沈下によって建物が部分的に沈下することがあります)。

2)下の土地の場合
・擁壁フーチングが敷地内に大きく張出してきていて、フーチング上部に建築が掛かるとすれば、フーチング上部分はまったく沈下せず、他の部分の地盤は沈下します。擁壁フーチングが上部への建築を想定して設計されていて、かつ、役所がそれを認めている場合には、建物基礎をフーチングに直接乗せてフーチングの外の部分は擁壁と同様の杭を打つことで成立します。フーチング外を直接基礎とすると杭基礎と直接基礎の混用になるので通常認められません(実験等で安全性が確認できれば可能ですが)。杭の費用が捻出できないようなら後は建物を分割するしかないでしょう(エキスパンションジョイントで連結する)。
・擁壁フーチングの張出しが小さい場合、基礎は擁壁フーチング上には乗せず、地上で片持ちで床等を持ち出せば可能です。

3)最後に
・杭を打つ擁壁が施工されているので「地盤データ」があるはずです。確認して下さい(施工者はもちろん役所にも保存されているはずです)。
・地盤改良を行っているようですが、心配なら地盤調査を行って下さい。都の許可を得るための改良ならこれも書類が残っているはずです、確認してください。

1)の場合と2)の小さい場合は 木造住宅なら基礎梁を頑丈に作れば問題無いと思いますが・・・(頑丈を定量化するには建物の形状、地盤の状態などを見ないと一概には言えません。ただ、一般的な基礎深さ20cm立上がりRC部45cmで通気口が30x20cm位のが開いていると構造梁セイは45cmしかありません、立上がり部の厚さも12cm程度では公庫*の仕様に適合していても不同沈下に対しては十分な梁とは言えません(各階5m2を支持する隅柱部のみが沈下し、直行する基礎梁まで3m離れているとすると、おおまかに10tmくらいの曲げモーメントが発生します、上記の厚さ 12cmx高さ45cmの梁で主筋D13が1本だと耐力は1.5tm程度です)。)

 心配で相談されたところに不安を増長するようなコメントしか現状ではできません、詳細なデータがあれば安心材料もあるかもしれないのですが・・・(大手の施工会社さんが造成をしている事くらいでしょうか)
 コメンテーター 
 事務局から 
  荻原 幸雄 パイルは擁壁フーチング用ですので直接地盤が沈下するかどうかとは直接関係ありませんが、間接的には擁壁が動かなければ土は逃げませんのでその分は安心です。「絶対崩れない土地を作ってやる」とか「よく叩いたから大丈夫です。」と言う言葉には惑わされず、客観的に数字で判断するのが正しい方法です。予定基礎位置で第三者機関の地盤調査会社に依頼して地耐力試験を実施し(最低2ヶ所以上)、この地盤の耐力を確認するのが最善の方法です。

もし耐力不足であれば地盤改良等の方法を考えます。ここまでは本来分譲会社が確認するのが販売者責任として当然と考えますが、現実は殆ど実施はしてないのかも知れません。業者の勘と経験の判断だと思います。べた基礎は図面に形状と配筋が記されている事を確認下さい。べた基礎耐圧盤の上下ダブル配筋が、よくシングル配筋になっている場合がありますが、これでは土間コンクリート一緒で、見た目は同じでも耐圧盤とは全然違うものです。これが実に多いのです(業者が基礎の力学を理解していないのか、同じだと思っているのか解りませんが全然違うものです)。注意してくださいね。

工事監理の話ですが、これが結構難しい問題を孕んでます。
図面をもとに監理しますが、この図面が詳細に書かれていないと監理できません。最低でもA2版で15枚位になりますが、4枚位の図面だと不可能です(現実4枚位の図面が多いです。何故か?図面が少ないほど図面に拘束されず業者の好きな材料を選択出来るからです)。これを業者に聞いて見ると「これで十分。あとは我々の頭に入っている。私を信じて欲しい」と言うような答えが返ってくると思います。

又、業者が監理者を受け入れるかどうかもあります(書面で必要です)。建築物は引き渡しまでは業者の所有物と判断される場合もあります。ですから了承無しには入りにくいのです。自信があれば受け入れるでしょうが、日本人的に言ってしまえば「我々を信用してないのか。」となります。この辺が難しいところですね。
相談者お礼状 
 相談者お礼状
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