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一般社団法人建築よろず相談支援機構

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よろずWEB相談HEADLINE

No. 0025 強い風の時、家が揺れる。

 相談概要 [氏名] H.Kさん
[住所] 東京都中野区
[年齢] −
[構造] −
[階数] −
[様態] −
[施工者] −
[設計者] −
[監理者] −
 相談内容 はじめまして。東京都中野区に住むH.Kと申します。ちょっと建築トラブルについて相談できるところを検索エンジンで探していたところ、そちらのHPに相談コーナーがあるのを見つけまして相談させていただきました。

私ども3ヶ月ほど前に新居が完成しました。施工は、大手のハウスメーカーなどもいろいろ回り研究した結果、土地を購入した不動産屋さんの紹介の工務店にお願いしました。図面を引く段階から、建築の各工程まで、自分では本をいろいろ読んで得た知識を基に細かくチェックしたつもりだったのですが、やはり住んでみると気づく点も出てきています。

特に気になっていますのが、強い風が吹いた場合、地震の時のように家が揺れることです。私どももどの程度の揺れまでが通常範囲なのかわからないので、クレームをどうつけてよいかわからないでいます。

工務店の話では、TIP工法という建築基準より2倍以上強度のある工法を採用しているとのことでした。また土台や通し柱や筋交いはちゃんとしていたように思えたのですが、チェックすべきポイントはどのあたりでしょうか?

またクレームをつけるとしたらどういった言い方がいいのでしょうか?どの程度の揺れまでがクレーム対象として認められるのでしょうか?何らかのご助言いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
 yorozuの感想
アドバイザー 
星 裕之 まず、気をつけなければ行けないことは、建築基準法の数倍という表記です。木造2階建の建築基準法では、地震に対しては建物の重量、風に対しては建物の大きさ(立面図の面積)にある数値をかけ、それぞれの力に対応する壁長を示しています。たとえば筋交い一本が2倍、構造用合板が2.5倍などです。それが、1mの長さがあれば壁長2、もしくは壁長2.5と考えます。

TIP工法では斜めに下地をはること+柱・梁の接合部にプレートをいれることによって通常の住宅金融公庫*の仕様(水平下地・通常の接合金物)に比べ、2.7倍の耐力が実験によって証明されたとのことです。

という訳で、建築基準法の2倍の壁長を確保しているわけではありません。同じ壁長のときに、2.7倍の力に耐えたということです。また、通常の工法で、水平下地でなく、構造用合板にして、筋交いをいれたらどうなるかといえば、その程度の数値はでるとおもいます(このあたりが耐震強度N倍表示の曲者です)。

 では、建築基準法の基準がどのくらいかといいますと、地震時に2階と1階のずれ(層間変形角)が 1/120 を基準にしています。1/120 というのは、1階から2階の高さを300cmとしたとき、2.5cmくらい横揺れすると考えてよいと思います。で、単純に2倍の強度があると考えても、1.2cmくらいは、横揺れすると考えてよいでしょう。

もちろん耐力壁のみを考えただけであり、横揺れの要因はほかにもあるかもしれませんが・・・。 木造建築の場合、軽いため地震力より、風による影響のほうが強いものです。さらに、層間変形角は地震時にクリアすべきものであり、強風時には規定がありません(ゆれ戻しによる、倒壊の危険がないからでしょう)。そのため、強風時に気になることも在るかと思いますが、お気になさる程の状況ではなかろうかと思います(強風時:伊勢湾台風、地震時:関東大震災が基準)。

 余談ですが,鉄骨造の場合層間変形角は 1/200(1.5cm)になります。木造3階建てについては 1/150 (2cm)が基準です。まあ、総じて木造2階建の基準は緩めであるといえるかもしれませんので、明確な比較基準がない現状での「耐震基準のN倍」には気をつけたほうがよいかもしれません(表記してなくても、地場の大工さんは2倍程度の耐力で造ってますよ)。


*事務局注:住宅金融公庫は、2007.4.1に独立行政法人 住宅金融支援機構に移行しました。
 ?  おそくなりまして、申し訳ありません。TIP工法のセミナー等に参加し私なりにまとめてみました。さらなるご質問のさいにも、お気軽にメールください。

まず今回の質問には2つの問題点があります。一つめはこの住宅が小屋裏利用の実質3階建の可能性があるということです。建築士の判さえあれば、2階建てまで(小屋裏利用3階建を含む)の木造建築に関しての構造的検討結果の明示義務はありません。通常木造3階建では、非常に厳しい構造計算基準が適用され、在来木造住宅に比較し、約1.5倍の壁量が要求されている上に、床の貼り方、金物の使い方など非常に細かく定められています。もちろん建物の揺れに対しても、階の高さの1/200までしか許されていません(実際はもっと揺れませんが)。しかしながら、小屋裏利用の実質3階建であれば、在来木造の基準ですから、大地震時・暴風時に約1/120の変形が生じる基準でしか設計しておりません。

本当は、通常の2階建の倍程度の壁量が1階に必要なのです。それが不足している可能性は多分にあります。また、2つめに建築基準より2倍以上強いという比較の根拠です。TIP工法の場合、従来水平にはってあった下地板を斜めに貼ることと、柱・梁の公差部分をプレートによってつなぐことによって、前記の仕様より2.6倍の強度が出ているということなのです。いわば下地材によって筋交い1本ちょっとの強度が確保されているということです。ですから、2.6倍という数字に過度の期待は禁物です。構造用合板も筋交1本程度の倍率しか認められていませんが、実験をすると耐力は筋交4本分近くまでもつのですから。

とにかく、建築基準法の数倍という表記には、根拠、条件などがあいまいであるものが多いですから気をつけましょう。また、しっかりした大工さんは何も言わなくても基準法の2倍程度の耐力にて造っています。広告に安易に踊れされないことこれが大切です。
 我伊野 威之 振動が発生する理由が建物の固有周期と風による振動周期との共振ではないかと思います。木造は建物自体の重量が軽いですので、風による振動を制御する方法として、重量物たとえばタンスやベットの配置を変える事で揺れがおさまったりする可能性もあるかな?と思います。定量的にどれだけの重量物を移動すればよいかは難しいのでプロフェッショナルの意見としては不十分とは思いますが。

重量物を下階に、壁量の多い箇所に集めることができれば軟らかいフレームの周期を若干だとおもいますが短くすることが可能です。建物の固有周期が変われば共振により振幅が増すことが避けられますので、簡易的な解決案として提案します。 
 コメンテーター 
 事務局から 
  荻原 幸雄 階数が書いてませんでしたが、3階建ての場合は、当然2階建てより揺れる事になります。強風時を基準にしてますので、強い風がどの程度を指すのか解りませんが、施工が図面通り施工されているとすると、図面を一度第三者の建築士にチェックしてもらう事が良いと思います。
相談者お礼状 
 相談者お礼状
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